インフレの先へ
「〈爆霊覇〉」
「GARI!」
火星に赴き、〈爆霊覇〉で氷鳥を倒した。
これで深淵の必殺技に必要な分の、氷鳥の氷が集まった。
それを伝えるため、深淵にメッセージを送る。
「終わったよ」
『感謝する』
「あと集めた方がいいのある?」
『大丈夫、ヒロとハルヒのも全部集まった』
必殺技を解放したシロン、ツィン、ヒロ、ハルヒ、深淵の5人は、再び神殿のダンジョンの前に集まった。
前と同じ要領でカミ鳥を倒していき、金色の雲のところまで辿り着いた。
ちなみに、ここまでの道のりでそれぞれの必殺技を共有している。
「よし、今度は勝つぞー」
「おー!」
指揮を高めて、金色の雲を通過した。
戦闘にヒロとハルヒ、中衛にシロンとツィン、そして後衛に深淵のいつもの構成で挑む。
そして、また影が濃くなっていき……筋骨隆々の神が降臨する。
「GOOOODEM」
「作戦通りに行くよ。【巣構築・美燕嶺徹】」
真っ先にツィンが必殺技を発動させた。
半透明な鳥の巣の様な物が広がり、周りにツバメが飛び回る。
「次!」
「【魑魅魍魎☆百鬼夜行】」
次に、深淵が必殺技を発動させ……彼女の袖から打ち出されたのは、巨大なヘビやカラス、妖怪的なモンスター達。
それらが、標的である神に襲い掛かる。
体中にヘビが噛みついて毒を入れ、カラスが肉をついばみ、化け物達が様々な攻撃を加えた。
その巨体からか小物に対応しにくい神は、顔をしかめている。
昔話の舌切り雀では、小さなつづらにはこれまで深淵が使っていた黄金が入っているが、大きなつづらには魑魅魍魎が入っていた。
そうやって、強欲な者が裁かれる昔話のいつもの流れになっている。
……ネットで無料で読めるから、分からない人は読んで下さい。
多分3分くらいで読めるから。
「GOOOODEM」
魑魅魍魎を剥がすより、こちらを攻撃することを選択したのか、また腕を振りかぶった。
それに対抗して、ハルヒが必殺技を使用する。
「ピヨ(【ヒギョウ様】)」
目を大きく見開いて、神を睨み付け……奴の動きがとても緩いものになった。
その貧弱な攻撃を、軽く殻盾で受け止める。
動揺したように、蹴りや溜め攻撃を放つが、殻盾にはヒビすら入らない。
ヒギョウ様とは、昼と夜の12時に生まれるヒヨコのことだ。
人間の目をしていて、それと目を合わせると廃人になってしまう。
一応直す方法も存在しているが、それは以前の人と違う人間になると言われている。
現在でも、12時に生まれるヒヨコの卵は捨てる養鶏場もあるらしい。
この伝説がスキルとなり、ハルヒに睨まれた者には強烈な弱体化が掛かる。
「ピヨ(余裕だ)」
「私の領域を活かしたいから、少し下がって」
「ピヨ(了解)」
全く押される気配がないハルヒは少し下がって、ツィンの巣内で戦う様になった。
地味な能力だからもう紹介してしまうが、領域内ではツィンのステータスが倍増し、ついでに彼女の仲間のステータスも上がる。
ツバメの巣作りが元となったものだ。
ツィンは倍増したステータスで回り込み、
「〈燕刀一文字〉」
ハルヒの弱体化で弱った筋肉を貫いて、腕の半ばまで切れ込みを入れた。
そして、その動揺に付け込んで、今度はヒロが必殺技を使う。
「【牽喰い倪り】」
日曜ライダーの如く大きく飛び上がって足を突き出し、グレーのオーラを纏った。
瞬間、蒼、赤、グレーの色が混じった閃光が走る。
「ラァ!」
「GO!?」
ヒロの必殺技は、文字通り必殺の一撃。
全てを貫いて破壊する、最強の蹴り。
直撃する瞬間に姿勢を変えられたせいで少しズレたが、神の胸元にぽっかりとした穴が開いた。
心臓破壊は失敗したが、深淵が継続して魑魅魍魎を撃っているのもあって、奴のHPが半分くらいまで削れる。
「すまん、しくじった」
「まあ、大丈夫でしょ。ちょっと面倒なことになるけど」
「GOOOOOD」
HPが減った神は、咆哮を上げて三色天使を呼び出した。
天が光り、天使たちが降り立つ。
「じゃ、行ってくるね〈ゴーストジェット〉」
「よろしく」
作戦通り三色天使を倒すため、シロンは上空に飛び上がった。
そして、彼女の必殺技を発動させる。
「【古代凱装羅骨】」
シロンの体から、白い鎧……骨が這い出してきた。
体、足、腕、指先、全てが骨で包まれ、羽は完全に骨製になる。
頭にはドラゴンの頭蓋骨の様な物をかぶり、目がキラリと光った。
「〈ゴーストジェット〉」
「WATER」
いつもの……いや、いつもより激しいジェットで青色に突撃する。
水魔法で攻撃してきたが、腕の外骨格で払いのけ、
「〈霊界の招き手〉」
ゆっくりとしか動かなかった霊力の腕が、凄まじい速度で伸びていき、一瞬で奴の心臓をもぎ取った。
他の赤と黄色は、驚愕しつつも魔法を放ってきたが、全て骨で弾き飛ばす。
そして、両手から霊力の腕を伸ばし……一気に二つの心臓を握り潰した。
シロンの必殺技は、古代の力を活性化させるというもの。
骨のアーマーで全身の防御力を上げ、霊力を数倍に上昇させる。
さらに、謎の力で状態異常無効もつき、元の防御力も上がり……凄い強化状態になることができる。
「終わったよー」
「……お疲れ。ついでにこっち手伝って」
「分かった〈ゴーストジェット〉」
ツィン達を手伝うために、神の方に向かって行った。
そして、同じく回り込んでいたツィンと同時に翼を破壊した。
「〈霊爪〉」
「〈ツバメ返し・乱〉」
両方の翼を破損し、さらに深淵の魑魅魍魎も絡まって上手く動けない。
「ピヨ(今度は外すなよ)」
「分かってるよ。【牽喰い倪り】」
二回目のヒロの必殺技が心臓部を貫き、神を倒した。
ドロップアイテムは、[特能ツバサ]と虹色綿あめだった。
……なんか古代って骨のイメージあるよね。
ちなみに、ヒギョウ様の話はマジ。




