46.突然の別れ
前回までのあらすじ。
フラウが親にVRゲーム機を買ってもらい、初めて自分の家からゲームインした。そして俺の仲間達と一緒に冒険し、とても楽しい時間を過ごすのだった。
こんな楽しい時間がずっと続けばいいなと願う俺。ネタバレしてしまうと、この楽しい時間はずっと続く。
日曜日の朝、なんとも清々しい。
昨日早起きしてしまった流れで今日も朝7時に起きた。
朝ご飯をしっかり食べ、なんとなくラジオ体操して、模範的な健康人の生活である。
そんな朝、不意になるチャイム音。
花ちゃんが俺に会いたくなって来たのかなとワクワクしながらドアを開ける。
「おうタカシ、ひさしぶり」
「お前かい」
大学の男友達である。
ゲームも一緒にやっている悪友だったのだが、ついこないだ彼女を作ってゲームからフェードアウトしたリア充である。
でもなんか元気ないな。
「相変わらず冷たいな。せっかく会いに来てやったのにさ」
「ああすまん、美女の来訪を期待していたからな」
「そんなことありえるわけないだろう」
それがあるんだよな。
以前こいつに彼女できた自慢されたわけだし、リアルJKと仲良くなったことを自慢してもいいかもしれない。
「それがそうとも限らないぜ」
「ああ、そんな妄想はいいから。それより預けた俺のゲーム機は元気か?」
「ああ、ちょっとだけ使わせてもらったけど今は大事にしまってあるぞ」
「そうか、実は返してもらいに来たんだ」
彼女が出来たからゲームを断つために預けたはすまのそれを返せということは……。
なんとなく察して優しい目になる俺。
「そうか……短い夏だったな……」
「ふん、女なんて所詮俺たちとは違う生き物なんだよ。今まで通りお前とゲームで馬鹿やらせてもらうぜ」
「そうか、持ってくるよ」
部屋に戻り、紙袋に入ったゲーム機一式をそのまま持っていく。
花ちゃんが自分のゲーム機を得るまでの間お世話になった思い出の品である。
もちろんしまう前にちゃんと掃除してアルコール消毒もしてある。
感謝の意を込めてそこらにあったお菓子の袋も入れて玄関へ行く。
「ほいよ、実は最近知り合った人がゲームに興味持ってさ、これでゲーム体験してもらったんだ。助かったからお礼にこれやるよ」
「そっか、役に立ったならよかった。じゃあ俺は家で再設定するから、後で会えば遊ぼうぜ」
「おう、暇だったらな」
「いつも暇だろ、それじゃあな」
そう言って部屋を出ていく俺の友達A。
ゲーム内では花ちゃんと遊ぶ予定なので構ってあげられない可能性大である。
「うおぅ……あっと、すいません……」
「いえ……」
突如聞こえる友人Aの驚き声と、聞き覚えのある女の子の声。
外に出ると期待通り花ちゃんがいた。
俺を見て少しホッとしたような顔となったのは、気のせいじゃないと思いたい。
「えっと……朝の挨拶に来たのだけど、取り込み中だったようね」
「いや、問題ないよ……」
こいつはもう帰るからと言おうとしたのだが、友人は説明を求める顔で俺を見つめてくる。
もちろん、なんでこんな可愛い子が俺に挨拶に来るのかってことを聞きたいのだろう。
しょうがない、説明するかな。
「ちょっとこいつと話すことがあるから、また10分後に来てくれるか」
「承知したわ」
花ちゃんはさっと後ろを向いて自宅へと戻っていった。
振り向く時に髪がふわっとなるのが、なんとも優雅である。
スマホを取り出し時間計測開始。
さて、友人Aと一緒に俺の部屋へ戻ると……。
「なんだあの美少女は! それがなんでお前に? 犯罪か? 事案なのか!?」
捲し立ててくる友人A。
まあ気持ちはわからなくもない。
