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49.密室の闇

 前回までのあらすじ。演技大好き3人と演技せずもといける中二病の計4人で遺跡調査ロールプレイをしている俺たち。フラウ以外はこの遺跡に初めて来た感じでやっていたのだが、探索中に見たことのない隠し扉を発見してしまう。というわけでここからは演技でなく本気で探索著調査をしてみようと思います。

 まずは隠し扉が隠されていた本棚の調査から。


 本棚には本がみっちり詰まっていて、掴めるような場所は見当たらない。

 本に手を伸ばしても、他の本棚と同じように謎の壁に弾かれる。

 だがあちこち調べると、一箇所だけ手が本をすり抜ける場所があった。

 その中にスイッチがあるようなのだ。


「こんなところに隠しスイッチか……。よく見つけられたなあ」


「えへへー、うちが転びやすいドジっ子じゃなきゃ見つけられなかったですニャー」


「ええ、お手柄よ。あなたのドジもたまには役に立つのね」


「うにゃー」


 しれっとニャーノさんの頭を撫でているフラウ。

 かすかに猫耳にも触れているぞ。

 これまでニャーノさんの耳を触ろうとして拒否されてきたフラウだが、ごく自然にいったな。

 流れ的にニャーノさんも拒否することなく、嬉しそうに撫でられている。


「ふふっ……」


 ほんと楽しそうにニャーノさんの頭をなでているフラウである。

 クールな感じが完全に消えた無邪気な笑顔で可愛いなあ。

 それにしても羨ましい。俺も猫耳付きの頭をもふもふなでなでしたい。

 いつかフラウの頭をなでるぞと強く誓う俺であった。


「フ、フラウさん……そろそろ中を探検するですニャ……」


「あら……そうね……」


 さすがになでなでが長すぎたのか、ニャーノさんがしゃがんでフラウの魔手から逃れた。

 心底残念そうにするフラウが可愛い。

 さて、気を取り直して隠し扉の前に立つ俺たち。


「侵入者を防ぐ罠が仕掛けられている可能性もあるわ。慎重にいくわよ」


「おう」


「わかったニャー」


 フラウが緊張した感じでドアに手をあて押し開ける。

 初めて見る場所なので、俺も何気にワクワクである。

 扉の隙間から冷たい風と共にカビ臭い香りがやってくる。


「今のところ罠はないようだけど、長いこと開けられた形跡がなさそうね。ふふ……何があるか楽しみね」


「お宝ありますかニャー?」


「新たなる発見や知識は最高のお宝よ」


「じゃあここを見つけた時点でお宝ゲットしてるんですニャー」


「ええ、そうね」


 なんとなくだが、フラウがニャーノさんのお姉さんっぽく見える。

 ニャコラ同士だし見た感じも姉妹と言っていい。

 猫好きなのでニャコラのニャーノさんが可愛くて自然となったのだろうか。

 お姉さん風フラウも可愛いのでなんでもヨシ!


