表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さしゅごしゅ! ~好き好き大好きご主人様~  作者: にーりあ
第一章 魔王倒して勇者退職、悠々自適な『第二の人生』を楽しむぞっ! (奴隷購入編)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/70

烏女女王の里帰り ②-3-3

神樹庭園の座標の記録も済ませ、いつでも転移門を開けるよう触媒も設置した。


「あー」


「いかがされましたか?」


淡々とした口調でマルギットが事務的に尋ねる。


「いや、どのくらい世界樹を活性化させようかと思ってな」


「……はぁ」


こいつは何を言っているんだ、という表情で冷たい視線を送ってくるマルギット。


ディオネが見えなくなったら途端の塩対応。


こういう態度をされるのは久しぶりだ。勇者として駆け出しだった頃を思い出す。


そしてちょっと気持ちいい気がする自分が気持ち悪い。


まぁ出会い方が最悪だったし俺とは直接奴隷契約もしていないしでこんな雰囲気になるのも無理はない。


信頼関係って一日二日じゃ築けないもんね。そのうち何とかなるだろう。


なるよきっと。


なればいいなぁ。


なってくれることを祈る。


「少し強い力を使う。余波に充てられるかもしれないから離れていろ」


「あの。世界樹に傷がつくようなことがあっては困るのですが……」


「大丈夫だ。そんなことにはならないさ」


「はぁ。……了解しました」


ディオネが見ていたらタックルしていただろう無粋な態度を隠すことなく、数歩離れるマルギット。


もう少し離れないと吹っ飛ぶかもしれんが、まぁいいだろう。死にはすまい。警告はした。


俺は世界樹に右手を当てて、魔法を行使する。



――〈全状態回復・S〉――



俺の右手が初め青く光り、すぐに全身がまばゆい青い光を発し始める。


力の行使に合わせて周辺の空気が淀み、膨張。


世界樹を中心として徐々に風が渦を巻き始めた。


「なッ!? なななななッ!?」


後ろで騒いでいるマルギット。だが振り返って確かめる余裕はない。


聖粒輝による調律が始まる。


世界樹の周りだけ空間がうねる。


世界樹を中心に渦巻く衝撃波が周りの土砂や落ち葉を拾い、竜巻を視覚化する。


目を覚ました世界樹が、注ぎ込まれる力に反応して緑色に発光し始めた。


全ての枝に葉の蕾が生まれ、それらは瞬く間に伸びて、次々と開いていく。


開かれた産まれたばかりの葉からは、火の粉のような光が吐き出されていた。


それらは世界樹の周りにうごめく見えない力によって周囲へと舞い散り、ある程度の距離を飛ぶと色褪せて消えゆく。


木の幹全体を彩る緑色に揺らめく光はおびただしい粒子の奔流となって上へ上へと昇っていく。


舞い上がるそれらは拡散し、まるで天の星屑のように空を広く覆い飾った。


「こんなものだな。ではいくぞ、マルギット」


やがて風の渦は収まり、世界樹の回りは静寂を取り戻す。


周囲にはまだ葉から空へと放出された聖粒輝がゆっくりと舞い落ちていた。


俺はそれらを無視して歩き出す。だが数歩移動して、ついてくる気配のないマルギットに気が付いて足を止める。


振り向くと、彼女が地に伏したまま固まっているのが見えた。


呼びかけたのだが聞こえなかったのだろうか。彼女はあんぐり口を開いて呆然としていた。


「大丈夫か? 歩けるか?」


俺の呼びかけに目を大きく開けたまま、大げさに何度もうなずくマルギット。


しかし立ち上がれない。


吹き飛ばされた時どこか打ったのだろうか。


だから離れろと言ったのだけどな。腰とか打ってないか?


俺に腕を抱えられてなんとか立ち上がる頼りない天使のような烏女。


歩けるのか。


歩けるな。大丈夫なようだ。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





次に神樹庭園と魔の森を繋げるため回廊を抜けて結紮フックする作業。


魔の森に出ると俺の索敵網に沢山の魔物が引っ掛かった。


「ん?」


「陛下! お下がりください!」


少し遅れて回廊から出てきたマルギットが俺の前に出て警戒を促す。


「陛下? ……それはもしかすると、俺の事か?」


「はっ! は? あ、いえ、陛下は女王陛下の夫でありますので、敬称は陛下が適当であるかと」


ん?


ディオネは奴隷だけど?


妻にした覚えはないけど?


っていうかお前、何があった?


