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61.夢は三世帯住宅

 前回のかしわもちの日記。フラウちゃんを驚かせようと思ってテントに侵入したんだよ。それで得意の観葉植物に化けてたのね。そしたらタカシも入ってきたんだよ。これなら2人同時に驚かせるなあと思ってタイミングを見計らってたんだ。そしたらなんと、すっごいいい雰囲気になっちゃったんだよ。こんな堂々とのぞきなんてよくないなあ、ばれて嫌われたらやだなあ、怖いなあ、って焦ってたの。そしたらタカシが急にフラウちゃんの手を取って出ていったからばれずにすんだんだよ。人を驚かせるのもほどほどにしないとだねえ。ゲームの世界だからって何をしてもいいんじゃないんだよ。それにしてもあの2人は仲いいんだねえ。あたしの若い頃を思い出しちゃうよ。


 というわけで、俺とユースとくーちゃんとかしわもちは4人で手分けして森の中で伐採中である。

 フラウは虫が苦手という可愛い理由により拠点でお留守番。

 俺は伐採しつつ、ユースとくーちゃんの恋仲の進展具合をそれぞれに聞きに行こうと思います。

 現実では難しくとも、ゲームの世界だからこそできるおせっかいもあるわけさ。


 えーと……ちょっと離れたところでユースがかしわもちをぶん投げてるのが見えた。

 かしわもちは加速と投力と仕様による通常の1倍パワーで伐採をしているようだ。

 楽しそうなのであっちは置いておき、くーちゃんがいそうな方向に向かう。


 ホビホビ族は小さいので森の中で探すのはちょっと大変だが、ゲームなので他キャラの居場所は簡単に探せる。

 さっきまでは雰囲気重視で目視確認をしていたが、システムに頼ればあっという間にくーちゃんの元に到着。

 ちっこい身体で大きな斧を振り回す姿が可愛らしい。

 俺に気づいたようで、手を止めてにっこり微笑んでくれる。


「やあくーちゃん、調子はどう?」


「はい、順調ですよ。フラウちゃんはどうでしたか?」


「ああ、足手まといになってるかもと心配してたみたいだったけどもう大丈夫だよ」


「そうですか、さすがお兄さんです」


「ははっ、ところでくーちゃんはどんな感じ?」


 俺の質問の意味はもちろん、ユースとの仲はどうかということだ。

 この問いに対してくーちゃんは笑顔になったので、楽しい話が聞けるかも?


「はい、なんとユース君とリアルでお電話しちゃったのです! えへへ」


「おお、だいぶ進展したね。それでどうだった?」


「実はわたしもユース君も緊張してあまり話せなかったんです……。でもそれでもわたしは嬉しくて……ユース君も後で楽しかったってメッセージくれて……」


「はは、なんとなく予想通りだよ。緊張してるユースの顔簡単に想像できるし」


「あはは、まだ顔は見てないんですが次は映像付きでお話したいねって言ってて……」


 ほんのり顔を赤らめて楽しそうに話すくーちゃん。

 自分が幸せの中にいるおかげか、人の幸せな話も楽しく聞ける今日このごろ。

 あとでユースを褒めたい気分だ。


「じゃあもう後は心配いらないね。よかったよかった」


「はい! お兄さんがこないだお話聞いてくれたおかげです。ありがとうございました。あ、でもまたなにかあれば相談させてくださいね。ユースくんの好きなものとか色々……」


「ああ、いつでもなんでも聞いて。それじゃあ伐採に戻るよ」


「はい! それではまた後で」


 というわけで心がほっこりしつつ、くーちゃんの元を後にした。

 次はユースとかしわもちのところへ行ってどちらかを引き離すか。


 2人は相変わらず一緒にわいわいやっていた。

 どちらかと言えばかしわもちがユースにつきまとってる感じではあるかな。

 この場合、俺が変わるという形なら簡単そう。

 かしわもちの足を持ってぶんまわしているユースと目があったので大きく息を吸って……。


「ユース、こっちにパスだ!」


「えっ!? わかった! そおいっ!」


「あーれー」


 遠心力により加速した感じの普通の速度でかしわもちが飛んでくる。

 何故かバタフライ泳法をしている。

 手に持った斧でズタズタにされそうな恐怖を感じつつも、上手いこと足をキャッチ!

 そしてその場で数回転!


