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エンマ様はぶっ飛ばす  作者: 麦パン
閻魔の世界

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第八話 クソ神の問題

(エンマ視点になります)

 目に力を込めて、権能を発現させる。今回は、相手の真偽や正体を暴くためなので【八咫鏡】を目に投影して使用する。


 泉から現れた存在。それは俺がここで閻魔の役職につき、生活をする発端となった享受の神。

俺からすればクソ神ではあるが、現世や浮世の世界の人々からしたらいろんな啓示や力を授けてくれる神様ではある。


 当然チヤホヤされてるんだろうなと考えると腹が立って仕方ない。本性は自分が死ぬためなら何を仕出かすかわからない存在であるのに。


 「……偽物か、本物ではないようだな」


 ――これは記憶だ。享受の神の記憶の残滓が語りかけているだけ。本物ではない。

泉から上体だけ表した泉の女神気取りのクソ神は本物ではない。


 が、現れた原因があるはずだ。思いつくことは後ろで倒れた立花のこと。立花がこの死後の世界に来る前に享受の神自身が記憶に干渉し、細工を施した。


 そう考えるのが俺の中のクソ神のやり口と辻褄が合う。あのクソ神のやりそうなことだ。

考えてるうちに立体映像のように泉から上半身だけが浮かび上がったように存在する存在。


 大蛇に包まれた仮面の男は喋りだす。


 『さて、君達に話す内容は手短だ。僕を殺せ。それがここに着た君達の到達すべき最終目標さぁ』


 「勝手に言ってろまずは、立花の様子だ」


 「ぐぅ――」


 「大丈夫か。――ひとまず起きないだけで外傷は無さそうだ。」


 ひとまず身体を起こし、記憶のガラス玉を傷つけない安全な場所に移動させる。記憶のガラス玉が傷つけばその中の記憶が流れ出し大変なことになる。


 慎重に動かねばならない。そうこうしていると続きを喋りだす。口を封じるガムテープでもないものか。黙らせてやる。


 『いやぁー、エンマ様。びっくりしてるよねぇ。驚いてるよねぇ。見えなくてもわかるよぉ』


 「相変わらずうっとおしい喋り方するなこのクソ神、いや、記憶の残滓だから、クソ偽神? どっちでもいいか無視しとけばいいだけだ」


 そう、思っていた。これは記憶の残滓でそこに意識はなく感情も存在しないことはわかっていたのに。

 

 『さて。君に伝えなくてはならないことがある――君の妹についてだ。』


 「――なに?」


 それは、俺の中の大切な存在。何千年と行きていてもはやおぼろげとなった大切な記憶。その記憶が何だったのかもはや思い出せないが、俺は大事な妹がいたことははっきりと覚えている。


 そして、その妹を殺したこのクソ神のことも。あの感情は今でも俺の中で燻り続けている。


 「なんでだ? お前が妹の事を口にするな!」


 声を荒げるが、所詮は立体映像。俺に構わず話は続く。


 『君の妹を生き返らせる、なんてのはさぁ。どうかなぁ? とっても良い提案だと思うけれど、いかが?』


 こいつは。何を言っている? 俺の目の前で殺しておいて生き返らせる? クソ神が。


 「――ざけるな。ふざけるな! お前は命を何だと思ってやがる! お前を! お前を! ころ――」


 ――ころしてやる。言葉の最後が出ずに詰まった。だが、既の所で言葉を吐かずに済んだ。それでも感情が昂ぶり、全身の血液が沸騰しそうなほど熱くなり、身体の奥底で燻り続ける憎悪の火種が燃え、大きな大火になろうとした。


 でもそこで、一瞬。妹の顔がちらついた。その御蔭で冷静さを取り戻す。


 ……落ち着け。俺はこの神を殺さないとそう決めたのではないか? この神の言うことをまともに聞かずに、流すぐらいでいい。


 「ふぅ――。さて、次は何を言う? もう何が来ても大丈夫だ」


 心に余裕ができた。これで何を言われても心はそう簡単には動かない。


 『まぁ、そんな事できないんですけどね。僕は一度だけ与えるだけの神。与えられた命を失って死んだ者を生き返らせるなんて奇跡出来やしないさね』


 「やっぱこいつ殺す」


 ――駄目であった。簡単に動いてしまった。やはり感情をいくら落ち着かしてもこのクソ神は腹が立つし、殺したい感情は収まることはない。


 『ククク、さてどんな表情してるかな? 僕が直接見れないのは残念だけど、想像で補っておくことにするさぁ』


 『コホン。さて。本題だ。これはハッピーで喜ばしいことだよ。君の妹が生きているとそう言ったら君は信じるかい?』


 「――は?」


 また、こいつは何を言っている? 生きているだと? 殺しておいて意味の分からない事を言う。

俺の疑問が潰えぬ間に間髪入れずに神は話を続ける。


 『君の妹はね、君と同じくもう一人の死後の世界の管理人として生き続けているのさ。……嘘じゃないよ? 君はその管理人と長年一緒にその世界を循環させてたじゃないか。覚えはあるだろう?』


