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52.形勢逆転

 ちょっと後で決まるあらすじ。暴走タルタルの徘徊する遺跡にて俺たちは隠し扉を発見した。それを阻む大量のボサタルたちをレオンとニャーノさんが足止めしてくれ、俺とフラウはその中を探索。そこで歴史的な価値のある情報を入手することに成功した。

 しかし道を作ってくれたレオンたちは全滅の危機に陥っていた。そこに俺とフラウが駆けつけて助けるという台本になってた今日このごろ。


 わりと長時間過ごしていた隠し部屋からのんびり脱出。

 レオンとニャーノさんのことをすっかり忘れていたわけだが、どこにいるんだろうな。

 本棚だらけのこの部屋には暴走タルタルはいないなと確認しつつ部屋の外に向かうと戦闘音が聞こえてきた。

 戦ってるのかな?

 

「うにゃーっ!」


 悲鳴とともに、通路に1人のニャコラっ娘が倒れるのが見えた。

 それを庇うように鎧を着た騎士が姿を見せる。

 もちろんニャーノさんとレオンだ。


「大丈夫ですか、ニャーノさん」


「うちはもうダメですニャ……。うちのことはいいからレオンさんだけでも逃げてください……にゃー」


「それはできません。わたしはあなたの騎士なのですから」


「レオンさん……」


 ニャーノさんをかばうレオンの前には2体のボサタルがいつの間にか来ていて、レオンに殴りかかっている。

 それを盾でいなしながらニャーノさんを守っているようだ。


「助けなくては。炎の力よ……」


「待つんだフラウ」


「えっ?」


 フラウは援護をしようと魔法の詠唱を開始したが、俺はそれを制止する。

 何故かと言うと……別にレオンたちはピンチでもなんでもなく演技で楽しんでいる最中だからだ。

 詳しくは説明しないが、明らかに演技でやっていると俺にはわかる。

 あとはフラウを納得させるべくそれっぽいことを言わなくてはな。


「あの乱戦状態では魔法が味方に当たる可能性もある」


「そんなヘマはしないわ。これまで外したことがないのはあなたも知っているでしょう?」


 うん、その通り……。

 魔法は基本的に狙った相手に飛んでいくし、味方に当たることは有り得ない。

 だってそういう設定のゲームだもの。

 さあて、なにかそれっぽい理由を考えなくては。


「いつものお前ならそうだろう。だが今は少し状況が違う。わかるか?」


「いつもとは違う……?」


 フラウが悩んでいる間にレオンたちの寸劇は進んでいく。

 どんなロールプレイをしているのか観客気分で見るとしよう。


「ぐううっ……」


「レオンさん! 回復を……キュア……うう……にゃうう……」


「ニャーノさん、俺のことより自分の回復を……」


「だって……あなたに生きてほしいのですニャ……。あなたが倒れる姿は見たくないのです……ニャ」


 2人はどんな関係なんだろう?

 騎士と護衛対象なのは間違いないが、やはり恋仲だろうか。

 身分違いの恋とかそんなのかなー?

 呑気な俺である。


「俺もあなたが倒れる姿は見たくない……」


「ならばこのまま一緒に……」


「いえ、実はまだ2人とも助かる秘策があるのです。可能性が低いので内緒にしていましたが……」


「にゃんと……その方法とは?」


 助かるのか。

 てっきりレオンが身を挺して危機を脱する悲恋者と思っていたのだが。

 なんにせよわくわくして見守る。


「カーターとフラウです。あいつはこの先に謎を解くために向かった。そろそろ戻ってくる、そんな予感がするんです」


「でも……彼の生体反応は消失したはずですニャ。もうあきらめようって話もしたではないですか。にゃー」


「そうですね……。でも今になって予感がするんです。あいつが戻ってくるって……。あいつはいつだっていいところに現れるんですよ」


 どうやらこの劇には俺とフラウも出演が決まっていたようだ。

 ちなみに俺とレオンは今バッチリと目が合った。

 いいタイミングでやってこいよと言われているようだな。

 うーん……いつ行けばいいんだろう?


