久しぶりのPvP
シロンは、2枚のカードをシャッフルして、ハルヒの前に差し出した。
出来るだけ表情を変えない様に努力するも、ハルヒにとってはバレバレで、
「ピヨ(こっち)」
「あー!」
しっかりとジョーカーではなくハートのクイーンを取られてしまい、敗北した。
「これで何連続だ?」
「ピヨ(10だ)」
「ヒロとハルヒが強いんだよー」
「シロンが弱いんだよ……」
イベントが終わって、やることも無くなったシロン達は、拠点で遊んでいた。
ほとんど全ての感情が表情に出るシロンが、面白いくらいの連敗を記録している。
そんな時、
「おい相棒、ダンジョン行くぞ」
「わー、いきなりだね」
ログイン……いや、リスポーンした深淵が、シロンを強引にダンジョンに誘う。
どうやら無謀にも1人でダンジョンに挑み、死んで来たらしい。
「待って、あと一回!私が勝手から!」
「それだと一生行けないだろ。……我はまだ翔具を持ってないのだ」
「ピヨ(まあ、行くか)」
「まあ行くか」
と、いうことで、シロン、ヒロ、ハルヒ、深淵の四人で火星のダンジョンに挑むことになった。
◇
「わー、ここが火星か」
「こっちだ」
深淵に従って、火星を横断する。
数分飛んでいると、ぽっかりと穴が空いていた部分があった。
「ここから深淵に潜るぞ」
「ピヨ(言うほどこ暗くないぞ)」
「言いたかっただけだろうな」
さすがの厨二でも少し恥ずかしそうにしながら、深淵(笑)に入っていく。
少し進むと……そこには一面の氷があった。
「なにこの氷?」
「火星の地下にある永久凍土だな。現実にもあるらしいぞ」
「へー」
見ているだけで寒そうな永久凍土を鑑賞しながら、ゆっくりと進んで行く。
もう少し進むと……先行するプレイヤーがいた。
「こんにちはー」
「ッツ、前に出ろカモメ」
4人組のそのプレイヤー達は、シロンが挨拶した瞬間、振り返って隊列を組んだ。
ほんわかとしたUAOでも、町中以外ではプレイヤーにダメージを与えられる。
勿論、プレイヤーのキルを目論むPKも存在する。
前にいる人たちは、どちらかというとPKに怯えている感じだが。
「私たちはPKじゃありませんよ」
「嘘つけ!〈高濃度塩酸〉」
「ピヨ!(シロン下がって、〈殻盾〉)」
相手の……髪がない人が飛ばした黄色い液体を、ハルヒの殻が防いだ。
その液体は強い酸のようで、殻が溶ける。
人に当たったら危なかった……シロンなら即死だっただろう。
「……戦わなきゃいけないの?」
「諦めろ相棒。そういうゲームなんだ〈宝石槌〉」
「〈水壁〉」
深淵が宝石の柱を飛ばし、相手の前衛らしき人が作った水の壁を押しのけて、その人にダメージを与えた。
しかし、それは相手の回復役っぽい人にすぐに補填されてしまう。
「よし……じゃあ、突っ込んでくる!〈ゴーストジェット〉」
「おい待て!」
吹っ切れたシロンも攻撃に加わり、そこそこ距離がある相手まで突っ込む。
同じタイミングで相手の身軽な人も……翼があるのにも関わらず、凍土に地に足を着け、走って突っ込んで来た。
「ッ!〈爆霊破〉」
慌てて攻撃するが、〈ゴーストジェット〉には「曲がれないという」大きな弱点がある。
走る人も中々の速さがあるので、ギリギリで横に避られ、
「〈飛び蹴り〉」
「変身〈踵落とし〉」
蹴りを食らいそうになったが、急いで駆けつけたヒロがそれを叩き落した。
だが、ハゲの人からの援護が飛んで来て……ヒロの左腕が半分くらい溶けてしまう。
「ごめん」
「腕だけならどうにかなる。とりえずハルヒのラインまで戻るぞ」
深淵の援護もあって、ハルヒのいる地点まで戻る。
相手の構成は、酸魔法のアタッカー、壁役、回復役、スピードアタッカーのバランスが良いものらしい。
「今度こそ突撃してきてくる!」
「待て、よく見ろ!」
ヒロに言われて、相手の方を見てみると……謎の霧が広がっていた。
落ちていたハルヒの殻盾の破片を投げ込んでみると……溶けた。
「酸性の霧だ。無策で突っ込むと死ぬぞ」
「うー」
「フッ、攻撃は我に任せておけ。他の者は防御に専念しろ〈黄金砲〉」
相手の前衛が深淵の黄金を受け止め、ハルヒが酸液を卵の殻で止める、
しかし、相手には回復役がいるけど、こっちにはいない。
ハルヒには[補骨給 サプライCa]という翔具があり、その効果でカルシウムを常時補給しているるが、
「ピヨ(消費の方が多い)」
「……ジリ貧だな」
このままだとハルヒの殻が無くなり、全て酸で溶かされて死ぬ。
何か打開策が必要だ。
「ピヨ(アニキ、前衛は任せた)」
「……おう」
「ピヨ(シロンは付いて来い)」
「分かった!」
氷の影に隠れて、ハルヒとシロンは何か作業をし始めた。
その間、深淵を守るのはヒロしかいない。
「〈高濃度塩酸〉」
「うわ!」
せっかく変身して出来た装甲が、ドンドン溶かされていく。
そこそこ耐久があるヒロでも、長くは持たない。
「なんか酸を防げる物ないか?」
「小判ならやるぞ」
「……流石に防ぎきれねえよ」
「〈Ph1〉」
「グガァ!」
数分間、ずっとヒロは耐えた。
装甲は全て無くなり、肌は爛れ、片目は潰れているが、深淵には一滴も当たっていない。
「まだかハルヒ!?」
「ピヨ(ちょうど今完成した)」
氷の陰から出てきたハルヒは、彼女の身長の1.5倍はある、大きな卵を転がしていた。
「ピヨ(これを蹴れ)」
「分かった」
最後の力をふり絞って、ヒロはその巨大卵を蹴っ飛ばした。
しかし、その図体からか大したスピードは出ず、相手には当たらない。
「やけくそか?」
「違うよ、作戦だよ」
「ッツ!?」
背後から声がして、振り返ると……シロンがいた。
例の巨大卵から生まれてきたのだ。
耐久が低いシロンを、無事に相手の元に送り込む為に、ハルヒが考えた戦術である。
「〈ゴーストジェット〉〈爆霊覇〉」
「ッグ!」
まずは一番速い、走る人を倒す。
壁役の人が、酸の人を守る様に回り込んだが、
「〈宝石槌〉」
フリーになった深淵が宝石を食らわせ、倒した。
あとは壁役と回復役しかいないので、逃がしてあげた。
「ピヨ(いいのか?)」
「命はできるだけ大切にしたいから」
【ハゲタカ】
酸魔法
腐った物を食べても大丈夫な、強靭な胃が元。
【かもめ】
HP継続回復
渡り鳥で、飛びながら寝る。
【アカカザリフウチョウ】
回復魔法
今回のマイナー枠
和名は「赤飾風鳥」で、「極楽鳥」という別名もあるから。
パプアニューギニアの熱帯雨林に住んでいる
【ダチョウ】
走る
時速60Kmで走る、世界最速の鳥。




