リンゴリラッパンドラ
『ダンジョンに行ってみない(*/>∀<)/?』
難しい宿題をやっていた真白の元に、一通のメールがやってきた。
『いい景色が見れるよ』
「行く行く!ちょっと待っててね」
もう宿題のことなど頭の中から抜け落ちて、UAOにログインした。
「遅い!」
「ごめん、後で何か奢るから」
絶対にやらなければならない要件があって、待たせてしまったツィンに両手を合わせて謝った。
彼女は少しムッとしていたけど、すぐに戻って、
「まあいいや。行くよ」
「はーい」
幽霊と落ち武者のコンビで数分飛び回り、とある洞窟に着いた。
「ここがダンジョン?」
「そ。ちょっと難易度高いらしいけど、」
「そこを攻略するの楽しいよね」
そう言って、洞窟に入っていった。
かなり広めの洞窟で、戦闘の邪魔になることは少ないだろう。
日光が入らないせいで少し薄暗いが、ちょっと視覚に補正がかかるみたいで、ある程度は辺りが見えている。
洞窟内を飛んで進むが……何も出てこない。
「……暇だねー」
「しりとりでもする?」
「リンゴ」
「ゴリラ」
「ラッパ」
「ヘビー!」
「次パだよ?」
「違う、ヘビ鳥が出てきたの!」
天井に幾つかの穴が空いていて、ヘビ鳥が這い出してきた。
「私は左をやるから、シロンは右ね!」
「分かった」
蒼いオーラを纏った拳を握り締めて、ヘビ鳥をドカドカ吹っ飛ばしていく。
ちょっと数が多い上、一発食らったらほぼ即死だから、意識の外からの攻撃に気を付けつつ、
「霊力パンチ!」
「SYAAA!」
ツィンも新たに購入した長剣を振り回して、間合いに入って来たヘビ鳥の首をどんどん切り落としていく。
長剣の小回りが効かない部分をスキルの空気の刃でカバーし、その隙に長剣を入刀する。
数十秒後には、ヘビ鳥は全滅していた。
「ナイス!」
「いいねー」
そこから進もうとすると……宝箱が落ちている。
「宝箱だー!中身はなんだろな?」
「ダメ!」
ツィンの顔は、青ざめを超えて白くなっていた。
「どうしたの!?」
「とにかく、宝箱は開けないで。絶対ミミックだから!」
「ミミック?」
「行くよ!」
ちなみに、ミミックとは宝箱に化けてプレイヤーを奇襲する、一部のプレイヤーにかなり嫌われているモンスターだ。
特に、あるVRMMOをしていたプレイヤーには、魂に刻まれるレベルのトラウマになっている。
「本当に開けなくていいの?」
「いいの!しりとりの続きするよ、パンドラの箱」
「こ、コアラ」
その後、しりとりを続けながら洞窟を進んでいると、
ゴン バシ!
戦闘音が聞こえてきた。
「どうする?」
「ちょっと見てみて、ピンチだったら助けよう」
「そうだね」
前の戦闘を少し覗いてみると……金髪のデカい男性と小さな少女の二人組が、大量のヘビ鳥に囲まれて、大変なことになっていた。
「……これ、助けた方がいいんじゃない?」
「行こう!」
洞窟の岩の影から飛び出して、一番近くにいたヘビ鳥を吹っ飛ばし、首を斬り飛ばす。
「加勢いりますか?」
「おお、頼んだ!」
そうして、後ろ側のヘビ鳥をシロンとツィンで討伐し、前の奴を金髪のデカい人が蹴り飛ばす。
もう一人の金髪の小さい少女は……謎の白い盾で攻撃を防いでいた。
「ふう。助けてくれてありがとな、俺はヒロ。ほら、ハルヒも」
「ピヨ(ありがとう)。ピヨ(私ハルヒ)」
ピヨとしか聞こえないのに、頭の中に何と言っているか分かる。
何かの能力が働いているのだろう。
大きな男性はヒロ、小さな女の子はハルヒというらしい。
「私はシロンで、」
「私はツィンです」
シロンたちも軽く自己紹介をして、
「私たちも二人だと不安だし、ここで会ったのも何かの縁。一緒に攻略しませんか」
「願ってもない。よろしく頼む」
「ピヨ(アニキ?)」
「いいだろ別に。俺だけじゃ火力が足りないんだよ」
「よろしくねー、ハルヒちゃん」
シロンは、ハルヒの身長に合わせてしゃがみ、ニコッと挨拶した。
当のハルヒはヒロの足に隠れてしまったけど、チラっと目を出して……
「……ピヨ(よろしく、シロン姉)」
「かわいー!」
「ねえ、私は?」
……何故か、ツィンに挨拶することはなかった。
この小説内で、ステータスの実数値を書く予定はありません。
理由は面倒だから。最初は書くつもりだったけど、難し過ぎて断念した。要望が多かったら頑張る。
こっちの方が速いとか、レベルとかには触れていくので、その辺から推測してください。
あと、特殊なスキルが絡んでいない限りは、『どこかが高いステータスになっている時は、どこかが低い』という認識でお願いします。
例 攻撃と素早さが高い→防御は低い
全部バランス的に上げてる→特化には負ける