96.怪奇現象
前回までのあらすじ。
フラウと2人で過ごすの愛の巣がゲーム内で完成した。つい先程まではその完成パーティをしていたが、今はフラウと2人きり。とても楽しいことがおきそうな予感がしています。なお、かしわもち用に用意した部屋では中身のないかしわもちが寝ているので実際は完全な2人きりではなかったりするけどまあ気にしない。
さて、新居にフラウと2人きりなわけだ。
ゲーム内では結婚した2人、夫婦となっている2人。
そうなると、あと迎えるべきは初夜である。
ま、このゲームにそういうことをする機能はないのだけど……。
ソファに並んで座り紅茶を飲む優雅な夜時間だが、果たして何をすればいいのやら?
これが現実ならテレビを見てたりするんだが、ここではそうもいかない。
動画とか見る機能はあるんだが、なんか雰囲気壊しちゃいそうだし。
とりあえずなにか話しかけねば……。
「いいもんだな、自分たちの家というのは」
「そうね、ここは2人だけの空間。なんでもできるわ」
なんでも……あんなことやこんなこと……やばいやばい、妄想がそっち方面に向かう。
俺はゲーム内でどこまでできるのかという下調べはしておいた。
こういうプライベート空間だと、外では不可能な下着姿にまではなれるらしい。
裸は当然のように無理だったが、可能な限り楽しみたいと考えてしまう。
「ここでは普段とは違う服装になれるようだ。やってみるか?」
「どういったものかしら? あなたが用意してくれるものならなんでも着るわ」
なんでもといってくれた……。
でもこれを着てくれと下着を渡すのってどうなのさ。
すでに買って用意してある俺も俺なのだが……。
ここはいつも通りうまいこと誘導を……。
「ちょっとゲームをしないか。相手の意図をどれだけ汲み取れるか。お互いに様々な服を用意しておき、相手がどれを着て欲しいか予想するんだ」
「面白そうね、やりましょう。でも今ある服の数は少ないけれど……」
「そこはかしわもちのレンタルショップを使わせてもらおう」
俺たちはかしわもちの部屋へと移動した。
中を見ると、ベッドで気持ちよさそうに寝るかしわもちがいる。
ちなみに今の状態、かしわもちは完全にログアウトしていて、現実で寝る準備をしているはずだ。
俺たちの今いる自宅空間は生活感を出すためのおまけ機能がいろいろあり、これもその一つで遊びに来ている感じを出すだけの機能である。
つまりこのかしわもちは見た目だけいる状態で、次にかしわもちがログインするまで動くことはない。
「よく寝ているわね、今日の大活躍でお疲れだったのでしょうね」
「そうだな、おかげでこの家は守られた」
ログアウトする時にこの上なく満足そうな顔をしていたらしく、その顔のまま寝ている。
ほんとやりきったって感じの顔だ。
さて、中身のいないかしわもちではあるが、普段から周囲に公開している機能はそのまま使える。
かしわもちが普段からやっているのは小料理屋さんと、衣装のレンタルショップなのである。
「さすがお母様だわ。たとえ意識がなくとも普段の状態を維持している」
「そうだな、遠慮なく利用させてもらおう」
ゲーム内ではプレイヤー同士の物の売り買いも盛んだ。
こんな感じで、街中でも中の人のいない状態で商売をしてたりしていて、それを寝バザーと呼んだりする。
普段はかしわもちも街のどこかで料理を売っているのだが、今夜は俺の家に泊まる気分を味わいたくてここにいるわけだ。
「ではルールを決めましょう。着て欲しい服は一つとして、ダミーはいくつにする?」
「そうだな……3つくらいでいいだろう」
「わかったわ、では選び次第お互いの部屋のクローゼットに配置ね。終われば廊下に出て、そこから開始しましょう」
というわけで、フラウに着て欲しい服を選ぶこととなった。
俺的には正解どうこうではなく、着て欲しいものを四つ準備すればいいだけである。
どれを着ても正解となるのでフラウは確実に正解だ。
問題は俺が正解できるかどうかだが、まあそこもなんとかなるに違いない。
さあて、何を選ぼうかなあ。
一つ目はかしわもちレンタルではなく、俺が用意した下着とネグリジェセット。
冷静に考えると、ゲーム内とは言えどもこんなの用意する俺ってどうなのと思わざるを得ない。
でもそんなの気にせず欲望のまま突っ走るぜ!
