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80.VRデート

 前回までのあらすじ。

 今日は花ちゃんと現実世界でデートをしました。釣りして買い物して料理して花ちゃんが猫になって、とても楽しい1日でした。だがこれだけでは終わらない。今日の残り時間はゲーム世界でデートをします!


 今朝の俺は、リアル世界でレンタカー屋さんで車を借りてから花ちゃんを迎えに行った。

 今夜の俺は、ゲーム世界でリバードレンタル屋さんに来ている。

 リバードとはトカゲと鳥を混ぜたような見た目の騎乗用家畜である。

 ワープで移動できてしまう昨今では移動用途であまり使われないが、爽快感を求めて乗ることが多い。

 それに二人乗りができるものもあるのだ!


 さて、どの子にしようかな。

 性能は全て同じだが、見た目は色々違う。

 ほぼ鳥のような見た目のもあれば、ほぼトカゲな奴もいる。

 俺はその中で大きめの、がんばればドラゴンに見えなくもないやつを選んだ。

 ではフラウの元へレッツゴー!


 この騎乗は街中ではでできないので、現実のように家の前まで迎えにはいけない。

 というわけで、待ち合わせ場所は町の入口である。

 待ち合わせ場所にはいつものように門番さんが2人立っていて、その近くに黒ローブを纏った人影……間違いなくフラウだろう。

 クラクション代わりにリバードにちょっと鳴いてもらう。


「グエーッ!」


 その鳴き声に反応したフラウの前に停止。


「おまたせフラウ、さあ乗って」


「ふふ、やはりこの世界はいいわね。ドラゴンではないようだけど、あちらの世界にには無き光景と体験……今日はまだ楽しい日が続きそう」


「同感だ、いくぞ」


 車のときは助手席に載せたわけだが、騎乗の場合は俺の後ろに密着して座って貰う形となる。

 そしてフラウは遠慮なく俺に抱きつくわけで、つまり……距離が近い!

 フラウの言うように、楽しい日はまだ終わらないのである。

 ではこの時間を楽しむべく、景色の良い海岸沿いを走っていこう。


「ところで例の魔導具について母に相談したわ」


「魔導具というと……」


「子作りを阻害するあの魔導具よ」


 そういえば忘れてた。

 花ちゃんが同級生からゴム素材のあれをもらってきて、俺に使い方を聞いてきたんだった。

 そして俺はそれをうまく説明できず、花ちゃんのお母さんに全てを託したのだった。

 ゲーム内でする話ではない気もするが、現実の俺の部屋でこの話をされると歯止めが効かなくなってしまうかもしれないのでいいか……。


「それでお母さんはなんと?」


「使い方を教えてくれたわ。そして実際に練習したの。そして謝らなければならないのだけど……練習したせいでもうなくなってしまったわ」


「そ、そうか……。そういうことを教えてくれるんだな……」


「ええ、とても嬉々として教えてくれたわ。これまでわたしは母に頼ることがあまりなかったの。だから相談されたことが嬉しかったみたいね。秘蔵の魔導具……模造品ではあったけど、それを使わせてくれたわ」


 秘蔵の魔導具……模造品?

