お待ちかねの特攻構成
視界が真っ白になって……次に目を開けた時には、始まりの町、壱ミルに着いていた。
雲の上に様々な建物が建っていて、ラ〇ュタみたいな感じ。
そして、町行く人たちには、一対の翼が付いていた。
頑張って首を曲げて、振り返ってみると……シロンにも翼が生えている。
「おー」
試しに肩甲骨を動かすようなイメージで、翼を動かすと、飛ぶことが出来た。
さらに、旋回、一回転など、アクロバットな動きもできる。
「そーらーを自由に、とーびたーいなー♪」
「あのー」
十数分ほど飛び回ってから、女の人に話しかけられた。
「あ、はい、なんでしょう?」
「ここは飛び回る所じゃないから、町の外れでやってくれますか?」
確かに、他に飛び回って人はいなかった。
「す、すみません」
「よくあることですから。行くところがないなら、あっちに初心者用狩場があるから、行ってみるいいですよ」
「ありがとうございます」
ちょっと恥ずかしくて顔を赤くしながら、女の人が教えてくれた方に逃げるように飛んで行った。
◇
「えっと、これが弱いモンスターが出てくる所?」
何人かの人が、飛びながらモンスター……猫に羽を付けられた猫鳥というモンスターと戦っていた。
しかし、
「うー、可愛くて戦う気になれない」
普通の猫に翼がついただけなので、むしろ天使のようで、攻撃できない。
「NYAA!」
「か、可愛い」
猫鳥の中の一匹が襲い掛かって来たけど、やっぱり可愛くて攻撃できず、避けることしかできない。
しかし、このまま連続で避けていると、
「SYAAA!」
いきなり猫鳥の毛が逆立ち、目は黄色く光出して、野良猫のような風貌になっていく。
運営もシロンのような人がいることを見越して、段々醜くなるようにしていたのだ。
「ヒッ!」
無意識のうちに殴ってしまって……殴られた猫鳥は倒れてしまった。
「猫さーん!」
もう猫は倒したくないと思い、場所を変えることにした。
町の反対方向に飛んでいくと、鋭い牙を持った血まみれのハイエナ鳥がいて……
「GAOOO」
「キャー!」
こっちの方が強いけど、倒しやすい。
「ふう」
周囲のハイエナを倒して、一息つくために一旦町に戻る。
メニューを開いてみると、レベルは7まで上がっていて、ステータスは全体的に上昇していた。
【始祖鳥】の効果で、二つ目のステータスも表示されたが、そっちも同じようにバランスよく上がっている。
「うーん、バランスよく上げるのもいいんだけど、せっかく二つステータスもあるんだし、尖らせた方がいいと思うんだよね」
普通ならペンギンから言われたように、HPと防御を高くした耐久ステータスと、攻撃と素早さを高くした攻撃ステータスにするところだけど、
「これって一瞬で切り替えれるんだよね……」
試してみると、ステータスの変化はないが、切り替わってる感覚はする。
何回でも一瞬で切り替えられる仕様だ。
そして、
「……素早さ特化と攻撃特化にして、攻撃する瞬間に切り替えたら強いんじゃない?」
悪魔的な発想に辿りついた。
◇
「GUOOO!」
新しく出てきた、凶暴なシカ鳥の突進を回り込むように躱して、横から拳を突き出し、
「とー!」
素早さ特化のステータスから攻撃特化のステータスに切り替え、横腹に拳がヒットし……シカ鳥は、すごいスピードで吹っ飛んでいった。
真白は中学時代にテニスをやっていたので、攻撃するタイミングで切り替えるのはそこまで難しくない。
ちなみに、平和的な性格が災いして、大会ではあまりいい成績は残せなかった。
さて次に出てきたモンスターは……ヘビ鳥だった。
「SYAA!」
「へへ、掛かってきな!」
調子に乗って挑発し始めたシロンに向かって、ヘビ鳥が喰いかかり、さっきと同じように素早さ特化で近づいて、攻撃特化で殴り飛ばしたけど、
「え、HPが減っていく!」
調べてみると、どうやら毒を持ったモンスターだったらしい。
「あー!HPが低いせいで、すぐに毒が進む!」
ステータスを切り替えても、両方HPは低いので……ポーションの延命も虚しく、死んでしまった。
「あー、油断しちゃったー」
現実に戻って来た真白は、もう一度ログインしようとしてみたけど、死んだら一時間はログイン仕直せないらしい。
まあ、一時間ならネットサーフィンしてたらすぐ終わる。
スマホを開いてみると……芽衣からラインがあった。
『楽しんでる?』
「うん、楽しいよ(^O^)」
『よかった。スキル何になった?」
「【始祖鳥】だよ」
『え、あの?(゜Д゜ノ)ノ』
「知ってるの(´・ω・`)??」
『……よく受験受かったね(つд`;)」
この後も他愛のない会話をしていると、いつの間にか1時間経っていた。
「そろそろ再ログインできるからいくね」
『了、毒に気を付けて、武器の一つでも持っときなよ』
「(*≧∇≦)ノ ハーイ♪」
『私も明日になったらプレイできるから、よろしくね』
「(≧ω≦)b OK!!」
よし、一時間経ったし、再ログインしよう。