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Universal Sky and Sea Online 空中のVRMMO  作者: カレーアイス
第四章 超インフレ編
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二回戦&三回戦

 サクサク行きます

 シロンは少し危なかったけれど、無事に一回戦を突破することができた。

 ある程度の範囲を攻撃できる技も習得しといた方がいいかもしれない。


「うーん、霊力を爆発させるとか?」


 二回戦までにまだ時間があるので、少し実験してみた。

 前に見たハッシュの風が圧縮された珠〈アトモプレッション〉の様に、霊力を凝縮させて回転させる。

 最近は霊力を操るのに慣れてきたのもあって、ポンと軽い爆発なら起こせるようになった。


「今度ツィンを驚かせよう」


 そんなこんなで時間を潰していると、二回戦の会場に入れるようになった。

 今一度気合を入れ直し、入口へと向かった。

 二回戦の相手は20代前半くらいの女性で、綺麗な赤い髪を風になびかせている。


「よろしくお願いします」

「よ ろ しく」


 ……挨拶をしたら、片言日本語が返って来た。

 良い体験なので、少し喋ってみる。


「あなたはどうして日本に?」

「エイゴのせんせーで、ネイティブは つおん おしえる。アンド、ジャパニーズアニメーション」

「……ワオ」


 英語の教師で、日本の生徒にネイティブな英語を教える為に来たらしい。

 あと、日本のアニメが楽しみだとか。

 割とフレンドリーな人で良かった。

 もう少し話そうとしていると、中央にザ・バードが現れた。


『では、開始します。デュエル開始ィィィ!』

「よろしく!【古代凱装羅骨】」


 シロンはいつも通り初手から必殺技を発動させた。

 そして、相手は白い棒を取り出して両端に火をつけ、頭上で回し……光の絹に包まれた。

 裸体の様に体のラインが強調され、薄い赤色の光が纏わりついて服を変えていく。

 下から、ピンクのブーツ、フリルのあるスカート、純白の手袋、髪飾りがつき、炎の棒をクルクルと回した。

 その姿は、日曜の朝に放送されていそうな、女の子のヒーロー。


 ……もう見た。


「【フェアリー戦士 ファイアレッド】」

「それってシリーズだったんだ!」

「うちの クランには、ウォーターブルー とランドイエローも いま すよ」


 よく考えると、英語を使って、教師で20代前半は、かなりハッシュと似ている。

 上記の特徴があったら、フェアリー戦士になってしまうのだろうか。


「……こんな姿だけど、私はモンスター系じゃないよ」

「マジ ですか? まあ、やれるだけ やってみ ましょう〈バーストエンジン〉」

「〈ゴーストジェット〉」


 相手の足の裏が爆発して、その反動で凄いスピードで飛び掛かって来た。

 シロンも霊力のジェットを使って、正面からぶつかり合う。

 相手は炎のステッキを、シロンは霊力の爪を振りかぶり、その二つが衝突した。


「〈ファイアステッキ〉」

「〈霊爪〉」

ギリギリ


 双方の力はほぼ同等で、鍔迫(つばぜ)り合いの状態になった。

 ハッシュは距離を取って遠距離魔法で戦う感じだったが、今回の人はフェアリー戦士(物理)らしい。


 シロンは拮抗した状態を打破するため、左手にも霊爪を作り出し、それを振るうが……相手は器用に一本のステッキで両手の霊爪を両方防いだ。

 そして、大きく息を吸い込み、火を吹いた。


「〈火炎放射〉」

「熱!」

 

