75.タルタル転生
前回までのあらすじ。
暴走タルタルのさまようオランデー遺跡に住む地縛霊的な昔のタルタル研究者の幽霊さん。それを魔導石につっこんでタルタル研究所に連れて行こうとした俺たち。その時遺跡に異常が起き、暴走タルタルたちが俺たちを逃すまいと集まってきた。
その戦いは激しく、俺たちは全滅の窮地に立たされた。だがその時1体のタルタルが助けに現れた。たった1体で何ができるのかと思うところだが、ゲーム内イベントな以上、なにかすごいことが起きるはずと期待せずにはいられない。
「おい。この状況をなんとかしてくれるのか?」
俺は複数の暴走タルタル略してボサタルと戦いながら、救援に来てくれたらしいタルタルに叫ぶ。
だがそいつは動きを止めて何も喋らない。
代わりに返事をくれたのは俺の可愛い子供設定のタルタル、レオルとラーニャだった。
『オ父サン、ファーリィオ姉チャンカラ伝言』
『ソノタルタルニ魔導石ヲセットシテ!』
先ほど幽霊さんを封じ込めた魔導石のことか。
俺は戦闘中なので下手に動けないから魔導石を取り出し……。
「フラウ、これを頼む。俺は敵を食い止めなくてはならない」
「わかったわ!」
魔導石をフラウに投げる。
フラウはそれを謎タルタルにセットする。
果たして何が起きるのか。
『おお? 喋れるぞ。そして動けるぞ!』
あ、喋った。
てか、他のタルタルと違って喋り方が流暢だな。
「もしやあなたは?」
『うむ、儂じゃわい。じゃが話は後じゃ。今はあやつらをなんとかしよう』
「どうやって? 暴走を止める力がその体にはあると?」
『止めることはできんわい。じゃが……暴走の方向性を変えてやるのよ。ほーれ』
幽霊入りタルタルが樽の形をした何かを取り出す。
なんとなくキーボードっぽいので入力端末なのだろう。
樽の手で器用に入力しているが、タルタルは魔力による通信ができるので見た目をそれっぽくしているだけかもしれない。
カチャカチャカチャと心地よい音が響き、最後に幽霊タルタルは手を大きく振りかざし……。
タールッ! という音が響き渡った。
ターンッじゃないのかと心の中だけでつっこんでおく。
さて何が起こる?
『全機戦闘解除シテ後退セヨ! 侵入者ハ強敵デアル。我ガ確実ニタオス!』
おお? 暴走タルタルの群れが撤退していく。
そして指揮官だけがこちらにやってくるようだ。
これなら勝てるかも。
「すごいわね。何をしたの」
『被害を出さぬためには最強の戦力をぶつければいい、というおかしな方向に暴走させたんじゃよ』
「なるほど、さすがの機転だわ。さすが深き知識の研究者ね」
『ほっほっほ、褒めるのは勝手からじゃ。ほれ、とっておきの回復アイテムも持ってきてやったぞ』
幽霊タルタルさんがなにか……白い粉を空中にばら撒く。
あれはNPCだけが使える贅沢品である粉末状エリクサー。
HPもMPも全回復だ。
不思議なことにタルタルであるレオルとラーニャもしっかり回復。
「これならいけそうだ。よし、敵の指揮官を倒すぞ!」
「ええ、やりましょう」
『儂はこれ以上何もできんから応援してるでな。しっかりやるんじゃよ』
会話が終わると同時に指揮官タルタルが到着した。
迎え撃ち剣で殴りかかる。
『他ノ量産機ト同ジト思ウナヨ。我ガ力見セテクレヨウゾ』
指揮官タルタルは近くで見ると、他のやつらより大きめだ。
タルパーツも多めで関節もよく動きそう。
たぶんパワーもスピードも他のタルタルより上なのだろう。
だが!
