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33.偽装結婚

 前回までのあらすじ。中二病と男の子の憧れる秘密基地や拠点、そういった場所を作ることになった俺とフラウはマイホームを建てることにした。もちろん俺の脳内では、新婚生活シミュレーションという妄想が暴走しているので安心してほしい。さて、当然フラウはそんなことを考えていないはずなのだが、俺のいないところでのJK同士の会話を偶然聞いたところによると、「子供は4人ほしい」だの「子供には1人一部屋あげたい」といった会話が聞こえてきた。ははっ、いつもの勘違いだよねと思いつつ真相を確認する解明編スタート。


 ドアの前で立ち聞きしているのはよろしくないな。

 忍び足でそこを離れて階段の中ほどまで移動。

 探してる感じで呼びかけよう。


「おーい、フラウとくーちゃんどこだー?」


 少し待つとドアの開く音がして、くーちゃんが階段の上からひょこっと顔をのぞかせた。


「お兄さんごめんなさい、フラウちゃんと話が盛り上がっちゃってました。よかったらこちらへどうぞ」


「ああいや、全然問題ないよ。どんな部屋にするかって話かな?」


「はい、きっといい家ができますよー」


 くーちゃんについていき、先ほどの部屋の中へと入る。

 そこはぬいぐるみやレースのカーテンやらで装飾された、なんとも女の子らしい可愛い部屋であった。


「おお、すごくいい部屋だね。さすがくーちゃん」


「えへへ、一番お気に入りの部屋を見せてたんです。フラウちゃんもこんな部屋作りたいって言ってくれたんですよ。ねーフラウちゃん」


「ええ、こういった部屋なら組織の目も欺けるわ。偽装として完璧だと思う。あなたはどう?」


 普通の家に偽装か、あからさまなおかしな家になるよりよっぽどいい。

 そしてそのまま偽装を真実に変えていければ、単なる普通の家になる!


「ああ、いいと思う。では次に部屋数を決めなくてはな」


「そうね。共同の生活空間はもちろんのこと、わたしとあなたの偽装部屋と隠し部屋はひとつずつ必要よ。それと子供部屋も4つは必要ね」


「子供?」


 唐突に子供と言われて驚く俺。

 いや、さっき立ち聞きして聞いた単語ではあるけども、こうも当然のように言われるとびびるよ。


「ええ、もちろんあなたとわたしの子供よ。もちろん養子で構わないわ。完璧に偽装するならば、外見だけではなく生活そのものも偽る必要があるもの。ごくごく普通の家庭のね」


「そうか、なるほどな……」


 子供の話も偽装の延長だったか。

 でも偽装と言わず本当に幸せな家庭を築きたい。

 そう考えながらくーちゃんをちらっと見ると、俺に向かって頷いてきた。

 その目はまるで、わたしに任せてくださいと言っているかのよう。


「ねえフラウちゃん、偽装だとすごい人にはばれちゃうかもだよ。だからさ、本当に普通の家庭を築いておくほうが、その組織さん? に疑われずにすむんじゃないかな?」


 よし、くーちゃんナイスだ。

 そんな感じの設定でいきたい!


「偽装ではなく真実に……?」


「そうそう、隠し事はたくさんしてるとさ、たいていぼろがでちゃうもん。本当に大事なことだけ隠しておいたほうがいいよ」


「一理あるわね。この人も自身の存在を隠しきれずにわたしと出会ってしまったんだもの」


 フラウがそう言って俺を見る。

 完全な勘違いの出会いではあるが、今となってはそのことに感謝している。


「あ、フラウちゃん。それはきっと運命だったんだよ。出会ってしまったんじゃなくて、出会えたんだよ」


「運命……そうね、たしかにそうかも。それまでどんなに探しても見つからなかった存在……あんな簡単に出会えたんだもの。あなたは運命の人……」


 真剣な目で見つめられて運命の人と言われる。

 なんと良き状態なのだろう。

 てかくーちゃんの誘導がすごすぎるぞ。

 えっと……俺もなにか言わねば。


「運命を受け入れるか抗うか……お前次第だぞ……」


 なんかそれっぽい台詞を言ってみたけど、なんか違うことに気づいた。

 これだと運命を否定させる感じじゃないか?

