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さしゅごしゅ! ~好き好き大好きご主人様~  作者: にーりあ
第一章 魔王倒して勇者退職、悠々自適な『第二の人生』を楽しむぞっ! (奴隷購入編)

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幕間① ディオネ

私の名はディオネ。


オデッセウスの福音によりこの世界に導かれた異世界人。


かつて二対の純白の翼を持ち、地上を監督した天の御使い。


唯一神に背く十六闘神の引き起こした聖戦より生き残り、しかし傷ついた私は眠りについた。


魔王によって長き眠りから解き放たれ、半端な形で目を覚ました私は、かつて持っていたほとんどの権能を回復できていなかった。


それでも魔王は私の魔眼を欲し、私を殺め魔道具を作らんとしていた。


だから私は逃げた。


邪な野望の為にこの身を使われるなど死んでも死にきれない。


我が権能で女神たちを誘惑しハーレムを作ろうなどとは。


魔王め。性欲が強すぎて気持ち悪い。


残り少ない力を使い私は何とか魔王から逃げた。


だが奇跡の代価は大きかった。


身体の内外に沢山の傷。


傷口から侵入した汚物や風土病。


諸々をこの身に受け、このまま野山で野垂れ死ぬのだろうと思っていた。


死に際になって思い出されるのは懐かしき昔の記憶。


女王ライフは楽しかったなー。


誰もがみんな私のことを敬い、跪き、平伏する。


わがままは全部叶った。


贅という贅を堪能した。


今思えばやりすぎたかもしれない。


そば仕えの顔とかいつも引きつっていたもの。


やりたい放題やって、突然降りかかった災害みたいな事件でそれが終わって。


全部自業自得だったのかな。


眠りから復活したらまたやりたい放題やろうと思っていたらこれだもの。


魔王許すまじ。全盛期ならひゃっぺん殺してた。


後から知ったことだが、私を逃がすために眷属が魔王の手にかかっていたらしい。


それを知った時の怒りは半端なかった。


眷属を魔道具の実験の贄にするとは。


あいつらをパシらせていいのは私だけだ。殴ってもいいのは私だけだ。


どれだけハーレムを作りたいのだあの性欲魔。


しかし悔しいが、今の私ではアレを倒せない。


神よ。


私の願いを叶えたまえ。


魔王に裁きの鉄槌を。


願わくば死を。


叶えてくれるならこの命を差し出しても構わない。


いや、そんな弱気では駄目だな。


ここは生き残って復讐をせねば。


それまでは死ぬわけにはいかない。


私は天使の長。天の支配者代行として挫けるわけにはいかない。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




ご主人様に出会った時、私はビンビン来た。


見た目は子供。頭脳は大人。


まるで名探偵なにがしを見たかのようだった。


隠していてもわかる膨大な力の気配。


私は無い尻尾を全力で振る思いで奴隷商にノンバーバルコミュニケーション。



「亜人は人と交配しても孕みません。膜付きですが、ご要望とあらば調教後お渡しすることも可能でございます」



あー、やっぱり男への奴隷商品訴求ってそっち方面になってしまうのね。


汚らわしい下衆どもに我が純潔を散らされようとは。


しかし私もえり好みできる身分じゃない。


いつかはヤるだろうし、いつまでも新品未開封で飾っておいてもプレミアはつかない。


翼を失っているのだ。膜ぐらいどうってことない。



「ふむ。未通女か。伽に使うには少々手間がかかるな。しかし、それはそれで趣があるというものだ」



紳士。


中身は性欲たぎってる中年の気配がする。けれど紳士。


どこぞのハーレムオヤジとは比べようもない。ちょっと見直した。


こいつに買われよう。店主。我はこいつにする。こいつに買われるぞ。


ノンバーバルコミュニケーション。



「金貨十枚を申し受けます」

「ほう。少々値が張るようだな」



おいやめろ。ふっかけるな。婚期が遅れるだろ。


いじわるしないでください。



「はい。完全な状態ですと百枚は下らない商品ですので」

「片目は失明、弱視、声帯は焼け背中の翼は消失、肺の病を患い来月は生きておらぬであろう個体がか?」



あ、そうなの?


もしかして、私の延命維持費って、結構かかってた?


満身創痍でごめんね?




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




買われて分かったのは、この少年が規格外という事。


扱う力は魔術ではなく、魔法。


無から有を引き出す力。


創造神の力をコンパクトにした感じでとてもやばい。



「何を驚く。お前の驚くべき事は、まだ始まってすらいないのだぞ」



これ以上どんな隠し玉があるというのですか? ちょっとこわいんですけど。


そう思っていたら。



「貴様は薄汚れた今の状態の方が好きかもしれんが、その姿だと連れ歩くのに目立つ」

「はい、ご主人様」

「まずはその服を脱いでもらおうか」



声が出ない。魔王に詠唱封じでやられた傷のせい。


返事は出来ないが声は聞こえるので言われた通り服を脱ぐ。


こんなつるぺたはにゃーんでごめんなさい。


全盛期だったらぼっきゅっぼんのナイスバディにだってなれるのに。


でもだめね。ないものねだりをしていては。


今ある体で満足しなければ。


そう思っていた矢先。



――〈肉体回復・C〉――



身を包む優しい光。体の内部を熱くたぎらせる力の奔流。


え? え? なにこれ?


