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10.魔道士の第一歩

知らぬ間に誤字報告機能というのが追加されているのですね。

たくさん誤字があるようで申し訳ないです。

それを手間かけて指摘してくださる方々に感謝です。本当にありがとうございます。

 前回までのあらすじ。

 隣に住む中二病女子高生が某VRMMORPGに興味を持った。夏休み明けのテストの成績が良ければゲーム機材を買ってもらえることになったのだが、ちょっとフライングして俺の持つ予備機を貸してゲーム世界にインすることになった。

 ゲームを楽しみつつも、俺は家庭教師として彼女の成績を上げるというミッションが課されている。さあどうなる。


 視界に広がるオルカオルデ平原。

 タルタロスの街を囲むように草木が溢れ、とてものどかな緑色の景色が広がっている。

 野生のモンスターや動物が徘徊してはいるが、街付近では襲ってくることはなく平和だ。

 まあRPGでいうところの初期マップ、雑魚モンスターで経験値を稼いでねといったところだ。


「平和そうなところね」


「ああ、いい景色だろう」


「そうね……でもここに住む人達は今から来る驚異にまだ気づいていない……。でもその方が幸せよね」


 急に語り始めた。まあゲームのストーリーとしては何気に合ってたりするのだが。

 さあ、まずはレベル上げだ。

 ちなみに初心者が早く先行者に追いつけるよう低レベルブーストってのがついてて、能力強化、自動回復、経験値増加があるので序盤はサクサクのはずだ。


 ちなみにフラウの職業は当然ながら魔術師レベル1。

 強力な魔法攻撃で敵を倒すが、打たれ弱い。

 俺はやったことのない職業として闇騎士レベル1になっている。

 武器を持って戦えるし魔法も使える、魔法剣士と言ったところだ。


 このゲーム、職業ごとにレベルがあるので俺にゲーム経験はあれど、強さはフラウとそう変わらない。

 戦闘やゲームに慣れてもらうには近いレベルで遊ぶのがいいからな。


「よし、モンスターを倒して修行をするぞ」


「わかったわ、虫以外でお願い」


 このあたりにいる雑魚モンスターは芋虫や蜂が定番である。

 実際に見て戦っても怖くないように可愛くデフォルメされてはいるのだが、虫が苦手な人はやっぱり嫌なようだ。

 というわけで植物系や鳥系のモンスターを狙っていこう。

 お、あれに見えるは野菜のカブに顔がついて手足が生えたようなモンスター、タイニートリンプ、通称カブたんだ。


「よし、あいつを狙おう。ファイアーを打ち込んでくれ」


「任せなさい……紅蓮の炎よ今こそ来たれ……」


 初期から使える弱い魔法だと言うのに壮大な詠唱が始まってしまった。

 ま、これは中二病でなくともみんなが通る道。

 発動の魔法陣はすでに展開しているようだが、詠唱を終えるまでのんびり待つか。

 平和でのどかな草原に禍々しき詠唱が響き渡る。


「……彼の者を焼き尽くせ……ファイアーボール!」


 20秒ほど詠唱された壮大なるちっちゃな火の玉がカブモンスターに飛んでいく。

 野菜はよく燃えるのかHPを8割方削った。

 そして魔法を放ったフラウめがけて猛ダッシュしてくる。

 俺は剣を構えてそれを待ち……接近と同時にぶった切る。


 Tiny Turnipを倒した。

 72の経験値を手に入れた。

 はっきりいって雑魚なので余裕で狩れる。


「ふっ、他愛もない。それにさすがは師匠ね」


「おう、この調子でどんどん狩るぞ」


「ええ、燃やし尽くしてやるわ」


 こうして彼女が火の魔法でおびき寄せて俺が剣でとどめを刺すという戦い方で何体かのカブたんを倒していった。

 本来ならば魔法にはMPが必要なので回復のために休憩がいるのだが、初心者ブーストでじわじわ回復するのでその必要がない。

 昔はもっと苦労したんだがなあ……なんて考えてると年寄りのようなので言わないことにする。


 やがてファンファーレが鳴り響き、2人共レベルが2に上がってほんのちょっとだけ強くなったぞ。

 ま、こんなの慣れたことだからたいした感動はない。


「わたしの魔の力があふれるのを感じるわ……。ふふふっ、楽しいものね」


「そうか、それはなにより」


 彼女の顔を見ると、満面の笑顔で心底楽しそうに見えた。

 ああ、俺には慣れたことでも彼女にとっては新鮮なんだな。

 ゲームを初めてやった日の感動がふと蘇る。

 この子にもっともっとこのゲームの楽しさを伝えたい。


「では闇雲に狩るだけでなく目標を決めて狩りをしようか」


「そうね、任せるわ」


 ゲームにはクエストというものがあって、敵退治の依頼とかがある。

 普通は街中で依頼者から受けるのだが、それをもっと簡易にした討伐クエストというものがあっていつでもどこでも受注できる。

