VS魚
「行け、赤甲羅!」
「バナナ付けてるから効きませーん……なんか横から来ましたよ!?チートですチート!」
「これがヨシジャウルスの力!」
レースゲームのゴールギリギリで、シロンのキャラがハッシュをギリギリで妨害した。
その間に、シロンのカートが追い抜き、10位でフィニッシュする。
「やった、十位だー」
「……あなたのせいでビリになったんですけど」
「……いや、低レベル過ぎやろ」
1位でゴールしていたFが関西人のツッコミを入れる。
3人以外は弱い設定のNPCなので、余裕で上位を陣取れるハズ……だった。
「だって……めちゃくちゃアイテムを当てられたし」
「私を誰だと思ってるんですか?練習用車を6台爆破して、運転教習所を出禁になった人ですよ?」
「アレに出禁なんてあるんか?」
「罰金とかないから、爆破し特ですよ」
「……そうなんだー(思考停止)」
ハッシュがかなりの運転下手だということが分かったところで、他のみんなが部屋に入って来た。
準備が整ったらしい。
「揃ったよ」
「じゃあ、行こう。海上都市ア肆ネルに」
◇
アップデートで追加された第四の町、海上都市ア肆ネルへと向かう。
グル参に来た時と同じように金属の管が伸びていて、その中は強い光で見えなくなっている。
「ここから行けばいいのか」
「まあ、十人居ればどんなモンスターでも楽勝だろ」
丁寧なフラグを建てたヒロからその中に入っていき……姿が見えなくなった。
どこかに転移したらしい。
「……ピヨ(ちょっと時間を空けて、不安にさせてやろう)」
「可哀そうだからやめなさい」
引き止めようとするハルヒを放って、順番に光の中に入っていった。
「あれ?」
シロンは、首をかしげていた。
転移先の真っ白な空間には誰もおらず、後続から誰か来る様子もない。
「……ドッキリ?」
よく周りを見渡すと、遠くに誰かが一人だけいた。
とりあえず、この場所のことを聞いてみる。
「あの、ここはどこですか?」
「……」
何も答えてくれない。
しかし、目を凝らすとその人との間に、前のイベントの様な透明な壁があり、視界に数字が浮かんだ。
3,2,1
『デュエル開始ィィィ!』
「え、戦うの?」
透明な壁が無くなり、遠くの人が戦闘態勢を取った。
とりあえず勝てばいいらしい。
「〈ゴーストジェット〉」
いつも通り突撃して、拳を振りがぶった。
そのスピードに驚いた相手に、爆霊覇を撃とうとしたが、
「〈爆霊覇〉」
「っと、〈ティースソード〉」
相手の人は、自分の歯を一本抜き取りそれを剣にした。
若干嫌悪感を覚えつつも、霊力で武装した右手で剣を受け止める。
そして、フリーの左手で、相手の剣をへし折った。
「はぁ!?」
「〈爆霊覇〉」
驚愕の声を上げる相手に、今度こそ爆霊覇を打ち込む。
そこそこ耐久が高いのか、3割くらいしか削れていないが……あと1.2発入れればいいだけだ。
「〈ティースシールド〉」
新たに歯を抜き取って、今度は盾にした。
しかし、シロンの前にはあってないような物だ。
「〈鋭霊〉」
スパッ
霊力の剣で、盾を一刀のもとに切り捨てた。
虚しくも真っ二つになった盾が落下していく。
「ウソだろ!?」
「〈爆霊覇〉」
さらに爆霊覇を打ち込んで、相手のHPはあと3割程度になった。
その時。相手の肌に無数の赤いウロコが現れた。
全身が赤く染まり、鎧の様になる。
「〈爆霊覇〉」
そんなものは関係ないと、最後の一撃を赤いウロコに入れた。
しかし……相手には全然効かない。
「え?」
「〈片鱗〉」
鱗をガチガチ鳴らしながらぶん回された腕を、シロンはギリギリで避けた。
彼女は、鱗の鎧が邪魔になっているのだと判断し、それをすり抜けるために
「〈霊界の招き手〉」
物質を透過する第三の腕を出した。
隙が大きいから嫌いなのだが、この盤面ではやるしかない。
相手の心臓へと手を伸ばし……赤い鱗に阻まれた。
「え?」
「え?」
どうやら、相手にも理由は分からないが、赤い鱗は霊力を通さないらしい。
「……良く分かんねえけど食らえ!〈片鱗〉」
「わっ!」
第三の手を出していた影響で避けきれず、左手の指先が幾つか消えた。
流石にこの程度ではやられない。HPが6割吹っ飛ぶ程度だ。
ついでに、毒で継続ダメージを食らう。
「やば!」
「ッシャ!」
改めて爆霊覇を撃ってみたが、やはりほとんど効かない。
このままでは、霊力が通らない鎧で時間を稼がれ、毒で削り切られてしまう。
だが……シロンの強さは、攻撃の多彩さにもあるのだ。
「〈ゴーストジェット〉」
相手から距離を取り、スキルを【ヴィゾーヴニル】に切り替えた。
「〈獣槍〉」
槍を飛ばして、切り付けた。
この攻撃には霊力は関係ないので、普通に通った。
HPは共に残り3割。
「勝負〈獣槍〉」
「〈硬鱗〉!」
無数の槍が相手を襲い、少しでもダメージを減らすために防御態勢をとった。
ほぼ同じ速度でHPは削れていき、
「ラスト〈レーヴァテイン〉」
多彩な装飾を持った、綺麗な金色の槍を錬成した。
凄まじいスピードで相手に飛んでいき……腹を貫いて、HPを削りきった。
【タイ】
鋭い歯 鱗の鎧
普通に魚のタイ。
生後数年で性転換することがあるので、能力がHPが半分で切り替わる。
タイには、めでタイとか縁起がよかったり、邪気を払う効果があると言われるので、霊力は弾かれた。
SEAの方もよろしく・
 




