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さしゅごしゅ! ~好き好き大好きご主人様~  作者: にーりあ
第二章 目覚めよと呼ぶ声が聞こえ。晴耕雨読な『二度寝の人生』を決め込むぞっ!

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序 もう一人の転生勇者


結婚して五十年。

夫には十年前に先立たれ、私は生活保護で一人暮らし。

息子は十代で事故にあい他界。

娘は国際結婚の果てに遠い異国で暮らしているらしいけれど、もう何十年もあってはいない。


戦後十代でお見合い結婚をした私。

相手は資産家だったけれど、間もなく事業に失敗して没落。

財を失っても気位を失わなかった夫の相手は、毎日がつらかった。

私は彼のパーツの一部だった。

だからだろうか。

伴侶だというのに、彼が亡くなって、私はホッとしたのだ。


楽しいことも嬉しいこともなかった。

でも解放されたという身軽さだけはあった。

彼がいない十年、気が付けばつらいと思う事だけは無かった。


どうして私は、こんなに息苦しい生き方を選んだのだろう。

答えなどどこにもない。

誰も教えてくれない。

いつだってこの胸は、何かを叫んでいた。

けれどそれを押し殺し続けて、私は今日まで生きてきた。


今、私は病魔に侵され、そろそろ死を迎えるところ。

この世には生きたくても生きられない人がごまんといるというのに、私は、そういう人たちには本当に申し訳ないけれど、受け入れる気満々だ。

永遠はどこにもない。

幸せは気の持ちようというけれど。

ねぇ教えてよ。

身を焦がすような幸せ何て、いったいどこにあったの?

そんなもの、私は見かけなかった。


本当にそんなものが存在するの?

私が見つけられなかっただけ?

ううん、わかってる。

それはきっと、気分の問題。

受け取り方の問題。


神様が用意した幸せには、誰も触れることはない。

触れたと思い込んでいるだけ。

そんなものは初めからありはしなかった蜃気楼。

私にはそう思える。

幸せな人は、自分が幸せなんだって、自分に自己暗示をかけて納得できた器用な人。

私には無理だった。

でもそれでいい。

色んな人がいるのが、世界なのだもの。

得意なことは、みんな違う。


私の得意なことは、たぶん、我慢。

だからこの人生。

後悔はない。

私は私。

これが私。

私には我慢の才能があった。私はそれを証明して見せた。

成果を残した。


だけれど。


それが幸せだったかといえば、どうなのだろう。


今、私の身体は病魔に蝕まれ、その人生は終わろうとしている。

人間、誰だって助かる命なら助かりたいって思うと思っていた。

けれども、なぜなのだろう。

私は不思議と、これ以上、生きていたいと思えない。

決して死にたいわけではない。

けれど、死ぬというならば、それでいいと思える自分がいる。

満足ではない。

この気持ちはきっと、妥協だ。


あぁ。

人生に折り合いをつけるって、こういうことなんだ。

思っていたより後ろ向きで、感慨が沸かない。

夕方にぼうっと、暇を持て余し昼寝をしようかというような気分。

もっと絶望に思い悩み、嘆くと思っていたのに。



次、私が目を覚ます時には、なにがあるのだろう。

今みたいなことをもう一度、ぼんやり考えるのだろうか。

それとも、二度と目が覚めないのだろうか。

どちらでもいい。

執着が湧かない。

こういう面白みのない最期こそ、本当の大往生というやつなのでしょうか。


神様。

ありがとうとは言いません。

ありがたいと思っていないのに、あれやこれやを引っ張り出して、すべてを総括して感謝をするほど、私は人間ができていないの。


ただ。

もし生まれ変わりなんてものがあるのなら。

どうか私を、魔法少女にしてくれないかしら。

人生を斜に見る、疑い深い、アニメの主人公には程遠い魔法少女。


もしこの願いが叶うなら。

どうせ何をやった所で人生には救いなんてないのですもの。

ならせめて、とびっきりにかわいい魔法少女にしてください。

歳をとらない、いつまでも少女で、かわいい服があれこれ似合う私。


うふふ。

あり得ない。

あり得ないわね。

そんな陰謀めいたこと。

でも少しだけ、私はときめきを感じた。


妄想だけが、私の友人でした。

あぁ死ぬ。

死にます。

神様。

何卒。



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