始まり
ドク、ドク……
高鳴る心音を抑え、緊張しながらもスマホの画面をタッチして……『合格』の二文字が表示された。
「やったー!」
私、空峰真白は、なんとか第一志望の高校に合格したみたいだ。
月に一回のイベントがとても楽しみで、半年前に志望高校を1段引き上げたのだが、努力が報われたらしい。
軽く放心状態になってしまった時、
プルルルル
スマホが鳴った。
かけてきた相手は、同じ高校に受験した親友、南雲芽衣だった。
私よりも全然頭がいいから、大丈夫だと思うけど……震える手を抑えて、電話をとり、
『真白、受かった!?』
「うん、芽衣は?」
『勿論受かったよ』
やっぱり杞憂だったみたいだ。
『事前判定Cだったのに、やるじゃん!』
「えへへ、まあね。ねえ、どこかに遊びに行こうよ」
『ディスティ二―ランドにでも行く?』
「行こう行こう!」
◇
数日間、芽衣や他の友達と、ディスティ二―ランドやカラオケなど、娯楽施設でたっぷり遊んだ。
勉強を頑張った分、すごく楽しい。
有名なスイーツ店で、芽衣と一緒に美味しそうなパフェを食べながら、
「次は何する?」
「いや、そろそろ高校入学の準備しなきゃいけないから」
確かに、もう高校に教科書も取りに行って、軽めの宿題まで出されてしまている。
「……宿題の答え、教えてくれない?」
「ダメ、自分でやりなさい。受験の分の貯金があるでしょ?」
「もう全部忘れちゃった」
おそらく今テストを受けたら、受験前の4割ほどしかなくなっているだろう。
「でも、もう少し遊びたいんだよねー」
「じゃあ、あれやってみようよ」
そう言って、芽衣が指さしたのは……新作VRMMO、Universal Sky and Sea Online略してUAOのパッケージだった。
「VRMMO?」
「そ、ずっとやってみたかったんだ」
受験前にもVRMMO自体はあったが、ハードが高値だったり、動作が重かったりで、人気にはなれなかったのだ。
だが、この一年でハードは小学生のお年玉で買えるくらいの値段まで下がり、動作はほぼリアルと同じになったりで、一躍人気テーマになっている。
「でも、私にできるかなぁ」
「そうお考えのあなた!なんと、最近のVRMMOは味覚まで再現されています!」
「やるー」
早速すぐそこのゲームショップから、ヘルメット型のハードと、新作のUAOを買って行った。
ちなみに、受験後の散財のせいで、財布には野口さん一人残っていない。
3日に2話ほど更新していきたいと思っています。