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32.憧れのマイホーム

 前回までのあらすじ。中二病JK花ちゃんと一緒にVRMMORPGを楽しむ日々。最近の花ちゃんはどうやら、魔力があれば言葉がなくとも会話ができるという、ゲーム内の魔導兵器が使っている意思伝達を習得しようとしている。それを習得するにはまず一時的接触が必要ということで、ベッド上で俺と手を繋いだままゲーム世界にインした。果たして効果はあるのか。もし今この光景を見られたら俺が確実に逮捕されるという状況である。



――Welcome to Eternal Fantasy――


 ゲーム世界においすー。

 いつも通りゲーム世界にインしてきた。

 目の前にはもちろんフラウもいる。

 俺を見てニヤリと笑うその姿はいつも通りに見える。


「無事に連れてきてくれたのね」


 フラウが現実世界で俺と繋いでいるはずの左手を天にかざし、まぶしそうにそれを見つめる。

 俺もなんとなく自分の右手を見て、今も手を繋いんでいるんだなあと思いを馳せる。

 なおゲームをしている今の状態では手に感触など一切ない。

 ぬくもりくらい感じられればいいのに……。


 昔読んだ漫画だが、主人公が幽体離脱して自分の体を見ると、美女が膝枕をしてくれていて自分の体に嫉妬するというシーンが有った。

 あの時はこいつ馬鹿だなあと大笑いして読んでいたんだが、今ならその気持がとても良くわかる。

 うらやましいぞ現実の俺!


「ねえ、どうかしたの? あっ……そうよね、わたしとしたことが失念していたわ」


「えっ?」


 俺があまりにもぼーっとしてたのでフラウが不審に思ったのだろうが、なにかを勝手に納得したようだ。

 目を閉じて何かを考え込んでいるらしきフラウ。

 さっぱりわからないのでしばし待つと、少し悲しそうな表情で目を開けた。


「だめだわ……やはりあなたの思考は読めない。あなたはわたしのことをわかってくれているのに、わたしにはやはり才能がないの?」


 えーと、こないだタルタルがやったように魔力伝達での意思疎通を試そうとしているのかな。

 そもそもできるはずないし、俺がフラウの思考を読めているのは完全なる勘違いである。

 さてどうしたものか……。

 真っ向から否定してもきっと変なことになるし、いい感じにはぐらかそう。


「フラウよ、なにか勘違いをしているようだな」


「え……どういうこと?」


「魔力による伝達は、今している会話のようにはっきりと聞こえるものではない。朧げながら頭に浮かんでくるものだ。そして、自身が予想として思考していることと区別はつかない」


「わたしの脳内において、わたしの思考とあなたの思考の区別がつかない……ということ?」


 自分でも何を言っているかよくわからなくなってきた。

 後はいつも通り、フラウのいい感じに解釈する思考に期待しよう。

 俺は自信満々の顔で言う。


「そうだ。今フラウが考えていること、それが正解だ」


「わかったわ……。実感はわかないけど、そう考えてみる。でもだとしたら……少し寂しいわね」


「何故だ?」


「だって、あなたは常に私と一緒にいない方がいいと考えてるのよね? 魔術の修行として、時には突き放すことも大事だと……」


 そんなことは一切考えていないし、どちらかといえばずーっと一緒にいたいんだが……。

 やばいぞ、否定したらまた悩ませることになる。

 流れ的にその通りだとしか答えようがない。

 肯定しつつ否定する方法をひねり出せ俺!


「ふふ、さすがだフラウ。正解だが間違いでもある」


「どういうこと?」


「独り立ちさせたいと思っているのは間違いないが、それはまだまだ当分後のことだ。思考を先読みしすぎたな。まだまだコントロールがおぼつかないようだ」


「あなたの未来の思考……なるほど、そういったミスも起こりうるのね。やはりまだまだ言葉は必要なようね」


 そうそう、誤解が生じちゃうからちゃんとお話しようね。

 あとはこのことをあまり考えないよう誘導しておきたいな。


「うむ。そもそもタルタルは古代遺跡から発掘された古代の遺物。歴史は長い。それと同じ伝達方法をたった数日で使えると思わぬことだ」


「そう……よね……。焦りすぎていたわ。あなたの側で何年も、なんなら何十年でも修業が必要のようね」


 よし、もうお嫁においで。

 魔法やら修行を絡めれば誘導しやすいこの子、なんとか恋人関係に持ち込みたい。

 っと……邪な考えにとらわれず、まずはゲームを楽しまなくては。


「さて、今日はどうしたい。なんとなくは伝わっているが、しっかり言葉にしてくれ」


「そうね……先ほどの話だけど将来別行動をすることになるのよね。だから、いざという時に落ち合える拠点を決めておきたいわ」


 拠点……秘密基地?