もし俺が逆の立場であれば同じように詰め寄っていただろう。
「とりあえず落ち着け、順番に説明する」
「俺はいつだって冷静だ。早く言わないとお前を殺してあの子を俺のものにする」
「全然落ち着いてないな。まずあの子だが、俺は今家庭教師のバイトをしている」
それだけではないが、この説明が1番楽だしこいつを納得させやすい。
「家庭教師……そうか、それなら納得だ。お前が普通にあんな可愛い子と知り合うわけがないもんな」
それがありえるんだな、と自慢したいのを抑えてそういうことにする。
「そうだな」
「それにしてもあんな可愛い子の家庭教師ってのもいいが、隣に住んでるのはうらやましいな。あー、俺もあんな子と知り合いたい」
ゲーム内では知り合えるぞ、と言ってやってもいいがこの情報は伏せておくか。
こいつがゲーム内でフラウにアタックをし始めても困る。
ついでに借りてたゲーム機をさっきの美少女が使っていたということも内緒にしておこう。
この部屋で一緒にゲームしてたって話になってめんどくさい。
「お前も家庭教師のバイトとか探してみるといいさ」
「そうだなあ……でも俺成績悪いし、たいてい生徒は同性になるらしいぜ。お前、運良すぎだろう」
確かに世間一般では、娘を持つ親は家庭教師に女性を選ぶらしい。
花ちゃんのお母さんが俺を信頼してくれたことに感謝である。
「まあな。お隣のよしみとかあったからほんと運がいいよ」
「全くだ。今からあの子が来るんだろう? あれ? でも朝の挨拶って言ってなかったから? 家庭教師に対して挨拶なんかくるか?」
そこに気づいてしまったか。
ま、適当に誤魔化そう。
「ちょっと昨日、勉強時間以外の質問にも答えたりしたんだよ。それであの子のお母さんは礼儀正しくてな、ちゃんとお礼を言っておきなさいって感じさ。たまにあるんだよ」
「ふーん……なんにせよ羨ましすぎだろう。お前ずるいな」
「ずるくはないだろう。俺からしたらたとえ一時でも彼女がいたことのあるお前の方がずるいぞ」
「はは……そんないいもんじゃないさ……。まあでも、いくら可愛い子の家庭教師してたって、彼女になるまで発展とかありえないもんな」
「そうだな」
そこを発展させてみせるのが今の野望である。
だが今はとっととこいつに帰って欲しいので肯定しておいた。
「じゃあ帰ってゲームインするわ。じゃあなー」
「おう、よいエタを」
こうして今度こそ友人Aは帰って行った。
先程のように花ちゃんと出会ったりすることもないようだ。
スマホのストップウォッチを見ると、先程花ちゃんに伝えた10分まではもう少しあるな。
脳内で何を話すかシミュレーションしながらその時を待とう。
そして時間となったのを見計らい、そーっとドアを開く。
それとほぼ同時に隣の部屋のドアが開く音がした。
ドアを開けたまま待つと足音が接近する音と共に花ちゃんが現れる。
「ふふ、わたしたちの同期は問題ないようね」
「そうだな」
俺がちょうどよく待っていたのを驚くでもなく、当たり前のように受け止める花ちゃん。
これはもう長いこと連れ添った夫婦の域ではなかろうか。
「ではもどるわ。また後ほどあちらの世界で」
「ん? おう……」
そのまま花ちゃんは帰って行った。
挨拶に来ただけと言っていたが、ほんとに挨拶だけなんだな。
あっさりすぎてアレではあるが、これはこれでなんか嬉しいので良き。
さて、ゲームインする約束の時間までに用意をしておこう。
具体的に言うと、しっかり水分補給してトイレに行って、ベッドや枕を整えると言う地味な作業。
あとは時間までネットで『女の子との会話の仕方』を検索して読むだけ。
さあ、今日も楽しくゲームをするぞ!