 もしやそれは大人のおも……いや、深く考えるまい。

 とりあえずここで大事なのは、花ちゃんのお母さんが花ちゃんに相談されて嬉しかった。

 そして花ちゃん親子の関係が良くなったわけだ。それでいいんだ。うん。


 とりあえず花ちゃんがもらったやつを一緒に使うイベントは回避できた。

 なんか惜しいことをした気もするが、へたれな俺にはまだ早いと思う。

 まだ時間はあるんだし少しずつステップアップで……ね。

 よし、この話はササッと流して煩悩を払おう。


「そうか、なくなったことは問題ない。それよりフラウがお母さんと仲良くしてるのが嬉しいな」


「ええ、あなたがそうしてほしいと言ったもの。それに悪くない時間を過ごせたわ。あなたの言うことに従っていれば何でもうまくいく。だからこれからもよろしくね」


「ああ、よろしくな」


 フラウの俺への信頼度が急上昇。

 ついでにお母さんの俺への好感度も上がってそう。

 よし、この流れのままずっと仲良くなって結婚まで行っちゃうぞ。


「あと魔導具については学友にもらうものでなく、あなたに買ってもらうべきと言われたわ。だから買っておいてほしいの」


「ああ、必要な時期が近づけば買うさ」


「ええ、それもあなたに任せるわ」


 なんかいつでもいたせる権利をゲットできた。

 これに関しては今夜寝る前にいろいろ妄想するとして、意識をデートに戻そうか。

 まず目的地が決まっていないの決めるところから。


「ところでどこに行くか決まっていないんだけど、行きたいところはあるか?」


「あちらの世界での行動をなぞりたいわ。そして2つの世界の繋がりを強めるの」


「よし、では似た場所で釣りだな」


「ええ、全く異なる世界だけど可能な限り同じようにしたいわ。だから先程の会話もあちらの世界での続きだったの」


 なるほど。

 世界の繋がりを強めたいとは実にこの子らしい。

 では同じことができるようにいろいろ考えなくてはな。

 確か現実では明るい家族計画の話の後、わりかし普通の会話をしてたのでそれを思い出して話を振るか。


「フラウはこのリバードに乗るのは初めてだったよな? 免許も取ってないし」


「そうね。乗っている人を見かけはしたけれど、魔法による移動が便利だったから不要と思っていたわ」


「そうか。乗ってみた感想はどうだ?」


「最高ね。やはりあちらの世界の乗り物よりこちらの方がいいわ。あなたが近いもの」


 嬉しいことを言いつつ、俺にしがみつく力を強めるフラウ。

 同じことを思って楽しんでくれているのが何より嬉しい。


「そうだな、俺もこっちの方が好きだ。そうなるとリバード騎乗免許は……」


「不要よ。だってこの形以外で乗る必要はないわ」


 なんとも嬉しいことを言ってくれる。

 でもみんなでこれに乗って移動する時に俺たちだけ二人乗りだと冷やかされ……るのは全く問題ないな。

 むしろ見せつけたい!