「わかったわ」


「ほう、聞かせてもらおう」


 悩んでいたフラウが答えを出した。

 どんな答えだとしても、それを利用して劇に混ざるぞー。


「先程わたしとあなたの絆は深まった。それにより魔力も高まったわ。つまり、これまでと違ってわたしが魔力を制御できなくなる可能性が生まれたのよね?」


「そうだな。ではどうするべきだと思う?」


「きっとわたし1人では、あなたの言うように失敗する。だから……あなたに支えてほしい」


「わかった」


 フラウは先ほど幽霊にもらったスクロールを取り出す。

 魔力効率は悪いが高威力の魔法、たぶん見た目も派手な気がするので今の場面ならピッタリだろう。


「では始めるわ。お願い」


 よし、フラウを支えて……ん? 支えるってどうしたらいいんだ?

 倒れないように手を添える?

 それともいっそ抱きしめる?

 わかんないから情けないけど聞くか……。


「どの陣形でいく?」


「そうね……たしかお母様と背翼の陣というのをしていたわね。あれで頼むわ」


 背翼の陣……ちっこいホビホビ族のかしわもちが俺の背中におんぶする形のあれだ。

 この場合だと背中に抱きつく形となるのだろうか?

 俺が背中でいいんだよな?

 とりあえずフラウの背後に回る。


「今宵は俺がお前の翼だ」


「ん……」


 フラウの背中に俺の胸をくっつける。

 えーと……あとは手で抱きしめて……。

 いや待てよ、スクロールを一緒に持つのが自然な気がする。

 フラウの肩の上から腕を回してと……。


「しっかり支えておくからな」


「待って、このままではわたしの手が離れてしまう恐れがあるわ。支えてほしい……」


「よし……」


 フラウは俺に手を握ってほしいと言っている……んだよね?