――Welcome to Eternal Fantasy――
ついさっきまでのあらすじ。
ここにひとつの恋が終わりを告げた。俺ではなく友人Aの話である。夏休みに彼女が出来て浮かれていたのに、わずか短期間でフラれたというよくある夏の1ページである。
なおその間そいつのVRゲーム機を預かっていたおかげで俺は花ちゃんと仲良くなれたので、友人Aには感謝である。
今日からゲームに復帰するらしいが、一緒に遊んであげられるかはわからない俺は薄情者である。
さて、今日もフラウとの結婚準備のためにいろいろやるつもりである。
金策したりレベル上げしてみたり、オリジナル家具を考えてみたりとやるべきことは多い。
今日は昨日と違って2人だけで色々やっていたのだが、そこに唐突な乱入者が現れた。
「カーター! 貴様裏切ったなぁっ!」
街中で剣を俺に突きつけて来たのは、悪友レオンである。
ちなみにこいつの中身は、彼女が出来たけどすぐにフラれてしまった友人Aである。
なおプレイヤー同士は攻撃したり出来ないので、俺は剣を突きつけられたところで動揺もなく冷静である。
「どうしたレオン、とりあえず落ち着け」
「これが落ち着いていられるか! 噂を聞いたぞ、お前結婚するらしいじゃないかっ!」
なるほど、ギルドメンバーから俺の結婚の話を聞いたわけだな。
嫉妬に駆られた男は醜い……が、こいつの場合は縁起の可能性がある。
このレオンはとことんロールプレイが好きで、常になにか演技をしていることが多い。
その前提で付き合うか。
「そうだ。お前なら祝福してくれると思っていたがな。その剣は一体どういうことだ?」
俺も芝居がかった感じで相手をする。
これに乗ってくれば、今現在奇行をしているレオンは冷静ってことだ。
なおフラウは何事かと身構えつつも、ワクワクした感じを醸し出している。
かっこよくキメるぞ!
「お前は俺と誓い合ったはずだ。騎士の道を極めるまでは色恋沙汰には惑わされないと。それがこの剣の理由だ」
よし、芝居がかったことを言ってきたので大丈夫だ。
なお、騎士の道を志した覚えはないし色恋沙汰うんぬんを誓い合ったこともない。
いつも適当な設定でロールプレイして遊んでるのでそのへんは適当である。
ただ、今日は何事も素直に受け止める俺の愛しきフラウがいるのが問題である。
でもここで素に戻ったらフラウはがっかりしそうなので、うまいこと続けよう。
「確かに惑わされないとは誓ったな」
「ならば何故だ! 俺を納得させる説明をしてみろ」
「惑わされたのではない。騎士道精神の先に見つけたんだよ。真実の……それをな……」
真実の愛って言おうとしたけど、ちょっと恥ずかしくなってはぐらかした件。
フラウの顔は、いつ騎士を目指してたの? と言いたそう。
俺はフラウに対し、これも組織の目を欺くためさ、という意味のニヤリとした笑みを放つ。
わかってくれると信じてる。
「戯言を……。惑わされたのでないと言うのならその剣で証明してみせよ」
「そうだな、かかって来い!」
俺も剣をどこからともなく取り出し、レオンと対峙する。
ここでレオンより秘密チャットで『モーションマクロ13で』と届く。
これは俺とレオンがあらかじめ作っておいた、モーションを組み合わせて周囲に魅せる剣闘試合をするプログラム的なものだ。
実際に斬り合って戦闘はできないが、演技で本物っぽくは見せられるのだ。
「覚悟!」
「応!」
こうして2人の剣技がぶつかりあう。
おそらくだが、時代劇とかテレビで見るより遥かに迫力のある戦いを俺たちは繰り広げている。
周囲にもちょっと人が集まって来ているようだ。
「おっ、決闘か」
「あいつレオンだよな、引退したって噂聞いたが眉唾だったか」
「今日は女を取り合って戦ってるみたいだぜ」
「ほー、面白そうだな。最初から見たかったぞ」
こういうことをしてると人が集まって来たりする。
この決闘が終わったらレオンが自分の動画チャンネルを紹介したりするのだろう。
そこまで人気のチャンネルでもないが、レオンの芝居がかった大袈裟な演技にファンがついているらしい。
俺もレオンもはた目には全力で剣を振るっているのだが、全てシステムがやってくれてるのでわりと暇である。
俺の注意は当然フラウの方へいく。