 くーちゃんを横目で見ると笑顔のままではあるが、どう思っているかは不明。

 フラウをは少し驚き、何かに気づいたような顔になってしまった。


「運命に従いあなたと結ばれる、それは甘美な誘惑。でもそれではだめなのよね。ありがとう、気づかせてくれて……」


「お、おう……」


「では間を取ってこうしましょう。偽装は予定通り行うけど、少しだけ変えるわ。わたしは自分をも騙す。あなたと普通の家庭を築いていると思い込むわ。これならば組織も騙せるでしょう」


 えーと? 頭がこんがらがってきたな。

 そもそもいったい何のために家庭を偽装するのかもよくわからないし。

 まとめると……。


「フラウ、一緒に暮らして幸せな家庭を築こう」


 ついつい口に出た言葉……これはプロポーズではなかろうか。

 視界の隅では顔を真っ赤にしたくーちゃんが見えるので、俺は相当恥ずかしいこと言ったんだなとわかる。

 目の前のフラウはいつものようにニヤリとする。

 さすがわかっているわね、って感じの顔をして口を開く。


「ええ……あなたとわたしでね……これからはずっと一緒よ」


 俺の心の中でリンゴーンとウエディングベルの鐘が鳴り響く。

 なんかプロポーズに成功した感じがある。


「お兄さん、フラウちゃん、おめでとうございます!」


 くーちゃんが感激した顔で拍手している。

 はたから見てもプロポーズ成功のシーンなのだろう。

 俺の心の中では悪魔と天使とカーチャンが『脱へたれ記念パーティ』の準備に大忙しだ。

 ついに俺は彼女いない歴イコール年齢を脱したのか?


 でもでもよくよく考えると?

 フラウは先ほど自分すら騙して偽装すると言っていた。

 つまり、このプロポーズもフラウの返事も結果も、実は偽装ということになる。

 でも自分を騙してるからほんとのようなもの?

 だめだ……頭がこんがらがる。


 結論! 俺も自分を騙そう。

 ゲーム内で俺とフラウは夫婦になるのだ。

 わーい、幸せだ―!


 さて、話を進めよう。

 このあと3人で仲良く家のレイアウトを決めた。

 1階にリビングや台所、隣り合った俺とフラウの部屋、各自の部屋から地下への隠し部屋へ行けて、その隠し部屋同士はつながっている。

 2階は子供部屋が4部屋である。

 大きな庭はお花とか家庭菜園を育て、ブランコやハンモックも余裕で置けるくらいの広さ。


 家具はくーちゃんがたくさん余っているものを譲ってくれるそうなので、普通の部屋を作る分はだいたい事足りそうである。

 ただし隠し部屋の謎儀式の部屋とか魔術道具っぽいものは買うか作ってくれる人を探す必要がありそうだ。


 それであとは何がいるかなあと話していると、くーちゃんがすごい事を言ってきた。


「あ、ちゃんと周囲にわかるようにしなきゃですよね。お二人の結婚式をしましょう!」


 結婚式、それは夫婦となったことを周囲の方々に知らしめる儀式である。

 まだ付き合ってすら無いのにそれはまだ早いんじゃないかなと思うが……。

 フラウはどう答えるのか。


「そうね、組織の目を欺くには必要ね。その準備も必要だわ。偽装と言えども全て本物と同じにね」


「うんうん、指輪はちゃんと珍しい素材でお互いの名前を入れてく作ってもらうらしいよ」


「珍しい素材……ドラゴンの角とかそういったものかしら?」


「あ、それいいね。お兄さんファイトです!」


 なんか俺は蚊帳の外で、2人で盛り上がって話が進んでいく。

 でも楽しそうなのでもう成り行きに任せる。

 ただドラゴンの素材って? そんなのあるのか?