「これぞ家族の力……カシワモランバー!」


「アンコタップリー!」


 少し離れたところに見える伐採ポイントに向かってかしわもちをぶん投げる。

 そして見事に木に斧後突き立たる。


「たーおれーるぞー」


 かしわもちは直ぐに体制を立て直し、木に向かって斧を可愛く振り上げていく。

 さて、この間にユースと話すか。


「よおユース、くーちゃんから聞いたぞ。電話で話せたって嬉しそうだった」


「そっか……でも僕あまり話できなかったんだよね……。すごく緊張しちゃってさ」


「はは、そんなことだと思ったよ。でもくーちゃんほんとに嬉しそうだったから、そんなの全然問題ないと思うぞ。そのうち回数繰り返せば慣れてくるさ」


「そうだね、そうなるといいな……」


 うん、ユースもなんも問題なさそう。

 この2人は放っといても大丈夫そうだ。


「それより兄ちゃんの話も聞きたいな。くーちゃんがさ、2人がすごく幸せそうって言ってたよ。詳しいことは教えてくれなかったけど」


 くーちゃんは俺とフラウが楽しそうに『だーれだ』とかやってたのを見てたからなあ。

 それをユースには言ってないようだが、俺の口からあれを言うのも恥ずかしい。


「タカシー、ゆうすけー、大っきい木がとれたよー」


 かしわもちが自分の体より大きい丸太を担いで走ってくるのが見えた。

 母さんに聞かれたくない兄弟ふたりの会話はここまでのようだ。


「ユース、もう話す時間が無い。その話はくーちゃんから聞いてくれ。俺に遠慮して話してないのかもしれないから、別に構わないって言ってくれ」


「そっか、聞いてみるよ。でもどうせなら兄ちゃんから聞きたかったな」


 走ってくるかしわもちを見ながら、残念そうに言うユース。

 恋バナを母親に聞かれたくないのは共通なのだ。

 さて、何事も無かったようにかしわもちの相手をしよう。

 俺たちの前にでっかい丸太がやってきた。


「ほーら、これなら家の大黒柱にできるよ」


「そうだね、なかなかいい木材だよ」


「さっそく加工して使いやすくするね」


 ユースは木工の生産スキルを上げている。

 わかりやすく言えば大工さんだ。

 丸太に向かって手をかざすと、緑色の旋風が巻き起こり、丸太が綺麗に加工されていき直方体の木材が並ぶ。


「あたしも手伝うよー!」


 かしわもちは4次元ポシェットから、ポシェットのサイズより長いノコギリを取り出した。

 実際に使える道具ではなく見た目用の小道具だが、ほんとなんでも持ってる不思議な人である。

 ノコギリをマルタの前で動かして、あたかも斬っているように見せているのが面白い。


「あはは、母さん上手だねえ」


 ユースも楽しそうに作業をしている。

 のほほんと楽しい家族団欒である。

 っと、くーちゃんは別の場所でがんばって伐採してくれてるんだし、のんびりしてても悪いな。


「よし、それじゃあまた手分けしてポイント探すか」


「おー!」


 俺たち3人は別々の方向へ散っていき……あれ? かしわもちが俺の方にやってきた。


「タカシー、ちょっと話があるんだよ」


「なに?」


「実は謝らないといけないことがあってね……。実はさっきさ、タカシとフラウちゃんは気づかなかったと思うんだけどさ、あたしがテントの中にこっそり変装して居たんだよ」


「えっ? いつ?」


 俺はごく自然な棒読みで聞き返す。

 かしわもちが変装してテントの中に……全く気づかなかったぞー、


「えっとね……2人の愛が燃え上がってタカシが今にもフラウちゃんを押し倒そうとしてたところ? いやあの、慌てちゃってよく覚えてないんだけどね……」


「えーと……押し倒そうとした覚えはないんだけど……。母さん夢でも見てたんじゃないの?」


「うーん……夢かねえ? でもこっそりテントに忍んでたのはほんとなんだよ。ごめんね」


 かしわもちは真剣な目で俺を見つめてきてお辞儀をする。

 ただ驚かそうとしただけなのに、ラブシーンを見そうになって気まずくなったと。

 てか、俺もよくこっそり隠れてかしわもウォッチングとかしてたので人のことはいえない……。

 よってプラマイゼロとする!


