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Universal Sky and Sea Online 空中のVRMMO  作者: カレーアイス
第三章 クランのわちゃわちゃ
31/76

そのモチ、爆発するよ?

「〈霊破〉」

「RABI!」


 風を切る(きね)を避けて、横っ腹に〈霊破〉を入れた。

 背後から、もう一匹の兎が、これまた体の倍はある杵を振り上げていたが、


「〈大気の奔流〉」


 ハッシュが吹っ飛ばして、新たに小さなクレーターを作り出した。

 ユーとラウルも、連携して兎を狩っている。



「ふー、終わった」


 そう言いつつ、シロンは月の地面を掘り返していた。


「何やってるんですか?」

「ウサちゃん達のお墓を作ってる」

「自分でノックアウトしたのに……」

「えっと、これがジョンので、これがニコので、これがラビリアンので、これがリグのだよ」

「……なんか一匹、ヤバいネームの奴がいるんですけど」

「ほら、スコップあげるよ」


 ユーが即席で作ったスコップを受け取り、倒した6匹分の墓を作った。

 手を合わせてから、墓を後にする。


 もう少し進んでいくと、一際大きなクレーターがあった。

 わざとらしく影で暗くなっていて、ここからではボスの姿を見ることが出来ない。


「よーし皆、準備いいか?」

「うん、頑張ろう」


 低い重力の中、真っ暗闇のクレーターへと飛び込んでいった。





 クレーターの底に降り立ち、壁役のラウルとユーが一歩前に出た所で、


ズシャ


 巨大な木製の臼がクレーターの中央に落ちてきて……その中から、白い毛が這い出してきた。


「RABIII!」


 もう言うまでもないが、ビッグ兎である。

 隠すこともなく杵を手に持ち、這い出してきた臼は、背中に背負っている。


「キュートだから攻撃できないとか、甘いこと言わないで下さいね」

「分かってるよ。じゃ、行ってくる」


 スピード特化で駆け出し、振るわれる杵を躱して、横腹に霊破を叩き込んだ。

 しっかりと一撃離脱しようと、離れた瞬間


バン!

「うわあ!」


 蚊を叩き潰す様に、凄い速さで腹を叩いた。

 空気が薄いというのに衝撃で風が吹き起り、若干体勢を崩し……そこに杵の影が重なる


「〈ダークマター〉」


 ユーの暗黒物質が時間を稼ぎ、その間にシロンは逃げられた。

 

「ユー、ありがとう」

「気にしないで。結構攻撃が苛烈なタイプっぽいし」


 確かに、幾ら攻撃特化のシロンの一撃といえど、1発で4分の1くらい削れてる。

 攻撃と素早さが高いボスらしい。


「……あと3回突撃しよっか?」

「今回も結構ギリギリだったでしょ。スキができるまで掻き乱しに集中して!」

「はーい」


 もう一度出発し、今度は無理に攻撃せず、杵を避けるのに重点を置く。


「〈ウィンドライン〉」

「〈電針〉」


 シロンが稼いだ時間を使って、ハッシュの糸みたいな風と、ラウルの電気針がビッグ兎を刺した。

 そして、兎のターゲットがラウルの方に移り、強靭な足で蹴ろうとしが、


「〈反万有引力〉〈ダークマター〉」


 不思議な波動が腕の勢いを弱め、それを暗黒物質で受け止た。


「〈帯電〉」


 さらに、ラウルが電気を帯びさせて、痺れさせ、


「〈霊破〉」


 後頭部に霊破を打ち込んだ。

 耐久が低い分、HPは3割まで減る。


「RABII!」


 HPが減って行動パターンが増えたのか、ビッグ兎が声を張り上げ、臼から白い何かが飛び出し、雨の様に降り注いだ。

 ハッシュは風で吹き飛ばし、ユーとラウルは暗黒物質で防いだが、広範囲攻撃に弱いシロンは、避けきれずに当たってしまった。

 

 

「うわぁ!」


 腕に当たったそれは、モチ。

 ベタベタしていて、ずっしりとした重量感があり、シロンは落ちてしまった。


「あー、アーユーOK?」

「ノー。モチが床に引っ付いちゃって、動けない!」


 当たった時にはほっこりとした熱が伝わったのだが、この数秒の間に冷めてしまい、超強力ボンドでくっ付けられた感じだ。


「……3人で頑張って」

「ああ、任せとけ」

「ちょっとビークワイエット。何か音が聞こえます」


 ハッシュが口元に人差し指を立て、会話が止まると……


カチカチ


 石がぶつかり合う音がして、火花が見えた。

 ラウルが、無言でモチを一つまみし、電気でバチバチっとすると……爆発した。


「こいつ、爆発するぞ」

「キャー!」


 今は火を着けるのに手間取っているが、このままだとこのクレーターに撒かれたモチ全てが爆発することになる。


「早く倒して!」

「落ち着いて、時間を稼ぎます。〈烈風〉」

「〈円盤〉」


 ハッシュが風で火花を消し、ユーの円盤が刺さったが、流石に削りきれない。

 ちなみに、ラウルの電気は爆発の可能性があるので、応援だけしている。

 このままなら、ユーの物理遠距離攻撃で削りきれるのだが、ビッグ兎は体で風を防ぐ様な体勢になってしまった。


「オーマイガー!これだと火花が消せません!」

「頑張れー」

「じゃあもう攻撃!〈円盤〉」

「〈ウィンドライン〉」

「頑張れー」


「……」


 みんなが頑張っている中、シロンは自分にできることを探していた。

 左腕は動くので、投げ物を投げればダメージになるけど、月の地は砂ばかりで、近くに投げれる物はない。

 だが、無ければ作ればいい。


「【ヴィゾーヴニル】」


 スキルを【ヴィゾーヴニル】に変更し、その能力を行使する。


「〈槍成〉」


 左手を天に向かって上げ、槍を二本作り出した。


「いけー!」


 手を振り降ろして、二本の槍を飛ばし……ビッグ兎の両手にある火打石を弾き飛ばした。

 すぐにそれを拾おうとしたが、追い打ちの様に石に槍を当て、手が届かない所まで動かす。


「よくやったシロン!」

「ラスト〈円盤〉!」

「〈風纏い(ウィンド・ポーター)〉」


 ハッシュの風属性付与で、回転数を増した円盤がビッグ兎を貫き、討伐に成功した。


【ヴィゾーヴニル】


・武器生成


 北欧神話に登場する雄鶏(鳥だとおもえばいける)。

 ……なんかFFのイメージが強かったから灰色にしちゃったけど、よくよく調べてみたら金色だったわ。

 めちゃくちゃ強い上、唯一こいつを倒せる神槍レーヴァテインを作るには、素材としてヴィゾーヴニルの羽がいるという、ある種の矛盾が起こる。

 もう素材になるだけで能力が決まった系ですね。


 兎が火を使う下りは、昔話「カチカチ山」のやつです。

 ……知ってるよね?

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