大決戦 シロンとイグノ
シロンVSイグノの一騎打ち。
デュオ大会での勝負では、引き分けだった。
スピード特化のシロンより速い速度で動き、熱をチャージした拳は、鎧でも一撃で砕いてくる。
シロンは、これまで自分より速い相手と戦闘したことは無かったので、どう戦えばいいのか分からない。
……個人的に苦手な相手だ。
「〈ゴーストジェット〉〈爆霊覇〉」
「〈木刀打樸〉」
シロンとイグノは、正面からぶつかり合い、爆霊覇の猫の手を突き出したが……その手を木刀で殴られた。
鎧を伝ってダメージが入り、少しHPが減る。
木刀で押さえつけられていない左手を振りかぶり、追撃しようとするも、シロンより速いスピードで逃げられた。
何故、刀ではなく木刀を使うのか……銀さんのファンか。
とにかく、イグノの木刀使いは中々のもので、戦いにくい。
「とりあえず、木刀を何とかしないと。〈ゴーストジェット〉」
「行くぞ!」
また二人は正面から激突し……
「〈木刀打樸〉」
「〈霊爪〉」
振るわれた木刀に霊の爪を合わせ、輪切りにした。
あわよくば、そのまま体を引き裂くつもりだったが、浅く傷を付けるだけになった。
そのまま、左手にも霊爪を伸ばす。
しかし、残った木刀の柄を投げられ、それを使うのに左手を使ってしまった。
これで、今回の接触は終わった。
一発で破壊される木刀は、あまり有効じゃないと思ったのか、イグノは新しい木刀を取り出すも、脇差にしとくだけになる。
これからは、素手で戦うらしい。
そして、三回目の衝突。
直接触れるのは難しいので、霊爪の方を使うことにしたが、
「〈霊爪〉」
「〈紅蓮拳〉」
熱い拳でシロンの霊爪は破壊された。
そのまま、懐に潜り込み……シロンの脇腹を狙う。
実は、右脇腹の装甲は、前々回にアンペルのレールガンによって、破壊されていた。
そこにあるのは、紙耐久のシロンの体。
しかし……逆に、そこが弱点だということは明確で、対策するのは当然であり順当。
「〈霊鎧〉」
「は?」
右脇腹に霊力を集中させ、手刀を防いだ。
そして、今イグノは、弱点を突くのに集中し過ぎて、無防備な状態である。
「〈凱正拳〉」
「グハッ!」
思い切り背中を殴り、下に吹っ飛ばした。
防御に霊力を回していたせいで、あまり火力は出なかったが、精神的に優位に立てた。
今、逃げながら必死に落ち着こうとしているが、深層心理はそう簡単に操れない。
ここに、追い打ちをかけて、一気に追い込む。
イグノは、減速して熱をチャージしているが、追ってもどうせ逃げられるので、追わない。
……段々周りの水温が上がって、危機感が募るが、どっしりと構える。
「ヒート・オーバーチャージ」
「来なさい!」
四回目の交差。
いままではイグノが向かってくるのに合わせて、シロンも霊力のジェットで駆けていたが、今回はしない。
他の方向にジェットを使う。
相手もその異変には気付いてるらしいが、そのままやって来た。
「〈紅蓮拳〉」
「〈ゴーストジェット〉」
回転。
体の左側には前、右側には後ろ方向にジェットを噴射して、反時計回りに回転し、紅の拳を躱した。
鎧に少し凹みができるが、シロン本体にダメージは入らない。
イグノの、真正面に拳を打つ癖を読んでいたからできた、強気の行動。
さらに、回転なら……そのまま攻撃に繋げられる。
「〈爆霊覇〉」
「痛!」
イグノに、莫大な霊力を流し込み、内側から爆発させた。
一気にHPが減っていき、残り3割弱になった。
そのまま削り切ろうとしたが、超速で逃げられる。
大分有利に立ち回れた。
だが、気は抜けない。
シロンなんて、元からチャージした拳がクリーンヒットしたら即死なのだ。
射程の長い霊の爪で、手堅く立ち回り、余裕があったら爆霊覇で一気に削りきる。
その時、イグノは木刀を抜いた。
右手の熱で焼けて煙が上がるが、余り気にしてないご様子。
最後の交錯。
交わる寸前、イグノはまた木刀を投げつけた。
霊爪で六つに切り裂き、もう片方の手で攻撃しようとしたけど、
「〈紅蓮拳〉」
チャージされた拳で、霊爪は破壊された。
そこから何かするのかと思っていたが、何もせずにいつも通り通り抜けて行った。
今回はタイミングを間違えたが、木刀とイグノの体が重なるタイミングを狙うか、木刀破壊に使ってない手を、タイミングをずらして振れば……。
そう考え……油断してた。
イグノのいつもの行動は、通り抜けた後、距離を取って方向転換しつつ、チャージする感じなのだが、
「〈紅蓮拳〉!」
「うわ!?」
背後からイグノの声が聞こえ、肩口に衝撃が走った。
グシャっと音がし、肩の装甲が無くなって、少しダメージを受ける。
……通り抜けた瞬間に、背後から飛び掛かったらしい。
「ご、〈ゴーストジェット〉」
「逃がさん!【リーフィーシードラゴン】〈草縛り〉」
ジェットで加速し、一旦距離を取って体勢を立て直そうとしたが……付いて来てる。
シロンの体に植物のツタが巻きつき、二人が固定される。
……背後を取られて、イグノの姿が見えない。
「〈木錬成〉木刀!」
「〈霊鎧〉」
姿は見えないけど、嫌な予感がして、霊の鎧で肩先と脇腹の穴を覆った。
一瞬後に、そこらに打撃音がして、危なかったことが分かる。
シロンには今まで知らなかった弱点があった。
鎧のせいで小回りが効かず、背後が見えなくなるどころか、背中に手が届かない。
……まあ、シロンの体が硬いのもあるが。
今まではそのスピードから、背後を取られることは無かったけど、今回は……うん。
一先ず、木刀の打撃を鎧で防ぎ切り、打開策を練る。
試しに、縛っているツタを斬ってみたが、すぐに違うツタで縛られた。
「〈木刀打樸〉」
「〈霊鎧〉」
この時、世界が分かれた
来た!
スキルの後は、少し隙ができる。
打撃を鎧で防ぎ切った瞬間、前にジェットを噴射して、背後にいるイグノに体当たりした。
予期しなかった反撃に、イグノが一瞬怯む。
「【古代凱装羅骨】解除」
鎧を解除して、小回りを効かせ、霊爪でツタを切り裂いた。
ちょっと霊の爪を伸ばし過ぎて、自傷してしまったが、まだHPは残ってる。
「〈爆霊覇〉!」
「グアアアアアア!」
振り返って猫の手を作り、霊力を注ぎ込んで、イグノのHPを削りきった。
次回、最終回!
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