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さしゅごしゅ! ~好き好き大好きご主人様~  作者: にーりあ
第一章 魔王倒して勇者退職、悠々自適な『第二の人生』を楽しむぞっ!(敗残将掃討編)

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世界変革の鬨 ④-1-1

「はぁ。付き合うとは? どちらへご一緒すればよろしいのでしょう?」


「ち、違うわっ! 付き添いってことじゃなくて……」


「……はぁ」


「その……だからっ! 私とあなたがそのっ、け、結婚を前提にしたおちゅき合いをするのっ!」


「はぁ?」


すまん。素の声が出た。


何を言っているのか意味が分からなかったからだ。


だってこの女との婚姻の話は公式の場でお断り済み。破談確定済みだ。


だというのに今更何の冗談か。何らかの罠か?


俺はひそかに相手の悪意や敵意を感知するスキル〈盤上演者〉を使用した。


――敵対反応は……ない。


ならばと次に使ったスキルは月に一度だけ使える権能〈質疑の天秤〉。このスキルは相手の言うことの虚偽を見抜くものだ。


が。


――どういうことだ……天秤が傾かないだと?


「な、なるほど? しかしながら姫殿下。その件は無かったこととなったはずでありますので――」

「それは大姉様があなたと結婚すると思っていたからなのよっ! でもそれは誤解だったのっ! 不幸な行き違いだったのよっ! だ、だからそのっ! 結婚をっ! 結婚して欲しいのっ! 私とっ、あなたでっ、結婚っ!」


いかん。


グイグイ来る。


しかも虚偽がない分たちが悪い。


姫は偽りない真実を述べている。何故そんなことになっているのかはわからないが、俺との結婚を迫る真意はなんなのか。


考えうる可能性は、王の調略?


だとしたら、王はマインドコントロールにまで手を出したということなのか。


実の子だろうに、何という恐ろしい手を。


確かに王族には自由恋愛結婚なんて許されないのだろうけどこれはひどいよ。


あなたの娘誰かを好きになるどころか恋のバーサーカーになってんじゃん。やり口が雑過ぎてつらい。


「いやですから姫殿下少しお待ちを――」

「それともやっぱり、やっぱり私なんかじゃ駄目!? でも大姉様は別の人と婚姻されるのよっ? それは決定事項なのっ! だからいいでしょっ? ねえお願いっ! なんでもするわっ! あなたのやりたい事なんでもっ! あんなことやこんなことでも大丈夫だからっ!」


近い近い近い。唾飛んでるから。


それに何が大丈夫なんだよだいじょばないよ。あんなことやこんなことなんてやった瞬間俺の人生バッドエンドルート確定だよ。


あと看破の権能でみえる姫のバフはなんなの。戦意高揚があるんですけど。戦場以外で初めて見たわ。


「姫殿下、落ち着いてください。冷静にお考え下さい、いや考え直しましょう。殿下にはふさわしい方がたくさんいらっしゃいます。私のような粗忽者など相手にされてはそのお名前に傷がつくというもの――」

「他の者なんてどうでもいいのっ! 私は貴方がいいのっ! 貴方と結婚したいの! 結婚がダメなら側室でもいいわっ! 愛人でも妾でも、その、なんなら、ど、どれ、奴隷でもいいからっ!」


「いやいやいやいや」


姫奴隷とか新しいジョブかな?


そんな最上級職手に負えません。奴隷の新規採用予定も御座いません。


「ご冗談でも奴隷など、そのような発言はおやめください殿下」


「あなたは奴隷を集めているってダールから聞いたわっ! 奴隷商からも珍しい奴隷を購入いただいたってきいたのだわっ! 私もその中に加えてもらえないかしらっ!」


「…………」


おいダール。


おい奴隷商。


守秘義務。


個人情報。


コンプライアンス。


ふざけんなよ守銭奴商人ども!


「王女の奴隷なんて珍しいと思うの! どうかしらっ! あなたのコレクションに私を加えてほしいのっ!」


「いえあのですね殿下。何か誤解されているようですので申し上げますが私は決してそういう趣味とかコレクターとかではなくてですね――」


どうかしらっ! じゃない。そんな問いを発する時点で自分の頭がおかしくなっていることにどうか気が付いてお願い。


絶対イケナイ妄想と誤解をしておられるこの十七歳。


色付き盛りの中間年齢としては、どうしたってショッキングかつスリリングな大人の世界「変態」を垣間見たくなる好奇心、それはわかります。


でもだからってそういうのを俺に求めないでほしい。そんな目で見ないで欲しい。


誤解なのだけれど誤解じゃない気分になってくるじゃありませんか。無くなった給食費的な。俺のせいじゃないのにもしかして俺のせいかもとかだんだん考え始めちゃう奴。


これはまずい。これ以上誤解が膨れ上がってしまっては、チキンハートの俺などなすすべなく流されてしまうかもしれない。


ここは一刻も早く、ぐうの音も出ないほどの、完膚なきまでの弁明をせねば。


そう思い口を開きかけた時。


――っ?! ……半径五十メートル内に転移反応?


差し込まれたのは奇襲を防ぐ勇者のパッシブスキル〈環境把握〉の警告情報。


解析された異常発生座標点は正面、姫の立っているあたりのようだ。


自動的に勇者の権能〈絶対守護領域(トヘロス)〉が近接転移をレジストし、相手の転移をディレイ状態にする。


「姫殿下、少々こちらへ」


「えっ! そんないきなり?! も、もちろんいいわ! 私はこの場ででも、その……」

「…………」


勘違いして頬を染める十七歳を抱き寄せ、俺は地上へ短距離転移を実行する。


入れ替わりで、バルコニーにローブ姿の何者かが現れた。


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