関西人三日生
「えっと……ツィン、その人誰?友達?」
「オア、彼氏?」
「(……ゴクリ)」
心なしか顔を強張らせているリムスを置いて、素面のツィンの返答は、
「ちょっとしたリアルの友達だよ。彼氏とかあり得ないから」
あっけらかんとした様子で、すっぱりと言い切った。
「良かったぁー。私を置いて彼氏を作っちゃったのかと」
「そんな訳ないでしょ。私たち『彼氏できない同盟』は永遠でだよ」
「ちょっと、『彼氏できない同盟』じゃなくて、『彼氏作らない同盟』でしょ。結構意味変わるんだから」
「へー、三ーも入れてもらおうかな?」
「我も入れるのだ。彼氏など私には合わん、自由に生きる」
「……おい、ワイの紹介はどこ行った?」
女性陣で『彼氏作らない(重要)同盟』の話で盛り上がっていると、ツィンが連れてきた人が、寂しそうに囁いた。
「あ、ごめんごめん。私のリア友のFだよ」
「ワイはF、こいつの昔の友達や。まあ、最近は年賀状くらいの付き合いしかなかったけどな」
「ちなみに、こいつの親は転勤族で、まだ関西に行って3日目です」
「おい、さっき口止めしといたやろが!転勤ばっかしてたら順応力も上がるんや」
……「触れて言いのかな?」とシロンは、年長者のハッシュの方を見てみると、目が合った彼女は首を横にふった。
リムスも難しい顔をしており、誰もあれには触れずに、
「なあ、どうしてお前は左足がないんだ?」
中二病には通じなかった。
何故かFの左足はない。
現実で足がないとバランス感覚などの問題で、VRMMO内でも上手く動けなくなるらしい。
UAOでは全員が飛べるので、足がなくてもあまり関係ないが、触れられて気持ちいいものではないだろう。
まあ、全く触れないのも、それはそれでダメなのだが。
「ちょっと深淵、もう少し慎重に!」
「ああ、この足か?これただのスキルのデメリット効果や。というか、最近の技術でバランス感覚問題は解決したらしいで」
「え、そうなの!?」
……現代の科学は想像の10歩前を進んでいる。
それよりも、片足が無くなるスキルとは。
「それより、今日は森のダンジョンに行くつもりだったんだけど……一緒に行く人!」
「はい!」
「つ、ツィンさんが行くなら」
「三ーは途中のクエストがあるので、グッバイ」
「今まで何してたんだよ……。我も現実で用事があるから、今日は無理だ」
と、いうことでシロン、ツィン、リムスに新メンバーのFを加えて、ツィンが見つけてきた森のダンジョンに向かった。
◇
見渡す限りの大木。
十数分飛んで、4人は森のダンジョンに到着した。
「よーし、ガンバロー!」
「「「おー!」」」
木を躱しながら、アマゾンのジャングルの様な熱帯雨林に入り込んでいく。
「暇だね」
「……そ、そういえば、ツィンさんとFさんの出会いは、どういう風な感じだったんでしょう?」
「あー、それ聞く?聞いちゃう?」
ツィンはちょっと面倒そうな顔をして、逆にFは嬉しそうに彼女との馴れ初めを語った。
小学校低学年くらいの頃、二人は近所に住んでいた。
すぐそこに公園があったこともあり、休みの日は毎日二人で遊んでいた。
ちなみに、シロンがツィンと仲良くなったのは中学に入ってからで、小学生の頃は学校が違ったので接点がなかったのだ。
「隣に住んでいたから、親同士の仲がよくて、これまで腐れ縁を続けてきたって訳よ」
「そうだったんですね」
リムスは、ツィンから見えない死角でガッツポーズをした。
その後もつまらない雑談を続けようとしていると、
「UKIII!」
背中に翼を生やしたサル鳥が、木をかき分けて登場した。
「いっくよー!」
シロンは〈霊破〉の用意をして、サル鳥に突っ込んでいき……
「KIKI」
「え!?」
外した。
シロンの方が速かったのだが、サル鳥が一瞬だけ加速したせいで避けられてしまったのだ。
そして、奴は反転してキックを繰り出し……
「〈炎槍〉」
「KIII!」
横から飛ばされた炎の槍が、サル鳥の腹に穴を開け、討伐に成功した。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう。カッコいい技だね」
「まあな。うちの【フラミンゴ】の効果や」
Fのスキル【フラミンゴ】は、炎魔法を強化する効果がある。
フラミンゴの語源は、赤い羽から炎を意味するラテン語の「floma」に由来するので、そういう能力になったらしい。
あと、片足が無くなるのは片足で立っているイメージがあるから。
「森を燃やさないように気を付けてよ?」
「分かったわ」