あとは……普通の可愛いパジャマと……以前も着てた魔法少女マジカルロリカコスと、ちょっと優雅なドレスをチョイス。
パジャマは単純に見たいから。
魔法少女はフラウが着たがる可能性を考慮で、ドレスは優雅なこの家の雰囲気にはぴったりかもと思ったから。
さあ、フラウはどれを選ぶかなあ。
「お先に行くわね」
「ああ、俺もすぐ行くよ」
フラウもちょうど選び終わったらしく、俺の部屋へと移動していった。
一緒に行くのも何か違う気がするので、少し時間を置いて移動しよう。
フラウが階段を上がって2階へ行ったのか、天井が少し軋む音が聞こえる。
あれ? なんとなく階段とは別の方向からも音が聞こえたような……?
気のせいだろうか……木製の家は木が軋む音が何もせずとも聞こえて、それをポルターガイストと勘違いすることがよくあると聞いた。
ゲーム内の家でそんなところまで再現してるのかと少し驚くが、そうだと思っておこう。
さて、俺も移動するかな。
廊下は壁にかかったロウソクの照明がゆらゆらと揺れているのみで薄暗い。
自分の家ではあるけど、あまり歩いたことのない場所ということで、なんとなく怖いと感じてしまった。
さっきポルターガイストどうこう考えたせいかな……。
階段を上がり、フラウの部屋へと移動する。
出来立ての家なのでまだ生活感を感じないせいか、知らない家に迷い込んだ気分となる。
女の子の部屋というのはもっとドキドキするものと思っていたが、それは今後に期待か。
クローゼットを開くと、中は空である。
ここに衣服をかけていこう。
ただ、服は普通にかければいいとして下着はどう置いておけばいいのだろうか。
はさめるハンガーに一つずつぶら下げてみよう。
む……なんかエロいな……。
なんかすごい犯罪者の気分になってきた。
女の子の部屋に入ってタンスを開き、そこにある下着を眺める……。
カタン……ふと背後から音が聞こえてきた。
フラウかなと思ったが、まだ部屋に入ってくるはずはない。
振り返ると、床に人形らしきものが落ちているように見える。
タンスを開けっぱなしにしていることを怒られているような気分となったので、まず閉めようか。
落ちていた人形のところへ行くと、長い黒髪で和服を着た人形。
なんとなく花ちゃんを思わせる美しさだ。
テーブルのそばなので、何かの弾みで落ちたのだろう。
人形をテーブルの上に置いて振り向くと、大きな鏡に自分が映っていることに気づいた。
フラウはこの後で着替えた後、この鏡で自分を確認するのだろう。
その鏡を見ていろいろ妄想をしていたのだが、なんとなく違和感がある。
あれ? さっき置いたはずの人形が写っていない。
肌寒さを感じつつ机の方を見ると、人形はそこに置いてあった。
でも鏡を見るとやはり写っていない。
鏡に映らないと言えば吸血鬼とか連想してしまうが、これは単なる人形。
なにかのバグか見間違いかなと思いつつ、鏡に近づいてみる。
見間違いではなく、確かに人形を置いた机の部部に何も写っていない。
面白い現象なのでフラウに話せば喜ぶかなと思っていると、鏡の端に人影がよぎり、ビクッと硬直してしまう。
見間違いかなと恐る恐る振り返ると誰もいない。
先ほど見えたのは長い黒髪で和服の女性で、なんとなく花ちゃんっぽかったか?
フラウのいたずら?
