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44.もうひとつの恋

 前回までのあらすじ。

 今日は俺とフラウだけでなく、かしわもちとユースとくーちゃんの5人で冒険をしている。冒険しつつ俺とフラウの恋仲は順調に進んでいる気がする今日この頃。向こうはこれを恋を思っていない可能性もあるのだが、きっと大丈夫という根拠なし自信を持っている俺である。さて、今はみんなで某洞窟内で骨の採掘を楽しんでいるところだ。


 採掘が初めてのフラウにつるはしを渡し、採掘方法を教える。

 基本的にはゲームの説明だが、フラウ用にに少しアレンジするのはお約束。


「この採掘は物理的というよりは魔法のようなものだ。例えば化石でも一切傷を付けることなく、必要最低限の形で取り出せる」


「なるほど……魔物を倒した後に発生する魔力の抽出と具現化と同じものね。素人だろうと採掘できる魔具、素晴らしいわ」


 フラウにかかればこの世界のものは全て魔法道具である。

 たいていのゲームでやってることって、現実で考えたらほんと魔法だものなあ。

 さあ、採掘開始だ。


 フラウは採掘ポイントを見つけたようで、楽しそうにそちらへ駆けていく。

 俺もフラウを追いかけたくなるが、我慢して他のポイントを探す。

 ついでに他のみんなの様子も見に行くかな。


 まずは、わりと近くにいたかしわもち。

 つるはしを構えて背より高くジャンプし、見事な空中前転を決めてからつるはしを骨にぶつける。

 ちなみにかしわもちの運動能力がすごいのではなく、ホビホビ族のデフォルトの採掘スタイルだ。

 基本的にちっこいホビホビ族は何をやらせてもコミカルな動きで可愛く、それが大きなお友達たちからの人気の秘訣である。


「よーし、謎の甲羅発掘だよ。あ、タカシ見てみてこれ」


 かしわもちはかなり大きな亀の甲羅のようなものを高く掲げて見せてくる。

 さらにそれを背中に乗せて某仙人みたいな姿となる。

 この甲羅はいろいろ加工できるし、そこそこお小遣いになるいいものである。


「いいもの掘れたね。他はどんな感じ?」


「うん、骨クズや貝がらばっかりだよ。でも謎の化石も掘れたんだよ。これっていいもの?」


 謎の化石は、このままだとなにかわからない。

 俗に言う鑑定アイテムと呼ばれるもので、研究所とかで見てもらうことで正体が判明する。

 そこではずれアイテムのこともあるし、高価な貴重品の可能性もあって、くじ引きみたいな気分で楽しめるのだ。


「街に戻ったら鑑定してもらおう。価値のある化石だといいね」


「そうだねー。でもせっかくだからさ、よくある化石だったとしても取っておきたいな」


「インテリアにもできるから、部屋に飾るといいかもね」


「そっかー、くーちゃんのお部屋に飾ってもらおうかな」


「それもいいかもね」


 くーちゃんのことだから、喜んで置き場所を提供してくれるだろう。

 ただ……ひとつふたつならいいけど、たくさん持ち込んでくーちゃんを困らせないといいけど。


「じゃあがんばって、母さん」


「あいよー。タカシもしっかりね。フラウちゃんを泣かせちゃだめだよ」


「大丈夫だよ」


「そうかいそうかい」


 かしわもちはとってもご機嫌である。

 なんせ息子2人がゲーム内とはいえパートナーを連れているわけだからな。

 ほんと期待に応えたいものだ。

 さて、次は我が弟ユースである。


「ユース、調子はどうだ」


「順調だよ。あとでまとめて兄ちゃんに渡すよ。あ、換金してからの方がいいよね」