 扉の中は真っ暗のようだ。

 俺は携帯用カンテラを取り出し、辺りを照らす。

 ちなみにこれは用意してるわけではなく、全てのプレイヤーのアイテムボックスに入ってる雰囲気アイテムで、取り出さなくても周囲はある程度見える仕様です。


「さすが準備がいいわね」


「ああ、転ばないよう慎重にな」


「そうね、わかった?」


「わかったニャー」


 ニャーノさんがフラウに合わせて子どもっぽくなってる感。

 気分的にはフラウの妹というより、俺とフラウの娘だったらなあとか考えてしまう。

 フラウは優しくていいお母さんになりそうな気も……っと、妄想を膨らませすぎだな。


「本棚らしきものが見えるわね。ここは貴重な本を置くための書庫かしら」


「かもしれないな。その本は取れるのか」


「ん……だめね。外と同じで触れることすらできないわ。でもどこかに何かはあるはずよ。今回は手分けせず一緒に探しましょう」


「暗闇は怖いのでその方がいいですニャ」


 俺も手分けより、一緒の方がフラウといられて良い。

 暗闇のおかげで距離も近いし。

 皆で同じ場所を観察しつつ、端からじっくりと探索していく。

 オートマッピングはこの暗闇でもちゃんと機能してるので、探索した場がチェックできで便利だ。


「こんなにもたくさんの本があるのに読めないのはもどかしいわね……」


「ですにゃあ……」


 おそらくだが、全ての本を読めるようにしたら開発さんが大変だからこうしているのだろう。

 なおゲーム世界にある図書館はかなり広く何万冊もの本があるが、閲覧制限とかで実際に読めるのは千冊もないらしい。

 とは言えせっかくの隠し部屋、読める本もいくつか置いておいて欲しいわけだが……。


「あら? 向こうのほうに見える机を照らしてちょうだい」


「あいよ」


「あ! 本が置いてありますニャー」


 部屋の隅っこになるのだろうか。

 椅子と小さなテーブルがあり、その上には一冊の閉じられた本が置いてある。

 その本は鎖に繋がっており、それを辿ってみると壁に繋がっている。


「持ち出し禁止の本ですかニャー?」


「そのようね。見てみましょう」


「ちょっと待ってくれ」


 俺はカンテラをテーブルの上に置き、椅子を引いてそこにハンカチを敷く。

 フラウをお嬢様と見立てた俺の紳士的行動。


「どうぞ」


「ふふっ、ありがとう」


 嬉しそうに、そしてお上品に座るフラウ。

 よし、いいところを見せれたぞ!

