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こちらに来る予定だった姫。その一団を警護させるため王都から少し離れた場所に残してきたオルトロルグループを王都へ引き返させ状況を確認させると、王都が炎に包まれているという情報を返してきた。
「転移ポイントにアクセスできないことからも何らかの空間遮断的作用を施されているな」
「なるほど。未来のことは誰にも分からない。だからこそ我々の出会いが意味するように無限の可能性があると。まさにこれぞ、石の門の選択」
「……おいプゲラ。お前の言うように魔王が復活していたとして、だ。聖域の内部から結界を無効化する術など用意していたのか?」
王都には常時術の使用を制限する神聖結界が張られている。その中で大規模術式を行使できる存在は数えるほどしか存在しない。聖域となっている土地と契約を成している王族か、王族によって任命される勇者などの守護者か、或いはヒト種の使うあらゆる術に対抗術式を組むことの出来る――人種の天敵たる――魔王種か、だ。
だが魔王が復活したから聖域の機能がマヒしたと考えるのは早計だろう。結界機能をダウンさせるだけなら魔王じゃなくても出来る可能性はある。
例えばかつての魔王が四天王にやらせていた裏技だ。地脈から延々と湧き出る聖域のエネルギーを相反するエネルギーで押さえつけ無効化させることは、その維持に大変な労力が伴うがやってやれないことではない。反結界を部下に維持させ自分は万全の状態で目的を達する。そういう魔王軍の分業の果てに過去攫われたのがエリザベート第三王女である。
「プゲラじゃないですイスカ=プタゴラトンですプしかあってないじゃないですか! こほん。まぁ、そんなものないと思いますよ? 本来であれば魔王四天王の側近らで構成された魔王復活軍で城下町を混乱させているうちに私が姫を攫う手はずでしたし」
「ならば今回の城襲撃はお前たちとは無関係という事か」
「そうですね。どこの輩かは存じませんが全く愚かな事です」
「…………」
よくわからないが少なくともこのアホの関係者ではないだろうなぁ、という気はした。
王都全域を取り囲む術式を扱ったとなると並大抵の使い手ではない。
魔王の盟友だった亜神の仕業だろうか。昔絡んできた始祖王や妖精王クラスの亜神ならできなくはないと思う。勇者の討伐目標はあくまで魔王なので特にこちらに手を出してこなければ見逃してきた奴らなのだが。
――やはり殺しておくべきだったか? いや、でも魔王に義理立てするような奴らでもなかったしなぁ。
彼らが魔王と仲良くしていたのは聖神に対抗する術式開発など魔王からの技術供与が目当てであり、互いの関係性は義理や友情といったものとは程遠い取引先といった具合であった。彼らは聖霊の剣たる勇者と一戦構えるくらいなら人と魔王の争いには介在しないと正面切って言ってのけるくらい現金な感性の持ち主らだ。
彼らの目的は未だこの世界に影響力を残す聖神への対抗であり、人種の存亡など眼中にない。
それらが今更魔王を助けるべく動く、というのは考えにくい。
「やはり亜神ではないのか。だとしたら何者が……ふむ。あれこれ考えていても埒があかん。直接訪ねに行くか」
「討伐に向かわれるのですか? 魔王ですもんねやっちゃいますよね! やってしまいますよね! やってしまいましょう! 新生魔王なんて我が爆裂魔法で一ひねりですよ」
「討伐するかどうかは相手次第だ。そもそも相手だって無策ではあるまいお前と違って。相応の準備が必要だろう。第一礼装で行く」
「さらっとディスられた気はしますがそれなら私もお供いたしましょう!」
「え、いやいいよ。だってお前神官じゃんイオナズン系無理だろ」
「何を言いますか。私、神官でもアークビショップなのでそっち系もイケるんです!」
「イケなくていいよむしろクルなよ。つうかお前ホントに寝返ったのな。手のひら返しが鮮やか過ぎて引くんだけど」
「お褒めの言葉有り難うございます! この身は猊下の為に存在しております!」
「やめろ気持ち悪い呼称で呼ぶな。お前の教会に俺は無関係だからな。勝手に俺の名前使ったら商標権侵害で訴えるから」
突き放せば放すほど喜んでついてくる気持ち悪いショタ神官を無視して俺は急造要塞に戦衣装を取りに向かう。
あぁもうなんかやること一杯あって平穏に暮らせないのしんどいです。