「別に何も迷惑受けてないし、母さんに悪気がなかったんなら全然問題ないよ」


「そうかい、それならいいけど……。フラウちゃんにも謝らないとなあ……」


 フラウか……俺の予想だと『全く気配を感じさせないなんて……さすがお母様だわ!』とか言いそう。


「フラウも気にしないと思うよ。俺から言っとこうか?」


「いや、気になってしょうがないから今から行くよ。付いてきてくれるかい?」


「ああ、もちろん」


 やけに気にしているようなので、ささっとスッキリしてもらおう。

 というわけでフラウの元へ、かしわもちをおんぶして向かう。

 現実では恥ずかしくてできない家族団欒の図である。


 テントが見えてきたので、声をかけてみよう。

 いきなり入って着替え中だったりしたら困らないけど困る。

 なおゲーム内の装備変更は装備品を選べば一瞬で終わる、趣の無い仕様なので着替え中ハプニングは起こりえない。

 でも万が一そんなバグが起こるんじゃないかと期待するのは自由であろう。


「フラウー、いるかー。俺だー」


「中にいるわ」


「じゃあ入るぞー。あ、かしわもちも一緒だ」


「おじゃしまーす」


 テントの中で座っていたらしきフラウが立ち上がりこちらを向く。

 ついさっきも見たばかりだが、いつも通り可愛い俺の嫁。


「あら……お母様はどこ?」


「フラウちゃんここ、ここにいるよ!」


 俺の背中で完全に隠れてたっぽいかしわもち、俺の右肩から顔をひょこっとのぞかせる。

 それを見たフラウの自然なほんのり笑顔……かしわもちはいい仕事をしている。


「お母様も伐採を手伝っていただきありがとうございます」


「フラウちゃんの頼みだから全然いいんだよ。それよりフラウちゃんに謝らなきゃいけないことがあってねえ……」


「あら? お母様になにかされた覚えは無いですが……」


「うん、フラウちゃも気づいてなかったもんね。実はさっきさ……フラウちゃんとタカシがここにいた時にね、あたしもそこにいたんだよ……」


 かしわもちが指さす空間を見るフラウと俺。

 そういえばさっきあそこには見覚えのある謎の観葉植物があったような?