 いや、この場合はマイホーム……我が家……二人の愛の巣……。

 このゲーム、家を建てて住んだりできる。

 基本的に冒険には不要なので俺は持ってないのだが、これを機会に家を持ってみようか。


「拠点……この世界に家を建てるか」


「そんなことができるの?」


「ああ、以前ファームさんの農場に行っただろう。あそこには畑や錬金術工房もあった。あんな感じで俺たちだけの家が作れるぞ」


「覚えているわ、クリスタルの戦士の住処ね。わたしたちの家……拠点……ぜひ創りましょう」


 お、フラウも乗り気のようだ。

 ではいろいろと考えることがある。

 デザインとか広さとか諸々……ぶっちゃけゲーム内なので失敗しても簡単に作り直せるのだが、ここは現実の新婚さんのようにがっつり悩み相談して決めたい。

 というわけで先人の知恵を借りよう。



 そんなわけで俺とフラウは、くーちゃんのマイホームへと遊びに来ていた。

 なかなかこだわった内装で、実際に生活してそうな感じのかわいい家なのである。


「お兄さん、フラウちゃん、ようこそー」


「お邪魔するわ」


「急にお邪魔しちゃってごめんね」


「いえいえ、ちょうど暇してたんですよ。お茶淹れてくるので、適当に見ててくださいね。他の部屋も自由にどうぞ」


 くーちゃんが台所へ行き、俺とフラウは部屋を眺めさせてもらう。

 一言で言えば、わりと理想的な女の子の部屋という感じか。

 全体的に可愛く仕上げてはあるけど、子供っぽさを感じないというか。

 さて、普通の女の子とは感性が違うであろうフラウの感想は?