 「――」


 覚えはある。なぜ、疑問に思わなかったんだろう。先代と同じ閻魔の役職を得て、魂を三途の川に送る。それは本来であれば閻魔の役職の仕事ではないということを。


 それを俺がやっているのは元々あった死後の世界を作り変えてしまった責任と罪を贖罪するために行っていた。そう思いこんでいた。

 

 しかし、本来の死後の世界での次の生命の生まれ先を示すのは閻魔の役割であるのに俺ではない。

三途の川の向こうにいるとされている輪廻転生装置が行っている。


 さらに言えば、その輪廻転生装置は機械だと思っていた。三途の川を渡れないのも俺が仕事をサボらないようにするためだとも。それはすべてが違っていた。


 『君は、その世界を作り変える時に何も代償が無かったと本気で思っていたわけではないだろう? 現に君は閻魔の役職を得て、途方も知れない時間を過ごして死者を案内する。それだけで天国や地獄、煉獄をぶっ壊した代償が払い負えれるわけないじゃないか。代償は分担。――まぁ、そうとっさの機転で行ったのは僕だけどさぁ』


「ぁ――」


 ――もはや言葉が出ない。妹が生きていること。それだけを見れば大変喜ばしいだが、俺は大変な過ちを犯している。三途の川の向こう側。死者を殴り飛ばしたその先に大切な存在がいるのにそれに気づかずに無作為に時間を浪費していた。それが情けなくて仕方ない。



 代償を払っていたのが俺だけではなく妹も巻き込んでいた。

謝らなくては――。妹に合わせる視覚なんて無い。ただのエゴなのかもしれない。


 この俺を許してくれなんてことも言えない。


それでも。――それでもだ。一目会って俺は心からの謝罪をしなくてはならない。


 『――僕はさぁ。君達の世界に行けないのさぁ。肉体も魂も無いからね。輪廻転生の概念は君達いや、エンマ様達人間のための機構だからさ。だから、僕に肉体を与えるなりしてそっちに連れて行ってほしいんだぁ。そうすればその子みたいに死後の世界に行けるからさぁ。その子を送るのにも苦労したんだよぉ――』


 ペラペラと言葉を続ける。あの時と変わらず憎たらしい笑みだ。

だが、その言葉はもう俺の耳に入ってこなかった。


 妹に謝りに行く。という兄としては大変情けない目標が出来たのだからこんなクソ神の言葉を聞いてられない。


 『――こんなものかな。君の顔を見れ無いことは大変残念だがここでお暇させてもらうよ。次に合う時はちゃんと殺してね? いや、殺せよ? エンマ様』


 「安心しろ。お前の思いとは裏腹に殺さずに殺してやるから」


 俺の中で重要な情報も含まれたが殆どはあの神の自己中心的な僕を殺して的な内容だった。

しかし、やっておきたいこともある。妹を殺して、生き返らせるなんてふざけた嘘をつく神にやって

 やることは一つだ。

消えかける享受の神の記憶の残滓で形成された立体映像。


「オラァ!」


 そこに感触はなく、振りかぶり振り下ろした拳は立体映像をすり抜け、空を切る。そしてその勢いのまま泉に下半身が浸り、ズボンが濡れる。


 あれがたとえ本物の神ではなくても、一発殴っておかなければいけない。


 「そして、もう一発。――がっぁ!」


 もう一発殴る相手が存在する。それは俺だ。何も気づかないでのうのうと生きていた俺への贖罪の一発。そして、前を向き志を新たにする為の一発でもある。口の橋からは血が垂れ、鉄の味が口の中を支配する。


 「さて、じゃあ、まずは戻らねぇとな。やることは山積みだ。まずは三途の川を渡らないといけない。さらには、この死後の世界の管理を誰かに任せないといけない。……ってあれ? なんか忘れてる気がするな」


 泉から出て、下半身がおもったよりも濡れていることに気づく。『乾かさないとな』とか思っていた。そこで、泉の横にある岩の陰にある人影に気づく。忘れていた。


「ぐぅ……」


 未だ、起きない立花の存在。それをすっかり忘れていた。


 「あ~……、すまん。忘れてた」


 軽く手を合わせる軽薄な謝罪は鍾乳洞の記憶の洞窟の静謐さに溶けて消えて行く。

そして、大きな目標の前に目の前の障害を片付けていかないといけない。


 そう、恐らく享受の神の影響で眠っているはずの立花を目覚めさせる方法である。


 「……クソ神。あいつ問題だけ残していきやがって。――やっぱり殺すか」


 あの神への憎悪は収まること無く、逆に増すばかりであった。


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