「相手は強敵だが一体のみ。俺たちの連携を見せてやろう」
「ええ、わたしたち家族の絆は堅剛よ」
『ミンナ仲良シ!』
『ヨシ!』
『相変わらず仲良いのうお前さんらは……』
仲良し家族の会話にツッコミ役が一時参戦し、盛り上がりつつ戦闘が開始された。
今の編成であれは強敵であれど倒せるだろう。
とりあえず普通に戦って強さを測ろう。
「とうっ! くっ……硬いな……」
『我ガボディハ特別製デアル。ソノヨウナ貧弱ナ武器ナド効カヌ。クラエ!』
「むうっ! こいつ強いぞ……」
「弱体魔法全て抵抗されたわ。レオルにラーニャ、あなたたちは回復に専念して」
やば、この指揮官ボサタル強いぞ。
俺の今の職業闇騎士は攻撃力は高いが防御は弱め。
レオルとラーニャが必死に回復してくれるがわりとギリギリの戦いになりそう。
このゲーム、強敵は弱体魔法で弱らせてなんとかするのがセオリーなのに、効かないとか反則だろう。
『オ父サンヲ回復ダー』
『オ父サン、ソンナヤツ早クヤッツケチャッテ!』
『貴様ラ、何故侵入者ノ側ニイルノダ。待機セヨ!』
指揮官ボサタルはレオルとラーニャ、そして幽霊さん入りタルタルに向かって叫ぶ。
この遺跡には暴走したタルタルしかいないので、研究所で開発されたタルタルのことなど知る由もないのだろう。
戦いながら会話って滅多にないシチュエーションなので新鮮だ。
戦闘力で押されているので、せめて口論では勝ちたい。
「おかしいのはお前の方と知れ。お前たち魔導兵器は本来、人と共に戦い人を守る存在だ」
『ソンナワケハナイ! 我々ハコノ遺跡ヲ守ルトイウ使命ヲ帯ビテイルノダ』
「ならばその指令は誰から受けた? 人ではないなら誰だ!」
『ム、ムウ……我ハ一体ナゼココヲ……』
TARcommanderはスピードダウンの効果……。
お、なんか弱体ログが出た。
魔法は効かないが、こうやって会話をうまくやれば弱らせることができるのかも。
それならフラウが得意かも知れない。
「フラウ、こいつは会話機能も優秀のようだ。そしてそれが弱点ともなっている。矛盾をついていくぞ」
「やってみるわ……。この子たちはあなたたちとは違う、進化した存在よ。そう……愛の力によってね」
『愛……進化……何ヲ言ッテイルノダ……? ワカラヌ……意図不明……』
TARcommanderはフラウに怯んでいる……。
小っ恥ずかしいことを平気な顔で言うフラウ。
そして混乱したのかフラウに怯えたかのように動きを止める指揮官タル。
多分なんだけど、こいつ何を言っても弱体化していく設定のような気がする。
そういうイベント戦闘と予想してフラウに乗っかる。
「愛とは人の持つ力。そしてあの子達はその力を与えた。故にお前たちを遥かに超えた存在だ」
『ムムム……思考回路フロー……。再起動ヲ実施……防御形態移行……』
おお……なんか変形しつつ手足が引っ込みおっきなひとつのタルになった。
俺の言葉とは無関係な感じにおかしくなってしまったようで予想通りなんだが、愛とか恥ずかしいことせっかく言ったんだから何か反応して欲しかった。
でもあれか、このゲームの基幹AIが愛がよくわからないからスルーした可能性も?
『くっ……魔法が弾き返されるわ……』
俺の緊張感のない思考をよそに戦闘は続いている。
フラウが魔法を放つも完全にレジストされたようだ。
そして俺の剣攻撃も弾かれてダメージを与えられない。
こんな時は……。
「博士、どうすればあいつを倒せる?」
『誰が博士じゃ』
幽霊さんはタル憑依前から心地よく突っ込んでくれてたが、今もそれは健在で嬉しい。
「名前を知らないもので……」
『儂の名は……。秘密じゃ。もう博士でええわい』
名前を教えてくれないとは何か理由があるのだろうか?
お年を召されてるのでボケて忘れた可能性もあるので怖くて聞けない!
あと性別も不詳だなこの幽霊さん。
「では博士、この防御形態の攻略法を」
『うむ……これは一部の機体に備わった防御形態。見た目は樽でも強力な防御結界を展開しておる。遺跡より魔力を吸い上げるため、まず打ち破れぬ』
「では攻略法がないと?」
『いや、動かぬ間に罠を仕掛けるのじゃ。ほれ、これがレシピじゃ。材料は先ほど手に入れたじゃろう?』
なにかスクロールを渡される。
魔導石爆弾の作り方……?
