芽衣 参戦
『今からログインするね(ू•ω•ू❁)』
「分かった、最初の所で待っとくね。白い髪が目印だよ」
『……楽しんでるねー』
今から芽衣がUAOに初ログインする。
設定の時間もあるから、すこし遅れてくると思うけど、待ちきれないから真白も同時にログインしておく。
「そういえば、芽衣のスキルって何になるんだろう?」
二人で冒険するなら、ピーキーな……本当だったら対応力高めのはずなのにピーキーになってしまった【始祖鳥】とバランスを取るために、安定性がある物にしたい。
まあ、ある程度性格に合う能力になっているけど、ほとんどランダムだからどうしようもないのだが。
そんなこんなで芽衣を待っていると、一人の少女がシロンの目の前で止まった。
「……もしかして、真白?」
「そうだよ、芽衣」
現実の顔立ちは残しつつ、リアルとちょっと変えるため、黒髪のポニーテールに目が赤色になっている。
「似合ってるね~」
「そっちこそ。こっちではツィンね」
「私はシロンだよ。スキルは何になったの?」
「【ツバメ】だよ。効果は見てからのお楽しみ。……それで、今はどこに向かってるの?」
「最初のモンスターのところに」
「……武器屋とか寄らないの?」
「パンチして倒してた」
武器屋はリスポーン地点と初心者用狩場の道中にあり、大体の人は武器を買ってから行く。
殴って戦うのはごく少数である。
「じゃあ、良いのを選びなよ。私は武器屋半出禁になってるから」
「え……なにやったのよ」
まあ、流石に出禁にはなっておらず、ただ店主さんに顔を合わせにくいだけなのだが。
そうして数分後、武器屋から出てきたツィンは、1本の刀を持っていた。
「おー、刀だ」
「スキルが刀に関係するからね。行くよ」
シロンの誘導に従って、二人でハイエナ鳥の住処まで飛んでいく。
早速、一匹のハイエナ鳥が現れた。
「GAOOO!」
「え、これ本当に一番弱い敵!?」
「うん……心理的負担まで考えたら、一番弱いモンスターだよ。大丈夫、最悪私が助けるから」
「……ならいいや」
ツィンは正眼で刀を構えて、ハイエナ鳥と相対し……
「ハッ!」
「GAOO!」
突進してきたハイエナ鳥が間合いに入る寸前に、ツィンの刀が空振りしてしまい、
「ツィン!」
「大丈夫、計画通り」
そう言って……空振りした刀の路線を辿るように、空気の刃が逆向きに通り過ぎて、ハイエナ鳥の首に当たり、
「GUO!?」
「ヤッ!」
態勢を崩したハイエナ鳥に、ツィンの刀が刺さった。
「おー(パチパチパチ)」
「これが【ツバメ】よ」
ツバメの能力は、刀や剣が通った道を、逆向きに空気の刃が辿るというものである。
空気の刃の威力は刀本体より少し落ちているが、態勢を崩すには十分だ。
急旋回するツバメの、燕返しが元ネタになってます。
「そろそろ私もやろうかな?」
「ほう……見せてもらおうか、攻撃スピード特化を」
両手を握り締めて、蒼いオーラを纏った。
そのままいつも通りスピード特化で近づき、オーラが当たる直前に攻撃特化に切り替え……前よりも派手に吹っ飛んで行った。
「……思ったよりやばいんだけど」
「でしょ!」
「私も頑張ろう」
「っていうか、服買わないの?」
シロンはまだ服を買っていないので、ダサい初期装備のままだった。
「いやー私センス無いから、ツィンに選んでもらおうと思って」
「任せてよ」
目を光らせたツィンに連れられて、服屋に入っていく。
鎧にしたら防御力は上がるけどスピードは下がるし、動きやすい普通の服装にした方がいい。
「それじゃあ……とりあえずコレとコレとコレ着てみて」
あー、スイッチ入っちゃったか。
言われた通り、ツィンに押し付けられた白装束、セーラー服などなど、白を基調とした服を試着していく。
「でも、ナース服は無くない?」
「うん、それは私の趣味」
結局、白くて短めの黒いフリルがついた、可愛らしい感じワンピースに……
「……この三角巾は?」
「よく幽霊が付けてるやつだよ。シロンは霊力で戦うんでしょ?ちょっと羽を閉じてみてよ」
広げていた羽を閉じて、目立たないようにしてみると……低い身長も相まって小さな幽霊ができました。
シロン自身も気に入ったので、そのままワンピースと白い三角巾、天冠を購入しておく。
「よーし、じゃあツィンの服は私が選んじゃうぞー」
「えー、シロンのセンスは……参考にはしてあげるよ」
そして、シロンが持ってきた服は、
「ナニコレ?」
「メイド服」
「却下」
「じゃあ、このポリス装備は!?」
「……自分で選ぶね」
数分後、ツィンが着ていた服は……昔の武将が着ている、紺の長裃と肩衣半袴だった。
「どうよ?」
「いーねー」
「でしょ!シロンが白っぽいから、黒でバランスを取ってみた」
自慢気にそう言って、料金を支払い
「でも、幽霊コスチュームの私の隣にいたら、落ち武者に見えちゃわない?」
「あ……」