女子会
「ダーリン……じゃあ、行ってくるね」
「おう……楽しんで来いよ(泣き)」
「たかが2アワーズ別れるくらいで何をやっているんですか?」
ハッシュの口出しを無視して、ユーとラウルは泣きながら抱擁し合った。
ゲームゆえの過剰表現か、滝の様に涙が流れる。
「ほら、行くよ!」
「ワイらもいくぞー」
「うん……もう一回抱き合ってもいい?」
まだ離れたくなさそうなユーをツィンが、ラウルをFが引っ張って出かけて行った。
今日は女子会と男子会。
分かれて別々のダンジョンに行く。
「どこ行くの?」
「金星」
◇
シロン、ツィン、ハルヒ、ハッシュ、深淵、ユーの6人で、星の中でも一際強く輝く金星へと飛んで行った。
その大気は二酸化炭素だらけで、常時弱体化が掛かる。
金星に降り立ち、限りなく広がるデコボコとした大地から、進むべき道しるべを探す。
月ではそれっぽい線が、火星ではそれっぽい穴があったけど、今回は……
「あの彼方へ続く雲が目印ではないか?」
「確かに」
上空には一筋の暗雲があり、遠くになるほどその色は濃くなっている。
「あれを辿っていけばいいんだね」
「イエス」
空気が薄い金星の上空を、6人が飛んでいった。
砂嵐が起こり、黄茶色の砂嵐が巻き起こる。
「本物の金星もこんな感じなのかなぁ?」
「イエスです。割と自転周期とか大きさとかが地球に似ていて、大気もあるらしいです。ですが、そのほとんどは二酸化炭素で……」
スラスラとハッシュが答えていく。
とにかく、現実と酷似していて、非常に教育にいい素晴らしいゲームだということは分かった。
「……ピヨ(古文の先生だよね?)」
「……本当だったら理科の先生になりたかったんですよ」
ハッシュの目のハイライトは失われ、声は平坦になる。
……みんなで彼女を励ます会が始まった。
「古文ってカッコいいですよね。私、古文が一番得意なんですよ」
「あれ、ツィンは歴史じゃ……」
「黙ってて!」
「ですよね……」
「ほ、ほらモンスターが出てきたぞ」
深淵の袖先にいたのは、黒―赤―黒 に玉が並んだ、二酸化炭素の原子だった。
黒の玉を器用に羽ばたかせている。
「NISAN!」
「〈ゴーストジェット〉〈爆霊破〉」
ジェットで近づき、殴って大ダメージを与えた。
しかし、いつもならフィールドモンスターくらいはワンパンできるのに、二酸化炭素君は生き残っている。
そして、奴は黒い煙を発生させ、毒状態になった。
「やば!」
「下がってポーション飲んどきな〈円盤〉」
ユーの言葉に従ってポーションを飲み、毒を回復させる。
止めも彼女が刺してくれていた。
「なんか硬くなかった?」
「人数補正だよ。ダンジョンに挑む人数が多いと、相手も強くなるっていう訳」
「あと、毒を出すから、遠距離攻撃主体にした方がいいかもね」
「……ってことで、シロンは突撃禁止ね」
「そんなー!」
「〈風独楽〉」
「〈黄金砲〉」
「〈円盤〉」
大量に出てきた二酸化炭素を、遠距離攻撃で撃退していき、近づかれた時は殻盾を持ったシロンが対処した。
それでも、かなりの大群が出て来ているので、無理やりツィンが切り刻むこともあり、ポーションの数はかなり少なくなる。
「ピヨ(ポーション補充をした方がいいかな?)」
「まあノープロブレムでしょ。最悪デスルーラする」
「デスルーラって何?」
「……世代の違いが」
雑談をしつつ、しばらく進んで行くと、いきなり雲が黒より黒い漆黒になった。
おそらくボスがいるのだろう。
「よし、がんばろー!」
「おー!」×6
その漆黒に入ると、中央に砂嵐が巻き起こり……砂が渦を巻く、嵐のモンスターが現れた。
ハッシュによると、金星には非常に強い風がついているため、それがモンスターになったのではないかと。
「SUNA!」
「近接攻撃しにくそうだから、遠距離で行くよ」
「うん。【ヴィゾーヴニル】にしていい?」
「被弾に気を付けなよ」
シロンはスキルを【ヴィゾーヴニル】に変更し、空中に槍を構えた。
ちなみに、その時のステータスは、攻撃特化とスピード特化の平均になる。
特化の半分の火力とスピードになるということだ。
まあ、変更前の数値がバカみたいに高いだけあって、半分になってもそこそこある。
「〈獣槍〉」
「〈宝石槌〉」
シロンの槍と深淵の宝石が砂嵐に刺さった。
良いペースでHPが減っていく。
「……風魔法は効きそうにないですね」
「まあまあ。まだやることはあるって。〈円盤〉」
ユーの円盤も入って、さらに火力が上がった。
物理遠距離3人でガンガンHPを削る。
それに対抗するように、砂嵐も攻撃を始めた、
「SUNA!」
「うわ!」
フィールド全域に風が吹き荒れ、全身に砂が刺さる。
スキルが変わっても耐久は変わらないシロンには言うまでもなくキツイ。
「また天候操作!?」
「ほら、入れ」
火星で雪を避けた時と同じ様に、ハルヒの卵で包み込んだ。
深淵の方も、袖が出る穴だけ開けて卵で包む。
奴の姿は見えなくなったが、
「ピヨ(シロンはもっと左、深淵はそのままでいい)」
「〈獣槍〉これくらい?」
「ピヨ(そうだ)」
耐久型のハルヒが観測して、飛び道具の修正をする。
泥団子みたいな奴が飛ばされたらしいが、ツィンが全て切り刻んでくれたらしい。
軌道に黒が残る二刀流がカッコよかったと。
「ピヨ(あと少しだ)」
「よし!〈獣槍〉」
槍が砂嵐に吸い込まれ、HPを削りきった。
意外と簡単だったなと思っていると……砂嵐が消え去り、そこに不気味な人が現れた。
服は着ておらず、肌は灰色で目は異様に大きい。
その姿はまるで、宇宙人。
「……第二形態ね」
「昔の映画では火星人がメジャーでしたから。今ではいないという説が主流ですけど」
「titanxmasquestion space!」
 




