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さしゅごしゅ! ~好き好き大好きご主人様~  作者: にーりあ
第一章 魔王倒して勇者退職、悠々自適な『第二の人生』を楽しむぞっ! (奴隷購入編)

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烏女女王の里帰り ②-3-2

ジュンコは世界樹の上に置いてきた。


やることをやったらさっさと木を登り上で繭を作っていた。


世界樹が弱っているのでだましだまし養分を吸い上げるために冬眠が必要だとジュンコは言っていた。


世界樹が弱っているのが問題ならそれを解決すれば冬眠なんかしなくても済むのではなかろうか。


世界樹を調整することは容易い。


しかし今それを勝手にやってしまってはここの住人に不都合が出るかもしれない。世界樹を起点に魔術を編んでいたりするだろうから。


色々準備が必要だ。俺はジュンコに世界樹を調整するつもりであることを伝え、それまで養分を吸い上げるのはやめるよう言い聞かせた。


烏女らのところに戻ると全員綺麗に整列していた。


それを統制しているのはディオネだ。


どうやら彼女は女王としての権力をすっかり取り戻したらしい。彼女が烏女らにどういう教育を行ったのかはあえて聞くまい。


あの結果を見るに、多分どこかの軍曹が降臨したのではないかと思う。


「ここにいた烏女は全部で二十三名でした。他の生き残りは各地へ散ってしまっていたので、呼び戻しの魔術で帰還命令を出しています」


思っていたより人数が少なかった。


二十人程度では騎士団は作れない。頭数を期待していたので困った。


「彼女たちは細々と作物を生産し生きながらえていたようですが、長い時間の中で知識の伝承が途切れており希少な薬草類は壊滅しておりました。ご主人様の財を減らすような真似をしてしまい謝罪の言葉もございません」


ディオネはなんか謝ってるけど薬草とか正直どうでもいい。ポーションの原材料なんぞあっても俺には調剤なんかできないし。


「いや責めてやるなディオネよ。食い繋ぐだけで精一杯の生活だったということだろう。今日までよく生活してきたとお前の同胞らの無事を喜ぼう」


「ありがたきお言葉。ご主人様の寛大なるお心に我等一同深く感謝申し上げます」


まぁ感謝されようともがっかりはがっかりだけどな。


確かにいないよりはいい。けれどヒューマンリソースを欲してここまで来た身としては、この頭数にはしょんぼりだ。


しかもどいつもこいつもレベル低いし。人間よりもちょっと強い程度じゃ即戦力にならない。森を歩かせても犬に噛みつかれて引き回されてズタボロになって泣かされるのがオチだ。


――はぁ、全員掃除婦でもやってもらうか。戦力としては論外。森でテイムした動物のほうがまだ強そうだぞ…………あ。


そこで、俺は閃いた。


そうだテイムだ。と。


テイムした動物を烏女に使わせて森を回らせればいいんじゃなかろうか。と。


烏女のレベルは低いが魔法くらいは使えそうだ。烏女一人でテイム動物を百匹魔法で指揮させれば烏女二十人で二千の兵力を確保できる。


これだけいればローテーションだって組めるし森の掃除くらいなら十分できるだろう。


素晴らしい案じゃないか。そうと決まればさっさと世界樹直して森に生息しているであろう害獣どもを片っ端からテイムしに行かなければ。


「ディオネよ。俺はここの住人らにできれば今後、俺の元で働いてほしいと願っている。勿論希望者にはそれなりの恩給を支給しよう」


「ご主人様、何をおっしゃられるのですか。我ら一同既にご主人様のため死兵となる覚悟を済ませております。恩給など必要ありません、どうぞ何なりと御命じください」


待って。死なせないで。


決死の覚悟とかいらない。


そういうの強いらないであげて。ほら何人か目が死んでるじゃん。みんな顔色悪いじゃん。


ダメだよブラック以上の待遇とか。


そんなの勇者のやることじゃない。


「うむ。そうは言うがなディオネ。生きとし生けるもの誰しも霞を食べて生きていくことはできまい。お前はともかく、他の皆には即物的な心配もあろう」


俺はその場で烏女たちに安心して暮らせる環境を整えていくことを告げ約束する。


それにより烏女たちの表情が少しほっとしたように緩んだのがわかった。


だよねだよね。ごめんね気が回らなくて。


これディオネに相当きつく締めあげられてるな。


よい意味でも悪い意味でのディオネのカリスマはヤバイ。半端ない。元女王というのは伊達じゃないのだと感じました。


「さてディオネよ。皆が俺の元で働いてくれるようなので、俺はここと俺の領地の屋敷とを結ぶ通勤路を整えたいと思う。さしあたってはこの神樹庭園と魔の森の回廊出入口を結ぶ転移門を構築しようと思うが、その魔力供給に世界樹を利用したい」


