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序章

ご無沙汰しております、第二章これから毎日投稿がんばります。




 横殴りの吹雪が、視界を埋め尽くしていた。

 只人のように暑さ寒さが身に堪えるということはなかったはずであったが、弱りきった現状ではそうもいかないようだ。


 冷え切って感覚のなくなった手足。

 まともに動こうとしない頭。

 ――なるほど、これは人が恐れるわけだ。


 寒い。


 代わり映えのしない退屈な日々に飽いて、いっそこの地を離れてみようかとも思ったが、己にそうするだけの力など、もはや残っていないことも良く知っていた。


 寒い。


 気晴らしにと、まだ人々が村にいた頃そうしていたように、散歩でもと思ったけれど、あるのは一面の真白ばかり。


 寒い。


 かつての栄華など見る影もない、廃墟すらも雪に埋もれたその様は、何とも言えず寂しいものだった。


 ヒュルル。――ルル。


 この吹雪の中でも、空を駆ける鳥がいたらしい。いや、あれは鳥型の魔獣か。以前はここまで、やつらがやってくることはなかった。

 それほどまでに、己の力が落ちているという証左だろう。


 情けない現実を突きつけられて、しかし悲観も怒りもわいてはこない。

 仕方ない。

 仕方ない。

 人の子らがこの地を去ってしまったのは、仕方のないこと。


 食うものも育たぬ土地で、どうして只人が生きていけようか。

 狩りだけで生きていけるのは、ほんの一握りだ。


 己の力が及ばなかった。

 仕方のないこと。

 豊穣も、天候も、己の司る権能ではないのだから。


 魔獣がいない、それだけで生きていけるほど、この地はひとに優しくはないのだから。



 ――ああ、そうか。



 寂しいのは、この寒々しい景色ではなくて……。




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