材料に特殊なレア魔導石を使うようだが、先ほどの戦闘でいくつか手に入っているな。
見たことないものが戦利品に入ってこっそり喜んでいたのだが、イベントアイテムだったか。
「よしフラウ、一緒にこれを作るぞ」
「わかったわ!」
フラウと仲良く座り込んで錬金術開始である。
たぶんだが、これを完成させるまで敵は動かないと思うので焦らなくていいと思う。
ゲームに慣れてしまったが故の緊張感の無さである。
「作り方は以前やった魔導石に魔力を込めるのと似た感じだな」
「ならばこの形ね。足を開いてくれる?」
「お、おう……」
床に座って足を開いた間にフラウが入ってくる形。
作業物はフラウの前にあるので、俺はフラウに密着しないとそれに手が届かない。
これは映画で見たことのある、2人で茶碗作りのろくろを回す陣形だ!
『そんな形でする必要はないのじゃが……お前らやっぱりイチャつきたいだけじゃろう』
「いいえ、これは意味のある行動。あなたの想定以上のものを作ってみせるわ。見ててちょうだい」
『おう……』
フラウはとても真剣で幽霊タルさんのツッコミをものともしない。
イチャつけて嬉しいと思ってる俺は不謹慎なのだろうか。
いや、第二思春期を迎えた男として普通のことである。
でもこの形……現実だったらなにか硬いものが当たるとか言われてそう……。
ゲームで良かった。
「では始めましょう。前回は創造の力だったけれど今回は破壊の力ね。でも思いの込め方は一緒よね」
「そうだな……」
フラウ可愛いなあとか大好きだなぁとか、そんな想いしか出てこない。
まあこれでもいっか、愛の力で爆発を引き起こす。
「ねえ、今何を考えてるの?」
「フラウのことだ」
「ふふっ、ならばわたしと同じね。わたしもあなたのことを考えているわ」
『やはりイチャついとるじゃないか……』
幽霊タルさんのツッコミがある以外はいつも通りの俺たち。
NPC相手なら見られても恥ずかしくないからよい。
てか逆に、誰かに見せつけるのも割とありだな……なんて思ってしまう。
こんな邪な想いと共に、魔導石は赤黒い邪悪な色に染まっていく。
「破壊の力……深き真紅……ふふふ……美しいわね……」
この爆弾作りをしっかり楽しんでるようで何より。
このまま振り返ってくれたらキスできるなあとかそっち方面にしか思考がいかない俺。
そんなこんなを繰り返している間に爆弾は完成した。
「できたわ」
『うむ、終わりよければすべてよし。既に戦闘の緊迫感がなくなってしもうたが、それを樽の周囲に配置じゃ』
防御形態で動かないままの指揮官タルの周りに爆弾を配置。
再起動って時間かかるんだなあ。
愛がどうこうで混乱してるのかな。
愛がよくわからずに機能が狂った某ロボットゲームのAIを思い出す。
「あとは起爆だけか」
「この防御形態が解除された瞬間を狙うのよね。卑怯な気もするけど仕方ないわね」
『うむ。起爆は制作者であるお前さんたちが石を揃えて念じればよい。ま、楽勝じゃろうな』
「なるほど、ではポーズを決めておきましょう」
フラウが何かを手に握り込むように拳を丸めて前に突き出す。
俺も同じように手を前に出してフラウの手に添える。
頭の中に某映画の滅びの呪文が浮かぶ。
滅びという恐ろしき呪文なのにたった三文字という唱えやすさに定評のあるアレ。
「ポーズはこれでいいとして、詠唱はどうする?」
「そうね……あの三文字の呪文では遺跡が崩壊しかねない。なにか考えましょう」
ふむ……なにかかっこいい呪文を唱えたいが、何を言っても二番煎じ感が否めない。
いっそギャグに走るか……『カシワモチ!』
ちょっともじって『シワモチカ!』
三文字なら『カシモ!』
「ふむ……呪文を考えるのは苦手だな」
「あなたは無詠唱の使い手だものね。ふふっ、それでいきましょうか。詠唱が強きものの証などと考えていた子供の頃のわたしとはおさらばよ」
呪文なしか、まあそれならそれでいい。
詠唱がかっこいいと思っているのを卒業するのだとしたら、中二病は成長したのか衰退したのかどちらになるのだろう?
ま、いいか。
『再起動シーケンス……間モナク完了……』
タル指揮官がわかりやすく喋りだした。
『お前たち、準備はいいか?』
「ああ……」
「当然よ」
やがて樽が変形を始め、手足がニョキニョキと出てくる。
元が樽ってことを除けばやけにカッコいいし、変形機能付きプラモ出るなら買いたい出来である。
やがて元の形態に戻りその瞬間……脳内に例の三文字の呪文が唱えられてしまう!
