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Universal Sky and Sea Online 空中のVRMMO  作者: カレーアイス
第三章 クランのわちゃわちゃ
30/76

バカップルになる方法

 これをクリスマスに書く悲しさ。

 メリークリスマス!

「あーズルい、その技禁止」

「ノーセンキュー。食らえ上B連打!」


 さっそくゲットした拠点にゲーム機を持ち込み、学校の先生と格ゲーをするという、地味に珍しい体験をしていた。


「スマーッシュ!」

「そんな見え見えなのには引っ掛かりませんよってキャー!」


 シロンが繰り出した、威力は高いけど隙が大きい系の技を、ハッシュが回避しようとしたのだが……逆方向に撃ったせいで、背後に回り込んだハッシュは食らってしまった。


「……どうだー、私の天才的読みは(棒読み)」

「嘘ですライです!絶対アクシデントでしょ!ワンモアです!」


 これで10勝1敗だ。ハッシュにとって。

 つまり、シロンにとってはボロ負けである。


「なんかハッシュ上手くない?」

「そりゃあ、教師なんて格ゲー上手くないと務まりませんよ」

「あんたはプロゲーマーの講師かよ……」


 その声に振り向くと、ラウルがいた。

 もちろん、ユーさんも付いて来てる。


「良い所に!何故かハッシュが強いんです」

「よーし、俺に任せろ」


 と言いながら、ゲームのコントローラーを握り……ついでに3P設定に変えて、ユーもコントローラーを握った。

 さも当然かの様に、2対1でやろうとしてる。


「ちょちょ、何でそうなるの!?」

「だって、私とダーリンは2人で1人みたいなもんだし」

「大丈夫、俺弱いから」


ドリャア!

グア

フッ!


GAME SET チーン


「え、本当に弱いんですけど」

「だから言っただろ、弱いって」

「どうして少し自慢気なんだ……」


 彼らのコントローラー捌きはたどたどしく、慣れていない感じがする。

 指が20本に見えるハッシュに勝てる訳がない。


「あーもうヤダ。ダンジョン行こうダーリン」

「え、見つかったの?」

「だから応援を呼びに来たんだよ」

「じゃあ、行こう!」


 と言うことで、今いるメンバー、シロン、ハッシュ、ユーラウルの4人で、月のダンジョンへと行くことになった。





「おー、ここが月か」

「ムーンですねー」


 十数分後、シロン達は薄く光り輝く月に舞い降りた。

 広大な大地が広がり、ポツポツと点在しているクレーターが、月であることを強調する。

 その中に、一本の線があり、この線に沿っていけばボスの元に行けるということらしい。


「月でもいつも通り動けます?」

「うーん、ちょっといつもより動きにくいかな?でも、相手の動きも遅くなってると思うし、大丈夫だよ。ハッシュの方は?」

「……いつもより魔法が出しにくいですね」

「私たちはいつもより調子いいよ」

「宇宙だからな」


 【UFO】と【宇宙ステーション】は、グル参に来てから調子がいいらしい。

 ……動きやすい分、ベタベタ具合も上がった気がする。


「……シロンもラブストーリーの一つくらいないんですか?」

「えー、ないよ。ハッシュは?」

「わ、私もありませんけど、まだ20代前半ですから。新任ピチピチ公務員の優良物件ですから!」

「……一人称が、ミーから私になってるよ」


 ハッシュさんの焦り具合が分かる。

 もしかしたら、20代後半なのかもしれない。


「そういえば、ユーとラウルはどうやって……そう、なったの?」

「イエス。テルミープリーズ、参考にさせて!」

「「やだよ恥ずかしい」」

「そこをなんとか!」


 ……ハッシュが、土下座でもしそうな勢いで必死に頼み込む。

 「自分も将来こんな風になっちゃうのかなぁ」と、若干達観したような気持ちになってきた頃、


「あなた達のラヴの、愛のストーリーを教えて下さい」


 この殺し文句で、二人の話を聞き出した。


「まあ、簡単にいうと、駆け落ちだな」


 二人は田舎の生まれで、その中でもユーは結構良い家の生まれらしい。

 この2050年に珍しい政略結婚までする家系で、彼女は高校を卒業したら、40歳のおじさんと結婚させられるところだった。

 そこから救い出す為に、小学生以前からの幼馴染だったラウルが、高校卒業と同時に、二人で知らない電車に乗り、知らない駅まで行ったのだと。


「今考えれば無計画も良い所だけど、運が良かったんだ」


 もちろん金も働き口も住居もなく、二人揃ってホームレスになりかけた時、優しい老夫婦に拾われた。

 事情を話すと、温かいご飯とスープをくれ、働き口まで用意してくれた。


「まあ、そこまで高給って訳でもないけど、最近は2人でゲームできるくらいになったし、」

「何より隣にはダーリンがいる」

「ハニー……」

「ダーリン……」


 二人は頬を赤らめて目を見つめ合い……シロンとハッシュは、目を閉じた。


「……参考にはならなそうですね」

「だよね」

「RABI」

「ッツ〈エアカッター〉」


 スパッ


「あ……」


 ハッシュが空気の刃で斬りつけたのは、兎だった。

 今回は翼がなく、普通の兎らしい。


「ウサちゃーん!」


 HPが減った兎をシロンが介抱し始めるが、肩から脇腹にかけて付けられた傷は深く、光のポリゴンとなって消えた。

 涙を流しながら、血走った目でハッシュを睨みつけ、


「何すんの!?」

「……いやー、イッツアモンスターですよ」

「そんなんだから結婚できないんだよ!」

「グハ!」

「やめとけ、ハッシュのライフはもうゼロだ」


 涙を流しながら、ウサちゃんの墓を作っていると、ユーが肩口から顔を出し、


「ちょっと見せて」

「……(?)どうぞ」


 ユーは、機械のアームハンドを伸ばして兎を解剖し始めた。

 難しそうな機械から表示される難しそうな数値を読み取って……爪を一つ切り取った。

 そして、ハンマーでそれを叩くと……木でできた(きね)(うすとセットでモチを作るやつ)がでてきた。


「なにそれ?」

「多分、隠し武器みたいな奴だね。可愛い見た目に騙された奴を、ドカンっと」


 恐らく、耐久紙のシロンだったら即死だっただろう。

 それを聞いたハッシュは自慢気に、


「これがティーチャーの授業中にスマホを発見するテクニックです」

「え、あれバレてたの!?」


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