俺の言葉にざわつく烏女達。


ディオネも少し驚いて困り顔をする。


「慌てるな。世界樹が弱っているのは先ほどの視察で俺にもわかっている。だから世界樹が元の力を取り戻せるよう俺が調整しよう。ただ、あれはこの神樹庭園という結界の中心だろう? ここを覆う様々な魔術の要になっているのは想像に難くない、どうだ?」


「おっしゃる通りですご主人様。年老いた世界樹はもうこの地を長く支えることはできません。蜘蛛の亜神……ジュンコ殿が回廊を徘徊していたのも、神樹庭園の備える結界の隠匿術式が緩んでしまっていたからでしょう」


まぁそうだよね。次元の狭間に漂う島とかレベルの低い烏女らに維持できるはずがないわけで。


ってことは、この場所は遠からず滅んでいたということだ。


世界樹があの状態ではもう持ち直すことはない。俺に仕える決死の覚悟はともかく、烏女らも近いうちにここから出ていかなければならないという覚悟は決めていたかもしれないな。


「うむ。さもありなん。そこで、お前たちにはこの結界の各種魔術機構の調律をやってほしい。俺が世界樹を調律して魔力の生産出力を全盛期の値に戻す。それに合わせて術式を組み直してくれ」


俺の発言に烏女達が大きくどよめく。


否定的な言葉がすごく聞こえたけど後ろを振り返ったディオネににらまれた瞬間烏女達は大きく痙攣してピシッと口を閉じた。


「かしこまりましたご主人様。では私がご主人様の元を離れている間、ご主人様の雑事を行わせていただく奴隷を手配いたします」


「え?」


いやいらないし。


作業はすぐ終わるし。


と俺が思うと同時にディオネが烏女らに振り返り「マルギット」と一声上げた。


「ご主人様、どうかこの者をお連れください。この者の名はマルギットでございます。私が不在にしていたこの地を監督していた神樹庭園の次席巫女です」


「マルギットと申します。どうぞ良しなに」


烏女らの中から出てきたのは確か俺に弓を構えて発狂していたとりわけ白い烏女だ。

むぅ。


なんか段取りが良すぎてヤバイ。ディオネの真面目さと責任感がひしひしと伝わってくる。


リーダーになると人は変わると聞いたことがあるがコレがソレなのか。


付き人とか全く必要ないのだけれど、むしろコミュ力のない俺としては初対面の烏女の同行など邪魔ですらあるのだけれど。


だがここでそれを断るというのはディオネの顔を潰すことに他ならない。すごく頑張っている部下の仕事に水を差すことになってしまう。――だのに俺はそれを断るのか? 断ってしまうのか? 断ってしまいますか? 本当に断りますか? 断れますか? まさか断ったりなんてしませんよね? お返事は三日以内にお願いします。


――ぐぬぬ。ここは、我慢か。


断れない。


無下にできない。


俺の私的な都合で部下の成長の芽を摘んでしまうなどどうして出来ようか。できるはずがない(反語)。


「あ、あー、わかったディオネ。お前の提案を受け入れよう。マルギットも、よろしくな」


「マルギット、行きなさい。ご主人様のお役に立つように。もしもの時は死になさい」


「かしこまりましたお姉さま」


マルギットが俺に対して深くお辞儀。


「…………」


お姉さまってなに。


実の家族ってことはないよな。


所謂そういう業界? そういう階級? ごきげんようなんとか様が見てる的な?


いやそもそもここにいる烏女達は俺の知っている烏女とは違う。


背丈やシルエットは同じだが、みんな肌の色が白く翼も純白。


天使と名乗られたらそうなんだなって納得するような外見をしてる。


――世界樹住みだからか? アスパラみたいなもん?


もしかしたらディオネを完全回復させたら真っ白になっちゃったりするのだろうか。それとも天使ボスの最終形態みたく羽がわっさわさになって白いミノムシみたくなっちゃうのだろうか。


もしそうだったらどうしよう。たぶん違うとは思うけど念のため今後はディオネに高位回復系魔術を使わないよう気をつけねば。


下手に完全回復させて熾天使みたいなナリになったら大変だ。あいつら羽が邪魔過ぎて普通に歩くことができないからな。常時浮遊してないといけないし、浮遊したら浮遊したで権能の副次的効果のせいで周囲を発火させまくるから人間世界で暮らすことなどできなくなる。


――姿かたちとしては、マルギットくらいまでがギリギリか。


背中に大きな白い翼を持つせいでマルギットに並んで歩かれると圧迫感がある。


だが移動に支障をきたすほどではない。すっげ―目立つから町では一緒に歩きたくないと思わせる程度だ。


「あの……私に何か?」


「いや、なんでもない。行くぞマルギット」


俺のネガティブな気持ちが伝わってしまったのだろうか。


口調は丁寧だけどすっげー冷たい目で見られた。


こいつってば、お姉さまの命令だから従うけどアンタなんか嫌いなんだからねって目で訴えてくる。


こっちだってお前を連れて行くの嫌だっての。


ちょっとムカついた。

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