 これをこなすことで経験値やお金がもらえるという、レベル上げを簡単にできるように導入された優しいシステムだ。

 パーティを組んでいれば一緒にできるので、その中にある簡単なものをやるとしよう。


「この画面を見てくれ。こいつらを退治してほしいと依頼が来ている。さっきのカブを5体と芋虫を4体だな」


「ふうん……虫も倒さなければならないのね。誰からの依頼?」


「えと、街の困っている人たちからだな。俺たちのように戦えない人も多い。なんとかしてやろうじゃないか」


「そうね、魔法が使えるわたしは選ばれしもの。修行のためのターゲットとして選定しましょう。街の人は勝手に助かればいいわ」


 なんかツンデレな感じに承諾してくれた。

 この子は中二病だが、他の人に興味がないというタイプではない。

 どちらかといえば隠れた正義の味方に憧れている感じがする。

 俺の妄想を交えた予想では、魔法少女に憧れた結果こじれた中二病になったのではと考えている。


「ではいこうか、まずはさっきの敵を追加で5匹だ。あいつらが一番弱いからな」


「ええ、任せて頂戴」


 先程のようにかぶたんを焼き尽くしていく。

 レベルが上ったおかげで単なる雑魚となっているが、そのぶんもらえる経験値は少なくなっている。

 弱すぎる敵を倒しまくってレベル上げはできないシステムだ。

 ちゃちゃっとこなして次の獲物……芋虫のところへと移動する。


「よし、さっきより強いがあいつらを倒すぞ。いけるか?」


「も、もちろんよ。よく見ると虫っぽくないしぬいぐるみと思えば……」


 苦手なものを見ると中二病度が薄れて女の子っぽくなる。

 なんというか、とてもかわいくて微笑ましい気分となる。

 とりあえず紳士的に、攻撃のターゲットにならないような戦いかたを提案するか。

 パーティ戦の基礎も教えることができる。


「よし、次は敵の攻撃対象にならないようにする戦い方を教える。魔法というのは強力すぎて、ひとたび放てば敵の怒りを買うことになる。それはわかるな?」


「ええ、先程から飽きるほど経験しているわ。魔物というのは強き魔力に惹かれてしまうようね」


「だから序盤は魔法を封印して二人で殴りかかるぞ。ある程度削ったら止めを任せる」


「力を抑える修行ね。あなたの指示に従うわ」


 やはり素直に言うことを聞いてくれるいい子である。

 俺は剣を構えて芋虫に向かって戦闘態勢となり、続いてフラウも武器を構える。

 ちなみに虫だからといって体液が飛び散ったりするでもなく、心地よい音と感触で斬ったり殴ったりできる。

 このまま2人で殴っても、物理攻撃の場合俺のほうが遥かに強いので、敵は俺の方を攻撃してくることになるはずだ。


「一緒に戦う場合は防御の高い前衛が敵の攻撃を引きつけるんだ」


「ええ、ありがたいわ。その間にわたしは大きな魔法を完成させればいいのよね。力がまだ開放されていないから今は無理だけど」


「そんなところだ。じゃあ半分くらいまで削ったら距離をとって魔法を頼む」


「任せて頂戴。あ、わたしからも提案させてほしいのだけど」


 そう言ってフラウは俺の背後に周り、なんと背中をくっつけてきた。

 微かな温もりと柔らかみを背中に感じる。


「えっと……提案って?」


「陣形よ。今までの戦い方では背後から襲われた時に対応できないわ。こちらは任せて戦ってちょうだい」


「お、おう……」


 このあたりには背後から襲ってくる敵はいないのだが、まあいいだろう。

 ゲームということを忘れて緊張感を持ったロールプレイ、悪くない。

 俺はフラウと背中をくっつけた体勢のまま、近くに見える芋虫へとボウガンを放った。


「よし、敵が来た。背後は任せたぞ」


「ええ、よくってよ」


 俺は剣を構えて芋虫と戦い始める。

 背後にいるのは相方の女の子、なかなか悪くない図だ。

 ただ……俺1人で戦ってるだけじゃないかって気もするな。

 やはりこの子は苦手な虫と戦いたくないだけではなかろうか。


「えーと、背後はどうだ?」


「問題ないわ。こちらは任せてあなたはその敵に集中してちょうだい」


「お、おう!」


 やはり俺1人で戦わせるようだ。

 でも……この効率を無視したロールプレイ。

 ゲームを始めた初期の頃の、何をやっても楽しかった頃を思い出させてくれる。

 経験値効率より楽しさ優先もいいなあ。


「ちなみにどんな戦況かしら? 余裕があればでいいので答えてちょうだい」


「ああ、順調だ。もうすぐ敵の体力も半分を切る」


「ふふっ、さすがね。そのままあなたに任せるわ」


 こちらを振り向いて様子を見ようともしないので、やはり虫が苦手なのだろう。

 なんか可愛いのでよしとする。

