愛は人を動かす
イベント二日目。
店であるサッカー大会は昨日の内に終了しているので、今日は自由行動になっている。
まず最初に、イチャイチャしながらユーとラウルのカップルが出ていき。
次に、文句を言いながらもヒロに付いていくハルヒ。
あと、ハッシュと深淵もどこかに行った。
「シロン、一緒に回る?」
「えっと……ごめん、先約があって」
「へー、誰と?」
ツィンに誘われたが、とある計画のために断った。
しかし、嘘が下手なシロンに何かを察したのか、ツィンが詰めるよる。
「ワイと回るんや、な!」
「そうそう!」
そこに、Fがヘルプを出した。
彼が計画の首謀者なので、当然ともいえる。
「……じゃあ、3人にする?」
「あー、ごめんなツィン」
Fがシロンの肩を抱き寄せ……シロンが恥ずかしそうな顔をした。
まるで付き合っているかの様に。
「こういうことやねん」
「……(顔真っ赤)」
「……そっか。なら1人かな?」
「じゃ、じゃあ!」
今まで空気だったリムスが、いきなり音程を外して大声を出した。
3人の注目を浴び、さらに緊張した彼だったが、ツィンの背後からニカっとしたFに気付いて、一旦深呼吸し、
「僕と……回りませんか?」
「んー、まあいいかもね」
ツィンを誘うことに成功した。
◇
前方を並歩するツィンとリムスを、背後からシロンとFが尾行する。
計画とは、「ツィンとリムスをくっ付けてしまおう」というもの。
どうしても奥手になってしまうリムスを、Fが後押しするために計画し、自分の恋愛事情を知られたシロンが便乗したという感じだ。
「……ねえ、どうやって手助けしたらいいのかな?」
「さあ?なんかあったらでええやろ。どうせリムスはなんかやらかすわ」
そんな会話をしていると……りんご飴を買っている間に、何かアクシデントがあったのか、リムスが挙動不審になった。
しきりにメニューを開いたり、ポケットを漁ったりしている。
「ん!なにかあったみたい!」
「やっぱな!」
「……でも、何があったんだろう?」
「……りんご飴に塗るハチミツが無かったに違いない!」
Fは、ごく自然にハチミツを取り出し、
「リムス、受け取れ(小声)」
耳が良いリムスに一声かけて、ハチミツを投げた。
彼はそれを受け取り、店の人に渡したが……笑って返されてしまった。
代わりにツィンが、少し溜息をつきつつお金を渡す。
「あー、金がなかったんか」
「ちょっと待って、ハチミツ持ち歩いてるの?」
「当然や。一個いるか?」
ハチミツを食べながら、尾行を継続する。
次に彼らが訪れた店は……ペットショップ。
「UFOで動物でも飼うんか?」
「……私も買いに行っていい?」
「後にせい。まずはツィンの好きな動物を教えるんや」
「そうだねツィンの好きな動物といえば……」
「ハムスターだね」
「兎やな」
シロンとFに意見の相違が生じた。
「え、そうなの?」
「一昨年くらいの年賀状に書いとった気がする」
「……それって干支の動物だからじゃない?」
「あ、そっか。ほんならハムスターやな」
急いでリムスにメッセージを送り、ツィンがハムスターが好きなことを伝えたが、
「あ、返信来た!」
「なんや?」
「……店にハムスターがいないらしい」
「はぁ!?」
「……鳥しかいないって」
「もうそんなん焼鳥屋に改名しろよ」
「なんで焼くことになってるの?」
あんまり良いペットが居なかったらしく、何も買わずに出ていった。
後からシロンも入店してみたが、変な改造手術でも受けたのか、ゴツゴツしたデカい鳥しかいなかった。
売ってる人の趣味が分かる店だった。
店に入らず、一途に尾行を続けていたFと合流し、リムスの手助け(?)を継続する。
次に行ったのは……タコ焼き屋。
「出番だよ、関西人!」
「任せい、タコ焼き屋歴10年の極秘ソースを授けたる」
茶色いソースを取り出して……今度はなんの声かけもせず投げつけ、
「うわ!?」
「え……大丈夫?」
リムスの頭に当てた。
急いでFの腕を引っ張って物陰に隠す。
「何やってんの!?」
「いや……タコ焼きと聞いた瞬間に血が湧き上がっちまった」
謎の関西人プライドを発揮させただけだった。
バレていないかと、そーっと物陰から覗いてみるが……どうやらギリギリセーフみたいだ。
2箱づつタコ焼きを持って、店回りを継続する。
「良かった、バレてないみたい」
「ああ……追うぞ」
彼らは、しばらく何かを話しながらタコ焼きを食べ……急に走り出した。
シロン達も走って追い、狭い路地を曲がった所で……腕を組んでこっちを向いたツィンがいた。
その背後で、リムスが手を合わせて、謝罪を表現していた。
「……奇遇やな、ツィン」
「それで誤魔化せると思う?」
「……すみませんでしたー」×2
シロンとFは、一斉に頭を下げた。
頭上から溜息が聞こえてくる。
「ちなみに、いつから気付いてた?」
「ハチミツ出した時」
「一瞬やん……」
Fは、ガックリと膝から崩れ落ちた。
「で、どうしてこんなことしたの?」
「……ストーカーをやってみたかったんや」
「はぁ、まあいいや。タコ焼きいる?」
「いるー」
結局4人で祭りを楽しみました。




