72.新たなる力
前回までのあらすじ。
フラウがゲーム内で初のレベル30を達成お祝いパーティーが開催中である。魔法少女のコスプレをしたフラウに対し、かしわもちと鳥の神様が用意した演出ですんごい盛り上がりを見せている。なぜか俺とフラウの誓いのキスシーン的なイベントも有り、結婚式をしているような気分ともなっている。さあ、ここからグランドフィナーレだ! ちなみに今の俺とフラウは空中に浮かんでみんなに注目されています。
ん……?
ふと、うっすらと空中に何かが見えてきた。
あ、半透明のかしわもちだ。
先ほどと同じようにカンペのフリップを手にしている。
『フラウちゃんが大魔法を使って〆て』
なんか曖昧な指示である。
大魔法って言われてもなあ……。
ま、適当にやれば何か起こる仕掛けになっているのだろう。
今日は絶好調のかしわもちを信じて、フラウに魔法を使ってもらうか。
「フラウ、最後の締めだ。思いつくままに大魔法を行使してくれ」
「大魔法……? 何も思いつかないけどわたしにできるの?」
「大丈夫だ、俺を信じろ」
「わかったわ。降りるけど手は握っておいてね」
可愛いお願いをしてフラウはようやく抱っこ状態から降りた。
降りたって言っても空中に浮かんでいる不思議な状態ではあるが。
さ、手を繋いでフラウを見守ろう。
「みんな、これから大魔法を行使するわ。うまくいくかわからないけど……」
その言葉に、大盛り上がりしていた皆んなが再度静まり返り、フラウを見つめる。
次は何が起きるのかとワクワク顔である。
ほんと、うまくいってほしいな。
「これは皆が幸せになれる魔法。運命の出会いを引き寄せる魔法。離れた想い人にだって会える魔法。わたしたちと同様の幸せを皆にも分け与えたまえ……」
とてもわかりやすい説明の後、日本語ではない呪文の詠唱が始まる。
本来ならば怪しげな発音なのだろうが、先ほどの言葉のおかげでとても優しい響きに聞こえる不思議。
いや、フラウの心根はやさしいいい子なんだから当然である。
「祝福あれ!」
魔法というより、神の使いの行使するわ奇跡という感じで呪文は締めくくられた。
そして当たりに舞い散るカラフルな鳥の羽と花びらとキラキラした光。
ここまでも綺麗な演出が続いたが、今日一番綺麗で神秘的な光景だ。
俺もうっとり、下界のみんなもうっとり顔だ。
ん……なんか脳内になにかが流れ込んできて……あれ? 幻覚が見える?
目の前に微笑んでいるリアル母さんと父さん、弟のゆうすけも楽しそうにしている。
フラウの言っていた離れた想い人はこのことだろうか。
先月実家に帰って会ったけど、こう見るとなんか懐かしく感じる。
昔の家族と過ごした懐かしい記憶が流れるように幻覚として現れていき、やがてそこには花ちゃんの姿も現れた。
これは過去の記憶ではなく未来の光景?
俺の母さんと花ちゃんが楽しくショッピングをしている。
やがて俺たちは結婚し、子供が2人できてるな。最初が女の子で次が男の子。
これは未来の予言?