どんな打算で手のひらくるくるしてるの気持ち悪い。


「待て待て。陛下というのは王の敬称だろう。烏女族の国は既に滅びたと聞いた。王族でもないのにその敬称は適当ではあるまい」


「はぁ。しかし……」


「過去の栄光が忘れがたいという気持ちはわかるが、新しきを知り受け入れることも器量の内だぞ」


だから陛下はよせ。と、暗にいう。


「は! では、何とお呼びすれば、よいのでしょうか」


「何を迷うことがある。ディオネと同じでよい」


「――っ!?」


「どうした?」


「では私にも……いえ、かしこまりましたご主人様!」


そう言って頭を下げるマルギット。何故だかテンションが上がっているように見える。


すごく引っかかるしちょっと問い詰めたかったけど、でも現場はそれができないくらい刻々と事態が急展開。


索敵網で探知していた魔物様ご一行がご到着。


何十頭もの獣らの襲来。俺の前――少し離れた位置に横並びに整列する犬型モンスター。


看破の権能で見てみると、犬たちの種族名はケルベロス。


冥界の番犬と呼ばれている魔物。


だがちょっと待ってほしい。


ケルベロスといえば頭が三つある化け物という伝承が有名なのだけど、目の前にいるのはただのデカイ犬。頭も一つしかない。


そんなお犬様たちが、黙ってみている俺の前で、一頭ずつ、順番に、仰向けになって腹を見せはぁはぁし始めている不思議な光景。


『此度は我々に力を与えていただき有り難うございます主様あるじさま


たぶん犬にとっての服従の姿勢なのだろうけど、その大きさで一斉にやられるとシュール。滑稽を通り越して狂気を感じる。


「貴様らは、我が眷属になることを受け入れた者どもだな?」


腹見せわんこずの中で一頭だけわんわん吠える犬に向かい俺は言葉を投げかけた。


『さようでございます主様あるじさま。我らを死の淵より救い上げていただいたこの御恩、今後の忠義によってお返しさせていただく所存です!』


聞こえてくる音はわんわん。けれども俺にはその意思が伝わってくる。


ゴーレムやらスケアクロウやらを操作する時に感じるやまびこを体に受けるような感じ。思念伝播という奴だ。


わんわん吠える犬からビンビン伝わってくる忠誠心。


これがディオネの言ってた「魂の器が変質している」云々の効果なのか。


真祖吸血鬼に血を吸われたら眷属吸血鬼になるというおとぎ話は聞いたことあったけど、そのタネは技能スキルだったのでした。とかドン引きだよ。


それただのチートじゃん。傷を負わせないといけないって条件はあるけど、離れたところからスキル使うだけでアンデッドモンスター作り放題とかホントイカレてる。


俺が食らった時は魔力を奪われただけだったのでわからなかった。


たぶん何らかの条件が満たされなかったために俺に十分な効果が出なかったのだろうけれど、あのジュラってやつは相当ヤバイ奴だったのかもしれない。


権能奪取は能力を奪えても能力の詳細までは理解できないって制約があるのだけど、情報なんか奪えなくたって実際に食らえば馬鹿でもどんなスキルかわかるだろ制約意味無ぇ(笑)って今まで思ってたんだけど、どうやら(笑)は俺だった模様。


こういう弱い奴にしか通用しない追加効果のあるスキルってほんと困る。何が困るって勇者が不死族を生み出したうえそれを眷属にした事実よ。


不可抗力ですって言っても誰も聞く耳なんか持つまい。新しい魔王になった証拠ですとか言われたら目から火の出る王手飛車だ。


ホントいい加減にしろ糞ジュラ。あの野郎ワザとか? こうなることを見越してワザと俺にスキルを奪わせたのか? 実はああ見えてとんでもない策士だったのか? いやそんなに頭よさそうには見えなかったっていうか間違いなくアホの部類だと思うのだけれど今にして思えばその可能性も無きにしも非ずだったのかという気がしないでもない気がするわけだがマジでどうしよう。


――とりあえず目撃者をすべて始末しなければ。証拠隠滅を徹底する必要がある。


「お前たちに最初の命令をくだす。お前たちのことを知るものをすべてこの場に集めよ。逆らうものは力づくで構わん、生死不問だ」


『ははーっ! 御意に御座います!』




◆◆◆◆◆◇◆◆◆◆◆



俺は犬たちに命令を与えて追っ払うと、マルギットを連れて神樹庭園に戻った。


犬の件は、今日はもう疲れたので考えたくない。


きっと明日の俺が解決してくれるだろう。


本日の業務は終了。


急造要塞を神樹庭園内に設置しそこで休息をとることに。


まずは夕食。かなり遅くなってしまったので軽めに。


俺とディオネだけ中で休息しようと思ったのだが、護衛がどうのこうのと理由をつけてマルギットがくっついてきた。


ディオネがマルギットを厳しく罰しようとしたので宥めて、食事への同席を許す。

一人増えたところでどうという事は無い。


と思ったのだけど。



「マルギット。フォークとナイフは一番外側のものをお使いなさい」


「はい、お姉さま」


「マルギット。パンは直接かぶりついたりせず、一口サイズにちぎって食べるように。バターやオリーブオイルをつけるのも、一度ちぎってからにしてください」


「はい、お姉さま」


「マルギット。フォークは左手、ナイフは右手に持つのです。それぞれ人差し指を添えて持ちます。ひじをはらずに――」

「はい、お姉さま」


「マルギット。スープは手前から奥にスプーンを動かしてすくうのがマナーです。口に入れる時は音をたてないように。吸うのではなく流し込むようにいただきましょう。量が少なくなってきたら皿を左手で右奥に傾けて――」

「はい、お姉さま」


「マルギット。食べ終わったらこのようにフォークとナイフをそろえるのです。ナイフの刃を内側に、フォークは背を下に――」

「はい、お姉さま」


「マルギット――」

「はい、お姉さま――」


マナー講習会になってしまいました。


マルギットに今までの事を色々聞こうと思っていたけど、そういう空気ではなかった。


出てくる料理の味に大興奮しつつもド緊張の中一生懸命ご飯を食べるマルギットは、見ていて微笑ましかった。


子供のように目まぐるしく移り変わる表情は見ていて楽しい。


ディオネは疲れていたみたいだけど悪くない一時だった。




食事後は入浴。


ディオネを洗ってからマルギットを洗う。


「え? え? あ? え? ええぇ!? あっ! あッん! あぁッ。ん、ん……」


マルギットは洗ってもらった経験がないのか、ちょっとうるさかった。


お風呂上がりには飲み物とアイスクリームを与えて就寝。


俺は寝るつもりだったのだが、熱いまなざしで見てくるディオネと、ディオネにくっついて桃色吐息のマルギットがあれな感じで騒がしかったので、寝かしつける作業。


マルギット渓谷開通作業に時間がかかったせいもあり、また空が白み始めてからの就寝となった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