いやいや、今このタイミングでそんなことをするとも思えない。
なにこの怪奇現象……。
また鏡を見てみようかと思うが、振り返るのが怖い。
あれ? さっき机に置いた人形もないぞ。
よし、逃げよう。
とりあえずフラウに会いたい。
こういった時は一緒に居ればどんな怪奇現象も楽しいものになるはず。
「きゃあああっ!」
部屋のドアに手をかけた時、フラウの悲鳴が聞こえてきた。
隣の俺の部屋か。
お互いの部屋に繋がる隠し通路のことを思い出したが、一旦廊下に出ることにした。
すると、フラウもちょうど部屋から出てきた。
「フラウ、どうした?」
「あなたは……本物? 先ほどあなたによく似たおかしな人影が侵入していたの。語りかけても反応はなく、触れようとしたら消えてしまって……。それで怖くなって……」
「俺は本物だ。とりあえず下に降りよう」
普段怖がったりするイメージのないフラウが怯えてるの可愛いなと思ってしまう。
俺はフラウに肩を貸し、くっついて階段方面へ向かった。
やはり一緒にいると安心できる。
「この温もり……あなたは本物ね。先ほどの影は一体……」
「実は俺もフラウの部屋でおかしな人影を見たんだ。あと謎の人形……。フラウは部屋に人形なんて置いていたか?」
「いいえ……知らないわ……」
じゃああれは一体……。
フラウのいたずらを考えていたが、どうも今の状態は演技じゃなさそうだ。
あとはかしわもち……は完全にログアウトしているはずなので関係ないな。
俺たちはその後無言のまま、最初にお茶を飲んでいた部屋に戻りソファへ座った。
あったかいお茶を飲んで一息つく。
少し落ち着いたフラウが口を開いた。
「わたしは怪奇現象を目の当たりにした。そしてあなたもなのよね? そしてこれはあなたのいたずらではないとわたしは確信している」
「そうだな、俺もおかしなものを見てしまった。あと信じてくれて嬉しいぞ」
「当然のことよ。それで確認なのだけど、ここはわたしたちが建てた家よね。新しき家……曰く付きの建物などではないはずよね」
「ああ、間違いなくそうだ」
漫画とか小説ではよくある展開の、住み始めた家が幽霊の出る訳あり物件。
今回に至っては更地から建てたのでそういうのではない。
「ならばこの土地はどうなのかしら? 過去に戦場であったとかそういったことは?」
ここはゲームが用意してくれた空間。
街のどこかにあるという設定だけど、実際には切り離された異空間。
幽霊が出るような曰くなどあるわけもない。
「それはないと断言できる。ここは過去に何もない平和な土地だ」
「ならばここにいたものではなく侵入者ということになるわね。怯えている場合ではないわ。追い出しましょう」
「そうだな、まずは作戦を立てるか」
俺の脳内の作戦だと、フラウと一緒であれば基本怖くない。
怪奇現象と言えどゲーム内であれば全て説明がつく。
ま、さっきみたいに1人だと怖いけどさ。
とりあえずフラウが怖がって抱きついてくるイベントがあるかもと考えれば何も怖くない。
「まず……状況の確認かしら。わたしたちはそれぞれ単独で何かを目にした。幻覚や思い込みの可能性も捨てきれない」
「そうだな。2人で行って確かめよう」
「そうね、あなたと一緒にいれば恐怖も薄れるわ」
というわけで、仲良くくっついて移動開始。
まず俺の部屋へ行くことになったのだが、途中のかしわもちの部屋の前でフラウは足を止めた。
「お母様が無事かも気になるわ。様子を見ていきましょう」
「そうだな」
かしわもちの部屋に入ると、空気が変わった。
悪い意味ではなくいい意味でだ。
なんていうか、この部屋は生活感を感じて安心する。
元々かしわもちの今の家を再現した形だし、いろいろな小物も飾られていて、本当にここで生活しているっぽい。
ベッドの上のかしわもちは先ほどと同様に幸せそうな顔をしている。
「問題なさそうね。それにこの部屋にいれば安全な気がするわ。何故かはわからないけど、お母様の力かしら?」
「かもしれないな。このままゆっくり休んでいてもらおう」
この部屋はホラーゲームでいうところの安全地帯、セーブポイントに相当する気がする。
何かあればここに逃げてくるとしよう。
ということで、かしわもちの部屋を後にした。
部屋の外に出ると、空気がひんやりとしていて緊張感が漂い始める。
これから何か怖いことが起こる……そんな雰囲気だ。
その予感が当たっていたかのように、上の階でなにか音が聞こえてきた。
「聞こえた?」
「ああ……」
「ならば幻聴ではないのね。怪異か迷い込んだ小動物か……いきましょう」
さっき以上にくっついて階段を上がっていく。
よし、今の俺は恐怖心より幸福感が勝っている。
ひんやりとした空気のおかげで密着の温もりもあったかい。
なんでも出てこいと思いつつ、俺の部屋のドアを開けた。
「何もないようだな」
「そうね、でも先ほども入ってすぐは何もなかった。探索してみましょう」
