チュチュVSチュリスター
次の日、ペットとなったチュー子(仮)の名前を、みんなで考えることにした。
チュー子はちゃんと受け入れられ、名前の候補を上げていったのだが……
「どう考えてもチュチュが一番やろ!」
「フッ、貴様こそ何を言っているんだ?こいつの真名は前世からチュリスターに決まっている!」
その他の候補を押しのけて、Fのチュチュと深淵のチュリスターのどちらかになった。
さっきまでは他の人たちも二つの案で割れていたけど、Fと深淵の気迫が激し過ぎて、半ばどうでも良くなってしまったのだ。
「スター要素はどこにあるんや!?」
「星はオレンジに輝いているだろ。チュチュは語呂が悪い!」
「まあまあ、じゃんけんでもしなよ」
「我は袖から手を出せない」
「こいつの名前をそんなんで決めてええんか!?」
どうにも堂々巡りになってしまう。
両方一歩も引かずに、自分の意見を通しに行く。
1時間ほど経ち、ハルヒが昼寝を始めた頃。
「じゃあ、思いの丈で勝負するか」
「どうするんや?」
「なに……思いが強い方が強いに決まっている。決闘で決着だ」
「乗った!」
ようやく方法が決まった。
◇
グル参の決闘場に、Fと深淵が入場した。
他のメンバーは観客席に座り、結果を見届ける。
二人とも紙耐久で真っ当な戦いができないう理由から、リムスが〈守衛防曲〉で両方の耐久を上げる。
「ワイが勝ったらチュチュな」
「我が勝ったらチュリスターだぞ」
「では、スタートします。デュエル開始ィィィ!」
ハッシュが開始宣言をして、決闘が始まった。
二人とも遠距離型なので、離れた状態で戦う。
「〈炎槍〉」
「〈黄金砲〉」
初手からバチバチにFの炎魔法と深淵の黄金が衝突し、互いに打ち消し合う。
たまに被弾することもあるが、大体同じ様に削れていく。
このままなら、MPという枷があるFの方が不利かもしれない。
深淵の黄金にも底があるらしいが、今まで使い切ったことはなく、ほぼ無限と見てもいいだろう。
その状況を打破するため、Fが動き出す。
「〈火の珠ストレート〉!」
一つの火球が、もの凄いスピードで深淵に向かっていく。
彼女は、黄金の一部を防御に回すことで威力を削いだが、それでも服の一部が焼け焦げた。
そして、Fの方に飛んで行った黄金は……彼の炎の左足が伸び、それを全て叩き落とす。
彼の翔具である義足[|炎肢脚[えんしきゃく] フレッグ]の効果で、近接戦闘をある程度どうにかしてくれる。
防御は炎の左足に任せ、炎魔法で攻撃をしようという感じだ。
「どうや?降伏すんなら今のうちやで」
「フッそれはこっちのセリフだ。チェンジ!」
言った瞬間、深淵の服が変化した。
元から大きかった袖がさらに大きくなり、色は真っ黒になる。
彼女の翔具[拡袖淵 モエソデバスター]その効果は……瞬間出力上昇。
「〈大判小判〉」
大きくなった袖から、ジャラジャラと大判と小判が飛び出す。
その量は、さっきまでの2倍。
「うっそやろ!?〈烈脚〉〈火の玉ストレート〉」
Fは出来るだけ左足で叩き落し、反撃の火の玉を飛ばす。
それを深淵は、全て防ぐことは諦め、少しだけ大判小判をまわして威力を減らす。
……多少の防御はあるが、やはりただの殴り合いになった。
段々深淵の方が有利になってきた。
理由は、彼女がスキルの扱いに慣れたからだ。
体積が少なくて炎球を受け止めやすい大判を防御に使い、体積が小さくて炎脚をすり抜けやすい小判を攻撃に使う。
FのHPがあと4割で、深淵のHPはあと5割というところ。
「フッ、どうだ我の黄金は!」
「チッ……賭けに出るしかねえか。〈灰塵〉」
Fが灰を振り撒いた。
ダメージは入らないが、目くらましにはなる。
その時、爆発音がした。
「うおおおおおおおおお!」
灰をを突き抜けて、深淵に接近する。
誰も予想できなかった接近にスキができた。
「〈烈脚〉」
爆炎の左足を振り上げて、直接深淵を蹴るが……想像の半分くらいしかダメージは入らなかった。
そもそもバチバチに近接戦をしようとした翔具でもないのだ。
深淵は炎に包まれつつも袖口を、移動したFの方に向け、再び大判小判をばら撒く。
黄金に圧し潰されそうになるFだったが、再び爆発を発生させ、反動で自分から吹っ飛んだ。
深淵の背後に回り込み、
「〈炎弩〉!」
最大火力で攻撃する。
しかし、深淵ももう一度移動することは読んでいたのか、すぐに袖を向け直し、
「〈宝石槌〉」
超巨大宝石がFの魔法と衝突した。
双方、一歩も引かな拮抗した勝負になったが。
「〈宝石槌〉」
「そんなんアリか!?」
深淵がもう一つ宝石を追加したことで炎は崩壊し、Fを叩き潰した。
黄金の積み重ねと自爆のダメージもあって、耐えられる訳がなく、Fは死んだ。
こうして、チュー子(仮)の名前はチュリスターに決定した。