『ヌオッ! ナンダコレハ!』
指揮官タルの周りに三角形に配置した魔導石爆弾から光の柱が上がり、それが魔法陣を形作っていく。
まるで結界内に指揮官タルが閉じ込められたような形だ。
やがてその内部が強烈な光に包まれ、音もなく大爆発を引き起こした。
やがて見えたのはボロボロとなった残骸である。
「やったようだな」
「ええ、でもこれで最後とは思えないわ。次なる暴走兵器はいつ来るか……」
『こらこら、まだこれで終わりじゃないぞ。あの音が聞こえぬか』
ん?
大通路の方が騒がしいな。
あ、まだまだ大量のボサタルがいるんだった……。
指揮官を失ったあいつらはどうなるのやら。
でももう戦いたくないなあ。
「あいつらの暴走の方向性を変える方法はないのか?」
『ふむ、お主勘がいいのう。その指揮官の残骸に魔導石はないか?』
「さすがだわ」
褒められて嬉しい。
今の勘はゲーマーとしての勘である。
言われたように残骸を探すとボロボロの魔導石発見。
魔力もつきかけていて今にも壊れそう。
「ボロボロだが使えるか?」
『ふむ、ぎりぎり無事か。最後の魔力をこのコアを守るのに使ったんじゃろうな。後少しだけ使えるじゃろう。貸してみろ』
ボロボロ魔導石を渡すと、幽霊タルさんはそれを頭上に掲げた。
『異常事態発生! 指令ロールバック……各自持チ場ニ戻レ!』
ボロボロ魔導石が光を放ち、指揮官タルの声が響いた。
すると大通路に大量にいたボサタルたちが散っていく。
そしてあとに残るは、いつもそこにいる数体のボサタルのみだ。
『よし、うまくいったようじゃな。もうこれは使えそうにないが、研究のため持ち帰ってみるかのう』
ボロボロだった指揮官タルの魔導石にヒビが入っていた。
特に戦利品はないようで残念である。
さて、説明タイムだ。
「では博士、一体どうしてここに?」
『うむ、実は儂は魔導石となった時から遺跡内の異常を感じてのう。お前たちに訴えかけてみたのじゃが届かなんだ。しかもお前ら2人きりになったのを幸いとイチャつき始めおったし……』
ううむ……フラウとイチャついてる時に幽霊さんの魔導石からツッコミが来た気がしたのは気のせいでなかったか。
『じゃが、そこの2体とは通信ができたんじゃ。正確にはその2体に指示を出しているファーリィじゃったか? そして研究所に支援要請してもらったんじゃ。おかしな話じゃが、お前らがイチャついてたおかげで時間が稼げたわ……』
てことは、俺たちがあそこでイチャこらしてなければ助けが遅れて全滅していた可能性があったか。
「ふっ、計算通りよ。ね?」
「うむ、そうだな」
『嘘つくでない!』
当たり前のように言うフラウと乗っかる俺。
幽霊タル博士のツッコミが心地よい。
なお今フラウは俺の腕にしがみついてきているが、これについて博士タルはつっこんでくれないらしい。
「それでその体は?」
『うむ、試作中の機体を送ってもらった。戦闘用ではないが、戦場で動き回れるよう機動力と通信に特化したものじゃ』
「ほう、そんなのが。でも単機で来たのですか?」
『一応護衛は連れてきたぞ。道を作ってもらい、最後はもう速度性能でゴリ押ししたがな。時代の進歩は凄まじい。壁走りは楽しかったぞい』
あの壁走りは羨ましかった。
男の子はみんな憧れる壁走り。
あの走りができるイベントの実装を願ってしまう。
「なんにせよ助かりました。暴走の誘導お見事でした」
『うむうむ、最後の研究が無駄にならずにすんだ。儂が幽体となって彷徨っていたのも無駄でなかったわい』
そうですね……と言おうとして気づいた。
この幽霊さんの魔導石を持ち出そうとしたから襲われたんだよなたぶん。
おかげで楽しいイベントが起きたので何も問題はないがな。
一応流れで聞いておくか。
「そうですね。しかし何故いきなりあのように大量に集まってきていたのでしょう?」
『まあ儂のせいじゃろうな。儂が幽霊としてあの部屋にいる間、特殊な魔力があったはずなんじゃ。それが不意に消え去ったのであやつらは盗難と判断したのじゃろう』
「なるほど」
