拠点コンペ
「ハーイ、シロン」
「こっちだ相棒」
「いたいた。ハッシュ、深淵!」
ようやく到着したグル参で、先に現地入りしていたハッシュ達と合流した。
しっかりヒロ兄妹と、ユーカップルもいる。
「いやー、いきなり一週間もブッチしたから、リアルデッドしたのかと思いましたよ」
「ちゃんと連絡したじゃん……ってか、テスト期間は先生も忙しいって聞いたんですけど?」
「ヘッ……某大流行ウイルスのせいにすればノープロブレムです」
「普通にダメでしょ」
「そんなどうでもいい事はどっかに投げとけ」
「不登校が言えることじゃないよ」
「そんなことより!」
深淵が声を張り上げ、学校の話題を打ち切った。
さすが自称シロンの相棒。
「ほら、シロンが来たら真っ先にやってもらう事があっただろ」
「イエスイエス」
クラン拠点の登録。
今回のアップデートで、クランシステムが一般普及し、それにともなって拠点が使える様になった。
拠点にできる建造物、洞窟、その他諸々を一つ選んで、所有物化できるのだ。
「必要なアイテムはもう回収してある」
ヒロの手に握られている旗は[クラン拠点旗]といい、これを突き立てた物件が拠点となる。
「ピヨ(あと、幾つか良さげなのを見繕っておいた)」
「至れり尽くせりじゃん。ありがと」
先発隊に誘導され、良さげな物件とやらを見に行く。
一番最初のは……卵。
美味しそうな、超ビッグ卵だ。
「ピヨ(これが最有力候補だ)」
「……え?」
「……ウソ……やろ」
「んにゃ、推してんのあいつだけだ」
「ピヨ(素晴らしいだろ、この楕円形のフォルム、造形、機能美)」
「絶対機能美はないだろ……」
まあ、控えめに言ってクソダサいし、十人で使
「私とダーリンは一人換算でいいよ」
「オー」
……九人で使うには体積も足りない。
「ま、まあ他の候補も見てみよう」
「そうそう」
次に先導しているのは、深淵。
さっきはハルヒが先導していたのを考えると、推している人が先導するらしい。
「こいつが我の推しだ」
そこには、グルグルととぐろを巻いた、黒い龍がいた。
シロン達は、軽く笑みをこぼしてから、
「……はい、次いこうか」
「せやな」
「おい、何でだよ!」
「ネタ枠じゃなかったの!?」
なんか使いにくそうだったし、恥ずかしいし……。
「……ほら、ちょっと立地が悪いよ、立地が」
この龍はグル参の端っこに位置しており、商店街などから少し遠くなっている。
《チーム・スカイマウス》で高速と言える部類に入るのは、シロンとツィンくらいしかいない。
立地が悪いのは大問題といえる。
「他の候補も見てみよう」
「そう、だな」
まだ少し心残りがありそうな深淵を引っ張って、ユーとラウルに付いていく。
今度は、二人の推しらしい。
そして、その二人が立ち止まったのは……UFO。
「これが、私たちの愛。愛の宇宙船」
「なんかハイテクな物見てると安心するんだよ」
……まあ、さっきの卵よりは5億倍くらいカッコいいし、体積もそこそこある。
「だが、これも立地が悪いぞ」
このUFOもグル参の端っこにある。
やはり、立地が悪いとどんなデザインでも一歩劣って感じてしまう。
「フッ、まあちょっと見てろよ」
ラウルが、少し浮遊しているUFOの中央にに行き……怪しげな光に包まれて、UFOに引き込まれていった。
少し気分を落としていた深淵が、目を輝かせる。
そして、少し経つと、フォンフォンと鳴り出して……UFOが浮遊した。
「わー、凄い!」
「でしょ!」
これなら立地の問題は解決……どころか、最高レベルに良いと言える。
というか、浮遊するUFOの拠点……。
「胸がわくわくしてくるね」
「うん。ヒロ、旗ちょうだい」
「ほらよ」
シロンは、ヒロから[クラン拠点旗]を受け取り、UFOのテッペンに飛んで行った。
「これでいい?」
「いいでしょ」
「異議なし」
バサッ!
少し浮遊しているUFOに、《チーム・スカイマウス》と書かれた旗が突き立てられた。
その後、町の上空にUFOが出現し、話題となったのは言うまでもない。




