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さしゅごしゅ! ~好き好き大好きご主人様~  作者: にーりあ
第一章 魔王倒して勇者退職、悠々自適な『第二の人生』を楽しむぞっ! (奴隷購入編)

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奴隷購入 ①-3-3

夕食。


給仕のオートマトンが最初に運んでくるのはパン。


次いで前菜アンティパスト


緑の野菜の上にチーズ、トマトが乗っておりドレッシングがかかっている。


次に出てきたのは第一の皿(プリモ)


今日はシーフードパスタ。


奴隷だから手で食べ始めるのかと思ったがそんなことはなかった。


ディオネは器用にナイフとフォークを使って食事をする。


腐っても元女王という事か。


食べ終わるとナイフとフォークをそろえるのも忘れない。


それを確認したオートマトンが次の皿を持ってくる。


第二の皿(セコンド)


在庫の関係で魚料理ではなく肉料理。竜の肉のグリル。


本来なら魚介か肉かどちらか一方で統一されたメニュー構成であるべきなのだが、魔王城で殺しまくった邪竜どもの肉が余りまくっているのでしばらくは変則構成である。


付け合わせ野菜(コントルノ)とともに食す。


ここまで互いに無言。


黙々と二人向かい合わせで食事。


――しまったな。


ここでやっと俺は、また一つやらかしてしまったと気が付く。


ディオネの食事は床に置くべきだった。


考え事をしていたのでそこまで気が回らなかった。


ディオネは食べ始める前に何かぶつぶつ言っていたのだが、俺が何気なく黙っていろと言ってしまってからは無言だった。


今思えばあれは、きっと床で食べたいと主張していたのだろう。


もしくは猫まんまがいいです、と言ったのかもしれない。


くそ、失態だ。


完全に聞き流していたため記憶がない。


また彼女の喜びを奪ってしまった。


このままでは悪いご主人様へ一直線ではないか。陰口を言われる裸の王様な主人となってしまう。


挽回せねば。よいご主人と思われるよう点を稼がなければ。


しかし今更、床で食えとは言いづらい。


だから言ったじゃないですか初めにお願いしますよ、クス。とか心の中で嘲笑されたらきっと耐えられない。そんなことされたら一気に顔真っ赤になる。ブロークンマイハート必至案件である。


「貴様は――」


俺は後悔の念を振り払うように言った。


ここは正直に言おう。ごめんなさいしよう。そう思った。


「恨んではいないのか?」


「……なにを、でしょうか」


「俺は貴様の喜びを――」


喜びを奪ってしまったのだぞ。君のご飯を床に置き忘れた駄目な主人だぞ。


そういいかけて、言葉を止める。


そんなことを言ってどうするのか。と。


弱み見せて終わるだけじゃんね。


こいつワロスって思われるだけじゃんか。


反省はしている。だがそれを告げてどうなる。そんなことをしても失われた喜びの機会は戻ってこない。むしろ舐めて観られるようになって良いご主人様活動に支障をきたす可能性しかない。


奴隷は主人に優しさなんて期待してはいないのだ。


欲しいのは身を焦がすような苦痛という甘美な快楽だけなのだ。


それだけが、そしてそれこそが奴隷のモチベーションであるからにして。


謝罪してスッキリするのは自分だけ。相手にとってはむしろ迷惑でしかない。


「――いや、なんでもない」


俺がそういうと、ディオネはうつむいた。


この反応はどっちだ? セーフなの? アウトなの?


「私は、ご主人様の所有物です。よくしていただく必要はありません」


物憂げなトーン。まるで己が罪の糾弾を求めるかのような。


ああ、やっぱりそうだ。この女は虐待を渇望している。


その声音からやはり虐げられたかったのだと俺は確信する。


奴隷商の言うとおりだ。この女は害される喜びを求めていた。


危なかった。俺はそれに配慮できない主人とみなされるところだった。


俺は無言になる。女もそれ以上何も言わない。


これ以上の会話は野暮というものだろう。


この空気こそ目の前の奴隷の求める圧迫感であるはずだ。


デザート。


アイスクリームをメインにしたクレープ包み、オレンジソース添え。


俺だけデザートをキャンセルしてエスプレッソ。


興奮を厳しく律するような顔をして、努めて冷静にデザートを食べるディオネを眺め

ながら、俺はエスプレッソの苦みをかみしめるように味わう。


或いは理解しがたい苦痛という快楽について、カップの湖面に映る自分に問いかけるようにして。


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