 でも免許はいろいろ必要なんだよな。


「乗る時は常にこの形でいいんだが、免許は取っておいた方がいい。免許が無いと受けられない依頼とかあるんだ」


「なるほど……あなたと常に一緒にいるためには必要なのね。いずれ取りに行きましょう」


「よし、落ち着いたら行こうな」


 リバードの免許を取るには、通最短でも1ヶ月間の集中講習が必要である。

 だがそんなリアルの自動車免許取得みたいなことはやってられない。

 代替のクエストとして、とある怪我をしたリバードのお世話して仲良くなるイベントを経て、特別に発行してもらえるというのがある。

 普通はこっちを選ぶのだが、真面目に学校に通うことに楽しみを見出すご年配の方は普通に教習を受けたりする。

 かしわもちも今ちびちび通って学生気分分に浸っているとか。


「この世界ではやるべきことではなく、やりたいことが多くて困るわね」


「そうだな、でも時間はたくさんあるんだ。少しずつやっていこうな」


「うん……」


 フラウが俺の背中に顔を埋めてくる感触が心地よい。

 あれ? なんか寝息が聞こえてきた。

 疲れてるのかな。

 ちなみに、このゲームの中で寝ると現実で寝たのと同様に疲れが取れる。

 不眠症治療で寝るためにゲーム世界に来る人もいるらしい。

 というわけで、少しの間寝かせてあげるか。


 この揺れが寝るのに心地いいのかもしれないので、なだらかな平地をしばしぐるぐると走ることにする。

 長距離バスに乗った時とかって、走ってる最中は寝てるのに停止すると目覚めたりするからな。

 目的地はもう近いのだが、あと10分くらい走ろう。

 今寝すぎると夜に寝れなくなるし、仮眠は15分くらいがいいと何かで見たし。

 俺はしばし、背中のフラウの感触と存在を楽しむのであった。


そして時間が経ち、目的地へと到着した。

 現実で釣りデートをした場所となんとなく似た地形で、釣れる魚がほぼ同じ場所である。

 停止してどう起こそうかなと考えていると、目覚めたのか反応があった。


「ん……眠っていた?」


「ああ、ほんの少しの間だがな。到着したが、まだ寝ていたいか?」


「いえ、あなたといるのに寝てるのはもったいないわ」


 俺はフラウの寝顔が見られて幸せだがな、というキザなセリフが浮かんでくる。

 でも背中にいたフラウの寝顔は見れてないんだよな。

 次回のリアルデートでは車で寝てほしいなと思う。

 ぶっちゃけ、フラウが何してても楽しい俺である。


「では釣りの準備をするか」


「わたしは簡易作業場を作るわ。あちらの世界ではできることがなかったけど、こちらでは魔法でサポートできるから」


 というわけで、言葉通り俺は釣りの準備……といっても設定した釣りセットを呼び出すだけなので一瞬で終わる。

 フラウも慣れた作業でパラソル的なものや椅子やら並べて、快適な空間があっという間にできあがる。

 ほんと魔法は便利だね。


「この世界ではあっさり終わるな」


「あなたの言っていた通りね。魔法で即終わるのは便利だけど味気ないわ。不便を楽しむ……なんとなくわかってきたわ」


「それは嬉しいな。どちらの世界も楽しい、それを覚えておいてくれ」


「ええ、心に刻んだわ」


 相変わらず俺の言う事を何でも素直に聞いてくれるいい子。

 俺だから聞いてくれるのかもしれないが、それなそれでらなおさら嬉しい。

 では現実と同じ形で釣り開始。


「では始めるか。釣り竿を一緒に持とう」


「ちょっと待って、わたしの場所はここ」


 椅子を2つ並べてあったのだが、何故かフラウは立ち上がり座っていた椅子を片付ける。

 そしてフラウが俺の膝の上に座ってきた。

 わーお。


「あちらの世界とは違う形だな」


「ええ、あちらでは自重したの」


「そうか……我慢していたのなら仕方がない」


 釣りしながら俺にもっとくっつきたいとか考えてたのか……幸せすぎる!


「仕方がない……。あなたはこういうの嫌?」


「ああ、そうじゃない。俺もこうしたいと思っていた。仕方ないというのは、向こうの世界と違う形ってことだ」


「なるほど、でも安心して。心の中で考えていたこと実現できる世界がここなのよ。だからなんら違うことはない、むしろ同じなの」


「そうか、なら何も問題ないな。でははじめよう」


 それなりに納得できる理由がついたところで釣りスタート。

 こちらの世界では釣りスキルというものがあるので、今の俺ならたいしたことをしなくとも魚が食いついてくる。

 予想通りすぐに反応があった。


「来たな。まずは一緒に釣るぞ」


「ええ、わたしたちの連携をこちらの世界の魚に見せつけましょう」


 釣り竿を仲良く左右に振って魚を弱らせる。

 はっきり言って小物なのですぐに終わる。

 アジャックを2匹釣り上げた!