これって癒しの女神が使う権能では?


下界において神代の魔法とか呼ばれているやつですよね?


びっくりした。


規格外だとは思っていたけど、この能力は人の域を超えている。


使徒か? もしくは人のふりをしている神様ですか?




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「貴様の名は確か……ディオネだったか」


「はい。ご主人様」


「よし、ディオネ。ついてこい」



興奮する私を湯あみの施設らしき場所へ連れていくご主人様。



「ご主人様の、お名前を、お伺いしても……」



私は決めた。決めていた。


身も心もこの御方のものになる。


信仰という漠然とした教えにではなく、この目の前にいる神を体現した少年に全てを捧げる。


魔法の余韻だろうか。この時の私の興奮は絶頂を迎えていた。


彼の声を耳にするだけで喜びが沸き上がる身体になっていた。



「俺の名前を聞いてどうするつもりだ」


どうするもなにもこのタイミングですよ。マスターに設定する以外に名前なんて聞きませんでしょう。


変なことをお聞きになる。そう思った私は次の瞬間ハッとした。


今の私は天を支配する女王ではない。


地に落ちた、人の言う烏女という種族の、薄汚い奴隷シンデレラなのだと。少女に何が起ったか的なピアノしか取り柄のない幸薄い少女に過ぎないのであると。


そのような存在にマスター登録されるなんてわかめ好きでもなければ苦痛以外の何物でもないのでは。


「そ、それは……」


ここにきて落ち込む。テンション急降下。


あぁ。私はこの目の前のいと尊き御方にお仕えしたいだけなのに。それすらも許されないとは。


謝罪の気持ちがこみ上げる。


私のようなごみがすみません。


口をきいてすみません。


存在してすみません。


うまれてきてごめんなさい。


そう口にしようとした時。



「いや、言う必要はない。いいだろう、なかなか楽しませるじゃないか女」



私は驚く。


否定でも肯定でもなく。


気にするなでも大丈夫だでもなく、楽しませる。


楽しんでくださるのでしょうか。このような愚物でも。


戸惑う私に、ご主人様はその名を明かしてくださった。



「俺の名はアトラス。西の果ての魔王を倒した勇者の名前だ」



衝撃。


この人は何度私を驚かせるのだろう。


何度私を喜ばせるのだろう。


何の理由があって、私の心を救ってくださるのだろう。


私は復讐より解き放たれた。


この血肉に刻んだ怨念の数は計り知れない。


復讐だけを生きる糧として生きに生きた今日までの日々。


それを目の前の少年が成したというのだ。


私の復讐を、私のご主人様が、なしてくださっていた。




憎悪の日々は唐突な終わりを告げて。


気が付けば私の目の前には、至福の時が揺蕩っている。


頭気持ちよかった。体気持ちよかった。あったかいお湯最高です。


何か問われたが、不覚にも頭がぼうっとして聞き漏らした。


幸せ過ぎて思考が回らない。


多分この状況についてを尋ねられたのだと思う。



「はい。……初めての、経験です」



無難にこたえておく。


だって何もかもが初めての経験なのだから、これは万能な答えだろう。



「お前の値段は法外だった。その理由も当然聞いている。これは千載一遇の好機だと思うがどうだ?」



そうか。そうですか。


私が生き延びていた理由を聞いていたのですね。


ありがとうございます。据え膳食わねば女の恥です。


ここは恥を忍んで、私の欲望を遂げさせていただきます。


そして私はさせていただきました。


ええ、ばっちりと。ご主人様の目に映る私に対して魔眼発動。


マスター登録完了しました。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「貴様は――――恨んではいないのか?」

「……なにを、でしょうか」



私はとぼける。


わかっています。


復讐の件ですよね。


ご主人様は魔王を倒したことについて仰っているのですね。



「俺は貴様の喜びを――――いや、なんでもない」



復讐を遂げるのは甘美です。


この手で魔王を討ち取れたなら、その喜びは確かに私を満たしたでしょう。

しかしそんなものはもうよいのです。


どうでもいい。


私はご主人様に出会えて満たされたのです。


ご主人様は私から復讐の機会を奪ってしまったことを悔いておられるようですが、どうぞお忘れください。



「私は、ご主人様の所有物です。必要以上によくしていただく必要はありません」



もう充分です。


これ以上は恐ろしい。


幸せ過ぎる今の境遇が怖いのです。


私の心は歓喜に震えます。


願わくば、この幸せを一秒でも長く。


それが今の私の願いなのです。


あぁ、お役に立たなければ。


ご主人様のお役に立ちたい。


役に立つ道具だと思ってほしい。


私にできる事ならなんだってします。


さしあたっては、夜の伽。



超がんばる所存です!


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