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さしゅごしゅ! ~好き好き大好きご主人様~  作者: にーりあ
第一章 魔王倒して勇者退職、悠々自適な『第二の人生』を楽しむぞっ! (奴隷購入編)

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烏女女王の里帰り ②-2-2

「どうした? 足が多いわりにステップが重いじゃないか。まだまだこんなものではあるまい?」


『ワカッタ! ワカリンシタ! 降参スルデアリンス!』


女郎蜘蛛が悲痛な声を上げる。


「なんだと? もう降参するというのか、あれだけの大口を叩いておきながら。いやいや冗談はよせ。まさかこの程度で許されるなどと本気で思っている訳ではあるまい。そらキリキリ踊れ。蜘蛛たるお前にはこの実力差を詰める手段があるのだろう?」


大蜘蛛は矢じりに足を折られて前につんのめる。


『妾ノ負ケデアリンス! 許シテクンナマシ! ドウカ、ドウカゴ慈悲ヲ!』


大蜘蛛は泣き叫び懇願する。


だが矢じりの攻撃は止まらない。俺に攻撃を止める意思はない。


このままでは済まさない。とりあえず減ったMPを補填させてやる。



――〈血の祭壇(ブラッドプール)〉――



蜘蛛の傷口から血が噴き出る。前に犬たちから吸い上げた量とは比べ物にならない量の血が宙へと舞う。


蜘蛛の頭上に血の球体が作られ、そこにぐんぐん血が集まっていく。


『ンガアアアアアッ?! ソンナ! 妾ガ! 妾ノ魂ガ穢サレテイクゥ?! ドウシテ!?』


盛大にパニックを起こしている蜘蛛をしり目に俺はアイテムデポより武器を取り出す。


現れたのは二メートルほどの、穂先に炎を宿した槍。


それは潤沢な魔力を持つ魔人であっても持つだけで精神が崩壊するといわれる神の槍だ。


『――ヒッ!!』


槍を見た途端大きく痙攣し、震えだす女郎蜘蛛。歯と歯がぶつかりカチカチという音を出している。


「待ッテ! 待ッテクンナマシ! 謝罪! 謝罪イタシンス! 申シアウゥ! モ、 申シ訳御座イマセンデシタ! 」


「謝罪は不要。刑は執行。お前だって殺していいと同意したではないか」


「同意ハシテナアグァッ! イタイデアリンス! 助ケテクンナマシ! ドウカゴ慈悲ヲ! オ情ケヲ!」


「魔王死すべし慈悲はない。お前は俺の前に立ちはだかった。即ちそれは俺の邪魔をする魔王の手先ということ」


「シ、知ラナイ! 魔王ナンテ知ラナイ! 関係ナイデアリンス!」


「いやお前は魔王の手先。俺の奴隷を狙った時点で俺がそう断定した。お前の弁明は不要、既に真実に意味はない。大人しくここで死んでおけ。『〈お前の敵意は確定的明らか。見ろ、見事なカウンターで返した。調子に乗ってるからこうやって痛い目に遭う〉』」


俺は再び聖ブロントの聖句を唱える。


それにより俺を中心に空間が波打った。


――〈威気制圧VI魂拌〉――


俺に敵意を持つ全ての魂ある存在を締め上げるスキルを発動させた。


その衝撃にアラクネの目が大きく見開かれ――と思えば白目をむき泡を吹いてその場で失神したようだ。


「やはり……何らかの状態異常を受けていたということか」


〈威気制圧VI魂拌〉を受けて気を失うだけで済むのは心から服従した者のみだ。敵意とレベル差によっては魂を砕き溶かし世界から駆逐する恐るべき権能も、敵意を持たない者には魂をかき回す効果しかない。


