②-3-2
俺の領地キルヒギールはエランシア王国北東部に位置する呪われた大森林一帯である。
普通の農具では掘り起こすことができない固い地面。
魔木と呼ばれる不倒の大木が立ち並ぶ土地。
加えてわんさか凶暴な魔物が住み着いている。一般人には危険すぎる地域だ。
そんな地域の行政機関本庁舎が置かれているのはセルニカとの国境。キルヒギール領を国の領土と主張するためにとりあえず置きました的な感じ。そして今後、ここが新生キルヒギール領の首都となる。
エランシア王国はこの度の謀反を機に反王派閥の貴族を大粛正した。
それにより直轄地が激増し親王派閥の貴族らは転封されまくった。
その流れで隣接する領地であったセルニカとエフィロリアが空白化した。今回俺に加増された領地はそこ。この二つの領地を治めていた貴族らはもっと内陸で豊かな土地に移れるとなった途端さっさと引っ越ししてしまった。
元々人口の少ない二つの街は貴族にとってうまみのない場所だったみたいで、まぁさもありなんというところか。産業もなく特産もなく、刑務所や軍施設、ごみ処理場などなどそこに住まう民にとってはあまり有り難くないものが集められていた場所だったから、そもそも住みたがる人間自体が少なく税収も低かった。
現在貴族の住んでいた邸宅や関連施設は夜逃げした後みたいな感じになっている。俺が領地の受け渡しを拒むことにより王の気が変わってせっかくの栄転話が白紙化するのを恐れたのかな。王様のお使いが「お前この話拒んだら捨てられた住民を見捨てることになるよ」みたいな文章を置いていったことといい、色んな背景要素を鑑みるにその可能性は高いんじゃないかなって俺は訝しんでいる。
つまりこの加増は俺に対するご褒美などではなく、王族貴族の都合の帳尻を合わせた結果に過ぎないのだと。――姫の件が無ければ俺はきっと全力でちゃぶ台返ししてたと思う。やはり貴族、汚い。本当に汚い。
さて。
俺は改めて俺の領土となった様々なアレコレの資料に目を通す。
おさらいしておかなければ。
セルニカ
キルヒギール南西部にある領地。通称「セル」。東部にあるセルニカ山脈の向こうは砂漠。北は呪われた大森林。神秘的な町並み。商人の問屋も存在。
エフィロリア
キルヒギール領北西部にある領地。通称「エフィ」。雪国。付近にエフィロリア鉱山があり、そこから産出するブロイ鉱の加工品「ブロイ装備」が有名。法務省矯正局エフィロリア矯正管区に属する幽閉施設がある。最恐大監獄の名で有名。近くにごみ処理場があり強制労働従事者によって運営されている。
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「イスカ=プタゴラトン。貴公をエランシア王国公爵たる我が名において準男爵に叙し、我が領土の都市開発計画の責任者に命ずる」
「ははっ! 閣下にこの命を捧げます!」
「(いやその返しはおかしい、勝手に命を捧げるな)う、うむ」
重機マルドゥークを無数に召喚し意のままに使えるショタ神官に俺は町の開発をぶん投げた。
なんでも奴には子飼いの弟子がいるらしく、それら人員を駆使して領地内政の面倒を見てくれるという。
そういう事なら全部任せたいので王都からたまに来る貴族位を持つ役人に変な横やりを入れられないよう爵位を整えてやった。さっそく公爵の権利を使ってやったぜ。
「閣下! パンデモニウムを利用して空中庭園とか作っていいですか! でかいサクラダファミリアの上にパンデモニウムを置いてその間をステンドグラスっぽい魔術障壁で覆って上層中層下層各フロアをフローティングボートで行き来させる感じの――」
「あーあー知らん知らん! なんかすげえ夢膨らませてるところ悪いんだけどそういうのは会議で決めてくれ。そういうの全部任せてるから」
「イエスユアエクセレンシー!」
飛び切りの笑顔ですと言わんばかりの顔で敬礼するショタ神官。
何なんだよコイツ、中二か! 頭痛いわ。
でも面倒ごとを抱えさせられるよりはいい。究極の選択だけど俺が楽できるなら我慢できる。少なくともこいつを忙しい環境においておけば俺のベッドに忍び込もうとする暇はなくなるだろうからそれだけでも俺には価値がある。俺的にはケツは絶対守護領域だ。前立腺の賢者メスイキ掘られもんなんぞにはなりたくないがゆえに。




