二回戦
「やった、勝ったよ!」
「ナイス!」
シロンたち出場メンバーは、待機組のツィン達の元にワープした。
全員で勝利を分かち合う。
そんな中、シロンにハッシュと深淵が近づいてきた。
「人数不利の中、良く勝ってくれました。サンキューです」
「さすが我の相棒だ……一応、感謝しておこう」
気まずそうに、視線を泳がせながら二人とも感謝を伝えた。
シロンは焦って首を振り、
「大丈夫だよ。チームは助け合うものでしょ?私もよく助けられるから」
「……イエス」
「ああ」
彼女達は、同じくハルヒとヒロにも感謝を伝えに行った。
「あれは本当に仕方ないことだったのに」とも思ったが、それで気が晴れるのならと放置することにする。
ある程度騒いだ後、パンパン!とツィンが手を鳴らした。
「反省会するよー」
ハッシュと深淵の視線が落ちる。
「うーん……割と良い感じだったんじゃないの?」
「まあ、そうだね……ヒロ君!」
ツィンの名指しを受け、みんなの視線が一気にヒロに集まった。
彼は、居心地が悪そうにしている。
「ちゃ、ちゃんとライダータイマンで勝っただろ?」
「やられたら敗北ルート一直線だったけどね」
「……すみませんでした」
「ピヨ(バカ兄貴)」
彼は頭を下げ、ハルヒに叩かれていた。
……何故か妹の方がしっかりとしている気がする。
重い雰囲気に耐えかねたシロンが口を出す。
「まあまあ。それより、次の試合のことを考えよう?」
「そうね」
「一回戦に出なかったメンバーでええやろ」
「……頑張ります」
第二回戦メンバー:ツィン、リムス、F、ユー、ラウル
相手のクラン名:《蟲独のワーム》
「中々いいセンスをしているな」
◇
シロンら待機メンバーは、試合全体を見通せる観戦室でツィン達を見ていた。
「頑張れー!」
「ピヨ(声は届かないぞ)」
熱い声援を送って、見守る。
先ほどと同じように透明な壁があり、まだ試合は始まっていないらしい。
今のうちに陣形を組んでおく。
前衛にツィンとラウル、中衛にユー、後衛にFとリムスという形だ。
そして、相手の方に視点を移すと……全員、羽が派手だった。
キラキラと光っていて、独特な形をしている。
始まりを告げるため、ザ・バードのホログラムが現れた。
フィールドにいる全員が身構える。
『デュエル開始ィィィ!』
「突撃いいいいいいいいいいぃぃぃあああああああああああああ!!」
壁が無くなった瞬間、相手のリーダーっぽい人が大声を上げて、突撃してきた。
5人中4人が最短距離で突っ込んできている。
「脳筋かよ!?〈炎弩〉」
「〈電針〉」
Fの炎とラウルの電気が相手に襲い掛かるが、少し減速しただけで、全く止まる気配がない。
「私2人止めるから、ユーとラウルで1人ずつ止めて!」
「分かった。援護開始!」
空中にユーの円盤が現れた。
怪光が降り注ぎ、相手に引力を発生させ、少しでも相手を動きにくくする。
「リムスはスピード強化の歌、Fは全力援護ね!」
「分かりました〈疾走嵐歌〉」
「任せとき。〈炎弩〉」
多人数戦に対応しやすいように速度を上げ、短期決戦を予想してFは炎魔法を連打した。
そして、それでも止まらない相手に対して、ツィンは二本の刀を抜いた。
遂に二つのクランが衝突する。
「〈ツバメ返し・麓恋〉」
相手のメンバーの中でも速そうな人たち二人に斬りかかった。
強化の入ったツィンの刃は受け止めきれず、二人の体のいたる所に切り傷が刻まれる。
「〈ダークマター〉」
「〈帯電〉」
ユーとラウルも一人ずつ相手を止め、後衛の元には行かせない。
「ここを通りたければ、私たちを倒して行きなさい!」
◇
さて、ツィンの相手は、筋肉が凄い人と、スタイリッシュな眼鏡の人。
Fには先にラウルの相手を倒して人数差を作るように指示しているので、援護は望めない。
幸いリムスの強化はあるので、一本の刀で一人ずつ相手をしていきたいところ。
瞬間、眼鏡の人がかなりのスピードで押し通ろうとしたが、ギリギリ追いついて押しとどめた。
スピード強化系のスキルなのかもしれないが、元々の素早さと強化にユーの引力も相まってギリギリでついていける。
「行かせないよ!」
「ッチ」
眼鏡の人は、カクカクとした動きで筋肉の人に合流した。
無理に攻めはしない。
ラウルとFのコンビならすぐに倒せると思うので、今ツィンに必要なのは、時間稼ぎだ。
「……のんびり行かない?」
「する訳ないだろ。悪いが通させて貰う」
二人とも一気に来た。
スピードの関係で先に眼鏡の人が刀を振りかぶる。
「〈トンボ返し〉」
「〈ツバメ返し〉」
右手の剣で受け止めた。
力が均衡し、ギリギリと音がなる。
そこに、左から筋肉の人!
「〈カブトパワー〉!」
「クッ……ああ!」
凄いパワーの拳を、左手の刀で受け止め……踏ん張り切れず、吹っ飛ばされた。
だが、すぐに体勢を立て直し、後衛の方に行こうとする眼鏡の人を止めた。
「しつこいなぁ!」
「まあね……っていうか、流石に突出し過ぎじゃない?」
「〈フラッシュ〉〈電撃〉」
近くにいたラウルが、自分の相手をフラッシュで目を潰し、飛び道具で援護してくれた。
軽く躱されるが、そこにスキができる。
そこに、ツィンが背後から斬りかかった。
しかし、
キン
背中に回した刀に、受け止められてしまった。
安直な太刀筋になってしまったのはあるが、それでもまるで見えているかの様だ。
「囲まれてる、帰ってこい」
「ああ〈トンボ帰り〉」
相手は味方の方に帰っていく。
ツィンが追おうとしたけど、あっちの方が速い。
「ユー、出力上げて!」
「分かった。〈怪光〉」
一時的にUFOの引力を上げて、減速させる。
ツィンが追いつき、双刀を振りかぶった瞬間。眼鏡の人は横にズレて……奥から謎の粉が飛んできた。
「〈鱗粉〉」
遅れていた人の粉がツィンの目に入り、視界が真っ暗になった。
暗闇で何も見えない。
そして……刀が風を切る音が聞こえてくる。




