クオークチャージ
ドカンドカンドカン
「ロボ子12号ー!」
「もう12台目か……」
モンスターは全く出て来ないが、爆弾トラップは無数にある。
もう爆弾ダンジョンに改名した方がいいのでは?
「……あ、13号が死んだ」
「14号、出動します」
ドカーン
14号が死んだ頃、やっとボス部屋らしき場所が見えてきた。
というか、ドアの上にボス部屋って書いてある。
「……そういえば、ユー以外の必殺技ってどんなの?」
「お楽しみってことでええやん。驚かせたるわ」
「基本は変わらないから、俺とユーが壁で、リムスで強化してシロンとFで火力出す感じだろ」
「……そうだね!みんなでガンバロー!」
扉をぶっ壊して、ボスに挑む。
部屋の中は、相も変わらず機械の壁に包まれているが、そこそこ広い空間がある。
これならユーのUFOも展開できそうだ。
「それで、肝心のボスは……」
全員が中に入り、ドアが再生したところで、壁に幾つか穴が空き……小さな機械が入って来た。
小さい敵が集まっているパターンかと思ったが、機械が集まっていき、合体して変形する。
気付くと、機械仕掛けの大魚が出来上がっていた。
「PIROPIROPIRO!」
「【古代凱装羅骨】」
「【地球侵略軍 侵攻開始】」
「【SPACE STATION】」
シロンが骨の鎧を纏い、ユーがUFOに搭乗し……ラウルがガチャガチャっとして……宇宙ステーションになった。
ユーの様に搭乗したのではなく、宇宙ステーション本体になった。
細いボディと広げた太陽光パネルが、如何にも宇宙ステーションである。
「やっぱりラウルもそういう方向なのね」
「一気に狭苦しくなったな……」
「僕も行きます。【真達羅合奏団】」
今度はリムスが必殺技を発動させ……彼の周りに多種多様な楽器が浮かび上がった。
ギター、ドラム、バイオリン、木琴、鉄琴、ピアノ、オルガン、太鼓、ハープ、三味線、トロンボーン、サックス、ホルン、クラリネット、フルート……その他名前も分からない楽器まであり、リムス自身は指揮棒を握った。
シャッシャ
鋭く指揮棒を振るうと、楽器達が一斉に演奏し始めた。
勇ましくも柔らかで、掴みどころのない曲が、シロン達を大きく強化する。
「よし、行くよ!【ゴーストジェット】」
リムスの強化で勢い付いたシロンは、霊力のジェットを起動し、突っ込んで行った。
無機物には爆霊覇が効かないのは知っているので、霊力の爪を出し、機械魚の側面に衝撃を与えた。
……いつもより威力が高い気がする。
「……もしかして、霊力まで強化されてる?」
「アア、全部全部強化してやるぜェェェ!」
頼もしい音楽に後押しされ、攻撃を続ける。
だが、流石機械というべきか、機械魚はかなり硬い。
やっぱり、無機物相手は苦手だ。
『PIPI WIIIN』
奴は、シロンの攻撃をものともせず、鱗を逆立たせ……多数のミサイルを発射した。
かなり速いが、シロンには及ばないと回避し……方向転換して付いてくる。
「追跡弾!」
ミサイルを振り切ろうとスピードを上げたが、どこまでも追尾してきて……いつの間にか囲まれてしまった。
「やば!」
「ワイに任せろ【火設焔操・散誘】」
Fがやっと必殺技を使い……炎の弾がミサイルを撃ち落とした。
「え……これだけ?」
「ショボいとか言うなよ!」
「誰も言ってないんだけど……」
「ここからやぞ!【火設焔操・永】」
次は機械魚本体に炎を飛ばし、奴を炎上させた。
それだけならいつも通りなのだが、何時まで経ってもその炎は消えない。
毒の様に継続してダメージを与えている。
「解説求む」
「いろんな炎を出せるんだよ」
フラミンゴは、片足で経って寝れるくらいバランス感覚がいい。