両手を顔の前で組んでいて、祈りながら戦いの行く末を見守ってくれている感じ。
とても可愛い。
「戦いながら女の方を見るとは余裕だな、カーター!」
「守るべきものがあると男は強くなるのさ」
「ふん、その覚悟が本物か見極めてやろう」
このセリフのタイミングもレオンはバッチリ考えている。
この直後に大技を出す構えをレオンが取った。
それは前方に真空波を放つ技で、ゲーム的には範囲攻撃となるものだ。
ちなみに今の状態だと見た目だけ楽しめるので安全。
「おい、ここでそんな無差別攻撃をするつもりか! 貴様の騎士道はどうしたレオン!」
「ふふ……俺がおかしくなったと思うかもな。だが……俺はお前の騎士道を信じてるのさ」
「レオン……」
「お前の愛の力で止めて見せろ! うおおおおーっ!」
俺の背丈の倍はあるであろう巨大な竜巻のようなものが襲ってくる。
今ちょうど俺の後ろにはフラウもいるし他の野次馬もいる。
俺は剣を地面に突き立て叫ぶ。
「大地の守護者!」
俺の剣を中心に光の輪が広がり、それが竜巻を受け止める。
しばらくぶつかり合い、轟音と共に辺りの空気が震えまくる。
やがて静かになり、俺は目を閉じて佇む。
「カーター、お前の覚悟……見せてもらった……ぜ……」
レオンがその場に倒れる音がする。
でも俺は目を閉じたまま動かない。
「おい、あいつの勝ちだよな? でも動かないぞ」
「あいつ……立ったまま死んでやがる!」
「な……相打ちなのか?」
「いや……あいつは愛するものを守ったんだ。あいつの勝ちだよ」
ギャラリーもノリノリでそれっぽいことを捲し立てる。
今日の客たちはノリがいいなあ。
俺は立ったまま死んだふりをしてるのだが、ここから先はノープラン。
いつもならどこかで終幕となって生き返れるのだが、今日はフラウがいるのでどうしたものか。
「フラウちゃん、出番だよ!」
聞き覚えのある叫び声が耳に入る。
あれは我らがライバル、劇団かしわもちの団長かしわもちの声だ。
「お母様……一体どうしたらいいのですか?」
フラウが必死な声でそれに応えた。
なかなかいい演技力……というか本気で俺が死んだと思ってそうで可愛い。
でも、そんな信じられちゃうと騙してるみたいで気が引けてしまう。
とりあえずかしわもちに任せてみよう。
「その男……カーサ……えーっと、タカシの命は尽きかけている。それを繋ぎ止めなきゃならない」
かしわもちは普段から俺のことを本名で呼んでいるせいで、ゲーム名を覚えてないようだ。
せっかくの緊迫した場面がいろいろ台無しではあるが、そういう点が楽しいということに定評のある劇団かしわもちである。
「その繋ぎ止める方法は?」
「愛……の力だよ」
「愛……わたしなんかにそんな力があるのでしょうか?」
「信じることさ、さあ飛びついてあの子の命を捕まえな!」
「はい!」
恥ずかしい言葉が飛び交っていたが、俺はかしわもちに感謝の気持ちでいっぱいである。
だってこの展開だとフラウが俺に抱きついてくるのだから!
目を閉じてその幸せな瞬間を待つ。
そして俺は力一杯抱きしめられた。
幸せを感じつつ……あれ? なんかやけに力強いしゴツゴツしてないか?
恐る恐る目を開けると、さっき力尽きて倒れていたはずのレオンが俺を抱きしめていた。
「お前かーい!」
思わずレオンを持ち上げてぶん投げる俺である。
「お前を1番愛してるのは俺なのさー!」
ぶっ飛びながらとんでもないことを言い出すレオン。
肝心のフラウはどこかと振り向くと、珍しくポカンとした顔のフラウと目があった。
「えっとその……お幸せに……」
いやいや、この子も何を言っているんだ。
やり直しを要求する!
あたりからは観客のざわめきも聞こえるし。
「おい、この展開はどうなってるんだ?」
「目覚めたってことは、あいつらの愛は本物ってことじゃないのか?」
「てことはあのニャコラの子は振られちまったのか? なんて急展開だ」
「と、とりあえず祝おうぜ」
観客たちは勘違いしたまま大盛り上がりとなる。
やがて皆で声を合わせていく。
『本物の愛! 本物の愛! 本物! 本物! ほんもー! ほんもー! ほーもー! ほーもー!』
何故か今日の客層はノリが良すぎで統率まで取れている。
てか俺はホモではない!