 フラウもなにか思うところがあるのか、その空間を不思議そうに眺めている。

 でもすぐにかしわもちの方に向き直ってニッコリと笑った。


「全く気づきませんでした。もしお母様がそこに居たならば、完全に気配を遮断していたということ。素晴らしいですわ」


「そ、そうかい?」


「ええ、憧れます。わたしもお母様のようになりたいですわ」


 フラウが母さんみたいにお茶目に……。

 木の枝を手に持ち植物を体で表現する姿……もちろん全裸状態を思い浮かべてみた。

 なんか……いやらしさがなく芸術作品になりそうな予感。

 ううむ……フラウがかしわもちみたいにとか、花ちゃんが母さんみたいにとか全然想像つかない。


「そっかそっか。でもごめんね、驚かそうと思っただけなんだけど、結果的にのぞいたみたいになっちゃったんだよ」


「大丈夫です。いつ何時見られようとも問題なく生活していますので。ね、あなた」


「あらあらあらあら……」


 フラウが堂々とのろけたような感じで、俺の背中のちびっ子がパタパタとはしゃぐ。

 フラウ的には、組織の目がどこにあるかもしれないので普通の恋人同士っぽくしてますよという意味なのだろう。

 でもそんな俺もよく分からない理由、かしわもちに通じるはずもない。

 今日もかしわもちは素敵な勘違いで幸せになるのであろう。


「それよりお母様、疲れたでしょう。お茶でも淹れますね」


「あらそうかい、悪いねえ」


 かしわもちウイングは俺から分離していった。

 ちょっとしたお茶会が始まるようだが、俺は遠慮させてもらおうかな。

 なにせメインのはずの伐採を俺は全然やってないのだ。

 手伝いに来てくれたみんなより成果が少ないのはよろしくない。


「ユースとくーちゃんに任せ切りなのも悪いから俺は仕事に行くよ。2人はゆっくりしてて」


「わかったわ、いってらっしゃい」


「タカシ、ついてきてくれてありがとね」


「ああ、じゃあいってくる」


 さて行くか。

 気分的には2人ががどんな会話するのかすっごく気になる。

 でもかしわもちが覗き見みたいになったと落ち込んでたことを考えると、こっそり聞き耳をたてるなんてできない。

 二人の会話を妄想しながら伐採するか。


『ねえねえ、フラウちゃんはタカシのどんなところを好きになったんだい?』


『全てですわ。あえて言うならは全身に巡る魔力でしょうか。そういえばお母様からも同種の魔力を感じますわ』


『あらやだねえ、あたしなんてもう魅力のほとんどない枯れたおばちゃんだよー』


『そんなことはありませんわ。年齢など感じさせない魔力が内に秘められているのを感じます』


『そっかそっか、あたしもタカシもフラウちゃんにとっては魅力たっぷりなんだねえ。いつかフラウちゃんにも現実で会いたいな』


『今いるここが現実ですよ』


『あはは、そうだったね。じゃもういっこの現実で会いたいね』


『そうですね、いつか会ってみたいです』


『うふふふ』


 なんて会話をして仲良くなってたりするのかな。

 このまま周囲から固めていけば別れが来てしまう可能性が減ったりするのだろうか?

 そういえば母さんは俺とフラウが現実でも知り合いで、しかもお隣さんってことは知ってるんだっけか?

 俺は言ってない気がするけど、フラウがいつの間にか言ってるかもだし、知ってると思っといた方がいいかな。


『ところでねえ、あたし初孫は女の子がいいなって思ってるんだ。息子は2人とも男の子だったからねえ』


『女の子ですか。魔力の質を調整することであるいは……』


『うん、最近は化学が発達してるからそういうのも出来るのかもだねえ』


『そうです。ただお母様……恥ずかしながらわたしは子供がどのようにできるか知らないのです』


『あらあら……それはねえ、おしべとめしべがこんなふうに……


『その指の形は何かの術式でしょうか? 結んだ印を反復して……』


 うん、今日も妄想が楽しい。

 最近の高校生は赤ちゃんがどこから来るかくらい知ってると思うけど……フラウだからなあ。

 知らなければ俺が手取り足取り……なんか不思議なことになりそうだが……。


『うん、まあそこは自然とわかると思うよ。にんげんだもの。ははを』


『そうですね、いつものように教えてもらいますわ。ただ……男児だった場合はどうなるのでしょう』


『あー、ごめんね。別にプレッシャーかけるつもりじゃないんだよ。ただどちらかと言えば女の子がいいってだけで、男の子でも全力で可愛がるよ!』


『そうですか。お母様やあの人のような強き魔力を秘めた子を成したいものです』


『んふふー、フラウちゃんの子なら魅力たっぷりだよー』


 なんか本当にこんな会話をしてそうな気がしてきたな。

 実際のところ世の中の母と義理の娘はどんな会話するんだろう?

 ネットでは嫁いびりの姑の話をよく聞くが、うちの母に限ってそんなことありえないのは安心だ。

 結婚後は実家に近い方がいろいろといいのかなとか妄想が膨らんでいく。


『おいタカシ、そのまま妄想続けると危険だ。もしこの先の未来と妄想が剥離したらお前の心は壊れてしまう』


 急に心の中の悪魔が割って入ってくる。

 そりゃまあ……ここまで妄想しておいてフラれたりしたらダメージは大きいだろう。

 でも楽しいんだよなあ。

 心の中の天使さんはどう思う?


『最初からフラれると思っておけばダメージもないわ。そもそも今のその楽しい妄想は今だからできるの。悔いのなきよう、今のうちに楽しんでおきなさい』


 それはそれで悲しいが……。

 とはいえ、妄想できているこの今が楽しいし、楽しんでおくか。

 本日の勝者は天使!


『ふっ、当然よ』


『こういうのは後出しが有利って決まってんだよ。某料理漫画だって……』


 さて、妄想していたおかげでたくさん伐採できたぞ。

 元々ユースがくれたのもあるし、細かい部分で買い足せばもう家を建てられるかもしれないな。

 まあ、まだデザインが決まってない訳だが……。


 今のところ、いい感じのデフォルト設計図を元に、フラウを中心にみんなでいろんな意見を出し合っている日々だ。

 建てたあとも簡単に変更はできるのだが、ここはやはり現実の予行演習のつもりで最初から完成品を建てたい、

 ゲーム世界とはいえプラウとの愛の巣、愛着を持って作るのだ!

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