「でもどこから湧いてきたのかしら? あのような特殊な存在が潜んでいたなんて」
『儂のおった部屋のように隠し部屋がまだまだあるんじゃろうな。見えざる脅威をひとつ潰せたことを幸運と思おう』
この遺跡はまだまだ謎だらけ。
プレイヤー視点で見るとあらかた探索され尽くしてるんだけど、ゲームなのでバージョンアップで隠し通路やら部屋がいくらでも沸いてくる。
ファンタジー世界の成長するダンジョン的なものと思っておこう。
「くっ……魔力の限界ね……」
「フラウ?」
『むむ? 大丈夫か?』
フラウが急に苦しそうにうずくまる。
恐らくだが、魔法少女の格好してるわけでそろそろ活動限界……という設定なのだろう。
幽霊タルさんは本気で心配してくれてるようで少し申し訳ない。
さて……ショートコント、魔法少女の限界。
「フラウ、戦闘モードを解除するんだ。もう危険はない」
「ええ……でも反動で動けなくなる……あとは任せたわ……」
フラウの魔法少女形態が解除され、いつもの黒ローブ姿となる。
そしてそのまま眠るように俺に向かって倒れてくるので抱き止める。
『おい、大丈夫なのか?』
「ええ、いつものことなので。では研究所に戻りましょう」
『うむ……儂は調整もあるので先に帰るぞ』
そう言って素早く消え去る幽霊タルさん。
おそらく先ほどまでいたイベント空間は解除され、通常空間に戻ったと思われる。
NPCと一緒に移動できないいつもの仕様である。
てか……『お前らイチャつきたいから倒れる演技じゃろうが』とかつっこんで欲しかったな……。
「さあ帰るかフラウ、レオル、ラーニャ」
『カエルー』
『オ母サンハ抱ッコ?』
無言のフラウはラーニャが言うようにお姫様抱っこ。
てかラーニャの言葉はフラウが言わせてるわけだが、甘えてる感じで可愛いのでとてもヨシ!
さ、ワープできるようになったけど味気ないので歩いて行くか。
そして大して危険なこともなく、無事にオランデー遺跡を脱出である。
てか……退屈だ!
フラウ寝たふりしてるから喋らないだもんなあ。
いや待てよ……ラーニャと話してみるか。
「なあ、ラーニャ」
『ナアニ?』
「お母さんはお父さんのこと好きだと思うか?」
ラーニャに聞いてるわけだが、答えるのは操り手のフラウ。
なんて返事が来るかなあ。
『ウン、大好キダヨ!』
ストレートに答えられた。
元々本人も照れずにこう言うことを言うわけだが、ラーニャを通しても変わらずだ。
てか、聞いた俺が照れる。
でもどんどん深掘りしよう。
「どのくらい好きだと思う?」
『アノ山ヨリ高く、アノ海ヨリ深ク……深淵ニ踏ミ込ムガ如ク……』
「そ、そうか……」
思ってたのと違う感じだったが、フラウらしいと言えばらしいな。
恐らくは思いつく限りで好きだと表現してくれたのだろう。
嬉しい!
「オ父サンハオ母サンヲドノクライ好キ?」
向こうからもきたか。
ふと抱っこしてるフラウの顔を見ると、心なしかニヤけている気がしないでもない。
フラウに向かって正直な気持ちを言おうとするも、なんか顔見てると照れちゃう。
ラーニャに向かって話しかけるか。
「一生一緒にいたいな。ずっとこんな風に、いや……もっともっと仲良くなってさ……。できるかな?」
『オ父サンガ本気デ願エバ出来ルヨ!』
「そうか、じゃあ本気だからできそうだ」
『ワーイ!』
ラーニャがジャンプして俺の背中にくっついてきた。
樽型の手は某猫型ロボットのように吸着性能があるので、俺の背中にくっつけるのだ!
ま、ゲームだから問題ないのであって、現実でこんな木と金属の塊が乗ってきたら俺は潰されてることだろう。
とりあえず子供がじゃれてくる感じでとても良い。
『ボクモー』
レオルもうらやましいのか同じように飛びついてきた。
俺が動かしてるんだけどさ……。
レオルとラーニャは場所を上手いこと調整し、左右の肩にそれぞれぶら下がる形となった。
うむ、理想的親子の散歩スタイル!
この後、街におかしなやつが歩いていると評判になることを、このときの俺はまだ知らないのであった。