いやいや、このゲームにそんな機能はないだろうし、俺の願望だろうか。
でもどうせならそな現実的なことは考えず、フラウのかけた大魔法の力と思いたい。
「初めは女の子、次は男の子。お母様の希望通りね」
横にいるフラウがそう呟いた。
同じ光景を見ているのだろうか。
ならばやはりこれは未来の予言ってことでいいな。うん、そうしよう。
「そうだな、この幸せそうな未来に向かって共に歩もう」
「ええ、あなたと共に……」
フラウを抱き寄せ、力一杯抱きしめる。
フラウも力強く俺に抱きつくのを感じる。
ああ……幸せだなあ……。
それからどれだけの時間が経ったのか……鳴り響く拍手の音に意識が覚醒した。
周りを見ると、俺とフラウは抱き合ったまま、いつの間にか地面に降りていた。
俺たちの周囲を皆んなが囲んで拍手をしている。
鳥の神様の姿や演出効果は無くなっているので、もう帰ったのかもしれない。
「すごい魔法だったぞ!」
「死んだおじいちゃんに会えた!」
「将来の結婚相手が見えたわ。ああ……あの人を探さなきゃ……」
「別れたわんこのクロべぇ……天国で幸せそうだった……」
皆興奮冷めやらぬと言った感じで、想い思いの言葉を投げかけてくる。
みんなも幸せな光景の幻覚を見たんだな。
神様の力……それを表現してくるこのゲームすごいなおい。
「さあ、これで余興は終わりだよ。あとはみんなそれぞれ楽しんでおくれー」
かしわもちがそう言って皆を促す。
そういえばパーティーはまだ始まったばかりだったな。
なんかすで終盤感満載だが、いろいろ楽しまなくてはな。
「ねえ、これからどうしたらいいのかしら?」
フラウが俺の着ぐるみをつかんで見上げてくる。
魔法少女のマスコットらしく導いてあげなくては。
「来てくれた皆に挨拶して回るか」
「そう、では行き先は任せるわ」
フラウは両手を俺の方に差し出してきて……抱っこしてのポーズかな?
クールな表情でする可愛いポーズの違和感がまたよろしい。
俺は再度フラウをお姫様抱っこして皆に挨拶回りへ行くのだった。
まず主催のかしわもち、シルクハットにステッキかぶって口髭もつけて、なんかインチキマジシャンっぽかった。
フラウが感激したとお礼を言う。
さらに将来は女の子と男の子を産みますなんて言ったものだから、かしわもちが感激して舞い上がってそのまま大気圏突破してた。
次にフラウが仲良しのくーちゃんと、その恋人ユース。
くーちゃんはメイド服がとても可愛らしい、もちろん猫耳もつけてるのでフラウが興奮して撫でてた。
ユースはくーちゃんに合わせたのか執事服。
我が弟ながらなかなか様になっているな。
なお2人も先ほどのフラウの大魔法で、ゲーム内とは現実両方の幸せな未来図を見たとか。
親友レオンと婚約相手のニャーノさん、なんか俺たちがうらやましくなったのか、お姫様抱っこしてる。
レオンが羊っぽい格好でニャーノさんが狼っぽい格好。
将来の力関係がすでに見えているような状態であるが、2人が幸せならそれでいいのだろう。
2人も幸せになっている未来を見たそうな……このゲーム世界限定だけど。
なお後からレオンがこっそり教えてくれたのだが、ついこないだ別れた彼女の顔もチラッと出てきて少し落ち込んだとか。
さて、仲良しさんにはだいたい挨拶したな。
お、向こうにファームさんが見えるな。
なんか悪魔っぽいごっついコスプレをして、ちゃんと猫耳をつけている不思議な格好。
最近体調がよろしくなくてインが少なめだったのだが、今日は元気かな。
フラウとも面識があるし行ってみるか。
「おーいファームさーん」
「おうカーターか。嬢ちゃんも久々だな。いつの間にか付き合ってたんだなこの幸せものめ。さっきの演出良かったぞ」
「ご機嫌麗しゅう、クリスタルの戦士。その悪魔の容姿は正体を覆い隠す擬態でしょうか」
フラウがそう言うと、ファームさんは遠くを見上げてフッと微笑んだ。
なおクリスタルの戦士とは、現実世界の体内で尿結石だかなんだかの石を作り出す能力を持った人間のことである。
よく知らないが、とても痛いらしい。
フラウはその事実を知らず、なんかかっこいい力を持った戦士と信じている。
「実はな、クリスタルの戦士は引退したんだ。レーザーでの破壊に成功してな。この格好は解き放たれた自由の象徴よ」
「ほう? それは良かった」
「引退ですか……。残念ですが、これまでのご活躍に感謝します。それで……その力はどなたかに継承されないのですか?」
「そうだな……カーター、引き継いでみないか?」
絶対嫌っす。
トゲトゲしい石が体内にあるなんて、話に聞くだけで痛いのにそんなの生産したくない。
ファームさんはフラウの勘違いに話を合わせてくれているので、フラウをがっかりさせない形で断ろう。
「悪いが俺には他にやるべきことがあるのでな。肩書という名の使命に縛られたくはないんだ」
「そうか……確かにいいものではないからな。それに、知らないところで誰かが引き継ぐことだろう」
「そうですね。まだ見ぬクリスタルの戦士に幸在らんことを……」
遠くを見上げるファームさんとフラウ。
心中の想いは大きく違えど、2人とも幸せそうで何よりである。
この数ヶ月後にファームさんは再度クリスタルの戦士に舞い戻るのだが、それはまた別のお話……。
さて、普通の話するか。
「じゃあインできる時間増えるんだね」
「おうよ、最近畑の手入れしてなかったから忙しくなるな。嬢ちゃん、野菜の在庫はいっぱいあるから欲しいものがあればいつでも取りに来なほうれんそう以外だがな」
「ありがとうございます。美味しいものが作れそうです。ね?」
ファームさんに答えつつ、俺を見てニヤッと笑うフラウ。
つまり俺に美味しい料理を作ってくれるってことだ。
幸せ!