「え? いいのか?」


「もちろん。くーちゃんにいろいろ聞いたよ。家とか家具のために金策してるんだよね。僕も協力したいしさ」


「ありがたい。お前が協力してくれるなら目標がすぐ達成できそうだ」


 我が弟ながらできた子である。

 ちなみにユースはこのゲーム内だと俺よりかなり経験が高く、当然お金持ちである。

 こいつもくーちゃんとの結婚資金とか必要なんだと思うが、おそらくもう用意できているのであろう。

 この世界は助け合いだ。今回は甘えよう。


「うん、頼りにしていいよ。それにしても母さんのテンション高いよね。ちょっと不安だよ」


「なにが不安なんだ?」


「だってゲーム内の話なのにさ、現実でも僕らに恋人ができたつもりでいるんだよ。兄ちゃんはまだしも、僕は現実のくーちゃんを知らないのに」


 そういえばユースとくーちゃんはゲーム内だけの関係なんだよな。

 その状態なのに母さんの頭の中では将来結婚するかのようになっている。

 それが現実になるのが理想なんだが……。


「たしかに母さんはちょっと早とちりだよな。実際そうなればいいわけだが……。ユースは現実でくーちゃんに会ってみたいとか思わないのか?」


「そりゃあ気にはなるけど……怖いかな。ちょっと前まで僕、引きこもりだったんだよ。うまく話せるかもわかんないし、電話するのすら怖くってさ」


 そうか……たしかにゲーム内と違って現実は怖いよな。

 俺の場合は現実での出会いが先だったから、事情が全然違うな。

 でも兄として弟の背中を押したい!


「なんでもやってみるもんだぞ。実は俺もつい最近フラウと出会うまで、女の子と会話したことがほぼ0だったんた。でも仲良くなりたくてがんばった。お前もぜひがんばってみてほしい」


「そっか……僕もちゃんと女の子と話せるようになるかな?」


「全然大丈夫だ。それに相手はあのくーちゃんだ。俺から見てもあの子はすごくいい子だ。お前が話し下手だったとしても、あの子がそれでお前を嫌いになることなんてないと思う。だろう?」


「うん……くーちゃんだもんね。よし、今度機会あれば現実でもお話ししてみるよ」


「よし、その意気だ。じゃあ採掘がんばろうな」


「うん」


 いい感じに弟を鼓舞できたので、次にくーちゃんのところへ行く。

 ユースにはああ言ったが、くーちゃんは現実で会うことをどう思っているか聞いてみたい。


「くーちゃん、調子はどう?」


「あ、お兄さん。わたし、採掘こんな大勢でやるの初めてなんです。掘りやすくなって楽しいですね」


「そうなんだよ。人が集まったら強敵と戦いに行くのか定番だけどさ、こういうのもいいよね」


「はい! ところで、フラウちゃんとの仲がまた良くなってますよね。今後のために秘訣を教えてほしいです!」


 目を輝かせて聞いてくるくーちゃん。

 それは俺も知りたいことである。

 一体なんでこんな急接近してるのだろう?

 とりあえずなんかうまいこと言って、ユースとくーちゃんの仲がさらに深まるようアドバイスをしたい。


「うーん、秘訣というほどでもないんだよね。お互いのことを知りたいと思ってたら、いつの間にか?」


「そうなんですね。つまり、お互いが相手のことを知りたがったってことですよね。それって素敵ですね。憧れるなあ……」


「あはは、でもくーちゃんもユースのこともっと知りたいよね? きっとユースもそうだし、おんなじだよ」


「うーん、そうなんでしょうか?」


 ちょっと寂しそうにするくーちゃん。

 ユースとの仲になにかあるのだろうか?