各種永続BADステータスも乗ってなさそうなところを見ると、俺に敵対した原因は機能を停止したと思える。


「手こずるなら灼槍アラドヴァルで(原因を)焼き切るつもりだったが、必要なかったな」


血の塊から変換された魔力が神槍に注がれていくのをみながら、俺は魔力の充填が終わるのをまだかまだかと待つ。


「あの、ご主人様、亜神を結局処分されてしまわれるのですか?」


と、待ち時間に声をかけてきたのはディオネである。


「亜神? こいつはただの人間だ。なんでこんな成りになってしまっているのかはこれから釈明させるつもりだが」


「え、あ、いえその……かしこまりました」


ディオネが数度蜘蛛女と俺を見比べるように視線をきょどらせ、何かわからないものを飲み込むように目を閉じ、頭を下げる。


んー? 何か言いたいことでも? ちょっと気になるんですけどそういう態度。


「どうしたディオネ。何かあったのか? 構わないから言ってみるがいい」


「あ、いえ、あの、そのような事は……私の浅慮によりご主人様の気を散らしてしまい申し訳ございません」


「いやいや、謝罪には及ばない。私はお前が何を考えたのかをただ知りたいだけだ。お前がどのような事を考えていたとしても怒らないから教えてくれないか?」


聞くは一時の恥。聞かぬは一生の恥っていうじゃんね。


烏女の女王が何を見て何を思ったのか是非とも聞いておきたい、後学の為に。

暫く戸惑った後、ディオネは重い口を開く。


「はい。ではその……ご主人様が先ほど亜神に闇の祝福を与えていらっしゃったので……何故それを処分するのかと……ご主人様にとっては、亜神も人間も大差はないのだと私では理解ができなかったため、つい言いよどんでしまった次第です。横から差し出口を挟んでしまい申し訳ございませんでした」


「…………」


ディオネが何を言っているのかわからない。


――闇の祝福? なにそれこわい。祝福なのに闇? っていうか、それはいつ?

俺が黙っていると、何かを勝手に勘違いしたらしいディオネが慌てて言葉を継ぎ足す。


「亜神の魂に乾坤輪廻の儀式を――あ、いえ、始祖ジュラの〈血の祭壇(ブラッドプール)〉でしたね。

それと聖句、でしたか。ご主人様の行ったあれら御業は、調和神の振るう権能〈闇の祝福〉と同等の魂の調律でした。

今や神至亜神七十二柱・蟲王は、その魂を変質させたご主人様の絶対服従の僕。

にもかかわらず、どうして手間をかけお作りになった道具をすぐに壊してしまうのか、わからなかったのです。

勿論、私のような小さき者にご主人様のお考えを読み解くなどできるはずがございません。たった一瞬とはいえそのようなことを考えてしまうなど不遜の過ぎる行いでした。どうかお許しください」


と、こうべを再びたれるディオネ。


「…………」


うん。


うん。そうなんだ?


技のコンボ次第ではそういう大ごとになっちゃうんだってことは知ってた。


スキルの連携でマジックがバーストするやつだよね。


知識のある人には何が起こったかを正しく理解することができて意図的にそういうのを再現できる的な。


ただね。僕は自分の目の前でそんなことが起こっていたなんて全く知らなかったよ。今知った。君の解説で何となくそうなのかなって察したレベルだけども。


っていうか、ディオネさ。


君はなんなの。


女王っていうのはそんなにチートなの? お前は攻略本かなんかなの?


「なるほど。さすがは元烏女の女王と言ったところか。我が秘法を理解するとは素晴らしいぞ! そう! そうなんだよ! 私はこの蜘蛛女を道具にしようと思っていたんだ! まぁ詳しいことは話すと膨大な時間が損なわれるため割愛するが、我が意図の片鱗を感じ取るとはお前もなかなかやるようだなディオネよ!」


「あぁ左様でございましたか。さすがご主人様です。しかしながらご主人様。私などまだまだ至らぬ身。お褒めに預かるなど恐れ多いことでございます。私は己の視野の狭さを恥じるばかりです」


「いや! いやいやいや! お前が恥じるべきことは何もないぞ! なにもない! なにもないとも! あー、そろそろこの蜘蛛女を起こしてやるかな! うん」


ディオネの視線を避けるように、俺は蜘蛛に回復魔法を施した。



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