「おうおうお熱いねえ、俺も出会いってやつを探してみたくなってきたな」
「クリスタルの戦士の称号をお持ちだった武人であれば容易いかと思いますわ」
「お、おう……。だがそれは隠しておきたい。あまりひけらかすもんじゃねえんだよ。嬢ちゃんも胸にしまっといてくれ」
「なるほど、無闇な力の誇示はしないと……。ご立派な精神です
フラウの中でファームさんの株がどんどん上がっている。
このまま真実を知ることなく生涯を全うしてほしいものである。
そしてファームさんとはここらで話を切り上げて、他の人のところへ向かった。
ふう……来てくれた人にだいたい挨拶し終わったな。
なんとなく、結婚式のキャンドルサービス的な気分だった。
もしや現実でもお姫様抱っこさせられて回るのかなと思ってしまう。
ありえなくなくなくないので鍛えとかなきゃだなあ。
こうして、パーティーは無事に終わりを迎えるのだった。
ワイワイガヤガヤと楽しいものだったなあ。
そして俺は今フラウと2人きりとなっている。
みんなが気を利かせてくれたのか、貸し切りのパーティー会場に他は誰もいない。
「フラウ、楽しかったか?」
「ええ、とても素晴らしい時を過ごせたわ」
ベンチに座り、フラウは俺にもたれかかっている状態でとてもいいムード。
ただ、俺の格好が白いマスコットキャラの着ぐるみ状態のままというのがアレだが……。
なおフラウの魔法少女コスプレはとっても可愛いので、これはそのままでよろしい。
「言いそびれてたが、その格好とてもよく似合っているぞ」
「そう? 子供っぽくない?」
「大丈夫だ。この世界においては全く問題がない」
「そうなのね。なら……もっとよく見せてあげる」
フラウは立ち上がり、俺の前でポーズを決める。
おそらくこのキャラの決めポーズのはずだ。
俺の記憶は曖昧だが、恐らくは本物と完全一致していると思う。
フラウはきっとこの魔法少女アニメが大好きな子だったのだろう。
あとかなりのミニスカートなのに、激しく動いても中が見えないというところもバッチリ再現されている。
「可愛いな。俺は今完全にお前の誘惑魔法にかかっているぞ」
「かけた覚えはないわ。でも……この格好であればあなたの魔力にわたしが打ち勝てるのかもしれないわね」
「ああ、今のフラウなら全てにおいて俺の上だろう」
「ならば試しましょうか。まずは変身解除の魔法ね」
フラウが魔法のステッキを俺に振りかざす。
そして俺は着ぐるみを装備から外し、普通の姿に戻る。
フラウは楽しそうに、さらに魔法ステッキを振り回す。
「次は強制変身ね。お母様から借りていたこれをあなたに……」
フラウが何かを投げてくる。
フラウが魔法をかけようとしているので、確認している暇はない。
受け取ったそれを即装備!