 この世界のアジ的存在、現実と同じく2匹同時に釣り上げることができた。


「よし、向こうの世界と全く同じ展開だな」


「ええ、当然の展開よね」


 偶然同じ数釣れてよかった。

 ま、俺たちなら数が違ったとしても適当につじつま合わせるんだろうけど。


「おうおう、お熱いね。お二人さん」


 不意に背後から声が聞こえた。

 振り向くと、リバードに乗ったレオンが見え、さらに後ろにはニャーノさんも乗っているようだ。


「お前か、こっちの世界でも会うとは奇遇が続くな」


「そうだな、これも運命というやつか」


「こんばんはですニャー」


「ふふ、こんばんは。今夜はいい夜になりそうだわ」


 現実では偶然にレオンの中の人が通りかかった。

 ゲーム世界でも偶然に……というのは嘘でフラウを喜ばせたくて俺がレオンを内緒で呼んだ。

 ニャーノさんも一緒に来ているのは、デートしていたのかな。

 フラウを騙すような形であれだが、大人というのはこんな卑怯な嘘を平気でつくのさと悪ぶってみる。

 さて、現実だとレオンはすぐに去ったわけだが……フラウが現実で考えていたであろうことは……。


「レオンにニャーノさん、一緒に釣りをしないか」


「そうだな、せっかくだしやっていくか」


「お魚食べたいですニャー」


「ええ、みんなで楽しみましょう」


 これで正解のようだ。

 2人きりも楽しいがみんなでワイワイも楽しい。

 きっとフラウもあの時そう思ったんだろうと予想したが当たっていてよかった。


 このあとすぐに次の魚を釣り上げ、魚は4匹となった。

 さっそく食べることになるのは自然の流れ。


「どんな料理にしますかニャー。食材はなんでも持っていますニャ」


「せっかくだけどシンプルに焼くだけにしたいの。いいかしら?」


「問題ないですニャ、食材の味を生かした焼き魚。キャンプの醍醐味ですニャー。レオンさんもいいかニャ?」


「もちろん。俺はニャーノさんが焼いてくれるならなんでも」


 レオンとニャーノさんも見せつけてくれる。

 フラウとニャーノさんが真剣な顔で魚を焼き始め、幸せを感じる。

 夏はとっくに終わったけど、なんか夏のキャンプっぽい感じがある。

 来年にリアルキャンプとか行きたいかも……でもフラウは受験生だし、その時の勉強次第かな。


「できたわ」


「上手にやけニャしたー!」


 串に刺さったシンプルな焼き魚をフラウから受け取る。

 現実でも食べた焼き魚、こちらの世界でも同様に美味しいのだろう。

 さらには飲み物として、シュワシュワとはじける炭酸の麦茶。

 状況は完全にリア充のやってそうなキャンプの夜そのものである。


「それでは……今日の素敵な1日と出会いと俺たちの未来に……乾杯!」


 なんとなく俺が乾杯の音頭を取る。

 現実ではやったことのない、リア充の中心人物になった気分である。

 みんなで炭酸麦茶の喉越しを味わい、魚にかぶりつく。

 気分はキャンプでもあり、サバイバルでもある。


「あー、うまいな。焼いただけなのにフラウが焼くとうまい」


「そうだな、ニャーノさんが焼いてくれたこの魚は世界一だ」


「愛情込めましたからニャー」


「もちろんわたしのもよ」


 魚を食べて浮かれるバカップルが2組である。

 この2人とは今後もずっと一緒に仲良く過ごしたいなあ。

 俺が将来設計として考えたことの中には、友達と夫婦ぐるみでずっと仲良くしたいってことだ。

 レオンの場合現実は色々難ありそうなのでゲーム内だけだが、とりあえずそれが叶いそう。

 お互いパートナーを釣れて狩りやクエスト、冒険に出かけるのはきっと楽しいだろう。


「おいおいカーター、何をやりきった顔してるんだ。これからだろう? まだ大きなイベントが残ってるんだからよ」


「そうだな、ドラゴンを倒す愛の試練か。楽しみだ」


「わたしたちなら余裕よ。ね? にゃあこ?」


「そうですニャー」


 いつのまにかフラウはニャーノさんににゃあこという可愛いあだ名を付けている。

 今まで猫の子とよんでたので、急に可愛くなったな。

 猫を相手にすると中二病は薄れるのだろうか。

 リアルでも猫にそんな名前つけてそうと思うとなんか可愛い。


「ドラゴン退治の日はもう決まりそうなのか?」


「そうだな……少し予定合わせが必要だがほぼ決まっている」


 ドラゴン退治、それは結婚を前にしたカップルたちが超えなくてはならない試練……をゲーム運営が作ってくれる素敵イベント。

 参加予定人数は7人、クエストクリアに必要なのは3時間と予測。とはいえ予定を合わせるのはそんな難しくない。

 なにせかしわもち以外はほぼ毎日インしてるし、休みの日もリアルよりゲームが多い優秀な人材である。

 とりあえず3連休がいいので、土日月の土日どっちがいいか、時間は昼と夜どっちがいいか悩んでいるところである。

 かしわもちが日曜のお昼ほうがいいかもと言っていたのでそうなる可能性が高い。


「そうか、楽しみだな。だがそれが終わってからが始まりだな。俺たちの人生最大のイベントだ」


「そうだな」


「楽しみにしてますニャ」


「わたしたちのはじまりとなる大切な日……期待せずにはいられないわね」


 みんな楽しみにしているようだ。

 ニャーノさんはそれが終われば念願の結婚、フラウはドラゴン退治の冒険という夢が叶う。

 俺とレオンはただただ幸せになれる。

 ユースとくーちゃんもきっと幸せになれるのだろう。

 かしわもちは当事者ではないが、息子2人が可愛い嫁を見つけたのだ。一番はしゃいでるかもしれない。


 なんか……まだ終わってないのにいろんな思い出が頭をよぎってきた。

 フラウとの出会い……そしてイチャつきまくる今。

 ついでに彼女ができたレオン。

 なんか……青春という感じである!


「よし、リバードでドライブしようぜ」


 俺の勢い任せの何も考えていない提案。

 他のみんなも反対することなく出発。

 何も考えずに思ったことを実行していく、これぞ自由な学生の醍醐味であろう。

 こうして、フラウと初デートの日は良き思い出となって過ぎていったのである……。

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