 フラウの手とスクロールをまとめて持つ感じで手を添える。


「うん……これならいけそう」


「よし、急いで2人を助けよう」


 なお俺たちが2人の世界に入っている間もレオンとニャーノさんの小芝居は続いていた。

 あっちはあっちでいい感じにいちゃついている感がある。

 さあ、ここから盛り上がる所だ。

 フラウがスクロールの呪文を唱え始めると、目の前に大きめの魔法陣が展開される。


「空間を歪めし闇の力よ……」


 詠唱時間がわりと長めだ。

 この使いにくさから察するに威力は強そうだし見た目も派手だろう。

 魔法に合わせて俺も剣で追撃したらかっこいいかも。

 でもせっかくフラウにくっついてるから、離れるのももったいない気がしてしまう。


「狂いし魔導兵器を停止させよ……ディメンションエッヂ!」


 魔法陣より小さな黒点が飛び出し、ボサタルに向かって飛んでいく。

 見た目地味だなと一瞬思ったが、着弾と共に空間が歪むかのようにそれは大きくなった。

 そして黒い空間が敵を包み込むように切り裂いていく。

 それを見て、なんとなくやりたいことが思いついた。


「フラウ、大丈夫か? 大丈夫ならば、俺も追撃に向かいたい」


「ええ、あなたのおかげで魔法は成功よ。あとは任せたわ」


 フラウはその場に崩れるように膝をつく。

 MP消費の多い魔法を使ったからといって倒れることはまずないので演技だろう。

 というわけで俺も大剣を構えてレオンたちの方へ走り出す。

 足音は先ほどの魔法の派手な音でかき消されているはずだ。


「待たせたなレオンッ!」


 俺は魔法のエフェクトの中に飛び込む。

 なんていうかこの魔法の見た目、空間を歪めているせいかワープ魔法に似てるんだ。

 つまり、反対から見るとまるで俺が異空間から飛び出してきたように見えるって寸法さ。

 そのまま先ほど魔法を喰らったのとは別のボサタルに斬りかかる。


「カーター! やはり生きていたんだな!」


「当然だ。俺がこんなところで死ぬわけないだろう。さあ、まずはこいつらを一掃するぞ」


「そうだな、お前が来たならこんな奴ら敵ではない」


 そして残りのボサタルを全て倒し、あたりには静寂が訪れる。

 俺たちの勝利だ。

 あとはこの後もいい感じに演技しなくてはな。


「カーター、よく戻ってきてくれた。その様子だと見つけたんだな。太古の秘術を」


「ああ、それを使ってなんとか戻って来れた」


「ん? そういえばフラウさんは」


「向こうにいるはずだ。先ほどの魔法は負担が激しいらしくてな。休んでいるぞ」


 フラウがいる方向を指差した俺は気づいた。

 先程は膝を付いていただけだったフラウが倒れている。

 何があったのかとみんなで駆け寄る。


「フラウ、どうした!」


 フラウは倒れたまま動かず、声をかけても反応がない。


「ニャーノさん、回復魔法を!」


「うにゃっ! キュアッ!」


 回復魔法の優しい光がフラウを包み込むも、フラウは動かない。

 えっと……フラウはそういう展開をやりたいんだなきっと。

 俺は両拳を思いっきり床に叩きつける。


「なんてこった! あの魔法……フラウには負担が大きすぎたんだ……」


「なに……どういうことだカーター! そんなものをフラウさんに使わせたのか?」


「俺も大丈夫か確認はしたさ……。だがフラウは全然余裕だと答えた。今思えば、早くお前たちを助けるために嘘をついたんだ……」


「なんてこった……」


 呆然と立ち尽くす俺たち3人。

 なおこの後の展開はノープラン。

 フラウがどんな想定か知らないけど、こっちで何かしないと動かないだろうなあ。

 とりあえず何か考えていると、ニャーノさんが立ち上がった。


「いい方法を知っていますニャ!」


「教えてくれ!」


「おそらくフラウさんはまだ死んではいないのですニャ。ただ魂が離れかけている。これを繋ぎ止める必要があるのです……にゃ」


「その方法は?」


 ニャーノさんは俺の方を真剣に見つめてきた。

 そしてちょっとだけニヤリと笑いながら答えた。


「愛の力です……にゃあ。つまり……カーターさんが口づけをしてフラウさんの魂を呼び戻すのです! これしかありません! にゃー!」


「なっ!」


 俺がフラウに口づけ……つまりはキスをしろということか。

 たしかに眠り姫とか、こういう場合の定番ではある。

 でもえっと……急にそんなこと言われても困るわけだが……。

 大切なファーストキスをこんなところで済ませていいのか?

 ゲーム内なので現実ではないけど、フラウ的にはこの世界が真の現実世界と思ってるわけで……。


「カーター、悔しいがこの役目はお前にしかできない。任せたぞ」


「早くしないと手遅れになりますにゃー」


 楽しそうに俺を囃し立てるレオンとニャーノさん。

 いやいや、俺もしていいならしたいけどさ……フラウはどう思っているんだろうか?

 倒れたフラウはピクリとも動かず、見事な死体の演技で反応は窺えない。

 いや……仰向けに倒れているその姿……まるでキスを待っているようにも思えてきた。

 とりあえず顔の横にひざまずく。


「フラウ……こんなことでお前を失いたくない。早く戻ってきてくれ!」


 声をかければ起きるかなとも思ったが、フラウは一切反応しない。

 急に大きな声を出して驚かすという考えが頭をよぎるが……あとで3人からすっごく怒られる気がするからやめとこう。

 レオンとニャーノさんはワクワクした顔で俺たちを見守っているし、もうやるしかないのか?

 とりあえずもう一声かけてみよう……。


「フラウ……お前にもう一度会えるなら俺はなんだってする……。どうか戻ってきてくれ……」


 フラウは無反応。

 うーん……いいかだめかの判定は恐らくくれないだろうな。

 次は触ってみよう。

 フラウの顔近くの床に肘をつき、両手で顔を抱くように包み込む。

 当然だがあったかいな……。


「フラウ……愛している……」


 もうここまできたらやるしかない!

 愛の言葉を囁くと共に、手で触れているフラウの顔が熱くなった気がする。

 いや、俺の手が熱くなったせいかもしれない。

 勢いに任せてフラウにキスをした……。


 やばい……唇がメッチャやわらかくて気持ちいい。

 このVRゲームすごいよお母さん!

 あれ? キスって何秒くらいするものなんだ?

