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さしゅごしゅ! ~好き好き大好きご主人様~  作者: にーりあ
第二章 目覚めよと呼ぶ声が聞こえ。晴耕雨読な『二度寝の人生』を決め込むぞっ!

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②-1-1

俺は悪魔王の心臓を触媒に従属の呪いをかけながら、恍惚の笑みを浮かべるこの口ひげをどう扱おうか悩む。


「つまり俺のバフキャンセル攻撃がお前にかけられた呪いを壊したと?」


「はい。聞きしに勝る素晴らしいお手前でした。重く切れのある一撃に乗せられたいくつものスキル。受け止めることで発動する〈払死魂ふつしみたま〉。回避を許さず防壁を悉く吹き飛ばす威圧波動〈草薙〉。どこまでも追尾してくる不可視の破魔弾〈十拳とつか〉。まったく一部の隙もございませんでした。それでいて尚私を滅さないようHPを1だけ残す鮮やかな手心。まさに神の御業といえましょう。一縷の望みも見いだせなかったこの完膚なきまでの敗北は、私にとって福音以外の何物でもありません」


「……だから亜神なのに俺の従者になるというのか」


「はい。わたくし、命の危険どころか存在の消滅まで感じたのは初めての経験で御座いました。これからは闘神アトラス様に帰依し人の世で暮らしたいと願っております。何卒宜しくお願い致します」


「俺は闘神ではないが」


「そうでした。勇者というていでいらしたのでしたね。失礼致しました」


「…………」


俺の前に膝をつき臣下の礼を取る白スーツ。


同時に町を囲んでいた炎の壁が霧散する。


「ん……結界が――」


「私の変化にジュラが気づいたようです。結界を維持するための力の供給が途絶えました」


臣下の礼を取ったまま、白スーツは淡々と状況を報告する。


曰く、自分は古の制約術式に縛られていて今回の役目から逃れられなかったこと。


魔王の入れ物は妖精王ノアが伏魔殿へ連れ去ったこと。


伏魔殿は既に転移の準備を始めているだろうこと。


「伏魔殿はどこにある?」


幻影迷彩ミラージュダズルによって視認は出来ませんが、あのあたりにあるかと。ジュラのパーティから追放されてしまいましたので私にももう確認できないのですが」


「いや十分だ。見えなくても方向がわかればターゲッティングは可能だからな」


俺はアイテムデポから〈灼槍アラドヴァル〉を取り出す。


前回使わずにしまったのでエネルギーが充填されたままの状態だ。


すぐに抑えたが、威気制圧の効果が突風となって俺を中心に外へわずかに広がった。


そのせいで近くにいた白スーツことプロパドールがぶるりと身震いする。


「そ、その槍は……?」


「これか? これは俺のコレクションの一つだ。投げても戻ってくるから投擲用に使っている」


「投擲……まさか、伏魔殿を?」


「大掛かりな術を使ってるようだからな。それでもこれで何度かつつけば剥がれるだろう」


「なるほど。しかしそれでは、あの船はどういう用途で呼び出されたのでしょうか?」


プロパドールに言われてその視線の先を見れば、何かが転移してくる時に発生する黒い空間の断層が見えた。


中から出てきているのは巨船の先端部分だ。


「あぁあれか。アレは姫を迎えに来た船だ。こっちの都合でお姫様にはあそこでしばらく過ごしてもらう予定でいたのでな」


「過ごす、ですか。軍艦のように見えますが……」


「外観は軍艦だが内装はクルーズ客船だ。あれは大和ホテルといって軍艦として使うには燃費が悪い代物でな。なので宿として運用している」


「さようでしたか……随分とセキュリティがしっかりしていそうな宿でございますね」


遠い目で船を見るプロパドールをよそに、俺は槍を構え投擲必中スキルを使用する。


途端、何もない暗闇に大きな構造物の気配が感じられるようになった。


「発見した。お前たち少し離れてくれ。若干バックブラストが発生するからな」


プロパドールと後ろでこちらを窺う自称後輩に声をかける。


念のため周りを見回し安全確認。


――OK。いこう。


俺は槍を構え狙いすまし、一息の元投擲した。


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