ゴリゴリ、ウホー
「UKKII!」
木やツタを伝って、大量のサル鳥が飛び出してきた。
「オメーら全然羽使ってないやんけ!いらんやろ!」
「文句言ってないでやるよ〈ツバメ返し・弐連〉」
先頭を飛んでいたツィンが長剣を抜刀し、『=』を書くようにして二回振るった。
サル鳥は一瞬だけ加速して躱し、反転してキックをしようとしたが、ツィンの返しの刃でそれを咎めた。
サル鳥には、加速した後はすぐに攻撃する習性があるみたいで、ツバメ返しが刺さる。
「〈破膜〉」
リムスの音魔法が鼓膜を破壊して怯ませ、
「〈爆炎〉」
Fの広範囲炎魔法で、燃やし尽くした。
「……私も戦っていい?」
「ダメ。大人しくジッとしてなさい」
実は、これまでに何回かサル鳥と接敵しているのだが、シロンは毎回突っ込んで、毎回カウンターを食らいそうになっていた。
これではいつやられるか分からないので、ツィンから突撃禁止令が出されたのだ。
「毎回サルだけに〈炎槍〉するワイの身にもなれや」
「うー」
何だかんだで、サル鳥は全滅していた。
もう少し進んでみると、いつの間にか、巨大な2本の大木が、門のように並んでいた。
「多分、この先にボスがいる」
「やろうな」
ツィンの意見に、すぐにFが賛同した。
さすが幼馴染と言うべきか、息ピッタリである。
「よーし、ガンバロー」
「「「おー」」」
4人で大木の門をくぐった。
全員がくぐった瞬間、逃げれなくするように、光の円が出現する。
そして、その中央に魔法陣が浮かび、
「UHOOO!」
巨大なゴリラ鳥が出現した。
「凄い筋肉やなぁ」
「ねえ、突撃していい?」
「……あの図体じゃ素早い動きはできないだろうし、いいんじゃない?」
「いや、ちょっと待って下さい」
リムスがギターを握り締めて、演奏を開始した。
ボルテージと髪とステータスが上昇していく。
「イエェェアアァァァ!突撃ィィィ!」
「いっきまーす」
上昇したステータスに振り回されつつも、直線でゴリラ鳥の素晴らしい大胸筋にたどり着き、掌打を叩き込んだ。
「〈霊破〉」
「UHOOO!」
ゴリラの咆哮が鳴り響き、腕を振り回してシロンを捕えようとしたが、素早さ特化で離脱する。
背中に回って、もう一発。
「〈霊破〉」
パーン!
この二発で、ゴリラのHPは8割まで削れた。
「UHOOO!」
ドンドンドン!
ゴリラの少し怒った様な声がして、胸のドラムが唸った。
すごい音量で、リムスの演奏は聞こえなくなってしまう。
「オイオイ、俺の演奏に抗うってかァァ!?いい度胸じゃねえか、〈爆音〉!!」
リムスの演奏が大きくなって、聞こえる様になった。
彼の強化は演奏が聞こえなくては効果がないので、これは結構助かる。
「ねえ、うるさいんだけど!」
「俺は止まれねえからよォォォ!」
とか言いつつも、ツィンの文句を受け入れ、少しだけ音量が下がって、ゴリラ鳥のドラムと演奏が拮抗するような感じになった。
すると、木の間から、大量のサル鳥が呼び出された。
「KIKI!」×無数
「……これって、音を打ち消してたら出てこなかったんやないか?」
「う、うるさい!全部倒せばいいでしょ、行くよ!」
演奏しているリムスを置いて、周囲から飛び出してくるサル鳥に、ツィンとFで対応していく。
「〈ツバメ返し・弐連〉」
「〈爆炎〉」
ツィンの返しの刃が一太刀目を躱したサル鳥を切り裂き、Fが放った炎が、加速しても避けられないくらいに広域に広がった。
「サルは私たちで倒すから、シロンはゴリラを倒して!」
「任せて〈霊破〉」
次は頭に〈霊破〉を叩き込み、一気に2割ほど削る。
シロンを殴ろうと拳を頭まで持って行ったが、得意のスピードで逃げられて、自分の頭を殴ったお茶目なゴリラに笑顔をこぼしつつ、様々な方向から〈霊破〉を入れる。
「GORIRORI!」
「ゴリラはゴリゴリ鳴かんやろ!」
「おー、本場関西人(三日目)のツッコミだぁ」
ゴリゴリ言い出したゴリラに感動していると、奴は謎のポージングを始めて……
「GORI!」
バナナを取り出した。
「強化アイテムかな?」
「ちゃうわ、あれは……」
ゴリラ鳥は、バナナを振りかぶって、シロンの方に投げた。
「おいしそ~」
「じゃねえよ!避けろ!〈炎槍〉」
Fの炎の槍が、ゴリラのバナナを貫いて……爆散した。
距離が近かったため、少しダメージを食らったが、まだそこそこ余裕はある。
「え、あれ爆弾!?」
「連投してくるぞ、気を付けろ!」
ポージングしながら、さらにバナナを沢山取り出す。
「あのポージングいらんやろ!」
「冴えてるねぇ」
これまでのシロンの積み重ねで、ゴリラのHPはあと4割まで削れている。
だが、ある程度の賢さは持っているのか、ゴリラは常にバナナ爆弾を一つは常備していて、自爆特攻されるとシロンはやられてしまうだろう。
「……あれ、どうする?」
「誘爆させればええやろ。〈炎槍〉」
Fが炎の槍を投げたが、投げようとしていたバナナ爆弾で防がれてしまった。
「どうする?」
「……サル鳥を全滅させて、みんなでかき乱してから誘爆を狙うとか」
「いや、無理や。そろそろワイの魔力無くなるわ」
「しゃあねえなァァ、俺に任せろォ!」
「……あ、いたね君」
……チーン。
好きな人に忘れられてたことで、一瞬演奏が止まったが、すぐに持ちなおして、
「クッソ……記憶に刻み込んでやるぜェェ〈撃威羅〉」
曲が変わった。
音程は低く、音量は大きく、音速は遅めで……何故かギターから大太鼓の音が聞こえてきた。
「それどうやってんの?」
「んなこたどうでもいいィィ!」
これまでの曲だと、全ステータスが上がっていたが、
「すごい、力が溢れてくる」
この曲だと、力が大きく強化された。
「やれェェェ!」
「任せて!」
スピード特化でゴリラ鳥に向かって突っ込んでいく。
投げられたバナナ爆弾は、炎の槍で撃ち落とし、
「ついでにこれも貰っとけ〈炎纏い〉」
霊力の上から、炎を纏い、さらに攻撃力を上げる。
「仕留めそこなったら自爆で死ぬ。一撃でしとめろよ」
「関西弁は?」
「ワンパンや!」
進む先々の爆風を通り抜けて、猫の手を振りかぶり、
「〈霊炎破〉」
「UHOOO!」
ゴリラ鳥の鳩尾に霊炎を送り込んで、討伐した。
同時にバナナも爆発したが、ゴリラ鳥の死体が爆風を防いでくれたお陰で、助かった。
筆者のリアルテストがあるので、2週間ほど休みます。
中間やばかったから、もしかしたら流る(留年する)可能性まであるんだ。
マジでやばいんだ。
……ブックマークしておくと、再開が分かりやすいよ。