 本当はここでお姫様とかお嬢様とか言いたかったが、さっきのレオンがお姫様と言って注意されたのを思い出してやめておいた。


「カーターさんは紳士ですニャー。うちもそんなことされたいですニャ」


「ニャーノさんにはレオンという騎士がやってくれるかな」


「あー、してくれるかもですニャ。あ! レオンさんのこと忘れてましたニャ。ちょっと隠し部屋のこと伝えてくるので、あとで本の内容教えてくださいニャ」


 ドタバタと走って部屋を出ていくニャーノさん。


「暗いから走っちゃダメよ」


「猫は夜目が効くんですニャー!」


 ここでニャーノさんがすっ転んで大騒ぎ……というのを期待したが、そんな事故は特に起きなかった。

 ドジっ子は演技なので、必要がない時はしないのだろう。

 今はレオンが気になってるようだし、転ぶとフラウの邪魔をしちゃうものな。


「あの子ったら……大丈夫かしら?」


「あの子もいっぱしの冒険者だから大丈夫なはずだ。それに俺とレオンがいれば危険なことにはならないさ」


「そうね、あなたがいるんだもの。では読みましょうか」


 ごく自然にすごく嬉しいことを言ってくれるフラウ。

 信頼されすぎている感じなので、俺の知らないところでニャーノさんに何かが起きないことを願う。

 フラウは本を持ち上げて観察を始めた。

 鎖は不思議な構造で本と一体化しているようで、はずすのは無理そうだ。

 本の表紙は古いもののせいかタイトルを読み取ることができない。


「中身は無事だといいがな」


「そうね、でもこれだけのページがあるならある程度は読み取れるはずよ。あら……」


 フラウがページを開くと、何も書かれていなかった。

 さらにページをめくっていくが、どのページも真っ白だ。


「白紙……ノートというわけでもなさそうだが……。何か仕掛けがあるのか?」


「そうね……これを読むための方法も探す必要があるのかしら……。ん……それにしてもやけに綺麗ね」


 フラウの言うように、白紙のページはどれも綺麗な白色だ。

 暗がりの中だが、光を当てるとしっかり反射して驚きの広さであると伺える。


「そうだな。表紙がボロボロなのに不自然な白さだ」


「そう考えるとやはり魔術がこめられているわね。試しに明かりを消してくれる?」


「よし」


 俺はカンテラを手にとり火を消す。

 普通はこの状態でも周囲が少し見えるはず……なのだがあたりは闇に包まれている状態だ。

 おかしいなと思っていると、暗闇に微かな光が浮かび上がってきた。


「見て、文字だわ……」


「なるほどな……こういう仕掛けになっていたのか。明かりを消さないと見れないとは盲点だ。よくわかったなフラウ」


「偶然よ。でもなんでもやってみるものね。すごく嬉しい」


「成功したのならそれは偶然ではなく必然だ」


「うふふっ」


 暗闇だが、フラウが楽しそうにしているのがよくわかる。

 普通の女子高生がはしゃいでいる感じだ。

 嬉しすぎて素がでちゃってるんだと妄想。

 さて、内容でフラウがもっとはしゃぐといいな。


「さて肝心の内容だが、読めるか?」


「ええ、最初のページに戻るわね」


 この世界の文字で書いてある本。

 念じれば読めるのだが、さっき見えていたページはネタバレを防ぐために読んでいない。

 あと気分的にもフラウに読んでもらいたい。


「翻訳は俺よりフラウの方が得意だろう。読んでみてくれるか」


「任せて。えっと……書庫目録……。どうやらこの部屋に所蔵してある本のリストね」


「なるほど、それにしては不思議な管理方法だ」


「そうね。でも魔法で書かれた文章というのは興味深いわ。恐らく書き換えもできたんでしょうね」


「そうだな。本という形ではあるが、俺たちの世界でいうパソコンやスマホのメモ帳のような使い方ができたんだろう」


「ええ……でも不可解だわ。この内容であれば普通に置いておけばいいはず。魔法で白紙にしておく理由も鎖で固定してあるのも謎だわ」


「確かにな。他のページはどうだ」


「だめね。全ページこんな感じよ、なんとなく同じようなことが繰り返されてる気もするけど……履歴のように残しているのかしら」


 あ、ふと思いついたことがある。

 昔の人たちはちょっとえっつぃなDVDなどを保管する際、タイトルに『100万回許されない猫』とか他者が興味なさそうなタイトルを書いて擬態させていたらしい。

 その可能性で考えてみよう。


「今見えている文章自体がなにかを隠すためのものという可能性はないか?」


「どういうこと?」


「普通ならば隠れている文章を見つけた際、内容はどうあれそこで満足して本を閉じてしまうだろう。人の心理とはそういうものだ」


「なるほど……。確かにわたしはこの本に対する興味を既に失いかけていたわ。二重の隠蔽魔法の可能性を考えて調査しましょう」


「よし」


 とは言ったもののどうしたものか。

 今のところ何も思いつかないんだよなあ。

 さっきの明かりを消した時みたいにフラウが何か思いつかないものか……。

 逆に明かりをつけてみるか?


「やはりあなたと一緒でよかった。頼りにしているわ」


 暗闇から聞こえるフラウの優しい口調の声。

 顔が見えないので安心して俺の顔はニンマリ緩みまくりである。

 てかフラウ頼みではなく、俺もしっかりアイデアを出そう。


「任せておけ。だが、この謎は一緒に解こう」


「ええ、もちろんよ。ねえ、立ちっぱなしは疲れるでしょう? 一緒に座りましょう」


「お、おう……」


 フラウが動いたようで、木製の椅子の軋む音が聞こえてくる。

 そんなに大きい椅子ではなかったはずだ。

 つまり……座ると密着することになる。

 ドキドキしつつ椅子の背中を持ち端っこに座ってみる。


「もっとこちらに来ても大丈夫よ」


「ああ……でもフラウが落ちないか心配だ」


「ならばあなたがしっかり支えてちょうだい」


 えーとつまり……この場合のフラウが落ちないようにする最適解は……?

 肩を抱きよせる!?

 果たしてそれをしてもいいのだろうか。

 いや、リアルでは背後から抱きしめるというもっとすごいことをしたわけだし、この程度では臆さないぞ。

 恐る恐るフラウの肩に手を回してみる。


「ん……」


 暗闇で何も見えない中、フラウが可愛い反応を示す。

 そーっと触りすぎてくすぐったかったのだろうか。

 あれ? 肩のどこに手を置けばいいんだ?

 上なのか前側に寄せるべきか背中側に回すべきか、何もわからない。


「大丈夫か?」


「ええ、むしろさっきより安定しているわ。さすがね」


「そうか……」


 何がさすがなのかもさっぱりわからないが、とりあえずこのままでヨシ!

 余裕が出てきたら肩に置いてある手に感じる柔らかな感触が気になってくる。

 このまま本の謎が解けずに永遠にここに座っててもいいくらい幸せな気分である。


「では改めて本を見てみましょう」


「よし」


 フラウが本を開くと、そこから微かな光が発され文字が見える。

 横目でフラウを見ると、とっても近い!

 いかん……このままでは俺の第二思春期脳がショートしてしまう。

 本に集中だ!


「何度見ても変わらないわね」


「そうだな」


「なにか違和感を探したいところだけど……」


 何度見てもフラウは可愛くてドキドキしてしまう。

 だめだ、思考がもうそっち方面にしかいかない。

 なまじ薄暗い中に怪しげな光があるからいけないのだ。

 早く魔力切れにでもなって真っ暗になれば……あれ?