「これは……」
「ああ……素敵……」
イケメンが着てそうなタキシードかなこれは。
なんか顔には目を隠すマスクもあるような。
たしか、フラウがコスプレしてる魔法少女を時々助けてくれる謎キャラだったか。
そこまでは詳しくないので正体知らないけど。
記憶の片隅にあるそれっぽいセリフ言ってみるか。
「フラウ、俺はいつもお前と共にあるぞ」
「うん、いつもありがとう」
フラウは両手を握って顔の前に持ってきて俺を見上げるという、なんとも可愛いポーズ。
アニメで会話していた時を再現していたのだろう。
このまま抱きしめたいが、そんなシーンではないのだろうな。
他人の大人が小学生設定の子供抱きしめるとか事案だし。
よし、こっから先は何も思いつかないから聞く。
「フラウ、今日は特別な日だ。お前の願をの叶えたい」
「あなたに会えたことでもう願いは叶ってるの。あ、でもいつもみたいに助けてほしい……」
「いつものように?」
「うん、離れて見守ってて。まずは同じところへ飛びましょう」
フラウが俺の衣装の裾を掴み、コンソールを開いて移動先を選択している。
そして魔法のステッキを振りかざして何かしら唱えつつ最後のボタンをポチッと押した。
そして跳んだ先は見慣れたオルカオルデ平原。
フラウはそのまま駆け出して行ったので、俺は言われた通りに見守るとする。
背の高い草むらに隠れつつ、フラウ観察。
何か探してキョロキョロしてるし、もうこれだけで可愛くて幸せ。
「出たわねクロウラー妖魔!」
芋虫モンスターに殴りかかっていったぞ……。
普段苦手で見ようともしないモンスターに挑むとは、すでに大ピンチの予感!
あ、フラウ転んだ。
「くっ……この程度の敵に……。妖魔たちの力が明らかに増している……」
なんとなくパワーアップイベント前のピンチな感じだ。
声が震えているし、怯えた表情をしているのは演技でなく本当に怖いのだろう。
よし、助けに行こう。
「はあああああっ!」
掛け声と共に接近し、芋虫くんに素手でなぐりかかる。
何故素手かというと、この敵弱いので武器持って殴ったらすぐに倒しちゃうから。
「タカシ……様……」
うおっ!?
このキャラ名を呼ばれるのかと思いきや俺の名前!
フラウが初めて俺の名前を呼んでくれた瞬間である。
しかもゲーム名ではなく本名という嬉しさ。
では俺もそうしようか。
「花、助けに来たぞ」
「来てくれると思っていました。でもその敵は強力です。お気をつけて」
「そのようだな……くうっ……」
芋虫の可愛い攻撃、ダメージはないのだが、喰らってピンチなフリを俺もしておこう。
さあ、ここからが盛り上がるところだ。
「タカシ様っ!」
あー、もう何度も呼ばれたい。
じゃなくて……俺は懐から1つの箱を取り出す。
「花、これを使うんだ」
「は、はい……」
可愛くラッピングした細長い箱。
それをゆっくりと丁寧に開けていくフラウ。
芋虫は俺にじゃれついているが、たいした問題ではないのでゆっくり開けてくれた方がいい。
なにせ俺から渡す予定だったお祝いのプレゼントなのだから。
「今のお前ならば使いこなせるはずだ」
「名前を呼んでください……」
「ああ……。今の花ならば使いこなせるはずだ」
「これは……」
フラウが取り出したのは、魔術師用の新しい杖。
レベル30で装備できるようになる強力な杖だ。
魔法攻撃力と魔法命中率が大幅に上がり、これを持つだけで魔法の威力が目に見えて上がる逸品!
