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77.新技

 前回までのあらすじ。

 俺は現実世界で中二病JKと出会い、なんやかんや仲良くなってこのゲーム、エターナルファンタジーの世界へと連れてきた。そして仲を深めて恋人となり、ゲーム世界では結婚をすることにもなった。子供設定のタル型ロボであるタルタル3体もいて結婚前から賑やか家族。

 今日は結婚してから住む予定の新居を作り込んでいきます。


「フラウ、この部屋の窓の位置はここでいいのか?」


「そうね……外敵の侵入を防ぐには不安だけど、その位置がわたしの黄金比、あなたの魔術結界に期待するわ」


 本日は完成した設計図を見ながら家を組み立てている。

 現実と違って物理法則に従わなくていいので、好きな空間に好きなものを配置できるという素敵な積み木遊び状態である。

 設計図といっても全体の大まかなものなので、窓の位置くらいなら好きに変更できる。

 ぶっちゃけ、建て終わった後でも変更できるのだが、やはり最初が肝心。


「この部屋は完成だな。だが家具がないと寂しく感じるな」


「そうね、でも魔導風水に基づき配置していくのは至難の業。まずは容れ物を作り終えなくてはね。時は有限よ」


 確かに家具の配置まで始めてしまったら、家はずっと半端なままになってしまう。

 まずはガワを作ることに専念だ。

 洋風なレンガの壁で少しずつできていくのが楽しい。

 なお、フラウと俺は背中合わせで別々の場所を組み立てている。

 なんとなく、ドラマとかでよくある会話をしてみたくなった。


「それにしてもフラウ、お前と初めて会った時はまさか一緒に家まで作る仲になるとは思わなかったぞ」


「あら、わたしは初めて話しかけた時にもう知っていたわよ。ああ、あなたは自身のことに予知は使わないんだったわね。既知の未来などつまらないからと」


 そもそも予知なんてできないわけだが、なんかそういう言い方されるとかっこいいのでそれでいいや。

 にしても俺に初めて話しかけた時に本当にそんなことを思っていたのだろうか。

 いや、真実がどうあれフラウ自身は本当にそうだと思い込んでそう。

 とりあえずもっと深く聞き出したいので記憶を呼び起こしてみよう。

 確か花ちゃんが家の鍵を無くしたか忘れたかで俺の家にトイレを借りにきて……。


「そうだな。ではフラウ、確かあの日は家の鍵を無くしたんだったか? あれも偶然か? いや、あるいはわざとなのか?」


「そうね、あなたが前世の記憶、つまりわたしのことを覚えていないのはすぐに察したわ。だからなんとしても繋がりを作る必要があった。確かそう」


 確かそうって、なんか今設定を考えたかのようでもある。

 とりあえずここでわかるのは、今のフラウが俺を好きすぎるという事だ。

 あー幸せ。


「そうか、うまいことやったな」


「ええ、最初のあなたはわたしがわからないどころか拒否しているようで焦ったわ。あの日は……わたしが人生で初めて他者に接触を試みた日……」


 おお……これは本当っぽいしなにか心に響く。

 普段人に話しかけたりしない子が勇気を出してくれたわけか。

 確かに最初の俺は怖さで拒否してたわけだが、頑張ってくれてほんとよかった。


「頑張ってくれたんだな。おかげで今がある。感謝するぞ」


「ええ、あれは褒められるに値する行動だったわ」


 背中合わせのフラウが俺に寄りかかってくる。

 このまま作業を止めて抱きしめたい衝動に駆られるが我慢する。


「褒めるだけでは足りないな。何か欲しいものはないか?」


「ん……こうやって好きな時に借りられる背中を得たから満足よ」


「そうか……いつでも好きに使ってくれる。どちらの世界でもな」


 これは俺にとっても嬉しい行為。

 ほんと幸せな2人である。

 恋に浮かれすぎと言われそうだが構わない、浮かれてるんだもの。


「ええ、そのつもりよ。ん……侵入者の気配よ。結界が破られたようね」


 このプライベート空間に許可なき他者は入ってこれない。

 つまり入ってきたということは俺がフラウが許可を出した相手である。

 誰が来たのかわかってるわけだが、フラウの遊びに付き合おう。


「よし、作業は中断だ。迎撃するぞ。玄関予定地へ向かおう」