 ただ問題として、敵のHPが少ない状態で戦闘を長引かせると少し危険なんだよなあ。

 なにかしら技を使われたりするので、できればここから2人で一気に仕留めたい。


「なあ、後ろに危険がなければ魔法で加勢してくれないか。一気に倒してしまいたい」


「えっ? そ、そうね……周囲に危険は……と。あら? 向こうの茂みの中に何かが潜んでいるような……。警戒を続けるわ」


「お、おう……」


 うーん……やはり虫を見たくないのだろうか。

 茂みの中に敵が隠れてることもないだろうし、さっきも言ったようにここらには危険な敵はいない。

 もし茂みに隠れている何かがいるとしたら、隠れてのぞきをするのが趣味な人であろう。

 まあいいかと思い1人で攻撃を続ける俺。


 しかし、敵のHPが残り2割ほどになったあたりで芋虫が体を丸めた。

 これは技を使われる前兆だ。

 防ぐ手立てもないので、覚悟を決めて身構えるしかない。


「くるぞっ!」


「え?」


 芋虫のローリグキャノンが発動!

 丸まった芋虫が大砲の弾の如く飛んでくる技だ。

 それなりに強烈なダメージと共に後ろに吹っ飛ばされてる俺。

 吹っ飛ばされた俺は、後ろにいたはずのフラウの体をすりぬけて地面に転がることになる。

 そして驚いたような顔をしたフラウと目が合う俺。


「え? いったいなにが……」


 んじゃー説明するか。

 吹っ飛ばし攻撃は狙われた相手だけが吹っ飛び、周囲のプレイヤーに被害を与えることがなくすりぬける。

 もしぶつかれたりしたら、他プレイヤーの邪魔をするとかもできるし、そういうトラブルを避けるための処置らしい。


 しかし敵がまだいる状況で悠長に説明している暇はない。

 芋虫はフラウの真横を通って俺の方へやって来ようとする。

 それをフラウは見てしまったようで……。


「きゃああっ!」


 普段の喋り方より若干高めの可愛げのある悲鳴をあげるフラウ。

 そして慌てて足をもつれさせたのか、俺の方に向かって倒れ込んできた。

 抱きとめようにも俺は剣と盾を手に持っているのでそれもできない。

 このままではラッキーなんとかが起きてしまうと思いきや、フラウの手が俺の顔の真横の地面につき、なんとか衝突は避けられた。

 これって床ドン?


「だ、だいじょうぶ?」


「ごめんなさい、無様な姿を見せてしまったわね」


 転んだにもかかわらず、何故か急に普段の冷静さを取り戻したっぽい。

 しかし顔が近すぎて俺はドキドキである。

 こんな状況で冷静ってことは俺を男として意識していないのだろうか?

 ってか、芋虫が倒れたままの俺に攻撃を仕掛けてきた。


「ふん、邪魔よ。燃え尽きなさい」


 フラウは倒れた状態のまま魔法を詠唱。

 俺も倒れたままで剣を振るって攻撃する。

 そしていい感じに攻撃が決まり、芋虫は力尽きた。

 なんともドラマチック、そしてこういう演出を可能にしてくれるゲームシステムに感謝。


「それでさっきのは何? 短距離とはいえあなたは転移もできるのかしら。それも魔法なの? わたしにも教えてほしいわ」


「いやあの……」


 フラウは少し興奮気味にまくし立ててくる。

 俺はといえば、大好きなニャコラ少女に押し倒されているような状態なのでいろいろな意味でやばい。


「ふふっ、やはりそう簡単に教えてはくれないわよね。それならばあなたを見て盗むしかないのよね。あなたをずっと見続けるわ」


「お、おう……そうしてくれ……」


 俺をずっと見続ける。

 まるで口説かれているのではないかと錯覚してしまうがそんなわけはない。

 しかし次の瞬間、彼女が目をそらして俺の背後を見た。

 短いずっとであった。


「そこにいるのはわかっているわ。出てきなさい!」


 フラウは残念なことに立ち上がり、茂みに向かってぴしっと指を指した。

 俺だけ転がってるのも情けないので起き上がることにする。

 あの茂み……フラウは戦闘中なにかが潜んでいる気がすると言っていたが……。

 もしやかあ……。


「あの……ごめんなさい……」


 茂みから出てきたのはちっちゃなホビホビ族の女の子。

 この子は昨日も出会った、弟のゲーム内彼女のクーピーちゃんだ。

 一体何で茂みの中に?

 のぞきをするような子ではないのだが……俺の頭がハテナとなったまま次回へ続く。

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― 新着の感想 ―
[良い点] > オルカオルデ平原 おるんやろ?^^ →おらんおらんw →よらんおらんwww よしこの三連携でいこう。 [一言] おお……クリスタルの戦士よ。 伝説はこう語る。すべての起こりは「石」…
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