とりあえずここから逃げ出すべきだな。
俺はフラウの元へ駆け寄る。
「フラウ、この騒ぎは組織による工作だ。とりあえず退散するぞ。例の場所へ飛べるか?」
「工作……なるほどね。もちろん飛べるわ」
「ならば行くぞ」
「ええ、あなたと共に……」
俺はフラウの手をとり、メニューを起動して簡易ワープを選ぶ。
街中などの安全な場所からならいつでもワープできるのだ。
行き先はもちろん、俺とフラウの家予定地だ。
なお、手を繋ぐ必要は一切なく、雰囲気と俺の欲望のためである。
ほにゅほにゃーと景色が歪み、到着した場所は小さな物置が1つだけある空き地である。
土地だけ借りて、ひとまず荷物を置く場所だけを用意した状態だ。
ここに来れるのはまだ世界で俺とフラウの2人だけという素敵な空間である。
「それで、さっきのあれはいったいなんだったの? 騎士道とか聞きたいことは山ほどあるわ。あの男が組織の刺客?」
フラウがいろいろと聞いてくる。
この子に嘘は言いたくないので、うまいこと嘘にはならない設定を作り出そう。
自分すら騙せばそれは真実となることを某SFゲームで知った。
「お前には説明しておくべきだったな。まず、あの男は敵ではない。味方だ。そして先ほどの一連の流れはちょっとした演技なんだ」
「演技……ということは騎士の道というのも?」
「ああ、今日のためだけに一時的にでっち上げた設定だ。もちろん最後のあいつが俺を抱きしめたくだりもな。俺は死んだふりをしていただけだし。心配かけてすまなかった」
「いえ……心配はしていなかったわ」
「そうか……」
それは俺を信じてくれていたのだろうか?
レオンが抱きついてきてそれが真の愛だどうこうのあたりは慌てて欲しかった気もするが……。
「それで、どうしてあのような演技をする必要が?」
「俺の正体を隠すためだ。俺とレオン、かしわもちもだし、他にもこんなことをしているものは複数いる。恐らく、俺を観察している者がいるとしたら混乱しているだろうな」
「なるほど……なんとなくわかってきたわ」
どう誤魔化すか探り探りではあるが、フラウがいつも通り勝手にわかってくれた。
その考えを聞いてみて、それを事実としようか。
「そうか、おそらく今フラウが考えていることが正解だ。試しに言ってみてくれ」
「刺客というものは常に情報を求めている。特に対象の人間関係などは重要だわ。それは対象の弱点を見つけると同義だもの。そうよね」
「うむ、そうだな」
「だからあなたはあのようなことをして刺客を惑わせているのね。家族や大切な人を守るために……」
よしよし、俺の中でもあやふやだった設定がフラウの想像力のおかげで固まってきたぞ。
つまり俺は大切な人たちを守るためにあんなことをしていたのだな。
「そうだ」
「そしてあなたとあのレオンという人は今日、わたしを守るために行動してくれたのね。本来であればあなたの1番の弱点となるわたしの存在を隠すために……ありがとう」
そうだったのかレオン……。
なんか知らんがお前のいつも通りの適当な行動のおかげで、フラウの俺への評価が上がりそうだよ。
「当然のことだ。お前は俺の……」
ここで大切な人だ、とか家族だ、とか言いたかったのだがさすがに恥ずかしい。
ここでどもるのもみっともないので、この先は言わなくてもわかるだろう? って顔でフラウを見つめる。
フラウはいつも通りにニヤリと笑い返してくれた。
「ええ、わたしもあなたが……」
フラウも同じようにその先を言わずに目を閉じる。
何を言おうとしたのか聞きたいが無理なので適当に妄想しよう。
さて、レオンのおかげで愉快な時間を過ごしてしまったが、ここからは予定通り行動していくとしよう。
楽しい1日になればいいな。