「ええ、先行は任せるわ」


 玄関予定地はまだドア部分が空洞の状態の場所だ。

 ドアを付けると出入りする感が出るので、最後につけて初めて家が完成するつもりで作っている。

 俺とフラウはドア予定場所の両端へ張り付く。


「顔を出した瞬間に攻撃を受ける恐れがあるわね」


「そうだな、ミサイルが飛んでくるかもしれない」


「では囮を……」


 フラウが外に向かって手のひらサイズのコインを放り投げる。

 なぜそんなにでかいかというと、小さいコインだと見えないかもしれないので、動体視力の衰えた年齢の人にもやさしいのだ。


「かしわもブーメラーン!」


 突如そんな声が響いてきた。

 くっ、ミサイルは警戒していたがブーメランだと!?

 何が起きるのか固唾を飲んで待っていると、かしわもちがクルクル回りながら飛んできて目が合った。


「タカシ発見! リターン!」


 ドア予定場所の敷居を少し超えて侵入してきたかしわもちはそのまま回転しながら反転して消えていった。

 あれがかしわもブーメランか……会うたびに新たな技を開発しているあの姿勢は見習わなくては……。


「見つかってしまったようね。隠れていてもやられるだけだわ。このまま打って出る?」


「いや、見つかったのは俺だけだ。俺が出るからフラウは隙をついて出てきてくれ」


「わかったわ。死なないでね……」


「お前を置いて死にはしないさ」


 俺は雰囲気で持っていたノコギリを手に外へ飛び出した。

 だがそこには誰もいない……。

 代わりに見覚えのない一本の木が立っていた。

 中心にはかしわもちの顔に似た模様があるが、いたって変哲のない木だ。


『木を切り倒して平気なの?』


 突如そんな声が聞こえてきた。

 木の枝が風で動いたのか、どこかを指差しているように見える。

 そこは大量の木材が積まれた資材置き場。

 これはもしや木の精霊の声?

 ならば怒りを鎮めなくては。


「木々には感謝をしながら切り倒している。申し訳ないが、これらは家を建てるために必要なんだ」


『それは私利私欲のためであろう。違うというのであれば、愛のためだと大きく叫ぶのです。あ、フラウちゃんも呼んでね』


 くっ……この木の精霊を鎮めるにはそんな恥ずかしい事を叫ばなくてはならないのか。

 だがそれをしないとこの寸劇は終わりそうにない。

 もう今さら恥ずかしいことなんてない。


「フラウ、出てきてくれ!」


 家の方に向かって叫ぶとフラウが警戒しながらこちらへやってきた。

 そしてかしわもツリーを見て何かを察した顔をする。


「木の精霊ね、鎮める儀式を行わなくては。わたしはどうすればいいの?」


 まるで聞いていたかのように説明いらずでありがたい。


「木の精霊は木を大量に切り倒したことに怒っている。だが、その理由が愛のためであれば許されるらしい。それを伝えるぞ」


「わかったわ、あなた」


 フラウは俺の腕にしがみついてくる。

 そして2人で声を揃えて叫ぶ。


「愛のために木が必要なんです!」


『その言葉が聞きたかった……』


 すると謎の木はキラキラと光を放ち、うっすらと消えていった。

 そしてその消えた後には大量の木材が出現していた。


「鎮まったか……」


「でもあれが最後とは思えない。きっと第二第三の精霊がいずれ……」


「おーい、タカシー。フラウちゃーん」


 余韻に浸っていると、不意に背後から声が聞こえてきた。

 振り返るとかしわもちがトタトタと走ってくる。


「お母様、ご機嫌麗しゅう」


「やあ、かしわもち。この木材持ってきてくれたの?」


「うん、ゆうすけに頼まれたんだよ。でも不思議なことにここに来てから5分くらいの記憶がなくてねえ」


 その時俺は、かしわもちの頭に葉っぱが付いているのが見えた。

 ここらでは見ない葉っぱだ。

 俺はそれを手で払い落とす。


「葉っぱがついてるよ」


「あらほんとだ。たぬきにでも化かされたかねえ?」


「そうかもね」


 とりあえずユースが作ってくれてかしわもちが持ってきた大量の木材を庭に積み上げる。

 恐らくはこれで材料がほぼ揃ったはずだ。

 これからかしわもちとユースとくーちゃんが手伝ってくれる予定なんだけど……。

 