「なあ、この本は魔法の力で真っ白になっていたと考えられるよな?」


「ええ、そうね」


「ならば……もし魔力が切れたとしたらどうなるだろうか?」


「…………魔力の下の真実が暴かれる? なるほど、その考えを試す価値はあるわね。でもこのままで果たして魔力は切れるのかしら?」


 問題はそこだ。

 この世界のの魔道具というのは、魔力が切れるものと永遠に切れるものがある。

 設定的には周囲の魔力を吸い取ることで実現した永久機関である。

 がっつり繋がれた鎖から魔力が供給される設定だったらどうしようもないし。


「このままだと切れないかもしれないな。なにか魔力を吸い取れるものでもあれば別だが」


「魔力を吸い取るものね……。あ、これは使えないかしら」


 フラウが取り出したのは、ボサタルが時々戦利品として落とす空の魔導石だ。

 ちなみに魔導石はタルタルの動力源で、一体のタルタルに何個かくみこまれているものである。


「たしかに魔力を集めるにはうってつけだな。だがどう使う?」


「実はタルーガ博士より依頼を受けているのよ」


「依頼? いつの間に……」


 フラウがこの世界に来ている時、俺は常に一緒にいたはず。

 タルーガ博士というのはタルタル研究の第一人者で、タルタル研究所に見学に行った際に会ったきりだ。

 その時に依頼なんて受けていた覚えは無いのだが……。


「実は先ほど気づいたのだけど、タルーガ博士より書簡が届いていたわ」


「ほう……どんな内容だ……ってあれ? 俺の方にも来てるな」


「ならばきっと同じ内容ね。読んでみて」


 このゲームはNPCからメッセージが届くことがある。

 受けたまま放置されたクエストについて急かされるとか、進行状況に応じてヒントをくれたりとか、達成したクエストのお礼とかいろんなパターンがある。

 特に意味の無いメッセージの方が多いが、そのNPCが好きだったりしたら楽しいイベントである。

 ではタルーガ博士からのメッセージを見てみるか。


『拝啓以下略。君たちが名付けて起動してくれたタルタル、ファーリィの教育は順調だ。そこでひとつ依頼をしたい。組み込む魔導石に魔力を込める作業をしてほしいのだ。まだ研究中だが、人の心を込めた魔導石を使うことで、その人と関わりの深いタルタルは性能が上がる可能性があるので検証をしたい』


 ほほう、俺とフラウの子という設定となったタルタル、ファーリィ関連のクエストのようだ。

 実の所すっかり存在を忘れていた訳だが、なんとも楽しそうなクエストである。

 最近追加されたクエストっぽいし、そのうち実装されるかもしれないタルタルを操る新職業の布石かもしれないな。

 さて、手紙の続きはその魔力を込める方法が書いてあるようだ。


『魔力を込めるための魔導石は適当に用意して欲しい。オランデー遺跡が集めやすいだろう。まずは初期化の魔法を使う。スクロールを同封するから使ってほしい』


 どうせなら空の魔導石もくれよと言いたいところだが、必要アイテムは敵を倒したりして自力で集めるのがゲームのお約束。

 先ほどいくつか拾ったので、俺もフラウもその準備は問題ないな。


『それから魔力を集める場所だが、これもオランデー遺跡のどこかで行ってほしい。これも研究中だが、そこで魔力を補給するのが1番効率がいいようだ。おそらくは使い道の無くなった魔道具がいくつかあると思われるのでそれを探してみてほしい』


 ふむふむ、今俺たちの目の前にある本がまさにそれなのかもしれないな。

 こんな隠し部屋そうそう見つけられない気もするけど、ここ以外にもいくつかそれができる場所があるのだろう。


『それが見つかれば同封している道具を使って魔力を吸い取って欲しい。満タンの魔導石を持ってきてくれるのを心待ちにしている』


 なるほど、そんなクエストか。

 今日は初心者のフラウを案内する感じの予定だったが、俺の知らないクエストが発生した。

 もしかしたらこの隠し部屋を見つけることがこのクエストの開始フラグだったのかも?

 というわけで今から冒険を楽しむモードになる。

 この時点で俺はレオンとニャーノさんの存在を忘れていたが、あっちはあっちで楽しんでると思うので問題ないだろう。

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