 何か悩んでいるならば誤解だろうし、おにいさんがしっかり聞いてあげたい。


「そうだと思うよ。さっきもユースがくーちゃんのこと気にしてたし」


「え、そうなんですか? ユース君はなんて?」


「今のくーちゃんと同じだよ。俺とフラウがやけに仲良くなってるからなんでか聞いてきた。きっとくーちゃんと同じこと考えて聞いてきたんだと思うよ」


 ちなみにさっきと言うのは、この洞窟に入る前のことである。

 実際にユースがくーちゃんと同じ意味で聞いてきたかは不明だが、こういう時はいい方に取っておくのがいい。


「ユース君が……えへへ、なんか照れちゃいますね」


「その感じだと、2人はうまくいってるのかな」


「えっと……ちょっとだけご相談に乗ってもらっていいですか」


 やはりなにか悩みがあるようである。

 頼れるお兄さんとしてなんとか解決してあげたい所存である。


「もちろん、どうしたの?」


「お兄さんとフラウちゃんは現実でも知り合いなんですよね。わたしとユース君はそうじゃないから……」


 ふむ、なんとなく予想はしていたが、ユースと似たような悩みなのかな。

 とりあえずどんな方向で悩んでるのか聞き出そう。


「くーちゃんは、現実でもユースに会ってみたいと思う?」


「はい、人と話すのは苦手な方ですけど……会ってみたいなあって……」


「じゃあ思い切って会ってみるのがいいと思うよ。あ、でもまずはテレビ電話から始めるとかがいいかも」


「そうかもですね。でもユース君は嫌がるかなって思って……。お兄さんはどう思います?」


 さっきユースにも思い切ってゲーム外で話してみろと言ったばかりだ。

 同じことを言えば成功するだろうから、アドバイスしやすくていい。

 てか、2人とも同じこと考えてて仲良しカップルだな。


「はは、さっき俺が言ったこと当たってたよ。2人とも相手のことを知りたがって、同じようなことを考えてるね」


「えっ? それって……」


「うん、実はユースもゲーム外でくーちゃんと仲良くなりたいみたいなんだ」


「そうなんだ……ユース君……。言ってくれたらよかったのにな」


 悩みが飛んだような素敵な笑顔となったくーちゃん。

 見てて俺も嬉しくなる。

 とりあえずユースのフォローというか、うまくいくようにこれを言っておこう。


「あいつ恥ずかしがり屋でさ、女の子と話したことほとんどないから緊張してるんだよ。これもくーちゃんと同じかな」


「あはは、そうですね」


「あ、でも俺がこんなこと言ってたってユースには内緒だよ」


「うふふ、わかりました。教えてくれてありがとうございますお兄さん」


 よし、これでいいだろう。

 仮に電話とかでお互い無言になったとしても、それで仲が悪くなるとかはないはずだ。

 きっと今より仲良くなるに違いない。

 そうなったら、俺も現実でくーちゃんに会って現実で『お兄さん』と呼ばれたい。

 うーん、でも『お兄ちゃん』も捨てがたい……っと、妄想してる場合じゃないな。


「じゃあそろそろ移動するよ。焦らずゆっくり仲良くなりなよ」


「はい! お兄さんもフラウさんとの仲ファイトです」


「はは、俺も頑張るよ」


 くーちゃんとの会話は楽しかった。

 ほんと将来の義妹になってほしいものである。

 さて、フラウは初の採掘を楽しめているか見に行くか。


 フラウはつるはしを持って楽しそうに走り回っていた。

 そしていいものを掘り出したのか、掘り出したものを頭上に掲げてポーズを決めている。


「世紀の大発見だわ。これを解明すれば世界の歴史が動くわね。あら? ちょうどよかったわ。これを見てちょうだい」


 なんだか今日はテンションが高いな。

 なんとなくこれが素のような気がするし可愛い。


「何を掘ったんだ?」


 声をかけるとフラウが振り向き、嬉しそうな顔で駆け寄ってくる。

 自分に駆け寄ってくる女の子っていいよね。


「これよ、見たことのない形と大きさでしょう?」


 フラウが見せてきたのは、なんの変哲もない魚の化石である。

 変哲もないってのはゲームの話であって、もし現実でこれを見つけたらさぞ楽しいはずである。

 だからフラウの興奮もよくわかる。