「ありがとね母さん、それでユースたちはどうしたの?」


「んーとね、差し入れのお菓子用意してから来るってさ」


 ふむ……だとしたら不思議なことが1つ。

 先ほどのかしわもブーメランだ。

 あれは1人ではできないはずで、必ず発射する投げ手が必要なはず。

 それにこのプライベート空間に侵入した気配は1つだけではなかった。


「フラウ、気づいているか?」


「ええ、何者かが潜んでいるわね。そこよっ!」


 フラウがそこらに落ちていた枝を手に取り、かしわもちの足元に投げつける。


「くうっ」


 かしわもちの足元……いや、影から悲鳴が聞こえた。


「くくく、よくぞ見破った」


 なんと影が起き上がり人の形を成していく。

 それはかしわもちだった……。

 つまりかしわもちが2人、この世界にはかしわもちは1人、影を叩くとかしわもちが2人。

 そんな素敵な影はいらない。

 つまり……。


「また変身しているようだな」


 俺は元々立っていたかしわもちを指差す。

 なんでこっちが怪しいかと思ったかというと、なんか普段と比べて普通だったからだ。

 正解だったようで、偽かしわもちは変身を解きくーちゃんが現れた。


「さすがお兄さんですね。あっさり見破られちゃいました」


「はは、かしわもちの真似は難しいんだよ。ただユースはどこにいるかさっぱりだ。フラウはどうだ?」


「わたしにもわからないわ。なにかに完璧に擬態しているのかしら?」


 見渡しても怪しいものが見当たらない。

 この空間にいるのは間違いないのだが……我が弟ながらやりおるわ。


「よし、降参だ。ユースはどこにいるの?」


「えーと……とこだろう」


「たしか目印を端っこに……」


 かしわもちとくーちゃんもわかってないのか、キョロキョロしだす。

 そして木材の山の周りを回り出した。

 もしや木材に擬態?


「あ、ありました。あの1番奥のやつです。目印につけたYのマークがあります」


「よし、取り出そうか。多分変身解いたら崩れちゃうよ」


 どうやらユースは木材に擬態していたらしい。

 あの木材が大量に現れる演出はユースが何かしらやってたんだな。

 でも俺が1番下に置いてしまったので出られなくなったと……。

 うまくいけば俺たちを驚かすことができたのだが、運の悪いやつである。


「ふう……やっと出られたよ。ありがと」


「面白い演出だったが、少し爪が甘かったな」


「そうだね、まあ楽しかったよ」


「うん、俺も」


 というわけで、何の意味もないみんなでワイワイとする日常のおふざけはおしまいである。

 一日中建設というのも味気ないので、みんなが来るタイミングで休憩がてら遊ぶ予定だったのだ。

 遊び内容はだいたいの本筋を適当に決めておき、あとらその場で思いついたことを好きにやっていくマルチストーリー、マルチエンディング。

 劇団かしわもちがよくやっているやつである。


「ではおやつにしましょう」


 くーちゃんの作ってきてくれたお菓子を食べながらのんびりタイム。

 この後またみんなで家を建てていく予定だ。

 きっとかしわもちが壁の中に埋まって出られなくなるとか楽しいイベントが起きるに違いない。

 なんてありえないことを考えつつ作業をしていくのだった。


 そしてついに家の外観がほぼ完成した。

 ほぼ完成というのは、まだ玄関のドアがついてないから。

 ここには例のドラゴン退治クエストを終えてからドアを付けて入る予定なんだ。

 なお、壁に埋まったかしわもちは何故か煙突から発射されて生還した。


「よし、いい感じだな」


「ええ、わたしたちの始まりの地よ」


「2人の愛の巣なんだねえ、時々遊びに来ていいかい」


「もちろん」


 みんなで家を眺めつつ感慨にふける。

 と言っても、まだこれから内装を配置していくわけだが。


「じゃあ予定通りに手分けして家具置こうか。好きなようにしていいから」


 俺は自室と会議室。

 フラウは自室と地下の研究室。

 くーちゃんは台所と食事場。

 ユースは全体の照明とお風呂場。

 かしわもちはゲストハウス。


「では散!」


「のりこめー!」


 というわけで皆で家に乗り込んで各自思い思いに作業である。

 いや、ドアがついてないのでまだ家ではなく建設中の建物である。

 変なところにこだわると思われそうだが、こういう気分の問題って大事さ。


 さて、まずは自室だが特に工夫もなく普通の配置でいいだろう。

 本棚に机にソファーにテーブルとベットのシンプルなよくあるお部屋。

 ベッドはフラウが来た時のためにダブルベッドにしておく。

 壁には隠し扉があって、隣の部屋のフラウがいつでも来れるようになっているのだ。

 現実ではやりたくても物理的に不可能な仕掛けをゲーム内で作り上げたのである。


 コンコン……。

 なんかノックされた。

 もしやフラウが早くも俺に会いたくなって?

