爆霊蒼 エイジリングΩ
「やっほーツィン」
「シロン!大丈夫!?」
あれから、シロンは3日もUAOにログインせず、学校でもどこか上の空だった。
普段、能天気な彼女からは考えられないことである。
「うん、もう大丈夫。ごめんね、心配かけちゃって」
「気負わないでよ。親友でしょ」
「ありがとう。……ねえ、やっぱりアレって、そういうことだよね」
シロンが回復できた要因として、ツィンがあるジャンルの漫画を差し入れしたことにある。
「……まあね。応援してるよ」
「ッツー」
シロンは顔を真っ赤にして、ポカポカとツィンを軽く叩いた。
町中にあるUFOの中にログインしたのでダメージは入らない。
「ふう。さーて、何しようかなー」
「アレじゃない?翔具」
「そう、それ!」
[特能ツバサ]を手に入れて、自分に合った特殊能力を持つ、翔具を作り出す所だった。
「まずは、どの武器に[特能ツバサ]を使うか選ぶの」
「……どうしよ」
候補は、シロンが霊力を使える要因である腕輪[エイジリング]か、霊力を感じられるようになる天冠[霊魂冠]の二つだ。
適当に決めても良いのだが、彼女は優柔不断でもある。
「……私の翔具を見せてあげようか?」
「え、持ってるの?」
「うん」
[特能ツバサ]は、グル参のダンジョンをクリアすることで得られる。
シロンが休んでいる間に、ツィンもまだ挑んでいなかった人たちと共に、月のダンジョンに挑んだらしい。
「Fが思いっ切りモチを爆発させて、一回やられちゃったけどね」
「ハハハ……」
ともかく、ツィンの翔具を参考にするために、野生のモンスターがいる宇宙空間へと向かった。
空気がないはずの宇宙空間を、翼を広げて飛んでいく。
この辺は運営の都合を感じる。
数分進むと、宇宙空間に浮かんでいる人工衛星のモンスターがいた。
太陽光パネルを翼の様に羽ばたかせて、アンテナの先っぽには目がついている。
「ESEI」
「……鳴き声『エイセイ』は無理があるんじゃないかな」
「余計なこと言わないの!」
「ESEI!」
話が聞こえていたのか、激昂して突っ込んできた。
ラウルの【宇宙ステーション】と同じように、電気を纏っていて、当たったら痛そうだ。
「丁度いいや。見てなよ。[双透刀 シンテゑ]」
今気付いたが、いつの間にかツィンの刀は二本になっていた。
彼女はその両方を抜刀し、両手に持つ。
そして、迫ってくる人工衛星に向かって、
「〈ツバメ返し・麓恋〉」
一気に六連にまでなったツバメ返しを繰り出し、モンスターをバラバラにした。
彼女は、少し自慢気に振り返り、
「これが私の翔具だよ」
「……ツバメ返しの量が増える能力?」
「違うよ!見て!」
彼女は、二本の刃を重ねようとしたが……通り抜けた。
「ほらほら」
次々に自分の体に刃を通すが、ダメージは入らず、衣服を切り刻むこともなく、透過した。
さっきは人工衛星を切ったのに、自分の体や刀は切らない。
「これが私の翔具、[双透刀 シンテゑ]だよ」
彼女は、【ツバメ】の能力を活かすために、手数を増やしたいと考えた。
それで、普通の双刀を使ってみたが、両手の刃がぶつかり合って使い辛く、なんなら伸ばした左手を、右手の刀で切ってしまった。
意外と両手で刀を使うのは、難しいのだ。
この問題点を解消するため、ツィンは自分の体を通り抜ける翔具を作り、自由に両手の刃が使えるようになったと。
「どうよ?」
「凄い!」
シロンも、ツィンに習った方法で考えていく。
まず、もう防御を上げるのは諦めて、攻撃特化にしたい。
そのために……ジェットエンジンとドカーンと……もうなんか凄いのが欲しい!
「お姉さんから貰った天冠を変えるのも悪いし、エイジリングの方でいっか」
呟いた瞬間、両腕のエイジリングが光り出した。
光が収まった後、腕に嵌っていたのは[爆霊蒼 エイジリングΩ]となっていた。
「……なんか凄そうだね」
「でしょ!」
試しに、近くにいた人工衛星に飛び掛か
ダッ!
翼辺りから、ジェット機の様に霊力が吹き出し、凄いスピードで進んで行ってしまった。
行き過ぎたということで、方向を調整し、今度こそ人工衛星に肉薄する。
そして、新しいサブスキルを使用した。
「〈爆霊覇〉」
ドカーン!
人工衛星君が、流し込まれた大量の霊力に耐えられなくなり、爆散した。
「……どういう能力よ」
「えっと、霊力を操りやすくなる?」
……忘れがちだが、あくまでエイジリングはゴミみたいなスペックで、その強さは、シロンの有り余る霊力によって成り立っていた。
しかし、今回翔具となったことで、霊力が使いこなせるようになった。
言ってみれば、これまでのエイジリングは豆電球で、[爆霊蒼 エイジリングΩ]は最新型LEDという感じだ。
ドカーン
「凄い凄い」
「……うん、すごい」
一回長い棒を持って、二刀流ってやってみてくれ。
意外とムズイから。