「さあ、魔法を放つんだ」
「はい……でも不安なので支えていてください。タカシ様」
「もちろんだ、花……」
フラウの後ろからそっと抱きしめる。
そのままフラウは魔法陣を展開して詠唱を開始だ。
芋虫は俺の背後からつんつんと殴ってきているが、2人の世界に入り切った俺たちには関係ない。
「愛の力を魔力に変えて……喰らいなさい、エターナルフレイム!」
このゲームは使い手の能力によって、同じ魔法でもエフェクトが変化していく。
いつも使っている炎魔法が杖のおかげで強力な見た目となり、俺の背後にいる芋虫に襲いかかる。
なお俺とフラウはそれに合わせ、何事もなかったように背後に向き直って位置調整。
芋虫はオーバーキル状態で絶命した。
「すごい威力……これがわたしの力?」
「そうだ、花の魔力が上がったことでこれまでの杖では力を発揮できなかった。届けるのが間に合って良かった」
「ありがとうございます。あなたはいつだってわたしを助けに来てくれるのですね」
「もちろんだ……大切な存在だからな……」
「タカシ様……。
アニメのパワーアップイベントを再現しつつ、そのままアニメにはなかったであろう濃厚なラブシーンに突入したい。
でも見られたら恥ずかしいので。
「だが今ので君は疲労しているな。飛ぶぞ」
理由をこじつけつつ、俺とフラウの家建設中現場へと飛ぶ。
さあ、いちゃつこう。
と思った瞬間、フラウの方から向き直って俺に抱きついてきた。
「ありがとう……最高のお祝いだった。過去より願っていたことが幾つも実現したわ」
「そうか……喜んでくれて俺も嬉しい」
「お礼がしたい。たまにはあなたがわたしにしてほしいことを言って」
フラウが俺に抱きついてきた行為も常にしてほしいことなので、すでに満足ではある。
改めてしてほしいことと言われても、すぐに思いつかないな。
あんなことやこんなことは頭に浮かぶが、このゲーム内ではできないし……。
「お前がこうして俺のそばにいてくれるだけて、俺がフラウにしてほしいことは常に叶ってるんだ」
「そう……嬉しいわ。でも考えて。あなたがもっと嬉しくなること。なんでもする……」
今なんでもって言ったね。
などと心の中でおちゃらけている場合ではない。
何をしてもらおう……。
「そうだな……」
やばいな、どうしたらいいかわからない。
俺の中のへたれな部分が思考を妨げる。
フラウは不安そうな顔で俺を見つめる。
「わたしにしてほしいことはないの?」
「いや、ありすぎてどれにしようか悩んでる」
「なら簡単だわ。別に1つだけ選ぶ必要はないもの。順番に言って」
「そうだな……」
もう本能のままに……。
抱きついてきているフラウを少し離し、そのままキスをした。
うん……何度してもいいものだ。
そのままフラウの頭と猫耳なでなで。
「ん……」
フラウの口から漏れる声が愛おしくて、さらに耳なでなで。
う……?
なんかフラウも対抗しているのか、俺の耳をうにうにとしてきた。
驚かされたので、俺もなんかイタズラ心がわいてきた。
強く抱きしめつつ、背中から脇辺りをくすぐったい感じでさわさわ……。
「んんっ……」
なんとも色っぽい声である。
対抗して俺もくすぐられるかと身構えるが、フラウは俺に強く抱きつくだけで何もしてこない。
まるで好きなだけ好きにしていいと言われているかのような……。
ではこのままもっと過激なことを……といかないのが俺のヘタレなところである。
キスを中断し、フラウの艶かしい顔を見てドキッとする。
「満足だ」
「これだけでいいの?」
「一気にする必要はない。小出しでいいんだ。俺たちにはこれからも時間はたっぷりとある」
「わかったわ。ならば毎日したいことを少しずつ聞いていくわね」
すごく嬉しいことを言われてるな。
前もって何したいか考えておかねばな。
妄想タイムが捗りそう……。
「遅くなったな。今日はもう寝るか」
「そうね……。ねえ、あなたとわたしの部屋の壁に抜け道は作れない?」
現実の部屋のことなんだろうけど、マンションの壁に穴か……そんなことできる魔法があればしたいものだ。
花ちゃんが夜中にこっそりそこから遊びに来るとか、想像するだけで楽しそう。
「残念ながらできないな。明日の朝会えるのを楽しみにしている」
「そうよね……。ならばせめて夢に出てくることを要求するわ」
「努力するよ」
あー、恋人同士の会話って感じがして実によい!
というわけで幸せな日が今日も過ぎていくのだった。
ちなみに俺のその晩見た夢は、巨大なトゲトゲ石に追いかけ回されているファームさんを助けるべく、レーザー光線で石を破壊する変なものだった。
フラウの夢には俺が出ているといいのだが……。




