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流れ星の見える夜  作者: 長栄堂
第十章 最終章
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賀谷地区の山荘

いよいよ最終章に入ります。

 それから二日が経った十月二日の深夜、賀谷地区の山荘にゆっくりと一台の車が近づき、山荘の前で停まると一人の男が降りて来た。岩城至誠である。

 鬼車宗八が旭日荘で襲われた後、彼も京都府警の事情聴取を受けたが、犯行時に彼の宿泊していた部屋が内側からチェーンロックが掛かっていたということもあり、彼はすぐに釈放されて、松本に戻って来たのである。


 その岩城至誠が、賀谷地区の山荘にやって来た。

 玄関から山荘に入ると、次に地下室のドアを解錠して中に入った。中は本郷裕子が食べ散らかしたごみが散乱し、奥のベッドでは本郷裕子が背中を向けて倒れていた。岩城至誠はそれを確認すると、持って来た袋に散乱したごみを入れて部屋の中を片付け、ベッドの横に毒薬の入ったペットボトルと血糊の付いたナイフを置いた。早川真理子と桂浩太郎の刺殺に使用したナイフである。

 それが終わると、今度は錠とチェーンロックである。部屋の中からも解錠出来るように錠を取り換え、そしてチェーンロックを掛けて、真ん中あたりのリングをニッパーで切り、チェーンを二つに分割した。切ったチェーンの半分がドアの金具からぶら下がり、壁からも残り半分がぶら下がっている。その状態で地下室の外に出て、持って来た保冷容器から小さなリングを一つ取り出し、ドアをわずかに開けた。

 彼が保冷容器から取り出したリングは、チェーンロックを構成している金属製リングと大きさや形、色合いがよく似ているが、ただその小さなリングには別のリングを通すことが出来るわずかな隙間が開いている。岩城至誠はドアと壁からぶら下がる二つのチェーンの両端を持ち、両方のチェーンの先端に、先ほど取り出したリングを掛けてドアを閉め、外から施錠した。

 彼は、今度は玄関に行き、外に出てまたチェーンロックに同じ仕掛けを施して玄関を施錠した。

 これで密室の完成である。彼が取り付けた隙間のあいたリングは、やがて自動的にその隙間を閉じ、玄関と地下室のドアは内側から一本のチェーンロックが掛けられた状態となる。誰が見てもチェーンロックを掛けたのは、本郷裕子である。


 岩城至誠は六角堂ホテルでも同じことをやり、京都府警の刑事を騙しおおせたことに酔いしれていた。

 これで本郷裕子の資産は全て自分のものである。そうほくそ笑んだ、その時である。いきなりサーチライトが点灯した。見ると周囲は、刑事らしき者に取り囲まれていた。何が起こったのか、まだわからない岩城至誠が放心状態で立っていると、見たことのある髭面の刑事が近寄って来て、彼の腕を掴んで手錠を掛けた。あっけない幕切れであった。


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