と、いうことで(?)、炎のバランスを操って好きにカスタマイズすることができる。
何時までも消えない炎、スピードだけを求めた高速炎、もうなんか炎じゃない爆発など、様々な炎が使えるのだ。
あと、メチャクチャ連射できる。
「ドンドン行くで【火設焔操・焼】」
『俺らも〈電砲〉』
『ビーム 照射します』
「【霊爪】」
威力重視になった炎が機械魚を焦がし、穴を空けた。
その他の追撃も合わさり、残り7割まで削れる。
ウィーン
奴は、焼け焦げて使えなくなったパーツを切り離し、残った部分で変形した。
その姿は、さっきまでの一般的な魚ではなく、カジキの様なスレンダーな形態になっている。
「KAJIIIII」
咆哮を上げたかと思うと、ヒレをスクリューの如く回転させ……一気に加速した。
狙いは……リムス。
「速い!」
『ッツ、やらせるか!』
一瞬速く動いたラウルの宇宙ステーションが割り込み、その機体に大きな穴が空いた。
しかし、音楽は止まっていない。
「ダーリン!?」
『大丈夫じゃないけど大丈夫だ【帯電】』
とりあえず電気を纏って追い払ったが、なんかバチバチと不安な音が聞こえる。
何より、強化役のリムスが狙われているのがヤバい。
「……どうする?」
『私が守るよ。乗って』
「センキュー!」
リムスはUFOに吸い込まれていった。
これで簡単にやられることはないだろう。
「ドンドン行くよ!〈ゴーストジェット〉〈霊爪〉」
『〈電砲〉』
カジキ形態は防御が低いのか、さっきよりは良く効いている。
しかし……また機械魚の尾びれが回り始めた。
「また来るよ!」
『……俺の後ろに隠れろ』
『ダーリン……』
グサ
『ダーリーン!』
宇宙ステーションに、二つ目の大穴が空いた。
ラウルのHPはもう3割以下になっている。
もう一発は受けられない。
『……尾びれを壊すよ。そしたら多分動けなくなる』
「オッケー。〈霊爪〉」
「任せい【火設焔操・爆】」
シロンとFで尾びれを攻撃し、尾びれは破壊され、半分になった。
これでスピードは半分以下になるだろう。
奴もそれを察したのか、またもや形態を変更し……フグの様な丸々とした魚になった。
『WIIIIN』
フグの如く体に無数の針を装備し、防御方向にシフトした。
さらに、周りに無数の小魚型ドローンを展開し、ビームを撃つ。
「数が多いよ!」
「【火設焔操・壁】」
雨の様なビームの弾幕を、シロンは骨の鎧で弾き、Fは炎の壁で消し……ユーラウルはライフで受けた。
『絡め手多いなぁ!』
「絡め手には正面突破だよ!ユー!」
『宇宙生命体 投下します』
一先ずユーが宇宙生命体を降ろし、的を少しでも分散させる。
そして、薄まった弾幕の中、シロンはFの腕を掴み……
「え?」
「ゴー!」
「ギャアアアアアアア!」
思い切り投げ飛ばした。
シロンの超パワーで投げられたFは、ビームを掻い潜って機械魚に近づき……奴の体に触れた。
「ビームとか針に当たったらどうすんだよ!?」
「大丈夫、当たらない事を祈ってたから」
「祈るのは対策って言わないんだよ!」
ちなみに、シロンに無理やり投げられたことでHPは減っており、一発でも当たったら即死だった。
「ったく。【火設焔操・溶解】」
触れていたら、どれだけ遅くても避けられることはない。
Fは、全てのリソースを火力に回した、最強の炎を流し込み……機械の体を溶かして倒した。
そして、ドロップアイテムは……[特能ツバサ]のSeaバージョン、[特能ウロコ]のみだった。
「虹色食材は?」
「……Seaの世界だとないみたい」
「え……え?」
「ま、まあ、こっちだとプレイヤーをキルしたら、魚をドロップするらしいから」
「でも、それだとダンジョンに挑む意味がないじゃん」
「……さあ?」




