神樹騎士団 ③-3-1
かつて神々がまだこの世界に住んでいたころ。
世界のダンゴムシとして産み落とされたのが初期型エルフである。
エルフは日がなセックスの研究をして過ごしていた。
肉の生み出す快楽の追求こそが彼らの使命であり日課であった。
その目的にはなんかすごく崇高で難しい理由があったと思うのだが覚えていない。ぶっちゃけ俺には理解できなかったからだ。
でも要約するとやってたことはセックス。
それでいいと思う。詳しい設定を知りたければこの物語ではない別の物語を参照してほしい。
そんなわけで初期エルフは妊娠しない。繁殖しない。
だから神々がこの地を去ったことにより初期エルフの運命には暗雲が垂れ込めた。
初期エルフは不老であったが不死ではなかった。
魔力はあったが暴力を知らなかった。
彼らは地上から神々がいなくなるとすぐに人間に捕まった。
神々が最後に産み落とした知的生命体、今でいう「人間」によって、初期エルフは玩具奴隷として酷使された。
彼らは「(斬新なSMプレイだな)」と思っているうちに死んだらしい。生きオナホにされ最終的にリョナったという末路だ。そうやって初期エルフはガンガン数を減らした。
ある日。
それを見ていた邪神の一人が、初期エルフの絶滅を惜しく思い、彼らの何人かを攫って複製を作ろうと頑張った。
しかし邪神には完成された神々の芸術たるエルフの複製を作ることは出来なかった。
部分的な複製はできたが、それらをひとつにまとめることができなかった。
邪神が作れたのは初期エルフの筐体重視個体と能力重視個体だ。
神々によって生み出された初期エルフをハイエルフ。
ハイエルフ複製工程を形から入り新機能生殖能力を追加したために筐体の容量不足を起こしてしまい、特殊能力を取りこぼした状態で完成させてしまった個体がライトエルフ。後のエルフだ。
取りこぼした能力を優先しライトエルフの欠点だった筐体の強度を上げ、容姿は二の次にし完成させたのがダークエルフ。後のダーフ、つまりドワーフである。
ドワーフ。
それは醜く老人のような皮膚を持つ背の低い頑健な種族だ。
矮躯でありながら屈強。
豊かな髭を生やし、大酒飲みで意地汚い。
しかし手先が器用であり、誰もが鉱夫、あるいは細工師や鍛冶屋などの職人である。
エルフとは対極にあるような存在であり、その為エルフに対しては先祖代々不信感を抱いている。
エルフと違い植物を愛でることや乗馬などを苦手とするが、彼らが作り出す細工道具作品はエルフの作品よりも優れたものが多い。
またエルフと違いドワーフには女性が存在しない為、新しいドワーフは石から作られる。
ドワーフからはエルフの本能たる生殖機能がオミットされているため、転生という手段によって種族的新陳代謝をする。そのため彼らは山の洞窟や地下に隠れ住んでいることが多い。秘術によって山の命、別名霊脈から命の石を得るためだ。
トンネルを掘り迷路と化した地下を移動するので見つけるのも容易ではない。
加えて基本彼らは排他的であり、エルフらとどころか人間とも友好的ではない。
犬らと仲良しだったのは僥倖だ。今回の事件を機に渡りをつけることができたのは大きい。
彼らの作り出す真之銀という特殊合金は魔力伝導力に優れた金属素材だ。
真之銀を灰色輝という技法で鍛え上げると魔力と物質の親和性が飛躍的に高まる。
真之銀を灰色輝によって加工した武具は命無き命をも切り裂き形無き幻影すら具現化する神器となる。
そのうち亜神らの持つ移動要塞崑崙山で採れるというオレイカルコスを手に入れる機会を得たなら、灰色輝で鍛えてもらってオリハルコン武具を作ってほしいと思っているので俺は彼らとの仲を深めていきたいと思っている。
最初の依頼は我が領地を守る騎士団の装備づくりだ。
ちょっと緊急案件が入ってしまい、そういうのが大至急入用となった。
出会って早々デスマーチ案件を振らなければならないとか今後の関係が心配だが仕方がない。
その分報酬には色を付けて、彼らにはガンガン投資していきたいと思う。
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「お誕生会にご出席ください」
ダール商会で森での討伐成果を吐き出した俺は、呼び止められ別室に通されていた。
何事かと思って待っていたら開口一番、ダールから登城要望。
「宮廷の話はお前に一任したと思うが」
「予定通りことが運ぶと思い込まれませんよう」
一か月後、エランシア王国第三王女の誕生会が催される。
以前から貴族らには招待状が届いていたらしいが、俺のところに届いたのは昨日だという。
時差の理由はわからない。一度結婚を断っているからか。それともまだ貴族として認められていないからか。
どちらにしても悪い予感しかしない。
陰謀か。
罠か。
なんにしても碌な事ではないに決まっている。当然お断りのお返事をする。
「俺は魔王を討伐した。勇者として務めを果たした。爵位も形だけの義務をこなしてくれればいいと王は言った」
「ならばこの招待状は形だけの義務の範疇ということでありましょう」
「宮中の腹芸は無理だ。だからお前に権力を渡しただろう? その範囲で何とかしてくれ」
「ならばお預かりした権力では足りぬとご理解ください。今回のご招待は王女様自ら、たってのご要望です。嘆くならおのが行いにお願いします」
「なんだと? 俺が一体何をした」
「何をした、ではなく、なすべきことが足りなかったという事でしょうな。嫌なら建国し王になられればよろしかった」
「待てあわてるな。これは孔明の罠だ。国を立ち上げるなど俺の頭では無理だ」
「ならば、ご出席ください」
「いやそれも無理だ。俺は今王に下された討伐令の遂行で忙しい。とてもそんな会に出席している暇はない。現在進行形で忙しいと伝えてくれ」
「この話の流れでそれこそが無理だとご理解いただけませんか? なさるならご自分でどうぞ」
「ダール――」
「人間には現在は無論大切ですが、どうせなら過去の結果としての現在より、未来の原因としての現在をより大切になさるべきでしょうな。俺は元勇者だから、などと今後も言って回られるのですか?」
「…………」
腕っぷしならともかく、弁の立つ商人に舌戦でかなうはずもない。
かくして俺は、第三王女の誕生会にめでたくご出席な運びとなった。