「あの子はこの世界に定着できるよう、着実に足がかりを構築しているようね。わたしも早く気づいてよかったわ」


 あ、はい……。

 内装自体には興味が無いようで、家があるということの感想のようだ。

 でもまあ一応聞くか。


「フラウだったらどんな部屋を作る?」


「そうね、魔道について研究する部屋は用途ごとに必要だわ。あと儀式のための部屋……魔道兵器の備品倉庫……。他に何がいるかしら?」


 うーん……普通の部屋が欲しいっす。

 フラウっぽいしそういう部屋があるのは全く問題ないが、そういうのだらけなのは嫌である。

 いつも通り誘導していこう。


「それも必要だろう。だがそんなあからさまな家……組織に気づかれはしないか? 擬態も必要だろう」


「組織……。そうよね、奴らの影はどこに潜んでいても不思議ではない。まずはこのような普通の家に擬態し、隠し部屋を作りましょう」


 よし、組織がなにか知らないがいい感じ。

 隠し部屋というのは中二病だけでなく、健康的な男の子はみんな大好きなので大賛成。

 普通の内装なら普段はフラウとの新婚生活的な妄想もできてよし。


「よし、そんな感じで決めていくか。ちょっと家の建て方を確認するから適当に過ごしててくれ」


「ええ、他の部屋を見てくるわ」


 家を建てる方法を検索して調べる。

 まず土地を借りるか購入……言ってしまえばデータを置いておくサーバを借りるようなものだな。

 無料の小さい空間もあれば、クリスタルの戦士もといファームさんのように課金して大きい農場を作るのもできるわけだ。

 広くなくとも有料のほうが作れる家の幅は広がるようだな……どうするか。


「お茶が入りましたよー」


 悩んでいるとくーちゃんがいい香りとともに戻ってきた。

 温かなハーブティーを淹れてくれたようだ。


「ありがと、くーちゃん」


「いえいえ、フラウちゃんは他の部屋ですか?」


「うん。あ、ちょっと聞きたいんだけどこの家はどのプランで借りてるの?」


「一番安いやつですよ。月200円だったかな? 無料のは制限が多かったので、少しだけ贅沢しちゃいました」


 なるほど、月200円の安いやつでもかなりいいものになるんだな。

 ちょっとお菓子を我慢すればいいだけの価格なので、高校生でも問題なく支払える額だ。

 さて、この俺はと言うと最近割の良い家庭教師バイトが決まってちょっと贅沢してもいい状態。

 隠し部屋とか魔法的なギミックをつけるためにちょっとお高めのやつにしても全く問題ない気がする。


「そうなんだね。その値段でこれだけいい家になるならお得かな」


「そうですよー。お兄さんもせっかくフラウちゃんと住むんだし、素敵なお家にしてくださいね」


「ははっ、そうだね」


「じゃあわたし、フラウちゃんのところにいきますね」


「うん、よろしく」


 お茶を飲みつつ考える。

 くーちゃんの月200円プランは2階建ての家が建てられ、家具の配置等にはほぼ制限がない。

 普通の家を建てるだけなら全く問題ないようだな。


 ひとつ上の月500円プランがどんなものか見てみる。

 今のくーちゃんの家の2倍位の広さがあって、さらには庭もついているようだ。

 庭に錬金術の触媒という名目でお花を植えてみたり、ハンモックで日なたぼっことか楽しそうな光景が目に浮かぶ。

 このゲームを毎日やることを考えるとぶっちゃけ安いし、これにしようかな。


 一応一番上の月1000円プランを見てみる。

 農場や牧場が作れて、ちょっとした村のようなものまで作れる。

 このプランを使う場合、四六時中ここにいても飽きなかったりするレベルでやれることが盛りだくさんらしいな。

 でも想像力がないとつまらない空間になるし、ゲームを楽しみたい俺にはまだいらないかな。


 というわけでプランは決まった。

 家は設計済みのものから選ぶこともできるし、自分で設計もできるそうな。

 といっても設計する能力なんて無いし、設計済みのものは何百種類もあるみたいだからそこから選ぼう。

 設計図に追加は簡単らしいので、隠し部屋と隠し通路をいくつか作ればいいだろう。


 次に家具をどうするかだが、クエスト報酬とかでもらったものが倉庫にいくつかあるな。

 あと汎用品であれば、木工スキル上げをした職人さんが大量生産しているので安く買えるらしい。

 知り合いの職人としては弟のユースがいて、くーちゃんの家の家具もあいつがたくさん作ったと聞いている。


 頭の中でどんな家にしようか妄想が進む。

 将来的にゲーム内で子供を作れるという怪しげな噂も聞いたことがあるし、そうなると子ども部屋もいるよなあ。

 あと猫を飼おう。

 フラウが中二病モードを維持できなくなって猫と無邪気に遊ぶ姿が見れるかもいしれない。


 ふう……。

 あとはフラウの意向も聞かなければだが、ほんと新婚で新築の家を建てる気分になってきたぞ。

 結婚シミュレーションもできるVRMMORPGエターナルファンタジー、あなたもこの世界の住人になりませんか?

 そんなCMもあったなあと思い返す。


 さて、わりと長いこと妄想していたわけだが、フラウもくーちゃんも戻ってこないな。

 JK同士なわけだし話に花が咲いているのかもしれない。

 ちょっと探しに行くかな。

 決して盗み聞きしようとか考えてるわけじゃないんだから、勘違いしないでよね!


 階段を登って2階に上がると、2つのドアが見えた。

 俺の実家も同じような感じだったので、ここは子供部屋かなと妄想しつつ近寄ると声が聞こえてきた。

 急にノックして話を止めるのも申し訳ないので、話が切りの良いところになるまで待つとしよう。


「子供部屋は必要よね」


「そうだよねー、フラウちゃんは子供何人ほしい?」


「そうね……後4人いれば六芒星を描けるわ」


「あ、家族で野球みたいな感じだね。ちょうどみんなでパーティ組めるし4人っていいね」


 子供部屋?

 4人は多い気もするが、可愛い奥さんにほしいと言われればがんばれそう。

 じゃなくって……いったいなんの話をしてるんだ?

 あまりにも予想外の会話に思考が停止する。


「そうなると子供部屋は4ついるのかな? それとも2人で一部屋?」


「各々が家族にすら言えない実験をしたがる可能性があるわ。やはり別にしないと成長を促せ無いわね」


「そっか、プライベートは大事だよね。性別もどうなるかわかんないし」


 さっき俺がしていたような妄想、フラウも同じように考えているのか?

 まさか本当に俺の思考がフラウに流れ込んでいる?

 これが手をつないでゲームインした効果なのか?


 おそらくは紐解けばなにかの誤解というオチなんだと思うが、もしかしたらもしかするんじゃないかという妄想で俺の頭の中はいっぱいになるのだった。つづく!

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