決勝
「うん、なんか決勝まで行っちゃった」
『すごいじゃん』
さすがに決勝となると緊張してしまい、落ち着くためにツィンに電話を掛けた。
長い付き合いから、会話しているだけで安心する。
「ツィンはどうして負けちゃったの?」
『普通に変身系にやられた。私の必殺技は味方の強化能力でもあるから、一対一だと出力が足りなくなるのよ』
「あー、そっか」
もう少し会話していたかったが、そろそろ行かなければならないらしい。
会場に続く門が光り出した。
「じゃあ、行ってくるね」
『行ってらっしゃい』
『ユーキャンドゥーイットです』
『ちょっと、割り込んで来ないで!』
『ピヨ(頑張れよー)』
最後にゴチャゴチャになって、ツィンからの電話は切れた。
あはは……と笑いつつ、シロンは決勝の地へと向かった。
決勝でも、相も変わらず殺風景な会場。
相手は……【不死鳥】のフレイドだった。
「やあ」
「よろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼む」
「……今度は勝ちます」
「ああ、全力で戦おう」
三回イベントで負けたのをまだ覚えていた。
いつもより強く闘争心を燃やす。
もう少し会話していると、中央にザ・バードが現れた。
全ての開始宣言をしてきた彼は、少しやつれているような気がする。
それでも声を張り上げ、最後の開始宣言をした。
『デュエル開始ィィィ!』
「【古代凱装羅骨】」
「【顕幻・フェニックス】」
シロンはいつものをして、フレイドは……体が発火した。
その炎が段々と大きくなり、鳥を形作る。
火が無くなり、そこから現れたのは、体をオレンジに発光させ、翼の端を燃やしている火の鳥、フェニックス。
尾の様な物を率い、大きな咆哮を上げた。
「Feeeeeeeee!」
「……いくよ!〈ゴーストジェット〉」
今一度気合を入れなおし、霊力のジェットを起動した。
燃えていない胸部に突撃して拳を振りかぶる。
「〈爆霊覇〉」
フェニックスに莫大な霊力を流し込み、局地的に内部から爆発させた。
そこまで硬くないのか、一気に2割削れた。
ちなみに、フェニックスの体温はかなり高いが、鎧越しなこともあって、ダメージを食らうレベルではない。
もう一発食らわせようと、拳を振りかぶった瞬間。
「〈発火〉」
不穏なスキル宣言をされたので、一旦離脱し……フェニックスの体が大きく燃え上がった。
これでは近づけない。
さらに、その翼を羽ばたかせ、大量の炎の矢を撃った。
「〈火矢雨〉」
「っと!」
シロンは霊力のジェットを使って回避運動をとり、炎の矢を躱す。
時々当たってしまい、熱でダメージを食らうが、そこまで大きな損傷にはならない。
ちなみに、骨が燃える温度は500度以上なので、この程度の熱で焼失してしまう心配はない。
数十秒経つと、一旦炎の矢は収まった。
しかし、まだ体は燃えたままなので、触れないで攻撃する必要がある。
「……心臓の場所は分からないけど、これしかないよね〈霊界の招き手〉」
フェニックスに近づいて、霊力の腕を伸ばした。
結構大きな体の中から、ピンポイントで心臓を探さなければならないので、両腕でフェニックスの胸辺りを弄る。
「〈火趾・十字〉」
「ッツ!」
それを見たフェニックスは、炎の勢いを強くした足を振り、十字を書いた。
シロンは一旦霊力の腕を引っ込めて、クルっと回転してその足を回避した。
そして、心臓捜索を継続する。
「あった。〈クラッシュハート〉」
「ッグ!」
その巨体から分かりにくかったが、普通の鳥とほぼ変わらない所にあった。
大きな心臓を両手で掴み、思いっ切り圧し潰す!
一撃で完全破壊には至らなかったが、HPは一気に残り2割まで削れ、口から血を吹いた。
「〈炎珠〉」
フェニックスは翼を上に上げ、大きな炎の玉を作ったが、もう遅い。
「〈クラッシュハート〉」
グシャァ!
二回目の攻撃で、遂にフェニックスの心臓を握り潰した。
勿論HPは全損し、落ちていく。
……だが、相手は文字通り不死鳥。
さっき作った炎の珠も落ちていき……死体が燃え上がる。
その時、シロンは思い出した。フェニックスは火で復活するのだということを。
ゼロだったHPは回復していき、直ぐに満タンまで回復した。
恐らく、体内では心臓も修復されているだろう。
「……やっぱりそうなるよね」
「Feeeeeeeee!」
フェニックスは飛び上がり、死の淵から復活した。
元気よく、咆哮を上げる。
「なら、もう一回倒す!」
「できるといいな。〈火矢雨〉」
もう一度沢山の火矢の雨が降り、シロンのHPを少しずつ削っていく。
持久戦になると、どうやってもシロンの方が不利だ。
火矢は少し経ったら止むのはもう分かっている。
出来るだけ躱して接近し、再度霊力の腕をフェニックスの心臓に伸ばした。
「〈クラッシュハート〉」
もう一度心臓を握り、一気に6割削った。
あと一発で倒せる。
「確二はおかしいだろ……〈火妖碑〉」
フェニックスは、血を吐きながら一つのスキルを使用し……辺りに野球ボールくらいの火玉が数十個作り出された。
挙動不審に動き回り、周りが明るくなる。
「〈クラッシュハート〉」
フェニックス、二回目の死。
しかし、死ぬ直前に放った火の玉が死体に当たり……また復活した。
「……もしかして、復活回数無限だったりします?」
「さあ。でも、これまで復活できなかったことはないね。〈火矢雨〉」
もう一度復活したフェニックスは、またもや火矢の雨を降らせた。
またシロンはそれを躱し……回避運動をとっていると、浮遊していた火玉と正面衝突してしまった。
「あつ!」
「そこだ!」
さらに、火の玉で目が眩んでいる間に、シロンの鎧に火矢が刺さる。
「ッツ、〈ゴーストジェット〉!」
緊急全力ジェットで加速し、火矢を振り切った。
しかし、目と空気穴に火が入り込んだせいで、かなりHPが削れてしまっている。
残りはほんの少ししかなく……次の火矢すら怪しい。
「……次で決めるしかない〈霊界の招き手〉」
また霊力の腕を作り出し、心臓の方に腕を伸ばす。
「〈火趾・十字〉」
燃えた足が襲い掛かって来たが鎧で止め、残り少ないHPがもっと心もとなくなった。
「〈クラッシュハート〉〈クラッシュハート〉」
「グッ!」
二回の握りつぶしで、フェニックス3回目の死。
そして……ここからが勝負だ。
「〈霊鎧〉〈ゴーストジェット〉」
霊力の鎧を纏い、さらにジェットで加速し……フェニックスにぶつかる寸前の火玉を殴って消した。
今度は反対側の火玉を弾き飛ばした。
次々と近づいてくる火玉を殴りつけ、フェニックスの死体に火を近づけない。
四方八方に飛び回り、全ての火玉を弾いていく。
30秒ほど、火を拒んでいると、フェニックスの死体は光り出し……やがて消えていった。
「勝った?」
シロン、優勝。
四章はここまでです。
ブックマーク高評価お願いします。
……特に高評価お願いします。多分、評価数がブックマーク数の9分の1しかない作品なんてうちくらいだよ。
10分の1を目指そうとかじゃないから。
……もしかして、あんまり面白くない?
そろそろテスト期間に入るので、2週間ほど更新が止まります。
ちなみに、文章力から分かるかもしれないけど、筆者は高校生です。
……筆者の進級と補習が掛かってるので、ガチります。
 