「そうだな、先ほどと違う点がなにかないか探してみてくれ」
「そうね……」
フラウは部屋を見渡す。
まだ物がほとんどない生活感の無い状態だが、俺がフラウの部屋で見た人形のようなおかしなものは見当たらない。
「この中を見てみましょう。一緒に開けてくれる?」
「ああ、もちろん」
フラウが開けようとしているのは洋服ダンス。
先ほど俺にして欲しい衣服を置いた場所だろう。
忘れかけていたが、この中にある服からフラウの希望を当てなくてはならないんだった。
コスプレしたお化けとかいたらやだなあと思いつつ、タンスを開ける。
「服が普通にかかっているな。先ほどのままか?」
「そうね、変化なしだわ。そしてさっきはこの準備を整えた直後におかしな人影を見た……」
コンコン……。
不意に部屋のドアがノックされる音。
ちょっとビビる俺。
「聞こえた?」
「ああ、お客様かな……」
そう言いつつ、客など来るわけがないことはよくわかっている。
なにせこの俺の家と土地、システム的に他プレイヤーがいるかどうかはすぐわかるのだ。
かしわもちは中の人がいないから動くわけもないし、誰か来るとしたら未知の存在となる。
コンコン……。
先ほどより強めにノックされる。
「これはもう気のせいではないわね」
「声をかけてみるか?」
「おそらく先ほどのように無反応だと思うわ。開けてみたいわね」
さっきは謎の人影に声をかけたんだっけか。
1人の時にそれができるのもすごいが、開けるのも怖いな。
コンコン……ノックはさらに強くなってくる。
よし、男を見せるか。
「俺が開ける。だが何かあった時のために一緒にいよう」
「もちろんそのつもりよ」
フラウは俺の腕に腕を絡めてきて、抱きつくようにくっついてくる。
こういう時はたいてい、俺に任せて離れていろという場面かもしれないが、それをするといつの間にか相手が消えるというパターンもある。
基本的にホラーな状況では離れてはいけない、というのが俺の持論であり希望である。
なんて考えて怖さを紛らわせつつ、ドアノブに手をかける。
「よし、開けるぞ」
「ええ……」
ドアノブを回してゆっくりとドアを開く……。
そこには何もいない……ホラーでよくあるパターンのやつか?
だが次の瞬間、異様な寒気が襲ってきた。
『受ケ入レテクレテアリガトウ』
不気味な声が耳に響く。
そして……隣のフラウの部屋のドアが開いたであろう音が聞こえる。
そのまま家のあちこちから音が聞こえてくる。
まるで……たくさん待機していた何かが一斉に移動を開始したかのように……。
「許可はしていない、出ていきなさい!」
震える声でフラウが叫んだ。
俺は声を出せないくらいにビビっていたが、フラウは強い。
『ヤダ』
何者かはすぐに返事をしてきた。
しかも否定……おかげで恐怖が増していく。
『オ前タチガ出テイケ』
部屋の中だというのに強風が吹き、家具がおかしな揺れ方をする。
まさにポルターガイスト現象。
俺たちを追い出そうとするかのような風の強さに耐えきれず、部屋を追い出される形となった。
『コレハ不快ダ』
さらにおかしな言葉が聞こえつつ、何かが部屋の中から飛んできた。
そのままドアが閉まる。
飛んできたものは……何着かの服だった。
「これはわたしが選び置いたもの……」
フラウが俺に着てもらうために選んだ服が投げ出されてきたのか。
そうなると俺がフラウのために選んだ服は?
そう考えた瞬間、フラウの部屋からも衣服が投げ出されてきた。
「あれは俺が置いた服……」
「回収しましょう。そして一旦避難しましょう」
「わかった」
フラウは俺用の服を拾っている。
となると俺はフラウの服を拾おう。
回収してそのまま急いでかしわもちの部屋へと移動する。
その間も家のあちこちから音が聞こえてかなりの恐怖を感じたが、なんとか目的地へ到着した。
かしわもちの部屋に入ると、先程と同様の安心感に満たされる。
やはりここは安全なセーフポイントのようだ。
てか……かなり怖いんだけど今どうなってるんだろうか。
「さて、今の状況だが……」
「何者かがわたしたちの家へと侵入。乗っ取ろうとしているということよね」
「そうなるな。何者かは知らないが、このまま黙ってみているわけにはいかない」
「対抗手段を考えましょう。ヒントとなるのは敵がまだ来ていないこの部屋と、先ほど敵が嫌がり投げ出されてきたこの衣服ね」
この部屋と衣服……共通しているものは、この部屋でずっと感じているあれだろうな。
「生活感というか、俺たちの想いがこもっているものを嫌がっているようだな。この家はまだそれが少ない」
「そうね、なんとかして少しずつわたしたちの範囲を広げていかなくては。ねえ、まずは着替えない?」
「さっき選んだ衣装にか?」
「ええ。これはわたしたちがお互いを思って選んだもの。奴らに対抗しうる力になると思う」
状況的にそれはあっていると思う。
だが……俺が選んだセクシーな下着とネグリジェを着て幽霊退治に挑む?