「指輪の素材を落とすドラゴンってどこにいるんだろう?」


「ふふっ、これは極秘情報なんですが、結婚するお2人には教えてもいいかと思うので言っちゃいます。なんとですね……結婚を目指す2人にオリジナルの試練クエストを作ってくれるシステムがあるんですよ」


 なんだってー!?

 なにその初耳のクエストは。

 結婚した人だけが知っている情報なのだろうか。

 ん? てかそれを知ってるってことはくーちゃん、もしやゆうすけとゲーム内結婚を進めているのか?


「そんなシステムあるんだ……よく知ってるね」


「うふふっ」


 なんか笑顔でごまかされた。

 てかここで結婚するのかと聞くのも野暮なので発表を待つか。

 フラウは予想通りというか、試練という単語に食いついた。


「その試練に竜退治もあるわけね」


「うん、難易度は好きに選べるらしいんだ。すごく大変で結婚までに何ヶ月もかかったりすることもあるみたいだよ」


「それならば最高難度の試練を選ぶわ。ね?」


 フラウは俺を見てニヤリと笑う。

 試練か……2人で乗り越えて真の夫婦になる。いい!

 それに、フラウと長くゲームをやっていきたいという俺の願いも叶うではないか。


「そうだな、中途半端なものでは意味がない。必ず成し遂げよう」


「ええ、もちろんよ。ふふっ、あなたと心通えている気分だわ」


 フラウは左手を愛おしそうに眺める。

 俺も現実でフラウと繋いでいる右手を上げ見つめる。

 そのまま自然とお互いの手を絡め合い……。


「わわっ!」


 くーちゃんが驚いたような声を上げ、俺ははっと我に返る。

 やばいやばい、くーちゃんがいるの忘れて2人の世界に浸ってしまった。

 手を離していいものかと悩んでいると、フラウから離れていった。

 そしてフラウはくーちゃんの方へ向く。


「どう? 今のようであればだれでも欺けるでしょう?」


「え? あ……演技だったのかな? 本当の恋人かと思ったよ。お兄さんも演技なんですか?」


 フラウは演技なのか……。

 俺は演技でなく、本気で心が通ったと思っていたのだが……。

 どう答えるべきか悩んでいるとフラウが先に答えた。


「もちろんそうよ。この人の擬態能力はわたしより数段上だもの。魔力熱により体温を調整して色を変えるなど造作もないわ」


「そ、そうなんだ……。お兄さんすごいですね」


 今気づいたが、顔がすごい熱い。

 おそらく真っ赤になっているようだが、フラウに言わせるとすごい演技なのらしい。

 うん、さっぱりわからん!

 てか、何が本当で何が嘘なのかもわからないから、この後どうしたらいいか不明すぎる。


「あ、そうだフラウちゃん。言い忘れてたんだけど、婚姻の試練に挑むにはレベル30が必要なの。まずはレベル上げなくちゃだね」


「なるほど、たしかにわたしはまだこの世界に馴染みきれていない。ならばまずは修業の日々ね」


「うん。あとレベル上げのついでに家具の材料を落とす敵とか、お金稼ぎになる敵を狩るのもいいかも。作りたい家具言ってくれれば、材料調べてみるよ。お金稼ぎはお兄さんが得意そうなのでおまかせします」


「ああうん、任せて」


 つまり、結婚式をするのと、そのための試練を受けるのは本当なんだな。

 あと家は予定通り建てると……。

 とりあえず偽装らしいが、偽装とバレないようにするので本当のようなものに違いない。

 深く考えてるとわけわからなくなるので、気にせずいこう。


「この世界での目標が定まったわ。くーちゃん、感謝するわね」


「うん、いつでも相談してね」


 このあともいろいろ計画を練ったり雑談して過ごした。

 とりあえず今日からやることは決まった。

 フラウと仲良くレベル上げをして仲良く金策である。

 がんばるぞー!

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