 長すぎも短すぎもダメと雑誌にあった気がする。

 とりあえず離れよう。


「フラウ……目覚めてくれ……」


 するとフラウの閉じられていた目がゆっくりと開く。

 ニャーノさんの説は正しかった。

 演技ではあれど、なんかちょっとした感動がある。


「わたし……どうしていたの?」


 フラウは何が起きたかわからない様子。

 つまりたった今俺がキスしたという事実を知らないのだ。

 だからこれはファーストキスにカウントしないことにしよう。

 あとは何かしらかっこいいセリフをと……。


「少し眠っていただけさ。起き上がれるか?」


「無理みたい……起こしてほしいわ」


 フラウは体を動かそうとする素振りを一切見せずに即答してきた。

 うーん、これって甘えてきてるのだろうか。

 よし、可愛いからそう思っておこう。

 フラウの肩に手を添えて……。


「ゆっくり起き上がるんだ。痛かったら言ってくれ」


「大丈夫みたい……。でもまだ魔力が不安定だわ。このまま支えていて……」


「わかった」


 フラウはちゃんと起き上がったが、俺は支えるためにくっついたまま。

 はたから見たらイチャついているように見えるんだろうなあ。

 レオンとニャーノさんが俺たちを見る目は、冷やかすようなうらやましそうな、といった感じだ。


「うにゃ……安心したら急に力が……」


「おっと……」


 ニャーノさんがわざとらしくふらつき、レオンがそれを支える。

 そしてニャーノさんはそのまま目を閉じ……。


「レオンさん……楽しかったです……あ……にゃあ……」


 そのまま動かなくなった。

 急展開でお亡くなりになったのかもしれない。

 慌てて揺り起こそうとするレオン。


「ニャーノさん……? ちょっと……冗談はやめてください」


「おいレオン、ニャーノさんはどうしたんだ?」


「わからない……もしかしたらもう限界だったのかもしれない……。それなのに最後の魔力で俺に回復魔法を……」


 フラウが倒れてなんとかなったわけだが、今度はニャーノさんまで倒れてしまった。

 二番煎じ感は否めないが、ここは俺があれを言うしかないな。


「あきらめるのは早いぞレオン、いい方法を知っている」


「それはなんだ? 俺にできることならなんでもするぞ」


「愛の力だ。お前がニャーノさんに口づけをすることで目覚めるかもしれない」


 うん、言ってて超恥ずかしいし笑いが込み上げてくる。

 でもここで吹き出したりしたら雰囲気が台無しだ。

 がんばれ俺!


「愛の力……はたして俺にその資格があるのか?」


「大丈夫だ。自分の想いを信じろ」


「わかった……」


 緊張した面持ちでニャーノさんの顔を見つめるレオン。

 さっきは俺が緊張する側だったわけだが、見る側に回ると楽しいな。

 ちょっとニヤついてしまう。

 フラウはどうなのかなと思い横目で見ると、無表情ではあるが、レオンたちをガン見していた。

 さて、レオンが動かないので発破をかけるか。


「レオン急ぐんだ。早くしないと時間切れとなる」


「わ、わかった……」


 レオンの緊張っぷりを見てわかる。

 きっと俺と同じで現実でキスしたこともなければ、ゲーム内ですら初めてなのだろう。

 あ、唇を突き出すという情けない顔になっている。

 俺はあんな風になっていなかっただろうかと、不安になってきた。

 てかこの動画公開するのか?


 やがてレオンは意を決し、ニャーノさんの唇に一瞬だけキスをした。

 次の瞬間にレオンは真っ赤っかとなっている。

 たぶんだけど、俺の方がキスシーンは上手くやれたと思う。


「ニャーノさん……頼む……目を開けてくれ!」


「うにゃ……?」


 ニャーノさんが可愛く声を出すと共に、目がゆっくりと開いた。

 感動的なシーン……のはずだけど本日2回目感は拭えない悲しさ。


「ニャーノさん!」


「なんだか夢を見ていましたにゃ。河の向こう岸で死んだおばあちゃんが呼んでて……そしたらレオンさんの声が聞こえて……」


「良かった……本当に良かった……」


「レオンさん……泣いてるのですかにゃ?」


 レオンのやつうまいことやってるな。

 マジックアイテムであるムーンオニオンズ団の団員バッジ(主な素材は玉ねぎ)を使って涙をだしたようだ。

 俺もやれば良かった……。

 さすが俺のライバル……やってくれるぜ!


「ニャーノさんになにかあったら俺……だから本当に無事で良かった……」


「レオンさんが守ってくれたおかげで無事ですにゃ。だから笑ってほしいのです……にゃ」


「はい……これからも守ります。だから俺と……結婚してください!」


「はい!」


 うお!?

 唐突にプロポーズをするレオンと、即答するニャーノさん。

 初めて会った日にプロポーズするのもすごいが、受けるのもすごい。

 よし、祝うしかない。


「2人共おめでとう! 2人の共通の友達として心から祝福するよ」


「ありがとうカーター。この成功はお前のおかげでもあるぞ」


「ありがとですニャー。幸せになりますにゃあ」


 フラウは祝わないのかなと顔を見ると、困惑した顔をしていた。

 展開が早すぎてついていけないのかな?