 少しワクワクしながらドアを開けると、そこにいたのはかしわもち。


「あれ、タカシだ。迷子になっちゃったんだけどここ何のお部屋かな?」


「ああ、俺の部屋だよ」


「へー、隣の部屋と繋がってるって不思議な感じだねえ」


「ああ、何かあった時の非常用にね」


 フラウと会いたくなったらすぐ会えるようにとは恥ずかしくて言えない。


「そうなんだ。でも2人は部屋を別々にするんだね。夫婦なんだから一緒で良さそうなのに」


 それは確かにその通り。

 かしわもちこと俺の母さんも父さんと同じ部屋にいて、俺とゆうすけにはそれぞれの部屋をくれた。

 だから俺的にも夫婦は同室でいいと最初は思っていたんだ。

 だがフラウは言った。


『魔法を使える世界の住人は魔法のありがたみを忘れているわ。それが当たり前となっているせいね。だからわたしもあなたの存在を当たり前と思いたくないの。常にあなたを求めていたい』


 なんかすごいことを言われ、確かにそうかもと思った。

 フラウが同室ではなく隣にいることで、会いたいけどどうしようかなー、向こうから来ないかなー、とかいろいろドキドキワクワクできるのである。

 常に恋心を持っていたいということで賛成した。

 でもこれを正直に言うのは恥ずかしいので……。


「部屋はたくさんあるからね。現実ではできないお金持ちの家っぽくしたんだ。ま、一緒の部屋にしたくなればいつでもできるしさ」


「あー、たしかにお金持ちの家は憧れるよね。でも狭い家の方が家族の仲は近くていいんだけどなあ」


 これはかしわもちの本音であろう。

 俺もゆうすけも小さい頃から自分の部屋を欲しがっていて、引っ越して部屋を手に入れて大いに喜んだ。

 ただ母さんは喜ぶ俺たちを見て少しだけ寂しそうにしていた……気がする。

 というのは嘘で、ぶっちゃけ小学生の時のことなんてよく覚えてないわけで、今のはそれっぽく語ってみただけである。


「そうだね、そのうち寂しくなってみんな同じ部屋でずっと過ごしてるかもだよ」


「そうだといいなあ。あ、時々遊びに来ていいよね。邪魔にならないようにするからさ」


「いいよ、フラウが喜ぶから」


「やったー!」


 子供のような見た目で子供のようにはしゃぐかしわもち。

 息子とその嫁とワイワイするというかしわもちの夢がもうすぐ叶うのである。

 幸せな親孝行である。


「じゃあかしわもちの担当の部屋に案内するよ」


「ありがとね、案内が必要なくらい大きい家だもんね。タカシが出世したみたいで嬉しいわあ」


「現実でもそうできたらいいんだけどね」


「そうだねえ……でもどうせなら……いや、なんでもないや」


 かしわもちの言いたいことは何となくわかる。

 おそらく二世帯住宅とかにしたいのだが、遠慮して言わないのだろう。

 叶えてあげたいところだけど、お金がいるし都合のいい場所が見つかるかもわからない。

 とりあえずなんでも叶うゲーム世界で一旦満足してもらおう。


「着いたよ。ここがお客さんたちと一緒にワイワイするお部屋。1番よく使うことになると思うからさ、よろしくね」


「それは責任重大だね。あ、くーちゃんが見える」


「すぐ隣が台所と食堂だからね。その辺も踏まえて好きにやってみてよ」


「任せて! これだけ広ければやりがいがあるよ!」


 そんなわけで、本日は各自が担当の部屋を思い思いに飾りつけるのであった。

 そして布を被せて隠す。

 実際に住む直前にみんなで見回って楽しむと言う計画だ。

 ほぼ完成の家だが、住むのとお披露目はもう少し先だ。

 楽しみにしつつ、今日の夜は更けていくのだった……。

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