 俺も初めて採掘した時はすごい楽しかったことを思い出す。


「そうだな。なかなか貴重な歴史的資料だ。家ができたら研究室にでも置くか」


「それもいいわね、魔力の残滓を辿って過去の記憶を呼び起こしたり……復元だってできるかもしれないわ」


「ああ、夢は広がるな」


「ええ、どんどん掘りたいわ。わたし、研究職に向いているのかもしれないわね」


 嬉しそうに次の採掘ポイントを見つけて移動するフラウ。

 たしかにここでの採掘や、以前のオランデー遺跡の探検を思い出すと向いてそう。

 なんでも魔法関連にしたがるので現実ではアレだが、この世界だとさぞ楽しく研究できるだろう。


「そうだな。いっそ研究室ではなく研究所を建てるか」


「それもいいわね、この世界にいれば研究対象はいくらでもあるわ」


「よし、まずは庭に小さな研究所を作って足りなくなれば拡大させていくか」


「ええ、あなたに任せるわ」


 庭の使い道も少し決まり、さらに楽しくなってきた。

 化石というのは種類多いものの、使い道はほとんどない。

 でもそれらを飾る用途で使うのならば可能性はいくらでも広がる。

 内装はフラウに任せればいいし俺はガワをがんばって作ろう。


「とりあえず採掘は順調みたいだな。それに楽しそうで何よりだ」


「ええ、あなたには感謝しているわ。こんなに楽しい時を過ごせている。それに……他者との触れ合いもいいものなのね」


 フラウは周囲を見渡しながらそう言う。

 かしわもち、くーちゃん、ユース、その3人を見ながら言っているのだろう。

 俺の家族と、家族候補、仲良くしてくれて嬉しい限りである。


「ああ、いい仲間たちだよ」


「ええ、この世界はわたしを受け入れてくれる人が多い。帰りたくなくなるわ」


 ゲーム内では中二病が珍しくないと言うか、むしろ歓迎される。

 かしわもちも真似してたし、現実ではできないことを楽しめるのがゲームのいいところなのだ。

 でも現実に帰りたくないのはよろしくない。


「ここでフラウを受け入れてくれた人たちは現実でも受け入れてくれるはずだぞ」


「どうかしら……あなたは受け入れてくれているけど、他の人はわからない。身に染みているもの」


 フラウが寂しそうな顔になってしまった。

 現実で中二病を受け入れてくれる人なんてほとんどいなかったんだろうしなあ……。

 とりあえずここは……なんかいい感じに決めたい。


「そうか、たしかにわからないな。だが、とりあえず俺はいるんだ。帰ってきてくれないと困るぞ」


「ふふっ、そうね。わたしがこの世界に定着してしまわないよう、あなたが導いてね」


「ああ、任せとけ」


 俺がちゃんと現実に連れ帰り、現実での居場所を俺が作る。

 なんか恥ずかしいことを言っている気もするけどこれでヨシ!

 さて、みんなの様子も見たし俺も採掘するかな。


「では採掘を続けるか、今のところ敵はいないようだが気をつけてな」


「ええ。今のところ危険は感じないけど、どんな魔物が出るのかしら」


「ここでは時々瘴気が湧き出るような状態になることがある。闇天候と呼んでいるんだが、その時には周囲の怨念より魔物が生み出される」


「闇天候……恐ろしい響きだけど一度は体験しておきたいわね」


「そうだな、確率は低いが。そうなったら明らかに異常を感じるはずだから皆と合流すればいい」


「ええ、わかったわ」


 魔物が出る予兆とか最初に説明しておくべきなのに忘れていたわけだが、今したのでよしとしよう。

 さあ、採掘するぞー。

 皆と違う場所に移動してポイントを探してつるはしを振るっていく。


 骨クズや貝殻といったハズレ品も集まれば素敵なお小遣い。

 こういうのは数をこなすことが大事なのである。

 走り回って採掘ポイントを探し、時々仲間とすれ違って声をかけたり、楽しい時が過ぎていった。


 あっという間にある程度時が過ぎ、みんなで休憩することになった。

 採掘中はみんなばらばらに行動していたので、成果の報告やおしゃべりタイムになることであろう。

 ということで続く……。

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