……詐欺に気を付けよう!
初期リスと同じ所にスポーンした。
レベル上げもいいけど、先に装備を揃えようと思い、町巡りから始める。
「武器屋ってここかな?」
標識にWEPON SYOPと書かれている店に入店し、多種多様の武器に出迎えられる。
剣、槍、弓などなど色々あるが、
「どれにしよう?」
試しに、一番近くにあった剣を手に取り、ステータスを攻撃特化にして素振りを……
カラン
剣が耐えられずに、半ばで折れてしまった。
「何やってんだ!?」
「すみません!弁償します!」
素直に折ってしまった剣の分の代金を払った。
攻撃特化にも耐えられる、頑丈な武器にしなくてはならない。
それを踏まえて、次に手に取ったのは、巨大なハンマー。
「これなら耐えられるでしょ」
ブンブン振ってみても、折れる様子はない。
「おい、危ないから振り回すな!」
「すみません!これ買い……」
移動するために、素早さ特化に切り替えると……重過ぎて、とてもじゃないが持ち歩けない。
これを持って、今までのスピードを維持することは不可能だ。
つまり、そこらの武器では攻撃特化に耐えられず壊れてしまい、耐えられる武器だとスピード特化で持ち歩けない。
「……どうしよう?」
お金もあんまりないし、しばらくは素手で毒を持ってなさそうな敵と戦うしかない。
諦めてお金稼ぎに行こうとすると、
「そこの嬢ちゃん、ちょっと見てかないかい?」
屋台の様な車を引いた、おばあさんが現れた。
「お嬢さんって……私?」
「そうじゃよ。ちょっと見てかんかね?」
ちなみに、服装はまだ初期装備なので、とてもお嬢さんと呼ばれるような容姿ではない。
ただの客の機嫌を良くする商売方法の一つなのだが、純粋なシロンは引き込まれてしまった。
「えへへ。ここではどんな物を売っているんですか?」
「色々な雑貨じゃよ」
そう言って開かれた屋台には、よくわからないアクセサリーが沢山並んでいる。
「えっと……武器はありますか?」
「それなら、これがお勧めじゃな」
そう言ってお婆さんが手にしたのは……真っ黒でガタガタした表面をしている一対の腕輪だった。
「これは?」
「[エイジリング]じゃ。なんと、霊力が使える」
「れ、霊力!?」
「そうじゃ。身体の奥底からこう、グワーっと力が沸いて来て、どんな敵でもバッタバッタと薙ぎ倒す」
「え、すごい!」
「さらに、ここでしか買えない限定品で、いつもなら10万円のところを……」
「ところを……」
「今ならなんと1万円!90%オフじゃ!」
「買います!」
「毎度ありー」
一万円を渡して[エイジリング]を貰うと、お婆さんと屋台は煙の様に消えてしまった。
実を言うと、あのお婆さんは詐欺師だ。
霊力とか、限定品を強調したり、急な値引きをしたりするのは、詐欺の常套手段である。
さて、普通なら「あ、これUAOであった詐欺だ!」という風に、詐欺への警戒心を高める教育的価値の高いゲームになるのだが、
両腕に[エイジリング]を装備し、さっきと同じ所で、レベル上げ兼消費してしまったお金稼ぎをしてみることにした。
「SYAAA!」
さっきやられてしまったヘビ鳥が出現した。
フォンフォンフォン
シロンの腕回りに蒼いオーラが纏われ、
「とー!」
ヘビ鳥の顎にアッパーが入って、攻撃特化でワンパンし……オーラで殴ったお陰で毒になっていない。
というか、攻撃力も相当上がっている。
「SYU!?」
「待てー!」
逃げ出すヘビ鳥を追いかけて、接近してから攻撃特化に切り替え……少しタイミングが早かったけど、オーラが伸びて殴ってくれた。
ある程度は自由に動かせるらしい。
「すごい!いい買い物しちゃった」
……普通はこうはならない。
ほとんど付ける意味はなく、その辺の空き缶で殴った方がまだ強いくらいの性能になっている。
このガラクタ詐欺装備がこんな馬鹿出力を出せる理由は、隠しステータスにある。
UAOには結構隠しステータスが存在していて、例えばよくロシアに生息している【白鳥】は氷魔法に耐性がある。
そして、シロンの【始祖鳥】には、名前の通り先祖の霊力が詰まっており……そういうことだ。
「SYAAAAA(絶叫)!」
「どーん!」