三回戦
「ただいまー」
「お疲れ」
「イエーイ!」
シロンら待機組は、出場したメンバーと順番にハイタッチしていく。
実にいい音が鳴った。
ひと段落してから、またツィンが反省会を開始する。
「……ピヨ(反省することある?)」
「ちゃんと詰めていった感じですけど」
必死に考えてみるが……これといった反省点は思いつかない。
だが、ツィンは思いついたみたいだ。
「いや、今回はちょっと選出が悪かった。まともに火力を出せるのが私とFしかいなかったから、私たちが初見殺しでやられるとほぼ詰んじゃう」
「でも、リムスのスピード強化とユーの弱体化は可能性を感じたよ?」
「ほら……ユーとラウルはほぼセットだから」
「ああ……」
ということで、リムスとユーラウルは同時選出禁止になった。
2回戦と3回戦の間には少し休憩時間があるので、虹色食材を食べてリラックスする。
金星でゲットした餃子がジューシーで美味しかった。
のど越しの良い虹色水を飲みつつ、次の選出を考える。
「次は誰が出る?」
「「はい!行きたいです!」」
勢い良くユーとラウルが手を上げた。
箸で摘まんでいた餃子を落としそうになり、ギリギリでシロンがキャッチする。
「私たちほぼタイマンしかしてない」
「チームプレイが醍醐味なのに」
相変わらず息ピッタリだった。
彼らに指示を出したツィンも少し後ろめたいのか、それを支持する。
「じゃあ、ユーとラウルは確定で……後衛が欲しいから、ハッシュとFはどう?」
「オーケーです」
「よっしゃ、任せとき」
「あと、サブアタッカーが欲しいから、シロンでいい?」
「いいよ」
三回戦:シロン、ハッシュ、F、ユー、ラウル
相手のクラン名:《FANTOM BIRDS》
◇
出場メンバーで特設フィールドに転移した。
始まる前に、ユーとラウルが前に出て、ハッシュとFが一歩下がる。
シロンはその中央に待機した。
そして、相手は……
「あれ……どこかで見たことがある気がする」
3人は見たことがないが、残りの赤い人とぼさぼさ髪は見覚えがあった。
「誰だっけ?」
「あれじゃないですか?ファーストイベントで二位と三位だった人」
「ああ!」
相手は、第一回イベントで二位だった【不死鳥】のフレイドと、三位だった【陰摩羅鬼】のオーズだった。
ちなみに名前と能力名は知っているが、能力の内容は全く分からない。
「よろしくお願いします」
「……(モゴモゴ)」
「こちらこそよろしく。お互いベストを尽くそう」
シロンの声かけに、オーズはもごもごしていたが聞こえず、フレイドはイケメンな返しをした。
何故かハッシュが笑顔になっていた。
『では、デュエル開始ィィィ!』
いつもの透明な壁が消え戦いが始まった。
癖で突撃しようとするシロンをハッシュが捕まえ、
「〈炎鳥〉」
「〈風独楽〉」
先制で遠距離魔法を撃った。
相手は、風のコマを……なんか宝石みたいなカクカクした体の人が、Fの炎は【不死鳥】のフレイドが受け止めた。
カクカクな人にはダメージが入っているが、フレイドには全く効いていない。
というか、炎はすぐに収まっていき……吸収された、という感じだ。
「……フレイドには効果がないようだ」
「ポ〇モンみたいなこと言わないで」
「不死鳥は死期が近づくと、火に飛び込んで再生するらしいですから……まあ、そういうことですね」
「そうなの?」
「火の鳥は教師の必修ですよ」
最近解説役ポジになりつつあるハッシュが、その役割を全うした。
とにかく、フレイドに炎魔法は効かないらしい。
「……ワイは何すればええんや」
「待機で。ハッシュ中心に攻めていこう」
「分かりました。〈風独楽〉」
「私も手伝う。〈円盤〉」
ハッシュとユーが遠距離攻撃をしたが、カクカクな人が全て受け止める。
金属みたいな体をしているからか、かなり耐久が高い。
さて、相手はどう出るのか。
相手の後衛である……金髪の人が右手を振り上げ、天を仰いだ。
「〈雷鳴〉」
四方八方から白い雲が現れ、段々と厚くなっていき……やがて、黒雲となる。
バチバチと電気のギザギザが走り、ゴロゴロと雷が鳴り始めた。
「……もう行っていい?」
「まだ二人もスキルが分からない人がいるけどいいや。行ってきな!」
「レッツゴーです!」
「分かった〈ゴーストジェット〉」
ユーとハッシュの許可を得て、シロンは出発した。
雲を引き起こしたと思われる人に突撃する。
【陰摩羅鬼】のオーズが青い炎を飛ばすが、そのくらいでは止まらない。
全て躱して、雲の人に突っ込もうとしたが……まだ能力が分かってない糸目の人が立ちはだかった。
「邪魔!〈爆霊覇〉」
「〈速く飛ぶ者〉」
いつもので攻撃しようとしたが、ヒラリと躱された。
無視して進むのもアリだけど、シロンは攻撃時に少しだけスキができてしまう。
糸目の人はかなり速く、スキを晒すとやられてしまうだろう。
「〈風槍〉」
「〈霊纏い〉」
糸目の人は渦巻く風の槍を振りかざし、シロンは防御しやすい様に手に霊力を纏った。
高速で衝突し、槍を左手の霊力で受け止め、右手で攻撃するも躱される。
オーズとフレイドの炎が飛び交っているが、それでも同等に渡り合うシロンは十分よくやっている。
「ごめん、雲の人を倒せそうにない!」
「分かった。こっちはこっちでなんとかする。ダーリン!」
「ああ。展開」
そろそろ雷が降りそうな空を見て、ラウルが翔具のソーラーパネルを展開した。
「みんな、集まれ!」
「わー!」
みんながソーラーパネルの下に集まり、雷を止める体勢をとる。
ハッシュとユーは遠距離攻撃で相手を牽制し……遂に、雷が。
「〈神鳴り〉!」
「……頑張れ、ダーリン」
「うおおおおおおおおおおお!」
ユーの声援を受けて、ラウルは気合を入れる。
数割削られ、真っ黒になっても受けきった。
「ナイス!」
「……(ボフ)」
何か言おうとした彼だったが、口から出たのは黒い煙だった。
しかし、その雷のお陰で十分充電できた。
「一旦離れろ、シロン!」
「分かった」
炎を掻い潜って、シロンは相手から離れる。
糸目の人は追って来たが、さっきまでと同じく戦うのみだ。
「っし、俺に合わせろ」
「イエス!」
「やっと出番か」
ラウルの最大火力に合わせて、ハッシュとFの魔法を放った。
そして……技名はもう決めてある。
「火鳥風電」
三人の合体技が、カクカクな人を襲う。
火を吸収できるフレイドも、電気と風の混じった攻撃は受けられない……という予想だった。
彼はカクカクな人とこっちの魔法の間に入る。
「え!?」
「吸収できるんか!?」
フレイドが3人の魔法を食らい……炎は吸収らしきことをしたが、風と莫大な電気は吸収できていない。
HPバーが凄い勢いで短くなっていき、ゼロになった。
いつも通り光のポリゴンになって霧散する。
だが、その瞬間。
「〈碧い炎〉」
その光にオーズが青い炎を当て……フレイドが復活した。
流石にHP全快とはいかないが、追加の炎で次々と回復する。
「……炎から復活する。伝説通りですね」
「あいつ無敵か!?」