「フラウ、どうかしたか?」


「えっと……ごめんなさい。せっかくの場面に水を差すようだけど、ひとつ確認させてちょうだい」


「ああ、かまわないぞ」


「皆は今日、なにかの役になりきった演技をしていたのよね? わたしも偽りの記録映像のためと思って参加してみたわ」


 序盤の研究者っぽいのは演技というより素だったと思うが、つい先ほどの死んだふりとかは完全な演技だったな。

 ノリノリで参加してくれたようで何より。


「そうだな。それで?」


「でも今のプロポーズは演技ではなく本気に見えたわ。演技力がすごいのかあそこは本当の出来事なのかそれを確認しておきたいわ。大事なことだもの」


 ああ、要は先ほどのプロポーズが演技が本気かを知りたいわけだ。

 俺は普通に本気だと思ったが、実際はどうかよくわからんな。

 本人に聞こう。


「どうなんだレオン?」


「え? あれはえーと……勢いでなんというか……」


「本気ではなかったのですかニャ?」


 ニャーノさんが寂しそうにレオンに問いかける。

 ニャーノさんはどっちにとっていたのだろうか?

 これを聞いてみようかと思ったが、仮に本気に取っていたとしたら言いにくいかもしれない。

 よし、もう一回レオンをけしかけるしかない。


「レオン、はっきりしとけよ。漢を見せろ」


「え? あ、そうだな……。でもあの……」


 しどろもどろレオン。

 なんとなくだが気持ちはわかる。

 レオン的にはプロポーズをしたい気持ちがあるのだろうけど、もし本気で言って断られたらどうしようという気持ちがあるのだろう。

 だって今日会ったばかりなんだもの。


「はっきりするべきよ。女性に恥をかかせるものではないわ」


 フラウの追い討ち!

 レオンはさらに困って、すがるような目を俺に向ける。

 よし、個人チャットで合図を送ってやろう。

 『大丈夫だ、行け』と女性陣にはばれないようレオンに送信。

 なお大丈夫でなかった場合は、すっごく謝る予定である。


「よし……ニャーノさん、改めて言います」


「は、はい……。えと……にゃー」


「まだ出会って間もないですが、結婚を前提にお付き合いしてください!」


「はい!」


 脳内にウエディングベルの音が響き渡る。

 ここに新たなるカップルが生まれたわけだ。

 片方は性別不詳の自称ネカマではあるが、そんなことは些細なことである。

 心から祝福しようと拍手をすると、フラウも続いて手を叩いた。


「おめでとう2人とも。紹介してほんとよかったよ」


「おめでとう」


「おう、ありがとなカーター。フラウさんもありがとう。みんなのおかげで俺にもついに彼女ができたよ」


「ありがとうですニャー。幸せになりますにゃあ」


 レオンはついこないだまでリアル彼女がいたはずなのだが、まるでなかったかのようになっているな。

 なんか深く突っ込むのも怖いのでそっとしておこう。

 過去より未来である。

 さて、なんやかんやでもうすぐお昼になるな。


「今日はいろいろ楽しめたし、そろそろ帰ろうと思うがどうだろう?」


「そうね、拠点に戻って記録を残しておきたいわ」


「おう、俺も動画の編集したいな。今日はいい絵がいっぱいとれたからな」


「動画の編集楽しそうですにゃあ。それは現実でやるのですか? できればご一緒したいのですが……難しいですかにゃあ?」


 ニャーノさんはまだレオンと一緒にいたいようである。

 なにせ出来たてホヤホヤのカップルだもんな。

 ちなみに動画編集はゲーム内でも問題なくできる。


「今日はゲーム内の俺の家ででやるつもりです。よかったら一緒にやりましょう」


「やったー! お邪魔させていただきますにゃあ。あ、露天で食材の買い出しして行きましょう。ご飯作りますにゃあ」


「おお! ありがとうございます」


 楽しそうで何より。

 この後遺跡から脱出してレオンたちとは別れた。

 ここからは恋人同士の楽しい時間である。

 レオンのその後はまた今度聞くとしよう。


「さあ、拠点に飛びましょう」


「そうだな」


 フラウが俺に手を差し出してくる。

 俺はそれを当たり前のように受け止め手を繋ぎ、その状態で拠点へとワープする。

 もう完全に恋人であろう。

 今日告白しようとして止められたのは心に引っかかっているが、一旦忘れるとしよう。

 さあ、この後も楽しむぞ!

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