 シロンの顔に火が降りかかる。

 彼女の鎧の顔部分には空気穴が空いているため、そこから火が入り込んできた。

 急いで霊力のジェットを逆噴射して一旦距離をとった。

 それに対して相手は深追いせず、勢いよくステッキを回して炎の円を作り、大質量の炎球を生み出した。


「〈メラバーン〉」


 その大きさに、視界が真っ赤になった。


「〈霊鎧〉」


 また空気穴や関節部分に炎が入り込んでくると困るので、霊力を全て防御に回し、鎧を作り出した。

 骨の鎧の上にさらに霊エネルギーの鎧を重ね、巨大火球を防ぎきる。


「適正相手じゃないのにこの火力!」

「これが フェアリー戦士 の 力です〈溶解(ディッソルブ)〉」


 相手は消えかかった火球を突っ切って、シロンの眼前にステッキを突き出し……その先からバーナーの様に勢いよく火が噴き出した。


 だが甘い。

 シロンは、火が噴き出す直前にステッキを掴み、顔からずらした。

 そして、ハッシュとの経験から、フェアリー戦士はステッキがなければ上手く力を出せないことは知っている。


「〈霊界の招き手〉」

「〈ボム〉」


 ステッキの先が爆発したが根性で耐え、心臓を霊力の腕で握りつぶした。

 相手は吐血し、フェアリー戦士から普通の人に戻っていく。


「グハ!」

「終わりだよ」


 やはり、モンスターや人類悪以外には出力が足りなかった。





「……フレンド登録しておけばよかった」


 割と波長が合う人だったし、ハッシュと合わせてみても面白そうだったのに。

 ……今度探してみよう。


 さて、三回戦。

 会場に入場し、既に到着していた対戦相手に、いつも通り挨拶した。


「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 相手もほぼ同じタイミングで挨拶してくれた。

 挨拶だけで、なんとなく相手の人なりが分かる。


 時間が押しているのか、すぐにザ・バードが登場した。

 UAOの決闘は、相性が悪いと一瞬で決着がつくから、時間にムラができてしまう。


『では、始めます。デュエル開始ィィィ』

「【古代凱装羅骨】」


 さっそく必殺技を使って、骨に包まれていき……


「【王武返志(オウムがえし)】【古代凱装羅骨】」


 相手も必殺技を使い……相手の姿が変貌した。

 少し高かった身長は低くなり、背後には火の玉が現れ、段々カクカクとなっていく。

 そして現れたのは……シロン。

 必殺技を使って、骨の鎧を纏ったシロンだった。


「どういうこと?」


 彼女の質問に、相手は手をポキポキと鳴らしながら、彼女と全く同じ声でそれに答えた。


「ほら、オウム返しっていうだろう?オウムに喋りかけたら、全く同じ言葉が帰って来るっていうやつだ。と、いうことで俺の能力は相手の全てをコピーする」


 確かに相手からは、シロンと同質の霊力を感じる。

 姿、装備、霊力、ステータス、スキル、全てを模倣したのだ。


「俺とお前は全て同じだが、それは一回戦と二回戦も同じだ。俺自身の戦闘スキルが高いってことだ」


 体のあちこちを弄っていた相手は、遂にシロンと同じ体勢をとった。


「そして、今俺がお喋りしている意味が分かるか?」

「……?」

「この体の使い方を確認してたんだよ。もう十分だ。〈ゴーストジェット〉」

「ッツ、〈ゴーストジェット〉」


 シロンと偽シロンがぶつかり合う。

 まだこの体の経験はシロンの方が長い。

 この高速を制御するのはとても難しいので、まだこっちの方が有利だろう。


 相手の拳を小さな体の()じりで避け、カウンターとして霊力を右手に集めて、


「〈爆霊覇〉!」


 偽シロンの胸部分の鎧に猫の手を当て、莫大な量の霊力を注入した。

 しかし……効いていない。


「え!?」

「え!?……〈霊界の招き手〉」


 両方とも驚愕の声を上げたが、高い戦闘スキルを自称するだけあるのか、偽の方が先に持ち直し、霊力の手を使った。

 こっちはあまり速度がないので、今度は何があったか見ることができた。


 シロンに霊力の手が近づいていき……シロンの体から発されている霊力に飲まれた。

 害がある感じはせず、どちらかというと霊力が供給されている。

 シロンと偽シロンの霊力は、全く同質のエネルギーなので、同化してしまうらしい。


 とにかく、自分相手に霊力を使った技は効かない。


「〈凱正拳〉」

「〈凱霊脚〉」


 鎧の拳と足がぶつかり合った。

 もうここからはバチバチのインファイト。


 シロンが右手で正拳突きをし、相手はそれを左手で止めた。

 そして、返しの回し蹴りを腕を立てて防ぎ、その足を掴んで投げつける。


「〈ゴーストジェット〉」


 霊力のジェットで接近して、その勢いのまま追撃の膝蹴りを偽シロンの腹に食らわせた。

 しかし、あまりダメージはない。

 ……少し長くなるかも。


「〈ゴーストジェット〉」


 相手は霊力のジェットを腕につけ、加速パンチを使った。

 直接霊力で攻撃してはいないので、吸収はできない。

 制御しきれていないのか、当たったのは右腕だったが、威力は高かった。


「仕返し!〈ゴーストジェット〉」


 シロンも負けじと肘に霊力のジェットをつけ、骨の爪で斬りかかった。

 しかし、軌道は単調になってしまうため、体を反らされて空振りとなってしまう。

 そのままブリッジの体勢から、頭を下にして足を開き、霊力ジェットでコマの様に回転した。

 

「ック!」


 上に緊急離脱して、足を避けようとしたが、その程度の軌道修正はできるのか追尾されてしまい、右腕に直撃した。

 鎧の半分が削れ、鎧下のシロンの表情が曇る。


「オラオラオラ!」

「ヤバ!」


 さらに偽シロンの猛攻は続き、変幻自在の拳法に苦しめられる。

 シロンは防戦一方で、防御することしかできない。

 そして……重点的に攻撃されていた右腕の装甲が剥がれた。


「これが俺の戦闘スキルだァ!」

「凄いね……それでも、勝ち負けは別」


 右腕を隠しながら戦闘を続行する。

 相手の右腕を狙った回し蹴りを右足で防ぎ、その足を左手で掴み取った。

 そして、


「〈霊界の招き手〉」


 右腕から分離した霊力の腕を伸ばした。

 今度は霊力は吸収されず、普通に相手の鎧を透過して、心臓に手をつける。


「……どういうことだ?」

「ちょっと霊力の性質を組み変えただけ。ちょっと練り変えるだけで同化しなくなるよ。多分、今ならあなたのスキルも私に通じる」

「……〈霊界の招き手〉」

「手遅れだよ。〈クラッシュハート〉」


 霊力の手を握り締め、偽シロンの心臓を潰した。

 戦闘スキルでは負けていたが、霊力という相手にとって未知の力が加わったのが勝因か。


 【サラマンダー】

 炎魔法強化

 火の精霊。

 ハッシュの炎版。


 【オウム】

 作中で語った。漢字は全然違って鸚鵡と書く。

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