それはそれで俺的にはありなのだが……何かおかしな絵になりそう。
「そうだな……。ただ戦いには向かない服だが……」
「大丈夫。わたしたちは戦うのではなくこの家に住んでいることを知らしめるだけ。だから家にいる状態に相応しい服がいいわ」
「それもそうか。では着替えよう」
「では予定通りにお互いの想いを汲み取りましょう」
着て欲しい服はどーれだ? のクイズはやるんだな。
状況的に外してはいけない感じなのでちょっと緊張しちゃう。
「よし、では選ぶか」
「時間もないし、選んでそのまま着てしまいましょう。お互いに背を向けてね。鏡は布をかけて見えなくしておきましょう」
ぶっつけ本番か……服を手に取りフラウの反応を見るというズルができないな。
「よし……」
「あ……もしかして着替えるところを見たいのかしら? それはまたの機会のお楽しみにしましょう」
「お、おう……」
なんかすごいことを言われてビビる。
そういえばこういったプライベート空間の機能を思い出した。
通常は装備変更する際、装備を選んで一瞬で着替えが完了するのだが、こういった空間では普通に脱いで着るができるらしいのだ。
よし、いつか見せてもらおう!
さて、服を確認していくか。
まず目についたのはタキシード、魔法少女マジカルロリカに出てくるキャラ、俺の用意した魔法少女服と対になるな。
ただ、家で生活するのにこれを着てるのはおかしいと思うので外そう……。
次に手に取ったのは浴衣というか甚兵衛というか、和風な寝巻きって感じ。
洋風のこの家には合わないかもだが、生活してる間は出そうだな。
次は……学生服?
詰襟のいかにも学生って感じのやつ。
これはどう捉えるべきか……フラウが実は学校生活での恋愛に憧れる子だったりとか……?
それも楽しそうだが、俺の用意したフラウ用の服には制服がない。
この場合、相手に着て欲しい服なのでお互いのものを合わせる必要はないのだが、その辺を気してしまうな。
最後のは何コレ……なんかモフモフして複数パーツがある。
えーと……猫コスプレセット?
尻尾つきショートパンツにタンクトップ、スリッパと靴下が一体化したような猫足、猫手袋、もちろん頭につけるは猫耳ヘッドセット。
いやいや流石にこれは……でもフラウがこれを着て欲しがってる想いを1番感じてしまう。
さて、一体どれを選べばいいのだろう。
今のところ1番有力ではあるが避けたいのは猫耳セット。
当たればフラウがさぞかし可愛い生き物となって、俺を猫のように可愛がってくれそう。
オスニャコラとメスニャコラのイチャイチャを楽しめるわけだ。
逆にはずしていたらこの上なく恥ずかしい状況になる。
しかし……もしフラウが俺の希望通りの下着セットを選んでくれたとしたら?
完全に夜を楽しむバカップルという状態になるのではなかろうか。
くっ……それをやりたいという欲求に駆られて仕方がない。
ちょっと声をかけて様子を探るか。
「フラウ、決まったか」
「ええ、あなたのことはよく知っている。一瞬でわかったわ。もう着替え始めている。あなたもすぐわかったわよね?」
「もちろんだ」
「ふふ、楽しみだわ。んふふ……」
フラウが本当に楽しそうに無邪気に笑っている感じ。
よし、本日俺は猫となる!
もう決めた。
たとえ間違ってたとしてもフラウは喜んでくれる気がするし。
こうして……即席のオスニャコラが完成した。
正常な精神ではとうてい耐えることのできない格好に俺はなっている。
絶対に第三者には見せられないな。
中身のいないかしわもちはそこに寝てるけど……。
この時の俺は、今家を乗っ取ろうとしている怪現象のことを完全に忘れていたのだった……。




